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591: 05/12 06:33
朝、目が覚めた苑子は辺りを見回した。
「あれ?確か1階で寝てた筈だし、いつの間に自分の部屋に戻ったんだろう。」
しかし苑子はそこが自分の部屋ではないことに気が付いた。
天井が異常に低い。そして、なぜか上の階へ通じる階段がある。
「まだ夢を見ているんだろうか?」
苑子が布団に潜ろうとしたその時、「バタン!」とどこかで扉の閉まるような音がした。
苑子が恐る恐る歩み寄ってみると、梯子の上から笑い声が漏れるのが聞こえる。
それは紛れも無い両親の声だった。
「なあに、1週間に1度ぐらいは差し入れてやるさ。」
父が言った。その時、
「あ、依子!」
母親は泣きながら玄関に駆け寄った。
「今までどこ言ってたんだ?心配してたんだぞ。」
「そうよ。どれだけ探したと思ってるの!」
「ごめん…お父さん…お母さん…」
母は依子をぎゅっと抱きしめた。
「隣の方は?誰なの?」
「お母さん、お父さん。私、この人と付き合っているの…」
「そうなの?」
母が男の顔を見ると20代半ば頃の男は会釈を返した。
「私、今度この人と結婚しようと思う。」それから数年後、朝は夫を送り出し家事に育児に忙しい依子の姿があった。
「若いのにしっかりしている。」
と近所からはすっかり慕われ充実した毎日を送っていた。
ある日、子どもを連れて公園に来ていた依子は尋ねられた。
「あなた、お姉さん居たわねえ…引きこもりの!今、どうしてるの?」
依子は少し戸惑った顔をして言った。
「姉貴は数年前に家出したきり帰ってきてないよ。」
(完結)
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