光さす庭〜finale〜


オカルト@2ch2掲示板 > 光さす庭〜finale〜
全部1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 801- 901- 1001- 最新50

光さす庭〜finale〜

1: あかり eroseyck:06/05/22 23:50 ID:xDUNPF.c
意志の力、努力し続けることで奇跡は起きるんだと思う。

スレのテーマ

?オカルト全般
?地域密着型報道番組
?雑談、猥談、怪談 etc etc
?デンパゆんゆんの能力者の探索
?みんなで助け合っていきましょう
?雑談、猥談、怪談 etc etc

禁止事項

過度な長文。連投はやめましょう。
誹謗中傷、欠席裁判もやめましょう。
他人の価値観は尊重しましょう。
他人の思想、宗教観は尊重して下さい。


23: 酔生:06/05/24 21:13 ID:e3SpK2tY
さてと……今図に乗ってるオレサマは、またぞろ懲りずにおとぎ話でも書いて
みようかと思う。
某女史から「もっと面白い話を書け!」とのツッコミもあったので、今回はは
かない恋のお話でも。気に入るかどうかは知らんが……w

“大角姫の恋”

かつて、清浄なる河の上流、山々の向こうに、ジークルーネなる娘がいた。

年の頃は17.8、小麦色の肌と、空の青より蒼い瞳、燃えるような赤い髪の
映える、花も恥らう乙女。見上げんばかりの身の丈は2mを越え、牙は大理石
のような純白。額より伸びた角は雄牛のように立派な……そう、彼女は巨人族
の娘だった。

両親を戦でなくして後、ジークルーネはずっと一人ぼっちだった。だが、彼女
はそんな程度で嘆くほどやわな娘ではなかった。毎日野山に飛び出しては、素
手でクマやイノシシをしとめて回っていた。
ふもとの村の住人は、凶暴な人食い熊や、恐ろしい魔物さえも退治してくれる
ジークルーネを“大角姫”と呼び、慕っていた。もっとも彼女の住む城には、
誰も近づこうとはしなかったが。

――そんなある日の事、狩りの最中に、誤って崖から転落した彼女は、一人の
美しい若者によって助けられた。彼は、怪我をして動けなかったジークルーネ
に手当てを施すと、日ごろの感謝と敬意を込めて、彼女の手に口づけをして去
っていった。
話によれば、彼は村の領主の若君。見目麗しく、心優しい名君の器と呼ばれる
才子。
その日から、ジークルーネの心は、麗しの若君への思いで一杯になっていった。
だが、彼女は巨人の娘。どんなに頑張った所で、若君につりあうような可憐な
貴婦人にはなれないのであった……。

24: 酔生:06/05/24 21:31 ID:e3SpK2tY
続き。

己の恋が決して実らないことを悟ったジークルーネの荒れようは、それは凄ま
じいものであった。
山々に轟く泣き声を上げ、岩を拳で粉砕し、泣きながら木々を谷に投げ捨てて
は疲れ果てて眠った。そしてひとしきり眠った後、はかない夢に目を覚まして
は再びひどく暴れまわった。
さて困ったのは、その怒りをぶつけられた山々の精霊達である。彼らは集って
話し合い、ジークルーネに秘密の呪文を教える事にした。
すると、どうだろう。牙は引っ込み、角は抜け落ち、体は見る見る内に小さく、
細く、たおやかに変わって行くではないか。そう、ジークルーネは、一国の姫
君もかくやという、麗しい人間の乙女に生まれ変わったのだった。

山は言った。「これでお前は人間だ。ただし、お前はもう二度と、これまでの
ように暴れる事は出来ない」と。
恋に焦がれるジークルーネは、そのことを喜びこそすれ、さして残念とは思わ
なかった。それでも、抜け落ちた角だけは大切に握り締めながら、喜び勇んで
村へと向かった。
だが、運命とは残酷なもの。村に降り、若君を探すジークルーネが見たものは、
馬車に乗る若君と、その隣であでやかに笑う近隣の領主の娘の姿。そう、彼女
は二人の婚礼の日に、村へと降りて来ていたのだった。

25: 酔生:06/05/24 21:52 ID:e3SpK2tY
最後。

はかなく散った恋を嘆き、泣きながらとぼとぼと歩くジークルーネ。
祝いの日に沸き返る村の声を背に、全てを失った彼女は自分の城へ帰ろうと
した。

だが、その途上で、彼女は見つけてしまった。木々の間から、婚礼の様子を
伺う野盗の群れを。そう、この華々しい日を狙って、盗賊たちが村に襲撃を
かけようと企んでいたのである。
ジークルーネは迷うことなく、盗賊たちに躍りかかっていた。その体にはもう、
かつての巨人の力はないのに。
愛らしい声を振り絞り、小鹿のような脚を踏ん張り、巨大な角を武器の代わり
に振り回し、彼女は懸命に戦った。それが、愛する若君のためにできる、たっ
た一つのことだったから。突然のことに驚いた野盗も、すぐに数に任せて彼女
を取り囲み、凄まじい反撃を仕掛けてきた。それでも彼女は雄叫びを上げ、
角を赤く染めながら、一歩も退かずに戦い続けた。

――やがて、騒ぎを聞きつけて駆けつけた若君と村人たちは、息絶えた野盗
どもと、折れた角を手にしたまま朱に染まった美しい娘を見つけ出した。
若君は、その乙女に見覚えはなかったが、彼女が自分のために戦い、散った
ことを悟り、涙を流して彼女をかき抱いた。

やがて彼は村人に、祠を設けて彼女と彼女の手にした角を祀るように命じた。
それから永い年月が過ぎ、人々はかつて山にいて、いずこともなく消えて
いった“大角姫”のことを忘れていったが、今でも乙女の祀られた祠には、
婚姻の安泰を願う恋人達が訪れるという――


続きを読む
掲示板に戻る 全部次100 最新50
名前: E-mail(省略可): ID非表示