部隊コード:8820(イリア天馬騎士団編)-U


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部隊コード:8820(イリア天馬騎士団編)-U

1: 手強い名無しさん:08/05/03 18:21 ID:PM
更新間隔が長くなってしまっていますが誠意執筆中です。
今回は前作以上に長編化しそうな感じなうえ、
オリジナル要素が強く(というか、こんな展開になんの?!がコンセプト)読み手の意見も大きく分かれると思います。
まだ楽しんでくださる方がいれば幸いです。


143: Chapter2-2:闇に彩られし者:08/05/05 12:02 ID:2U
ウッディは何も言わずに、彼女にそれを任せる。
ティトの後姿を見守るその顔は、自然と笑顔になっていた。
タオルを冷たい水で硬く引き締めたティトは、また寝台に腰掛ける。
彼女はタオルをきれいにたたむと、シャニーの額にそれを戻してやる。
静かに眠る妹の顔をしばらく見つめ、彼女は妹の頭をそっと撫でてやった。
シャニーはこうしてやると喜ぶという事をティトはずっと昔から知っていたが、なかなかそれを行動に移せなかった。
これ以上にないというほど親しい間柄なのに。
それが今回、なんの躊躇いもなく自然と彼女の頭に手が伸びた。
これも今まで分かっていたことだが、いつ会えなくなってしまうかもしれないという恐怖にも似た感情。
妹が修行に出るまでは言うに及ばず、ベルン動乱時ですら二人は一緒だった。
そして今度は同じ騎士団で毎日顔を合わす。
その日常で、分かりきっている常がそうではないように思えてくるのだった。
しかし、こうして妹が瀕死の重傷を負い、目の前で横になっている姿を目の当たりにした。
すると今まで隠れていた常が、自分の心をその棘で痛めつけるのだ。
ティトには、かつて自らの師から何度も言われていたことを思い出していた
―やれる事は、やれるうちにやっておかなければ、出来なくなってから後悔しても遅いんだよ。
―世の中いつどこで何があるのか分かりゃしないんだからね。
結局師の生前に、師へ恩返しと言える恩返しを出来なかった。
その二の舞を踏みたくはなかった。
時間の許す限り、彼女は妹の頭を撫でていた。
ウッディも何か姉というよりは母に見えるその姿から溢れる妹への愛情に、自分から話しかける言葉が見当たらない。
「いつもは壊れた蓄音機みたいで、ホントやかましいぐらい元気なヤツが、こうして寝ているとなんか不気味ね・・・。」
しばらくそうした時間が続いた後、ポツリと漏らされた不安。
「壊れた蓄音機ですか。 ははは、シャニーにはお似合いですね。」
「そうなのよ。 うるさいからってガツンとやってやると、しばらくは静かになるんだけどね。
またすぐ元のようになっちゃう困り者だったのよ。 ・・・。」
ウッディはびっくりして返そうとしていた言葉が喉で捺し留めた。
何せティトの目から流れる光るものを見てしまったのだから。
彼は無言でハンカチを彼女に差し出してあげた。
差し出されたティトも、恥ずかしさと相まって感謝の気持ちを無言で伝えた。
気を落ち着けた彼女は、大きく息を吐くと、ウッディにハンカチを返した。
「騎士ともあろうものが無様な姿を見せて恥ずかしいわ。」
「別にいいじゃないですか。 泣きたい時に泣けば。 我慢したって体に毒ですよ。」
何かと我慢の多いこの仕事。
自分をさらけ出す事ができる相手だって数えるほどもいない。
その中で、ティトはその相手が一人増えたような気がした。
彼女はベッドから腰を上げると、妹の胸に耳を押し当ててみる。
確かに聞こえる心音。 これを聞いて彼女は安心した。
「ありがとう。 じゃあそろそろ私は任務があるから失礼するわ。 妹の面倒、もう少しの間お願いしますね。 ドクター・ウッディ。」
「お任せください。 僕が付きっ切りで面倒見ますから。」
ティトは頼もしい言葉に笑顔で返し、部屋を出て行った。



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