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362:嵐の日の荒らし 01/30 19:55 [sage]
軽く頭を打ったのか少しくらくらする。しかしそれもじきに回復してきた。そ、そうだ、マリナは? 顔の上に何かがのしかかっているので、どうにかマリナを受け止めることには間に合ったようだ。マリナは大丈夫なのだろうか? 顔を動かしてマリナの下から脱出しようとするが、左右から何かに挟まれていて頭を抜くことができない。
マリナ「い、痛ったー。」 声と共にマリナが起き上がろうとする。どうにか無事だったようだ。ケンタがほっとした束の間、顔を塞いでいたものが持ち上がりそれが何か知ることとなる。それは二つの水風船のような形をしてぶら下がっており、その先端にはピンク色の突起が…。
ケンタ「う、うわっ。」
マリナ「きゃっ、ケンタ!」
二人は同時に声を上げ、マリナは急いで手で胸を隠すとケンタの上から降りた。ケンタは顔を真っ赤にしながらもよろよろと立ち上がる。そして恥ずかしさのあまり、マリナの傍からすぐに立ち去ることに決めた。
363:嵐の日の荒らし 02/07 18:33 ID:Pg [sage]
バクフーンとツチームの戦いは続いていた。力と力のぶつかり合いから転じて、しめつける攻撃、きりさく攻撃と技での応戦となっていた。ケンタはさっきのマリナの光景を懸命に振り払いながらバトルに集中していた。後はかえんほうしゃを放つタイミングで勝負が決まるといっていいだろう。ケンタは戦いを真剣な眼差しでみつめた。そんな様子を少し離れた場所で見守るマリナ。先程の光景を思い出してしまうと顔が赤くなっていくのが分かる。本当はこの今の戦いは止めたいと思うのだが、全裸なのでどうすることもできない。後はケンタに任せるしかなかった。きっとケンタなら上手くやってくれるとマリナはそう信じていた。バクフーンとツチームとの戦いのさなか、バクフーンが攻撃した時に相手に一瞬の隙ができる。一時的に怯んだ感じになったといってもよい。ケンタはそれを見逃さなかった。
364:嵐の日の荒らし 02/07 18:35 [sage]
ケンタ(やるなら今だ!) ケンタはバクフーンにかえんほうしゃの指示を出そうとした…その時だった。
轟音と共に流れる川から陸へ上がってくる乱入車があった。それはまさしく、見覚えのあるロケット団の車両だった。その車は水陸両用のようで、陸に上がると車両の下よりタイヤが出現する。そしてその車の中から同じく あいつらが出現する。
ブソン「ようやくみつけたぜ! どうやらそいつを足止めしてくれてたみたいだな。感謝するぜ。」 明らかに感謝していない口調で言う。
ケンタ「ふん、このポケモンはお前らなんかに渡さない!」 ロケット団に向かって怒鳴りつける。
365:嵐の日の荒らし 02/07 18:36 [sage]
バクフーンとツチームは未だに取っ組み合っているが、こちらに気を取られているのか両者とも本気になっていない。ブソンが気が付いたように言う。
ブソン「おい、見ろよバショウ。あの譲ちゃん、生きてるぜ。」 マリナの方に目をやりながら言うブソンに、バショウは表情一つ変えず無言のままだ。
ブソン「よう、譲ちゃん、なかなかいい格好してんじゃねえか。」 ブソンがマリナに冷やかしを入れる。
マリナ「う、うるさいわね。誰のせいでこんな格好になったと思ってるのよ!」 そう言い、座り込んで隠す身体をさらに強ばらせ、ロケット団を睨み付ける。そんなマリナをよそにロケット団の二人は本題に戻る。
ブソン「どうやら素直にそのポケモンを渡してはくれないようだな。だったらこっちにも考えがあるぜ。」
バショウ「私達に勝てないことを教えてあげましょう。」
366:嵐の日の荒らし 02/07 18:38 [sage]
二人は再び車に乗り込む。その様子を見て、ケンタは大いに警戒する。何をしようとツチームは必ず守ると心に誓う。弱者が苛められるのを黙って見過ごせない性分であり、また悪いことを放っておけないタイプなのだ。乗り込んだロケット団の車の真下から何かが飛び出し、そのまま地面に突き刺さる。それはドリルのように地を掘り進んでいるのが分かる。と、その時 聞き覚えのあるあの振動音が大地に響きだす。
ケンタ(こいつら一体、何のために?) ケンタは思考を巡らす。この振動音はポケモンたちを弱らせる効果があることが分かっており、山道を登っていたことが思い出される。しかし、何故 今、これを使うのかが分からなかった。と、突然 暴れるように体をくねらし始めるツチーム。興奮し我を忘れたように、ロケット団の方へと向かって行こうとする。
