【ラスト】ファイアーエムブレム〜双竜の剣〜


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【ラスト】ファイアーエムブレム〜双竜の剣〜

1: 見習い筆騎士('-'*)Fireemblemthany:06/04/09 11:18 ID:pZWC9svY
今日で執筆し始めて丁度一周年を迎えます。
長いようで短い期間でしたが、このスレッドでようやく最後を迎えられそうです。

1スレ目:http://bbs.2ch2.net/test/read.cgi/emblem/1100605267/7-106
2スレ目:http://bbs.2ch2.net/test/read.cgi/emblem/1123296562/l50
3スレ目:http://bbs.2ch2.net/test/read.cgi/emblem/1136529217/l50

188: Chapter1−5:求めし者:08/05/03 13:28 ID:PM
でも時々、考える事は何か意味があるのかという気持ちにとり憑かれる事もあった。
こうやって考えている間にも、民は震え、飢えている。 ならば、早く傭兵に言って金を稼いだ方がどれだけ国に貢献できる事か。
だが、その気持ちは他ならぬ「なぜ」から出た、答えにならぬ答えによって打ち消されていた。
自分が変えたいと思っている手段で国に貢献しても、結局は自分や民に嘘をついていることになる。
それでは、自分は騎士の誓いを破ることになる。
イリアの民を助けたい。 傭兵によって金を稼ぐ事は、本当の意味でイリアの民を助けることにはならない。
これだけは、色々考える中で自分の確固とした意識に変わっていた。
それでも、自分の置かれた立場や、仲間の初陣などによる焦りから生じる葛藤に、彼女は苦しんでいた。
「でも・・・! やっぱり分かんないよ! 頭では分かってる・・・。 でも!」
「そんなにやりたけりゃ、好きにしな! その代わり、何があってもあんた自身で責任は取るんだよ。 私は知らないからね。
あんたは私や団長が、あんたに何を期待しているか、何を想っているか、全く分かっていない。
もう少し人の心が分かるヤツだと思っていたけど、見損なったね!」
頭を抱えて悩むシャニーへ、レイサは一言言い放つと向こうへ行ってしまった。
部隊長の居なくなった新人部隊は、どうすればいいのか分からなくて動揺する新人達が、シャニーの周りに集まっていた。
レイサを怒らせてしまった。 その罪悪感がシャニーを押しつぶしそうになるが
それを周りの仲間達が励ましてくれる。 それに加えてアルマも寄ってきた。
「お前があそこまで言うとは思わなかった。 でも、これでれんしゅう稽古ができるじゃないか。」
しかし、シャニーは下を向いていた。
分かっている。 レイサや姉が、自分に何を期待しているかぐらいは。
実戦に出る前にもっと色々学んで、人間として大きくなって欲しい・・・そうに決まっている。
そうでもなければ、人手不足なのにわざわざ新人部隊へ配属して、稼げる金を溝へ捨てるような真似はしないだろう。
それは分かっている。 だが、彼女の心はまだ未熟だった。
人の期待に応えるより、自分の焦りや葛藤が表に出てしまっていたのだった。
そして、レイサに突き放されて、うすうす気付いていたそれが嫌と言うほど自分を苦しめる。
いつも、やってから後悔する。 どうしていつも自分はこうなのだろう。 未熟な自分に嫌気が差した。
そんなシャニーを、横目に、アルマは他の新人達に向かって話しかけた。
「邪魔者は居なくなったんだ。 さ、早く稽古を始めようじゃないか。 強くなる為にね。
強くなって、早く上の部隊に行きたいヤツは・・・私と一緒に練習しようじゃないか。
もっとも、私の稽古についてくることが出来るならばの話だけど。」
皆は、どういう自信過剰なヤツだと思った。
だが、皆も早く上達したかったし、何よりアルマの実力については
一人で練習する様子を見ても明らかだった。
皆は新たな“部隊長”の指示に疑念を抱きながらも、力を求めついていった。
「シャニー、行こうよ。 シャニーは悪くないよ。」
シャニーも他の隊員に連れられ、アルマのあとを追った。
追えば追うほど遠のいていく答えを追い、自らの心の中で死に絶えた何かに気付かぬまま。

そのあと、レイサが部隊を見に来る事はなかった。
稽古中、誰もいない木の上を眺め、シャニーはポツリと独り言を漏らした。
「あたしは・・・なんてバカなんだろ。 なんて小さい人間なんだろ・・・。
皆あたしの事を気にかけて、期待してくれているのに・・・。 レイサさん、おねえちゃん、ごめんね。
あたしきっと、一を探し出して、十に辿り着いてみせるよ。 もっと・・・思慮を伴わせないとダメだよね。」
彼女は悔いていた。 親友が初陣を踏んだから、という短絡的な理由で早く初陣を踏みたいと考えた自分を。
そして、レイサの言葉を思い出していた。
―剣を振らなければならなくなったときは、それが民の為のなのか良く考えろ―
民の為に剣を振るう・・・シャニーにとっては、傭兵すらも民の為に振る剣ではないようにも思えていた。
だが、これを否定すれば今のイリアはたちまち凍り付いてしまう。
再び、彼女は考えることの深みにはまっていた。
それでも、彼女は稽古を怠る事もしなかった。 いつか、民の為に剣を振るうときが来た時のために。
ただこの手から滑り落ちていく、そんな気持ちを振り払いながら。



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