[*]前 次[#] [0]戻 [4]履歴
[1]最新 [2]最初 ▼[3]コメント欄
64:藍梅ひらる 07/18 18:28 [sage]
19
イソギンチャン「よ、よくも私の大切な口を! 貴様、許さん!」
イソギンチャンは、下の口からの出血を確認すると自我を失ってしまったようであった。縦横無尽に空を切り裂くような動きで一つの触手が舞うと、次に狙いを定めるように先端の鋭い部分が標的に向け 構えられる。
ミミ「ねぇ、シェシェ。あいつ、やばいよ。」
シェシェ「こら! 何やってるの。そいつは、大切な人質なのよ。正気に戻りなさい。」
しかし、そんな声もイソギンチャンには届いていないようだった。向けられた鋭い触手が放たれると、ヒッポ目掛け襲う。
背後からの殺気を感じ 走りながら後ろを振り向くヒッポの目に、迫り来る凶器が映った。
ヒッポ「う、うわぁー」 思わず声をあげ、立ち止まる。どうしようかと考える間もないほどに、それはもう すぐそばまで接近していた。ヒッポはもう どうすることもできず立ち尽くすのみで、突き刺さる瞬間 目をつむってしまう。
…その直後、勢いよく突かれる音と共に、 ヒッポは最悪の場合 生命の終わりを予感する。しかし 何故か、身体に突き刺さった感触が一切なく、ましてや痛みさえも感じない。そんな矛盾さに疑問を感じ 恐る恐る目を開けると、その眼前で起きている光景に驚愕してしまう。これが、夢であることを願ってしまいたくなるほどに、劇的で悲惨な現実だった。
ヒッポ「ユ、ユーリさん!?」 あまりにも思い掛けない状況に、それ以上 なんて声を掛けたらいいのか戸惑い、言葉が詰まる。
殺人の意思を持った 迫り来る触手の前に、ヒッポを庇おうと瞬時移動してきたユーリ。その胸には深々と、金属のような光沢を持った触手の先が突き刺さっている。しかも その触手の内部にて毒が送り込まれるような動きがあり、それは外から見ていても容易に分かるほど大きな律動だった。それでもユーリは最後の力を振り絞るように、二つの手の内にてエネルギーを生み出すと それをイソギンチャン目掛けて放った。
イソギンチャン「うぎや〜〜!」 イソギンチャンの最期だった。悲鳴と共に、木っ端微塵に吹き飛んでしまった。そして その後、ユーリも膝を折り 崩れ落ちてしまう。
ヒッポは慌てて 倒れそうになるユーリを支える為、手を伸ばす。ヒッポの腕の中で、ユーリは苦しそうに呼吸を繰り返している。胸に突き刺さった触手は もう抜け落ちてはいるが、その部分は滲むほどに濡れ 衣服もそこだけ濃く変色していた。
ヒッポ「ユーリさん!しっかり!」 そして、少しだけ腕に力を込める。
こんな結末を迎えたのは 自分のせいだと思った。もう少し考えて行動していれば、こんなことにはなっていなかっただろう。ユーリを助けたい一心で ユーリの元へ駆け付けて どうしようとしていたのだろう。こんな不甲斐ない行動が、ユーリを危険な行動に走らせる きっかけとなってしまったことが悔やまれた。ユーリの容態から、もう絶望的だと悟ったヒッポは こらえきれず涙をこぼした。
ユーリ「ヒッポさん…、ごめんなさい。少し無茶…しすぎたのかも…。せっかく、もっと一緒の時間を過ごしたいって言って下さったのに…。」
ヒッポは そんな彼女を安心させようと、優しく手を握り締めた。もう こんな行為にて、ユーリを励ますことしかできない。
ユーリは今までにない 穏やかな表情で、ヒッポの顔を見続けていた…。
[*]前 次[#]
▲[6]上に [8]最新レス [7]ピク一覧