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パワプロ小説
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365: 06/21 02:36 [sage]
 ドアを出ると、冷たい空気が全身を覆った。マンションの十四階ともなると、漂っている空気はよく冷えている。冬は勘弁してほしい環境であるが、初夏の朝にはなかなか有り難い。半分寝惚けていた身体が、ここに来てようやく一気に引き締まる。
 下に降りる為にエレベーターに乗ると、上の階に住んでいるおばさんが先に乗っていた。 省18
366: 06/21 02:36 [sage]
 涼しい風の吹き抜ける川の上、慣れた橋を渡る。冬は表面が凍りつき、夏は外灯にたかった虫の死骸で見るも無残なこの橋であるが、今の時期はわりと平和である。たまに上空から、ハトによ汚物爆撃があることだけを除けば。
 橋を抜けた後の道路沿いでは、よく通学バスなんかとすれ違う。この辺は小学校や中学校、高校が近辺にまとまってあるので、学生の年代は様々だ。まだ朝も早いゆえ、コンビニ以外に開いているお店と言えばパン屋さんぐらいである。いつもオヤツ代わりに帰り道に買うので、朝は匂いだけお腹いっぱいに吸い込んで、ウィンドウに並ぶ美味しそうなパンたちを見ないようにして通過する。 省13
367: 06/21 02:37 [sage]
 妙にキザったらしい中性的な声で、名前を呼ばれた。一瞬硬直したあとで振り向くと、教室の後ろのドアのところに、一人の男子が立っている。制服は着ているので、ウチの男子生徒であることは間違いなさそうだ。背はスラリとして高く足はモデルのように長く、顔も間違いなく美男子。そんなアイドルみたいな男子が優しい微笑でこちらを見つめてきているのだから、女子ならば赤面してときめいて然りの場面。……なのだろうけど、生憎と玲奈は気持ち悪さと寒気しか感じなかった。
「……どちら様?」 省19
368: 06/21 02:38 [sage]
「は、ハハハ、心配することはないよ。オレがここまで惚れてしまった女性は君が初めてだ。決して浮気なんかしない。確かに、オレに言い寄ってくる女は多いさ。でもそんな奴ら、君の魅力に比べては塵に等しい。……君が望むなら、モデルの仕事だって蹴るよ」
 ああ、そういえば隣のクラスに雑誌や広告のモデルとして活躍しているマヂイケてる男子がいるとは聞いていたけど、それがこの沢内のことなのか。タレント養成所で演劇の練習もしているとかで、それならこの芝居がかった物言いにもいくらか納得がいく。 省24
369: 06/21 02:39 [sage]
「聞いた?! 沢内君フラれちゃったんだって!」
「聞いた聞いた! すっごい落ち込んでたかわいそう!」 省35
370: 06/21 02:39 [sage]
「誰だろー気になるなー」
「戸美子、箸くわえたまま喋らない」 省23
371: 06/21 02:40 [sage]
 翌日の放課後、部活の前。一足先にグラウンドに到着した玲奈は、憂弥のストレッチを手伝っていた。憂弥が脚を伸ばして座り込みその背中を玲奈が押す、オーソドックスな柔軟体操である。投手の身体は、プロレスラーのような筋肉質なものではいけない。鞭のように柔らかくしなる身体でないと、速球は投げられないのだ。だからこういったストレッチは欠かせない。もっとも、憂弥の身体は既にぐにゃんぐにゃんに柔らかく、ゴム人形みたいで気持ち悪いぐらいなのだが。
「ねぇ、アンタ沢内君って人知ってる?」 省26
372: 06/21 02:41 [sage]
 玲奈が疑問符を浮かべると、それを受けた先輩はやはり微笑みのまま返答してくる。
「そう、面白いこと。なんと季節外れの新入部員さ。それも、以前スカウトして断られた人材だから、なかなか心が躍ってしまってね。これで雲龍はもっと強くなる」 省20
373: 06/21 02:42 [sage]
「もともとスポーツは万能らしくて、いろんな部活から誘いがあったようだが、やは全て断っていたらしい。そんな中で、我が野球部を選択してくれたとは、ありがたいことじゃないか」
 顔が良くてモデルをやっててスポーツ万能なんて、絵に描いたようなパーフェクト男子である。するとグラウンドが黄色い声援で囲まれることになるかも知れない。あまり好ましくない光景であるが、それでもここまで先輩が褒める人間が入部してくれるのだ、喜ばしいことだろう。とても、そう、とても。 省12
374: 06/21 02:43 [sage]
「沢内彰だ!」
「沢内彰です! よろしくお願いします!」 省25
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