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パワプロ小説
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367: 06/21 02:37 [sage]
 妙にキザったらしい中性的な声で、名前を呼ばれた。一瞬硬直したあとで振り向くと、教室の後ろのドアのところに、一人の男子が立っている。制服は着ているので、ウチの男子生徒であることは間違いなさそうだ。背はスラリとして高く足はモデルのように長く、顔も間違いなく美男子。そんなアイドルみたいな男子が優しい微笑でこちらを見つめてきているのだから、女子ならば赤面してときめいて然りの場面。……なのだろうけど、生憎と玲奈は気持ち悪さと寒気しか感じなかった。
「……どちら様?」
 ひきつる口をなんとか動かして質問すると、美男子A(仮)はフッ……とすかした笑みを一つ。玲奈の全身に、ぞわわっと鳥肌が立った。
「これは失礼。自己紹介が遅れてしまった。オレは沢内彰。隣のクラスの男子」
 細長い手足を流れるように動かして、玲奈の机へと歩いてくる沢内。その動きはさながらパリコレのモデルのよう。玲奈は吐き気をなんとか堪えた。
「突然だけど……」
 風に舞うような柔らかい髪を揺らして、沢内はこちらの手をひしと握り、瞳を覗き込んできた。
「オレと付き合ってくれ」
「……………………は?」
 気持ち悪さと嫌悪感で既にこちらの脳は限界だというのに、ダメ押しのように投げかけられる一言。玲奈はもうそろそろホワイトアウトしそうな思考の中で、精一杯疑問符を浮かべた。
「いみが、わかり、ません」
「君はとても可憐だ。化粧やアクセサリーに頼ることなく、髪も黒く美しい。真面目で清楚、それでいて健康的な表情。性格だって美人だ。大和撫子、そう呼べる女性に、オレは生まれて初めて出会った。君こそ、オレの女神に相応しい……」
 歯が浮くような台詞とはこういうもののことを言うのだろう。小、中と野球部で精神力と忍耐力を磨き続けた玲奈とは言えど、流石にこれは強烈過ぎた。既に頭の思考回路が追いつかず、目の前の人物に対して、とても短絡的な結論を出そうとしている。
 こいつは変態だ。
 はい正解。
「オレが自分から告白なんて真似をしたのは、これが初めてだ。玲奈さん、君にはそれだけの魅力がある。オレは、君を好きになってしまった……この想いに、応えてくれないか」
「あー、せっかくだけどおことわりします」
 素敵な棒読み。
 ちゃんと答えたつもりだったのに、変態(仮)にとってはあまりに予想外な反応だったらしい。しばらく「え?」という表情で固まって、それから焦りを隠して言葉をつなげる。
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