部隊コード:8820(イリア天馬騎士団編)-U


FIRE EMBLEM@2ch2掲示板 > 部隊コード:8820(イリア天馬騎士団編)-U
全部1- 101- 最新50

部隊コード:8820(イリア天馬騎士団編)-U

1: 手強い名無しさん:08/05/03 18:21 ID:PM
更新間隔が長くなってしまっていますが誠意執筆中です。
今回は前作以上に長編化しそうな感じなうえ、
オリジナル要素が強く(というか、こんな展開になんの?!がコンセプト)読み手の意見も大きく分かれると思います。
まだ楽しんでくださる方がいれば幸いです。


141: Chapter2-2:闇に彩られし者:08/05/05 12:00 ID:2U
ティトは小走りに城の廊下を歩いていく。
向かう先は団長室を含めた部隊別の事務室がある二階ではなく、城の一階にある部屋。
一階は非戦闘員である本当の事務員達が働く場所だ。
近況報告以外では普段はあまり訪れない一階。
だが向かう先は、その中ではある程度お世話になっている場所だった。
予想はしていたものの、その部屋の戸を開けた瞬間、特有のにおいが鼻についた。
「ティト団長、おはようございます。」
いつもどおり、礼儀正しい男性の声が聞こえた。
見れば左手でウッディが会釈をしている。
彼は実験室の中で試験管に囲まれていた。 いつ来ても同じようなシチュエーションだ。
「毎日大変ね。 本当は実験室と医務室を分けてあげられるとよいのだけど。」
労いの言葉を彼女は忘れない。
まだ見習いであると言うのに、傷付いた騎士の治療を一手に引き受けてもらっているからだ。
戦争は命だけではなく、経験や技術といった無形なるものをも奪っていた。
「とんでもないですよ。 こちらこそ感謝しています。
勉強をさせていただきながら給金まで支給していただけているのですから。」
部屋は殆どが医療道具や薬品、寝台で占められている。
その隅っこに、蚊帳でお情け程度に仕切られた場所があり、そこが彼の実験室となっていた。
だが、彼はそこで殆ど実験できずにいた。
同じ部屋に怪我人がいるのに、細菌やらなんやらの研究など出来はしなかった。
彼がそこで実験している時はたいてい、研究結果をまとめる時や、治療用の薬品を調合する時そして試験薬を作製するときぐらいだった。
「そう言ってもらえると助かるわ。
もう少しだけでもお金に余裕が出来れば、援助してあげられるのだけど、今は我慢してね。」
「僕もいつか恩返しが出来るように研究に励みます。」
ティトは真っ直ぐで真面目な彼に好感を持っていた。
彼には不思議と、ティトにある人物を思い起こさせるものがあった。
今でも文通をしている親しい間柄。 疲れていても、文通相手も激務をこなしていると思うと自然とやる気がおきてくる。
無骨で品のかけらもない男だが、身内以外で自らが唯一圧倒された相手だった。
「どうかしました?」
はっと我に返れば、ウッディが不思議そうにこちらを見ていた。
こんな大変な時期に、男に現を抜かすとは。 そう思うと情けなくなってくる。 ティトは頭の中で自分の頭を叩いた。
「なんでもないわよ。 今は何の研究をしているの?」
「イリア風邪の研究です。 あれの特効薬を開発できれば、命を落とす人も少なくなります。
糸口は見出せたので、今は試験に試験を重ねているところなんです。」
まさにコツコツやってきた努力も佳境に入ったところであった。
イリア風邪・・・長く厳しい冬を越えて、春を迎える時一緒に来る招かれざる客である。
毎年抵抗力の低い子供や老人を中心に多くが命を落とす病で、今までは特効薬と言うものがなかった。
むしろ薬そのものが望まれていなかった。
需要がなかったわけではない、貧困に苦しむイリア民に、薬を買う金などなかったのである。
彼らが出来る事は精々、村のシャーマンにお願いして祈祷をしてもらうことぐらいだった。
ウッディはそんな惨状を見ておられず、シャニーたちが見習い修行に出ている時期からずっと研究をしていたのだ、
「国の復興も大切ですが、それを行っていくのはイリア民一人ひとりです。
ですから、皆には健康であって欲しい。 国として、それを構成する民の健康へ目を向けるのは大切なことだと思っています。」
ティトはウッディが本当に立派に見えた。
これが本当に、妹と同じ15,6には到底見えない。
「よく言ってくれたわね。 シャニーにも幼馴染なのだから少しは見習って欲しいわ・・・。」
寝台の方に目を移せば、見慣れた顔の少女が寝かされている。
ティトも登城してすぐ知らせを聞いたときは顔が蒼褪めた。
何しろ、妹が夜賊に襲われて大怪我を負い、意識を失っていると報告を受けたのだ。
命に別状がないと知った今でも、意識が戻らない妹が心配でならない。
だがその心配を断ち切って、ティトは団長としての態度を貫く。



続きを読む
掲示板に戻る 全部次100 最新50
名前: E-mail(省略可): ID非表示