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138:、 11/04 00:30 ID:kw
近代でもっとも有名でなどかな才能に恵まれた魔術師アイレスター・クロウリーは他の多くのオカルティスト
たちから黒魔術師とみなされていた。クロウリー主催の性と血に彩られた儀式は、どう控えめに
言っても、普通の白魔術師の概念に当てはまるものではない。ところが彼自身は黒魔術師
に対してはっきりと侮蔑を表明している。クロウリーが黒魔術師とみなすのは、クリスチャン・サイエンス
の作者、降霊術者、また彼が容認しない仲間のオカルティストである。
同様に、悪霊を呼びだしたり、人を殺したり、憎悪や破壊を招いたり、女性たちを自分に
恋するように仕向ける方法を教示するかつての呪文書や魔術書の著者たちも、自分たちの
ことを黒魔術師とは考えていなかった。実際、こうした呪文書には、神や天使への祈り、
断食や苦行、これ見よがしの信心を表す言葉が詰め込まれている。数ある呪文書の中でも
最も悪魔的とみなされている『オノリウスの教書』に記された主な方法の記述は、熱烈で真摯な
かみへの哀訴とミサの敬虔な言葉に満ち溢れている。そこには、一羽の黒い雄鳥両眼を抉り
出す方法、一頭の子羊を屠殺する方法もしるされている。それらは単に悪のレッテルを自分自
身にはろうとする傾向を誰しも持ち合わせていないからでも、悪魔を呼び出したり、敵を
殺したり、憎悪や破壊を正当化する都合のよい理由が容易に見つかるからでもない。魔術
師は宇宙の征服を目指す。それを成就するには、宇宙の中のあらゆるもの、善、悪、残酷
さ、慈悲、苦痛、快楽を含む全てのものの主人とならなければならない。魔術的思考の奥
深くに潜むものは、あらゆるものが宇宙の秩序の中に自らの場と機能を有し、あらゆる型
の経験が潜在的に報いをもたらすものであるという、異端的ではあるが気高い信念である。
魔術師が目指す完全なる人間とは、すべてを経験し征服した人間のことだ。この信念は神
と人間と宇宙の関係をめぐる黒魔術理論と密接につながっている。この統一された宇宙では、不可思議な力が作用し、それは海中の見えざる潮流のように、
事物の表面下で作用する。その影響は、われわれの周囲のいたるところに及んでいるが、
その真の性質を理解しうるものはわずかだ。宇宙とは巨大な人であり、人を突き動かす衝
動――愛、憎しみ、欲望、哀れみ、生存本能、支配欲――は、より大きなスケールで宇宙にも
見出せる。例えば、あらゆるものには、程度の差こそあれ、一定の「生命力」、生存本能の
強力なる力が備わっている。それは、自己保存の本能や生き残りたいという欲求――悲惨
で絶望的状況においてもなお生き延びるため自然に挑む戦い――、そして普遍的な、生殖
に対する欲求、自分の種を再生産することで世代を絶やすまいとする欲求などによく現れ
ている。また同時に、魔術師の目には、宇宙に宿る暴力的な破壊力も見える。その力は人
の持つ破壊的衝動と照応し、あらゆる蛮行、流血、戦争、暴動の背後に潜む、そうした力
には、多種多様な神や惑星の名がつけられている。生命力は太陽の力と呼ばれる。太陽の
光と熱が、地上のあらゆる生物の生存に必須のものだからだ。また暴力的な破壊力はロー
マ神話の軍神マルスの名で呼ばれる。
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