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パワプロ小説
36/40頁 (391件)
351: 06/03 01:10 ID:rE [sage]
 02.夜露死苦米毘威 中学三年の受験から解き放たれて自由になり、晴れて始まる高校生活。
 通いなれた通学路から、突然迷い込んでしまう新たな道。新しい環境、新しい雰囲気。
 そう、そこに待っているのは華々しいほどに胸躍る高校生活。
 一番下の学年から始まり、見上げてみる、大人な先輩の背中。そしてちょっと背伸びをする同級生たち。
 教室にはドキドキが。
 廊下にはトキメキが。
 校庭にはワクワクが。
 そして靴箱には、恋。
 屋上にも、恋。
 そして勿論、部活には……青春!
 そんなはずだったんだけど。
「おっっっっっっっそろしいほどに何も無いわよね」
「え、何が?」
「高校生としてのドキドキワクワクのあれやこれよ」
「あーないよねー」
 まぁ、ないならないで、どうでもいい話ではある。
 昼休みに教室の窓から校庭を眺めながら、玲奈は友人に語りかける。雲龍に入ってからできた友人で、名前を村戸美子という。共に雲龍野球部マネージャーとして先日入部し、これから苦楽を分かち合っていくだろう大事な友だ。だからと言って、こんな高校生活に対する失望までは共有したくもなかったのだが。
 二人して視線を落とした先には、野球部がジャージで昼練に励んでいる姿がある。
 正直なところ二人とも、かつて通っていたそれぞれの中学はそんなに部活を重視する校風でなかったため、こうして昼休みにも精力的に練習をする風景というものは珍しいものだった。涼しい教室でジュースを飲みながら眺める暑苦しいランニングの様子は、また格別である。
「がんばれー」
 高見の見物から投げかける、やる気のない応援。
 時は既に五月。入学して一ヶ月が経ち、そろそろ学校生活にも一定のサイクルが生まれ始め、環境にも馴染み始める頃。徐々に出来上がってきている友人関係が、それでもまだお互い猫を被って展開している教室内を見ながら、開け放した窓のサッシに寄りかかる。渇いた風が、首筋に心地良かった。
 教室にいる人間の顔を一つ一つ数えながら、名前を思い浮かべていく。が、名前と顔が一致した数は、全体の三割にも満たなかった。玲奈は自分の記憶力の無さに愕然とする。
「私ってこんなに物覚え悪かったかなー」
「ん?」
「いや、クラスの半分も名前覚え切れてないからさ」
「あはは、皆おんなじだよきっと」
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