【長編】ファイアーエムブレム〜双竜の剣〜【小説】


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【長編】ファイアーエムブレム〜双竜の剣〜【小説】

1: 見習い筆騎士('-'*) 56J2s4XA:05/08/06 11:49 ID:E1USl4sQ
ということで別スレ建てさせてもらいました。
1部の24章までは以下のURLよりご覧いただけます。
http://bbs.2ch2.net/test/read.cgi/emblem/1100605267/7-106

何かご意見がございましたらその都度レスしていただけると幸いです。
まだ書き手としては本当に初心者なので、ご指摘は特にありがたくい頂戴したいと思います。

〜今までのあらすじ〜
ベルン動乱から4年、平和に向かって歩んでいたエレブ大陸で再びベルンが戦争を起こす。
その首謀者は女王ギネヴィア。兄ゼフィールの意志を継ぎ、世界を統合しようと企む。
その過程でロイの恋人シャニーがロイをかばって事実上戦死するが、竜族伝説の聖王ナーガの力によって復活を遂げる。
そしてエレブ大陸とどこかで繋がるという、別世界から来た神竜族クリスによって衝撃の事実を告げられる。
ギネヴィアは『ハーフ』と呼ばれる人間と竜族の混血の種族の一人に体を奪われている、と。その乗り移った目的はエレブ大陸の支配。
彼らは別世界では迫害され、こちらの世界に自分達の国を作ろうと乗り込んできたのであった。
ロイ達は大陸内で唯一ベルンの侵攻のないナバタの里から、エトルリア、イリアへと進軍していくのであった。


176: 第二十章:新芽の如く:05/12/28 09:59 ID:gAExt6/c
ナーティがセレナに説く。表面を見ただけで酷いと分かるなら、人々もきっと反乱を起こすだろう。だが、ここには見せかけの平和が流れている。年貢さえ納めれば迫害はされなかった。だが、それは「殺されないで済む」だけであり、「希望を持って生きる」と言う人間としての生き様とは程遠いものだった。
ナーティの言葉に更に誰かが続けて言った。
「左様。見た目にはワシらが日々死と隣りあわせだと言う事は分からんじゃろう・・・。」
一同がその声に振り向く。そこには老人が立っていた。
「ゼロット様やユーノ様、それにシャニー団長がおった頃は、ここも活気に溢れておった。じゃが、前のベルンの変で皆倒れて以来、わしらはただ生かされておるだけの存在となった。」
一行はその話を黙って聞いていた。その間に雪が次第に激しくなってきていた。
「おぉ・・・寒いわい。旅の人たちも宿を探しておるのじゃろ? わしの家に来るといい。さ、こっちじゃ。」
その老人はセレナ達を温かく迎えてくれた。その老人はどうやらこの村の長老らしかった。
「ゼロット様はまさに聖王と呼ぶに相応しいお方じゃった・・・。」
長老は昔の事を思い出すように言う。そして、その言葉には、その聖王の再来を願う気持ちもこもっていることが伝わってくる。
「父のことをそこまで良く仰っていただけて光栄です。私も出来る限り努力いたします。」
アリスが父を思い出しながら、長老に礼を言った。仕事が忙しくてあまり一緒にいてくれなかった父だが、優しくて一緒にいるときは常に抱いてくれていた事を、アリスは覚えていた。
「! 今何と言った?! 父!? と言う事はお前さんは聖ゼロット王の・・・?!」
長老がさぞ驚いたような口調でアリスの顔を見る。そして、顔に触ってみる。
「おぉ・・・言われて見れば・・・そなたはユーノ后妃そっくりじゃ・・・。」
「はい。私は確かにゼロット王とユーノ后妃の間の子、アリスです。」
「ベルンの変で亡くなられたと思っておったが・・・神はわしらを見捨てたわけではなかったか・・・。」
長老は涙を流して天に拝んだ。その様子が、ベルンの支配の酷さを物語る。アリスは続いて、セレナも長老に紹介した。長老は更に驚いた。
「おお! そなたが・・・。この村、いや、イリアの民は例外なくロイ様とシャニー様を慕っていた。・・・そなたが“炎の天使”か・・・。似ている・・・シャニー様に瓜二つじゃな・・・。まるでシャニー様が目の前にいるようじゃ・・・。」
「貴方達は、母さんの事忌んでないの?」
セレナは長老の感涙を流す姿に驚いた。昨日の村とは対応が180度違ったからである。
「誰が忌むものか・・・。 あの子はわしらにとって天使の様な存在だった。戦争が終って荒廃したイリアを再建するときも、彼女の笑顔でどれだけ救われた者がいることか・・・。忌むべきは今のベルンじゃ。」
「そうですね。長老、我々はベルンを倒すべく、イリアまで来たのです。どうか、ここの人たちにも協力をお願いできないでしょうか?」
アレンが長老に協力を要請する。この人たちならきっと力になってくれる。アレンは確信していた。イリア民族は元々団結力の強い民族だ。普段は雪のようにしんしんと静かに暮らしているが、その団結力は雪崩の如く強い力を持っている。
「我々を導いてくださった恩人の子孫が頑張っているのに、それを見ているだけと言うわけには行きませぬ。勿論わしらも協力します。この村には騎士の身分を剥奪されたものも多く住んでおる。それにしても・・・シャニーの子が生きていたとなれば、ルシャナも喜ぶじゃろう。」
長老がそういった途端、今まで黙っていたナーティが突然声を上げた。
「何? 長老、ルシャナは生きているのか?」
「おぉ。お前さん、知り合いか?」
「いや・・・別に。シャニーのあとのイリア騎士団長だと聞いたことがあったから知っていただけだ。」
そういうとまたナーティは窓の外見ながらだんまりを決め込んでしまった。
「さて、今日の宿は確保できた事じゃし、皆に顔を見せに回ってはくれぬか? 皆光の無い闇の中で生きてきたゆえ、希望を失っておる。そなた達が行ってやれば歓喜する事じゃろう。」
長老は村人達を村の教会に集めた。そして、村人達にセレナ達を紹介する。最初は疑心暗鬼にどよめいていた。しかし、アリスやセレナがその親にそっくりな事が分かると、そのどよめきは一気に歓声に変わった。皆英雄の再来を心待ちにしていたのである。ある者にとっては、自分達の生活を豊かにしてくれた聖王ゼロットの子と、世界の英雄ロイの子。またある者にとっては、伝説のイリアの聖母の子と、イリアの心に春をもたらす熾天使の子・・・。その姿に重ね映す像は人それぞれ違っても、自分達を救ってくれる救世主が表れたという歓喜の気持ちに変わりはなかった。



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