ケンタ「お、おい。どうしたんだ! バクフーン、そいつをしっかり押さえてるんだ!」 バクフーンは一声上げると、ツチームを押さえに掛かる。
367:嵐の日の荒らし 02/07 18:40 [sage]
ケンタ(どうしてなんだ?) ケンタは考える。この振動音はバクフーンには効いていないようだ。ふと、マリナの方に目が止まる。ムウマの元気が無いようで、彼女はムウマを抱き介抱しているようだ。
ケンタ(体の大きなポケモンには影響が少ないのか? としたら、まさか…) ケンタの考えにある結論が浮かぶ。ケンタは今尚、猛進せんとしているポケモンに向かって話し掛ける。
ケンタ「お前もしかして、この山に棲むポケモンを助けたくて向こうへ行こうとしてるのか?」
きっとそうなのだろう。危険を顧みず、苦しんでいる他のポケモンの為に…。それはケンタの性格とよく似ていた。そしてその行為を逆手に取り、捕らえようとしているロケット団。ツチームの心の温かさとロケット団の卑劣な行為に2つの気持ちが織り交ざり、目から涙が流れ出す。ケンタはツチームが進もうとする手前に進み出、そのポケモンに言う。
ケンタ「お前の気持ちはよく分かったから、そこで大人しくしてろ。後は俺たちでやる!」 そしてロケット団の方に向き直ると、
ケンタ「お前ら、絶対に許さない!」 と強い口調で言い放つのだった。
368:嵐の日の荒らし 02/07 18:41 [sage]
ロケット団の2人は車中で少年の出方を冷静に窺っていた。少年がどう動くかによって、こちらの出方も何パターンか用意している。プロとしては相手の行動の先の先まで読む必要があり、そういう思考は敢えて意識せずとも日頃の鍛錬で身に付いている。少年のバクフーンに押さえられながらも必死でもがいている今回の捕獲目標ポケモンが力ずくで動き、こちらにやってくれば好都合である。そうなれば確実に捕獲できるのは当然だ。しかし、今の状況ではそれは薄くなってきたと思われる。少年が反撃してくるか 又は、このまましばらく対峙するのか。いずれにせよ、こちらから少し挑発したほうが良さそうだ。あの少年の考えがまとまる前にこちらが先に動いたほうがよい。先に動いたのはバショウだった。バショウは車中からモンスターボールを投げ飛ばす。
バショウ「ハガネール、あの少年にラスターカノンです!」
369:嵐の日の荒らし 02/07 18:42 [sage]
ブソンは相棒の出方を見守ることにする。考えることは同じだったのだ。あの少年の存在があのポケモンのブレーキとなっている。少年を少し痛めつければ、あのポケモンは自由になると同時に怒りも増す。そこまで考え済みなのだ。
ハガネールの口に、目映い光が集まりだす。そしてそれは光の玉となるとかなりのスピードでこちらに向かって打ち出された。ポケモン達の前にいるケンタはそうなっても動こうとしない。ここで動いたら後ろのポケモン達にダメージを与えることになる。
ケンタ(きっと俺は大丈夫だ。それにここで動いたら、人間に対して敵意むき出しのポケモンにとって ますます人間を信用できなくなるだろ。) ケンタはこんな気持ちから動くことができなかった。いや、それに一つ信じているものもあった。
370:嵐の日の荒らし 02/07 18:45 [sage]
マリナ「ケンター!!」 マリナの悲壮な声が響く中、ケンタの直前まで光の玉が迫った時であった。背後から突如、火炎放射が凄まじい勢いでケンタのすぐ横を通り抜ける。そしてその火炎は光の玉と接触すると同時に爆発を引き起こす。物凄い音と共に黒い爆炎に辺りは飲み込まれ、爆風がマリナやロケット団を襲う。マリナはもうケンタが大丈夫なのかと気が気じゃない。ロケット団の方はこんな状況でも冷静な面持ちで前方を直視していた。
371:嵐の日の荒らし 02/07 18:46 [sage]
だんだんと煙が晴れていく。その中で立ち尽くしている一つの影が除々にはっきりと見えてきた。顔は多少 すすで汚れてはいるが、何ともないようだ。ケンタはバクフーンを信頼しきっており、人間とポケモンの心が通じ合っていないとこんなことは出来ない。ケンタは後ろにいる野生のポケモン・ツチームに、ポケモンを守る人間もいることを教えたかった。人間をもっと信用して欲しかった。だから体を張ってでも無茶かもしれなくても、ケンタのポケモンを想う熱い心がそうさせたのだ。かくしてツチームは、ケンタの心を理解したのか大人しくなっていた。そしてまだ多少は警戒しているかのようにゆっくりと体をずるずると引きずりながら、ケンタの傍にやってくる。
ケンタ(どうにか解かってくれたみたいだな。) ケンタは心の中でほっとし、そのポケモンに微笑んだ。
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