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パワプロ小説
37/40頁 (391件)
363: 06/21 02:34 ID:zk [sage]
 野球好きな父は、ようやく授かった我が子が女の子だと知ったとき、ちょっと残念だったらしい。息子と野球をする楽しみがなくなってしまったと悲しみに暮れて酒をあおる姿を、母が目撃している。
 だがそんな父の立ち直りっぷりは大したもので、いざ娘が生まれるとすっかり娘に夢中になり、気持ち悪いほど可愛がって育て終いには娘に野球をやらせた。そして困ったことに娘も野球にハマってしまったもんだからさぁ大変。絵本や歌が好きな箱入り娘に育てようと思っていたらしい母の企みは数年で崩壊。女の子は常に泥だらけで擦り傷切り傷の絶えないやんちゃな子に育ちましたとさ。
 その後、女の子は多くの悪友に囲まれ、それなりに楽しくスポーツと学校生活に明け暮れ、中学の終わりまで野球少女であり続けた。しかし高校野球の舞台で女の子は活躍できないということを知ると、女の子はマネージャーとして野球に携わることに決めた。ここまで付き合ってきた野球というスポーツに、こうなったらとことんまで付き合ってやろうと思ったのである。
 それに、自分の悪友はまだ野球を続けていくのだ。そんな中で、自分だけが先にドロップアウトしてしまうのは格好悪い。負けず嫌いな性格がそうさせた。

 けたたましい音で、携帯電話が鳴り響く。

 玲奈は布団の中から手を伸ばして携帯を掴むと、目覚まし代わりであるボンジョヴィのハブアナイスデイを止めた。やはり朝一はロックに限る。
 のそりと起き上がって時計を確認。六時丁度。いたっていつも通り。欠伸と背伸びを同時にして身体に酸素を送り込むと、玲奈は自室を出てリビングへと向かった。
「おはよー」
 リビングに入ると、机でコーヒーを飲みながら新聞に目を通している父の、向かい側の席に座る。玲奈の定位置だ。
「またそんな格好で寝てたのか。最近寒いんだから風邪引くぞ」
 下着姿を父に見咎められる。確かにここのところ明け方は妙に冷え込むのでまだ毛布に頼っているところはある。しかし夜に寝付くときは暑くて仕方がないのだ。薄着は快眠を得るための不可抗力である。
「今日はタコさん何個いれる?」
「あー……三つ」
 キッチンに立って朝食及び玲奈の弁当の準備をしている母が尋ねてくる。タコさんというのはいわゆるタコさんウィンナーのことで、玲奈の大好物の一つだ。アレが入っていない弁当など弁当に値しない。小学校の頃に一度、遠足に持っていった弁当にタコさんウィンナーが入っておらず、絶望した挙句弁当に殆ど手をつけずに持ち帰ったことがある。勿論、その時はこっぴどく怒られたのだけれど。
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