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苑子応援SSスレ next1
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39: 06/25 12:12 [sage]
ある日、コンビニで弁当を買って帰る途中、木下は小学校低学年くらいの娘を連れた同級生に出会った。
気まずくなって急ぎ足になると、女の子が突然木下に、おじさんと声をかけた。
なんだろうと思って振り返ると、女の子が財布を持ってこっちを見ている。
「これ、落し物。」
「ああ、どうも。」
赤面しながら女の子の小さな手から財布を受け取った。
「どういたしまして。」
異質なオーラを放つ木下に怯えながらも礼儀正しく挨拶をしてお辞儀をする娘を見た木下は、昔付き合っていた(と、思い込んでいた)豚女を思い出した。
あいつなら、こんなことは絶対に言わないだろう。
それどころか、拾ってやったのだからお礼するのが当然だと子供のように喚き散らすだろう。財布の中身を全部かっさらうかもしれない。
こんなに小さな女の子でも出来ることがあの豚女には出来ないのだ。と、自分もその「豚女」と何ら変わらない人種である事を棚に上げて木下は思った。
「おじさん…?」
可愛い声に我に返ると、女の子が首をかしげて不審者を見るような目で木下の顔を見ていた。
「あ、いや、ありがとうね。」
そう言うと木下は立ち上がり、哀れんだような顔を木下に向けている同級生に頭を下げると涙目で顔を真っ赤にしながら小走りで家に向かった。
同級生は娘に「変な人に話かけたらダメだよ」と注意した。
その言葉が木下の耳に届いたのか、それとも家庭を持ち、幸せに暮らしている同級生と比べて惨めすぎる自身の人生を悲観してか、木下は顔をグシャグシャにして泣きわめきながら走り続けた。
今にも雨が降り出しそうな午後であった。

終わり
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