[*]前 次[#] [0]戻 [4]履歴
[1]最新 [2]最初 ▼[3]コメント欄

パワプロ小説
40/40頁 (391件)
390: 11/23 00:25 ID:vY
 04.君と僕とのA・B・C 夏の大会、雲龍高校は甲子園予選決勝戦で敗れた。雲龍が所属している地区リーグの総チーム数はそんなに多くないので、準優勝チームがキップを手に入れられることはない。
 三年生たちは肩を落としたり、意外とさっぱりした顔をしていたりと、それぞれ様々な表情をしていた。
 最後の大会が終わってしまえば、もう三年生たちは練習には来なくなる。部室に置いていた荷物を引き上げて、受験や就職など、それぞれの進路を見据えて再出発を始める。野球の推薦で大学に行く先輩なんかは、それからも練習に顔を出すけど、下級生らの邪魔をするようなことはない。
 初めて間近で見た、高校野球児の散り際。そのあまりのあっけなさに、ちょっと玲奈は拍子抜けしてしまった。甲子園ドキュメンタリー系のテレビ番組で扱われるようなドラマなんて、そこには欠片もなかった。
 そうして、また一つの時代が過去になり、新たな時代が始まる。
 まぁそれはそれとして、予選大会が終わってしばらく経った、今は七月中旬。
 先輩らの存在に感傷的にもなっていられない、期末テストのシーズンだった。
「ぬぬぬぬぬぬ……!」
 頭から湯気でも出てきそうな真っ赤な顔で、玲奈は教科書と向き合う。些細な放課後だって、一切無駄な時間には出来ない。テスト本番は来週から。今は準備のための一週間、この一週間にどれだけの労力を注ぎこめたかどうかで、来週笑うか泣くかが決まる。
 雲龍は文武両道をこそ重んじる校風であり、例えスポーツ推薦で入学した人間であってもテストの成績が低いことは許されない。全ての部活が一切の練習を停止するので、今は久々に憂弥や片桐も交えての勉強会だ。
「だー! 今回憶えるトコ多過ぎでしょこれ! 横文字ばっかこんなに憶えられるかっての!」
 玲奈の得意科目は英語。嫌いな科目は世界史である。アルファベットはすらすら頭の中に入るのに、カタカナ語になった瞬間何かが変わる。高校受験でも苦心したものだが、まだまだ立ちはだかる壁は大きい。
「範囲は広いし名前は似たような奴が多いし……ああもう混乱するー!」
「片桐、ここの計算これでいいのか?」
「…………(こくり)」
「無視?! アタシを無視?!」
「れ、玲奈ちゃん落ち着こうよ……」
[*]前 次[#]
▲[6]上に [8]最新レス [7]ピク一覧

名前:
Eメール:
コメント:

sage
IDを表示
画像を投稿(たぬピク)
現在地を晒す