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パワプロ小説
36/40頁 (391件)
358: 06/03 20:06 ID:rE [sage]
 根性というものがどのように肉体に作用し、どのようにして身体能力を底上げするのか。玲奈は不思議でようがなかった。このスポーツ科学が発達した今日、一昔前の根性論によるシゴキというものはめっきり見られなくなった。それはとても喜ばしいことなのだが、しかしそもそも根性とはなんぞや。一昔前の偉大なる方々は、それを理解した上で根性だ根性だと声高に叫んでいたのだろうか。そうでないならば、もはや根性とはマイナスイオンレベルのあやふやさしか持たないものとしか思えない。
「あー……」
 だがもしも根性と言うものが、暑さや寒さすら超越できるものであるのだとしたら、今は、とてもその嘘科学にすがりたい思いだった。
 初夏の暑さは、屋根のあるベンチで座っていたって暑いものは暑い。しかもマネージャーが選手よりも楽をするわけにはいかないから、水分補給だって選手一同と同時に行なう。この炎天下の中でノックだフリーバッティングだの精を出すよりはよっぽどましだろうが、それでも暑いものは暑いのだ。
 そんな暑さを全面的にアピールするため、玲奈はたれパンダみたいにタレていた。
「あ゛つ゛い゛ー」
「玲奈ちゃん、顔がすごいことになってるよ……」
 器用な芸というものはツッコミが入ることで尚美しくなる。などと、美しさの欠片もない顔で思っても説得力に欠けるのだが。
「ああー、憂弥じゃないけど帰ってシャワー浴びて寝たいわ。何が悲しくてこの炎天下の中グラウンドなんざで青春潰してるんだろアタシ……」
「玲奈ちゃん……それって夏の高校野球全否定だよ」
 そう、これから先は高校野球の熱が過熱する一方の、夏。いよいよ真夏の甲子園の切符を賭けた球児たちの熱い戦いの火蓋が切って落とされるのである。勿論、三年生の先輩方は、最後に迎えた最後の大会。この高校生活の最後を見事飾ろうと、入る気合も例年以上、練習に対する意気込みも恐ろしいものがあった。
 エラーが出れば、
「グラウンド五周!!」
 三振すれば、
「素振り二百回!!」
 暴投でも投げようものなら、
「ダッシュ三十本!!」
 ミスに対する罰則すら異常だった。中学三年の頃には全く知らなかった光景が目の前に広がっている。その熱血っぷりは傍から見ていても充分に伝わってきた。
 上級生がそうして白熱の青春を繰り広げている中で、一年生は、まだ草むしりと球拾いをしていた。
 陽炎ににじんだ先でほそぼそと草むしりを続ける一年生達を眺めながら、玲奈は同情の溜め息をつく。
「確かに年功序列じゃ仕方がない……とはいえ、なんだか不憫よねー。練習すらさせてもらえないで」
「……そうだよね」
 この件に関しては戸美子もいくらか同意らしかった。
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