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【長編】ファイアーエムブレム〜双竜の剣〜【小説】
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187: 01/04 08:42 ID:gAExt6/c [あけましておめでとう!]
「私達、今エデッサに宿とって仕事探しているの。その合間にお城でも見物しようかと思って・・・。」
シーナが慌ててその場を取り繕う。その様子を見て、レオンは呆れた様に言った。
「やれやれ・・・傭兵がこんなご時世に観光気取りか。まったくおかしい世の中になったものだ。」
「そうだよな。俺もおかしいと思うぜ。」
クラウドのその言葉に、レオンが少し睨みながら訊ねた。
「・・・何がだ?」
シーナは慌てて兄の口を押さえようとしたが遅かった。彼は睨まれても動じることなく言い返した。
「こんな、差別と迫害が許される世界が、だよ。ここの統治者も何やってんだか。」
シーナはヒヤッとした。とうとう恐れていたことがおきてしまったのだ。相手はその統治者、マチルダの実子なのである。こんな発言が許されるわけがない。シーナは兄を殴った。
「いってー! 何するんだよ、シーナ。」
「バカね、劣悪種を差別して何が悪いのよ。おかしいのは兄ちゃんの頭よ! 竜騎士様。どうかお願いです。しっかり説教しておくので今回ばかりは・・・。」
「?? シーナ?」
シーナは何とかその場を取り繕うと必死だ。このままでは捕まってしまう。しかし、レオンから帰ってきた言葉は、シーナが予想していたものとは違った。
「・・・そうだな。俺もおかしいと思う。少しは骨のあるヤツもいるものだな。この頃は、保身を考えて傭兵と言う身分にすがっているだけのヤツが多いからな。」
「そう思っているのに、何でこんな酷い事をし続けているんだよ!」
クラウドが続けてレオンに言った。レオンは暫く目を瞑り考え込んでいたが、目を開けるとクラウドに言い返した。
「・・・俺だって変えたいと思っている。・・・だが・・・。」
レオンはまた目を瞑った。そして、横にいた部下に声をかけ、何か指図している。それが終ると、また二人に話しかけてきた。
「知り合いのよしみで案内人をつけてやる。王都の観光には都合がいいだろう。早く行け。ここにいると、不審な目で見られるぞ。」
そう言い残すと、レオンは漆黒の飛竜を駆り、城の方へと戻っていった。それを見届けると、案内人に抜擢された天馬騎士が愚痴るように言った。
「まったく・・・劣悪種の分際で私に指図だなんて・・・マチルダ様も何を考えていらっしゃるのかしら。」
その言葉にクラウドは何か引っかかるものを感じた。・・・劣悪種? あいつは人間?
「なぁ、姉ちゃん。あのレオンってヤツは人間なのかよ?」
「えぇ、そうよ。前の戦争での遺児らしいわ。どうやらマルテを扱う事のできる、選ばれた人間らしいわ。だけど、だからって劣悪種を自分の子として育てるなんて・・・。忠誠を誓うマチルダ様相手でも信じられないわ。私なら即殺してるわ。」
「へぇ・・・。 遺児を育てるなんて、実は根は優しい人なのか?・・・いや、でも俺の祖父母を殺したヤツだしな・・・。」
そんなクラウドに呆れながらシーナが教えてやる。
「兄ちゃんってホント人を良い様にしか見ないわね。神将器の力を使いたかったからに決まってるでしょ? つまり利用されてるだけ。」
「正解。あなたは少しは頭が切れるようね。まぁ、レオンはマチルダ様の事を本当の母親と信じ込んで、それ故に言いなりだけどね。劣悪種が優良種だと思い込んで同士を殺すなんて。あはは・・・流石劣悪種ね!」
その天馬騎士の言葉にクラウドは頭に血が上りそうになったが、何とか堪えて、その天馬騎士に言ってやった。
「俺らだって勝手に優良種だと思い込んで、勝手に劣悪種と決め込んだ相手を殺してるんだから変わりないぜ。」
「何?! それはメリアレーゼ様を侮辱しているのか!?」
シーナはまた雲行きが怪しくなってきたと思った。もう得るべき情報も得たし、これ以上王都に留まっていても危険が増すだけだ。・・・兄という危険要素と一緒に居る限り・・・。
「あ、急用を思い出しました。案内していただけるようでしたが残念です。それじゃあ!」
そう言うとシーナは天馬を全速力で飛ばした。相手は出だしに遅れて追いつけそうに無いと悟ったのか、途中まで追いかけてやめてしまった。スピードの乗った天馬に追いつくことは困難を極める事だ。

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