パワプロ小説


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パワプロ小説

1: 名無しさん@パワプラー:06/04/03 14:15 ID:9./go036
エロではない

245: 名無しさん@パワプラー:09/05/02 01:34 ID:zE
「あなた……?」
「は、はるか、違うって! 怖いから、本当に怖いから!」
「ママこわいー?」
「まましゅきー」
「そーだよねーママすきだよねー」
 由佳をあやしつつ、禍々しい威圧感でもって樹を威嚇している妻はるか。黒い。オーラが黒い。数年前までの箱入り娘っぷりが微塵も感じられないその様子に、あおいは思わず笑い出した。
「あっはっはっは! ごめんごめん、からかいすぎた! もう、はるかってば本気にし過ぎ! 本当にからかいがいがあるよねぇ、はるかは」
「え、あっ……! も、もう、ひどいよあおいー」
「ごめんごめん、許して。したのはキスだけだから」
「…………え?」
「そ、そういえばさぁ!」
 慌てて話題を逸らす樹。その不自然さは、もはや清々しい。
「まだ今日、全然乗り物乗ってないじゃん、せっかくフリーパス買ったのにさ! ほら、由佳も遊びたいよねー」
「ゆか、おばたんとあそぶ!」
「かわいいいいい! あ、もう今日は一日ボクが由佳ちゃん連れまわすから! よっし、レッツメリーゴーランド! 由佳ちゃんおいでー」
 トテトテと一生懸命に走る由佳にトキメキつつ、中腰になってその手を引き、あおいが駆けて行く。樹とはるかも、歩いてそれに続いた。歳の離れた姉妹のように微笑ましい後姿に、思わず見入る。
 はるかのお腹の中にいるのが女の子だと知ったとき、樹はとても嬉しかった。それは男の子だったとしても同じことだったろうが、それでも、早川あおいという少女の成長を見続けていた樹にとって、女の子を授かるということはとても特別なことだったのだ。この子がどんな女の子に育つかは分からないし、育ち方を強制するつもりもない。自由に、自分の好きな事を見つけて、一生懸命に生きて欲しいと願うばかりだ。だが、それでも、ほんの少し、希望を言わせてもらうとすれば、野球をやってほしい。野球というスポーツの楽しさを知って、野球というスポーツを通じた仲間との成長を体感して欲しい。かつて自分や早川あおい、そして多くの高校球児がそうだったように。
 そして願わくば、その成長の中で最高の伴侶を得て欲しい。とりあえず樹は、娘が最愛の妻に似て生まれてきたことだけで幸せだった。
「あおいちゃんに、由佳の専属野球コーチを頼もうかな」
「あら、あなた、あの子に野球やらせるつもり?」
「やってくれれば嬉しいなぁって思うだけだよ。子供とキャッチボールするのは父親の夢だからね」
「じゃ、次は男の子ですね」
「そうだなー……へ?」
「さっきの話、もっと詳しくお話しして下さいね。それから」
 妻の笑顔がとても美しく、そしてどこか邪悪に輝く。
「今夜は覚悟しておいて下さい」
「…………はい」
 思わず気圧されて頷いてしまう。意外と尻に敷かれているのが樹なのであった。
 と、前方が騒がしい。ふと見やると、油断した所為か、かの早川あおいであると周囲にバレた彼女が、集まってくる人だかりから逃げようともがいている。
 樹とはるかは大慌てで、とにかく我が子を救出せんとその渦中に割って入っていった。


                            終


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