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パワプロ小説
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 街中の喫茶店。大通りに面し、賑やかな往来を眺めながら様々な人が午後の一服を楽しむ空間ではあるが、試験前の高校生らはそうもしていられない。世界史の横文字と悪戦苦闘する玲奈を他所に、憂弥は数学を、片桐は生物を、そして戸美子は英語の勉強をすすめていた。それぞれの苦手科目である。見事にバラバラで、この集団の協調性の無さが窺い知れるようだった。
 勿論それだけではなく、誰かの苦手科目は誰かの得意科目であるので、お互いに質問しながらのチームワークも出来上がっている。ちなみにそれぞれの得意科目は玲奈が英語、憂弥が物理、片桐は数学、戸美子が日本史と世界史といった具合である。約一名、助け合うには互換性のない人間がいるが、今更なことなのでさして取り上げはしない。
 高校に入学して最初の定期テスト。いわばスタートダッシュのようなもの。それゆえに、皆気合の入れようも生半可ではない。残されたラスト一週間の期間、どれだけ勉強できたかによってその後の先生たちの評価や自身の意気込みが変わってくる。出来る範囲で、一点でも多くの点数を獲得しなければ。
 だったら普段からちゃんと勉強しておけというのは野暮な話である。
 喫茶店にしてはやり過ぎなほどに落ち着いた雰囲気がウリのこのお店。試験勉強にはうってつけの静けさだ。その一角、ファミレスのような大きな机を囲んで参考書と睨めっこする一同。ストローでちびちびとオレンジジュースを飲みながら、玲奈はシャーペンを走らせた。関係の無い話だが、喫茶店のジュースはなんでこれっぽっちで三五〇円もするのだろう。
「玲奈ちゃん、この全体訳分かる?」
「んー見せて……“私は、ゲームをするとき、箸でポテトチップスを食べます”かな、多分」
「こっちは?」
「ええっと……“あなたたちの見てくれることに感謝、今回も”……あ、違うわ、“今回も見てくれてありがとうございます”って訳が自然ね」
「よし、これで答え合わせもバッチリ!」
「アタシが言ったのが正しいとは限らないわよ」
「玲奈ちゃんのことは信用してるから大丈夫だよ」
「知らないからねー」
 戸美子への指導が済んだところで、玲奈は対面に座る片桐と憂弥のコンビに目を向ける。片桐は仕方がないとして、憂弥はもう少し戸美子と会話すべきだと思う。こうして仲良く一緒に喫茶店なんかに入っているわけだし、同じ野球部なんだし。そして、いい加減このバカは友好を深めるという行為を覚えるべきなのだ。
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sage
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