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54: 02/19 08:03
中江君の叫び 24

 つまりは 文芸を以て高しとする者や工伎を以て自ら巧とする者らの名声も時の権勢
の境界との交渉が無きが如しのような顔しても 細に覘察(てんさつ)する時には 実
は然らずしてその交渉の手心に甘えていたり、或は現に身をその中の仕籍に列しいたり
 或は暗に謁げをその門番に通じて諂笑(てんせう=へつらい)諛謔(ゆぎやく)して
媚を売り愛を買ふに非ざればこそであったりする。其の文章の偉麗なることと能はずし
て其韵礎鏗鏘(かうさう=鳴り響く)なること能はずして其方伎高妙なること能はず。
 これこそが公権の持つ力とばかり 官家はなほも心臓の如きに鼓動を伝え。強靱なる
毛髪歯牙の類のように はばからず血液の養を得る もし時の流れにて枯落することあ
れば立どころに その衰えを知る所なり。これが現実であって とても自由を保証する
立憲政治の仕組みと専制君主の制からの政治の進化とは又論が違う事である言えよう。
 欧州の文芸技術が如何に高くあると言えども この士に在りて猶此の如くなる時には
百官有司に至りては果て如何の状を為すや。昔に人は曰く所謂『公朝に官受けてお礼を
私門に拝す 時の暗夜に憐(あはれみ)を乞ふては 白昼に人に驕(おご)る』などと
は、正にこうした状態を模写する言葉である。こうした人々の自ら尊び自ら重んじて 
嘗(かつ)て屈下(=卑屈になる)せざること是れ丈夫の操守(さうしゆ=節操)に非
ずや。今の百官有司の状態を観察せよ。今や自尊の気象有るか自重の意態有るやこの丈
夫の操守有るや否や。少しばかりの自尊の気象有り自重の意態有り丈夫の操守有る者が
、一日も官職に在ることを得る事はないではないか。
 朝に抗議して諫言やら道理摂理をば侃々(かんかん)の言を発すれば 夕べには即ち
罷免なり窮地に至る定めの状態。俸禄を賜るを獲る中 黙して言わず語らずは君臣の構
えなりたるも仕方なく それを捨てては 一家の者を活かすことを得るの道は閉ざされ
自ら寒餓して死しせむ。 よって寒餓して死せしむよりは寧(むし)ろ首を伏しても黙
し妻子ー家と団欒して新しき命を受け入れて 軽煖の談笑をの得る事が愈(まさ)れる
のは もっぱら此れ普通の人の私情の態の常なり。
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sage
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