アラン・チューリングは言う。「その小箱にAと書いて入れてBが出れば成功とすれ ば、それ以外では失敗である。」と。同様に成功した箱では文字を入れて言葉が出てき ても、食料を入れて機械が出てきてもその箱は成功した箱である。それは富をいれて富 が出て来ても同じだ。だが、それが人類の通る道でも正解とならない。と言う。つまり この箱の中でどういう動作や状態があろうとも、それが理解不能でも、出て来た答えが あれば不正解でも答えである。つまり小箱(機械)は成功したものだ。しかし出た答え は正解ではない。と言うのだ。これはチューリング理論の基礎である。2つ変数の連立 偏微分方程式を考えてみる。波や一連の同じものの連動運動である。数式では、 ∂ u /∂ t = f ( u , v ) + D u Δ u ∂ v /∂ t = g ( u , v ) + D v Δ v ただしu ≡ u ( r → , t ) v ≡ v ( r → , t ) と書かれる。これは一般的に チューリングパターンとされる。大きさと空間比が一定では変わらない事で拡散する事 を証明する物で、波の波形や刷りガラス模様や年輪や木の肌など色んな物に求められる 数式と考えていい。このような形の方程式は一般に反応拡散方程式と呼ばれる。チュー リングは1952年、2つの拡散係数Dが大きく異なり反応項の 変化率f、と空間比率g、 が一定の条件を満たすとき、上記の方程式系で空間的パターンが自発的に生じることを 証明した。とされる。このような自発的パターン形成は特定の波数の不安定化が原因で あるがこの不安定性を拡散誘導不安定(もしくはチューリング不安定)と呼ぶ。チュー リングの頭の良さは、この方程式系を用いて生物の形態形成を説明することにあり、こ の世界の大部分が表せる事にある。この方程式は長らく生物学に影響を与えなかった。 しかし1995年に近藤滋にタテジマキンチャクダイの体表面の模様がチューリングパター ンであることが実験的に確認されて、近年再評価されている。虎やシマウマ豹柄などだ 。彼の業績は、暗号論だけでなく、チューリング理論におけるモデルの数々は、今でも 大学でのコンピュータサイエンス、数学、および哲学のカリキュラムで取り上げられて いる程新しく不変の公理である。彼の計算モデルは、数学者や計算機科学者らにとって 、金字塔で、何が解決可能であるか、および 解答可能な問題をアルゴリズム的に解く ための効率化の基礎となっている。彼のチャーチ=チューリング理論は、ゲーデルの不 完全性定理と相まって、人間の知能に関する普遍的制約の存在について未だに哲学者の 議論が続いている。誰でもが近づく事はあっても越えられない。アインシュタインさえ もである。従って、事実上の基準として、未だにチューリングテストが使われている。 という事実が現代のAI花盛りのITにあるのだ。チューリングの仕事が学界、産業界 教育界、自然界などで、高い重要性を持っていることに驚かされるだろう。