[*]前 次[#] [0]戻 [4]履歴
[1]最新 [2]最初 ▼[3]コメント欄

ナイルパーチの環境と経済と社会
1/2頁 (10件)
5: 12/23 10:54 ID:???
 ビクトリア湖のナイルパーチ問題は、外来種が既存の生態系を
破壊した例として有名だ。ネットで検索すればかなりの情報を集
めることができる。しかしこの映画は「生態系の破壊」という魚
の世界に起きた問題より、もっと大きな人間の世界について描い
ている。それはナイルパーチ・バブルによって生じた、タンザニ
アの社会変化だ。降って湧いたように活性化する水産業は、内陸
部からの労働移住者を湖岸に引き寄せる。だがそうした人々のす
べてが水産関連の仕事に就けるわけではない。仕事にあぶれた者
たちは湖畔にスラムを作り、男たちは盗み、女たちは売春し、子
供たちはドラッグに明け暮れる。水産工場から出る大量の魚のア
ラは、貧しい人々の貴重なたんぱく源となる。

 ここで起きているのは、弱肉強食の生存競争と、適者生存の自
然淘汰法則が、むき出しの形で人間社会に拡大された社会ダーウ
ィニズムの世界だ。ダーウィニズムは「進化論」とも言われるが
、むしろ生物がその環境に適応していかに多様化するかを示す理
論だ。生物はその環境で生き延びるために、自らの生態を変化さ
せて最適化する。そこには「進化」という言葉から受ける「単純
で低級なものから複雑で高度なものへの変化」という上下の価値
観はない。その環境で間違いなく生存できるなら、それがどんな
に単純で低級な生態に見えようとも、それがその生物にとって最
適の「進化」なのだ。

 タンザニアで起きている人間界のおぞましい出来事の数々も、
すべては環境への適応と適者生存に過ぎないのかもしれない。し
かし我々は、このリアルな現実から目を背けたくなるだろう。ナ
イルパーチがビクトリア湖の在来種を食い尽くしたように、グロ
ーバリゼーションという化け物が人間社会を食い尽くそうとして
いるようにも見える。


[*]前 次[#]
▲[6]上に [8]最新レス [7]ピク一覧

名前:
Eメール:
コメント:

sage
IDを表示
画像を投稿(たぬピク)
現在地を晒す