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【長編】ファイアーエムブレム〜双竜の剣〜【小説】
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184:第二十一章:天空の黒騎士弐 12/29 10:27 ID:E1USl4sQ
セレナ達が村人達と打ち解けあっているころ、クラウドとシーナは吹雪の中、ようやくエデッサに到着する。馬と天馬を用いても、イリアの奥地まではこれだけの時間を要する。
「うー、さぶっ。シーナ、お前よくこんな中を天馬で飛んでいられるな。」
「さ、寒くなんか、な、ないもん。 兄ちゃんが・・・弱いだ、だけだよ」
シーナが空中から下降してきて言う。唇は紫色だし、体中が震えている。やせ我慢をしている事は誰が見たって分かる。
「我慢するなよ。まったく、降りて来いよ。」
シーナは兄に言われるままに降りてきた。すると、クラウドがシーナを抱いた。それにシーナが反発する。
「うわっ、何するのよ!」
払いのけられたクラウドのほうが驚いた。
「何で嫌がるんだよ。寒いんだからくっついたほうがいいじゃねーか。」
「いいの! 私は別に寒くなんかないもんね!」
やたら元気に見せるようにして王都内を歩き出す。兄だと分かっていてもやっぱり異性。どうしても意識してしまう。当のクラウドのほうは、全くそういうものはないようだが。
「俺は寒いんだよー。あー、セレナがいれば押し競饅頭でもするのにさぁ・・・。」
「ホンット、兄ちゃんってデリカシーに欠けるよね! 早く宿探そうよ。」
吹雪いて来たためか、町の中に人影はちらほらとしか見えない。だが、その見る人はどの人も、温かそうな毛皮のコートにブーツを着込んでいる。この前追い出しを喰らった村の人間達より、かなり裕福そうである事が、見た目からも分かる。
「おい、そんな格好で寒くないのか? 若いって良いよなぁ。・・・ガクガク。」
見張りの巡回兵が、シーナたちを見つけて話しかけてくる。やはり同族には直ぐに心を許すようである。
「それがさぁ、俺たち傭兵として各地を回ってて・・・まさかこれほどまでに寒いとは。」
クラウドがまるで親友感覚で返す。見知らぬ人と話す際にはちょっと警戒してしまうシーナとは対照的に、クラウドは誰とでも友達感覚だった。
「ここの寒さは格別だからな。早く宿探さないと凍え死ぬぞ?」
巡回兵はそういい残して去っていった。シーナの震えが先ほどより一層酷くなる。吹雪の中、天馬で飛んでいた為に、冷えはクラウドより酷かった。
「おいおい、大丈夫かよ。・・・無理するなって。」
クラウドがもう一回シーナを包んで歩き出す。もう今度は抵抗できなかった。寒くて体が動かなかっただけでだと、シーナは自分に言い聞かせた。しかし、実際は違った。何となく、いつまでもこうしていたいと言う気持ちが、心の奥底にはあった。
「・・・デリカシーにかけるんだから。」
二人はようやく宿を見つけ出し、その中に入る。中は暖炉で火が赤々と燃え上がり、温かく保たれていた。まるで地獄から天国に上ったような感覚が二人を襲う。
そんな束の間の幸せもシーナの声で一気に吹き飛ぶ。
「えー!? 満席でシングルしか空いてない!?」
イリアは農作物が取れず、他の地域との取引が多い。宿も多くの商人が利用する。殊の外冬は、それら商人がもたらす食料によって、イリアは何とか生き延びる。そのため、宿は商人でいっぱいらしかった。
「・・・仕方ねぇよ。外で凍え死ぬよりはマシだ。」
クラウドがそのまま料金を支払い、部屋に入っていく。シーナも仕方なくその後を追う。
「今日は吹雪いてるし、もう遅いから情報収集は明日からにしようぜ。」
クラウドは外套を脱ぎ、それに付いた雪を払いながらシーナに言った。シーナもロングブーツを脱ぎ捨て、ベッドの上に寝転がっている。
「言っとくけど、ベッドは私のものだからね!」
「へいへい。お前さ、そうやって俺と二人きりでいるときみたいに振舞ってたほうが可愛いぜ? 外にいるとやたら堅苦しそうに振舞ってるけどよ。」
兄のその言葉にシーナはドキッとしてしまう。特にそれが、意識した相手だと尚更だ。
「やっぱりさっき抱きついてたのも下心があったんだな! 兄ちゃんてやっぱサイテー!」
「??」
クラウドは何故妹にサイテー呼ばわりされるのか分からなかった。思ったことを言ったまでなのに。・・・シーナは可愛いと言われるのが嫌いなのか?
「あー、わかった。悪かったよ。」
「・・・。」

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