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パワプロ小説2
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18: 01/19 00:33 [sage]
 猪狩守と紅咲憂弥。果たしてどちらが上か。考えただけで、誠也は身震いした。
 猪狩守の恐ろしさは、その速球と変化球、ありあまるスタミナにある。ピッチャーとしての条件はほぼ完璧であると言って良い。対する紅咲の恐ろしさは、そのいずれでもない。もっと別のモノ。それが何なのか、それは未だに計りかねている。
 それが今日この試合で発見できそうなのだ。
 もし紅咲がメッタ打ちを喰らうようなことがあれば、その時は紅咲のスタメンを諦めるまで。
 だがもし、あかつき相手に善戦したならば、実力主義に反対している二年も納得するだろう。
 プレイボールまであと一時間。
「ねぇ玲奈ちゃん」
「ん?」
「紅咲君眠そうだけど大丈夫なのかな……」
 言われて見やると、憂弥はいつもの調子で口元を隠しもせず大欠伸をかましていた。対戦校の目の前でやるのは失礼だからやめろとあれほど言い聞かせているのだが。
「ああー……ま、ほっときゃいいわよ大丈夫大丈夫」
 慣れていない人間が見ると妙に心配で不安になってくる。それが、憂弥のあのやる気が欠片も感じられない態度だ。しかし球場みたいな場所に来ると目立つだけで、あれは普段と全く同じ態度なのである。緊張しない性格なのはいいんだけれど、あまりに緊張が見られないのも考えものだ。
「あれはもう矯正不可能なあのバカの習性だから無視してていいわよ。はい、ぼさっとしてないで道具のチェック。汚れてたら磨く」
「はーい」
 戸美子と一緒にマネージャーの作業に戻る。その前に、玲奈はちらっと憂弥の方を見やった。
「高校初試合、頑張れよ」
 小さく呟く。その瞬間、中学の頃と変わらない背丈の憂弥が、どこか懐かしかった。
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