【長編】ファイアーエムブレム〜双竜の剣〜【小説】


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【長編】ファイアーエムブレム〜双竜の剣〜【小説】

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1: 見習い筆騎士('-'*) 56J2s4XA :05/08/06 11:49 ID:E1USl4sQ
ということで別スレ建てさせてもらいました。
1部の24章までは以下のURLよりご覧いただけます。
http://bbs.2ch2.net/test/read.cgi/emblem/1100605267/7-106

何かご意見がございましたらその都度レスしていただけると幸いです。
まだ書き手としては本当に初心者なので、ご指摘は特にありがたくい頂戴したいと思います。

〜今までのあらすじ〜
ベルン動乱から4年、平和に向かって歩んでいたエレブ大陸で再びベルンが戦争を起こす。
その首謀者は女王ギネヴィア。兄ゼフィールの意志を継ぎ、世界を統合しようと企む。
その過程でロイの恋人シャニーがロイをかばって事実上戦死するが、竜族伝説の聖王ナーガの力によって復活を遂げる。
そしてエレブ大陸とどこかで繋がるという、別世界から来た神竜族クリスによって衝撃の事実を告げられる。
ギネヴィアは『ハーフ』と呼ばれる人間と竜族の混血の種族の一人に体を奪われている、と。その乗り移った目的はエレブ大陸の支配。
彼らは別世界では迫害され、こちらの世界に自分達の国を作ろうと乗り込んできたのであった。
ロイ達は大陸内で唯一ベルンの侵攻のないナバタの里から、エトルリア、イリアへと進軍していくのであった。


101: 見習い筆騎士('-'*) 56J2s4XA :05/10/30 19:41 ID:E1USl4sQ
お久しぶりです。
もう11月なんですね。執筆しはじめて7ヶ月・・・。時の流れが速いこと速いこと( ´∀`)
そして最終更新から早2週間以上と。モチベーションがががあq2うぇxrctyふじこ;。「@
この頃音楽サイトのオリジナル曲を聴きながら書くことがマイブーム(?)になりつつあります。
そこで、次を書く時は時々(特にボスクラスとの戦闘とかね、「あくまで」FEだし)執筆した時に用いた曲をメル欄に書いてみることにします。
それを聞きながら読めば臨場感もアップ・・・・するかな(-_−;)
この頃は会話以外の背景描写などに力を入れてみようとも思っているけど、それがなかなか難しい・・・。

102: 第九章:未知の地エレブ :05/10/30 21:46 ID:9sML7BIs
「メッセヨ、メッセヨ。」
「嫌だ! 放してよ!」
「ワレニ アダナスモノ、スベテ ソノ チカラヲ モッテ、メッセヨ。」
「嫌だ!私の体から出て行け!」
自分の意思に反して体が動く。剣を持つ手が震え、眼前に見える人達に足が勝手に向かっていく。
そして、やはり自分の意志とは正反対に手が勝手に剣を振り、今まで笑っていた人を斬り殺す。
「やめて!」
その言葉は口から発せられない。口から発せられるものは魔法の詠唱のみ。
「だめ! そんなことしたらみんなが・・・!」
「ワレニ アダナスモノ、スベテ ソノ チカラヲ モッテ、メッセヨ。」
自分が発した魔法が、真っ赤な火の玉になって人々に降り注ぐ。それらは大きな爆発を伴い、人々を塵に変える。
体が向きを変え、今度は自分の家族や知り合いに向かって同じように魔法を詠唱しだす。
「ワレニ アダナスモノ、スベテ ソノ チカラヲ モッテ、メッセヨ。」
「ダメー!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・セレナははっと目が覚めた。またあの夢だ。気付くと汗をびっしょりとかいている。これじゃ寝られない。・・・いや、またあんな夢を見ると思うと寝られない。でも、起きているとなぜか夢を実現しそうで怖い。寝ることも、起きている事も怖かった。
「・・・一体何なんだ。」
涼む為に部屋を出て甲板へ出た。外は星空がきれいで海風が心地よい。セレナは甲板の縁に立ち、涼みながら先ほどの夢を思い出していた。罪も無い人々を無差別に殺していく・・・。今思い出しても寒気がする。しかもそれを実行しているのが自分・・・。心当たりがあるから尚更怖い。
「母さん・・・。母さんも、こんな怖い夢に怯えながら、戦っていたのか・・・? こんな力、私に受け継いで本当に良かったのか・・・? なぁ・・・母さん。」
星空を見ながら、見たこともない母に尋ねていた。悩みなんてなさそうだとよく言われるが、そんなことはない。夢と、それを現実にしてしまいそうな力。それに悩まされていた。
「・・・お前は、その力をどう思っているのだ?」
突然の声にセレナは後ろを振り向いた。そこにはナーティが腕組みをして立っていた。長い銀髪が海風になびき、鋭い目つきと相まって近寄りがたい印象を与えている。
「どうって・・・。 あたしは、こんな力要らないよ。 こんな、破滅に導くような力。」
セレナの言葉を聞き、ナーティは鋭い目つきを更に細め、更に問うた。
「本当にそう思っているのか? その力が無ければ、お前がサンダースに勝つことは出来なかった。」
「そんなのわかってるよ! でも・・・あたしは、皆と同じように生まれたかった。それなのに・・・どうしてあたしだけ・・・。」
「容姿が違う事を気にしているのか?」
「それもそうだけど、それだけじゃない。他の人には無い強力な力とかさ。」
「容姿はお前が神竜だからだ。気にする事ではない。寧ろそのことでお前を咎める者がいるならば、その者こそ、咎められるべき存在だ。」
「咎められた事なんてないけど・・・やっぱ気になるよ。」
「自分に非がないと思うなら、堂々としていれば良い。容姿や生まれ、種族や身分。そういった自分の力ではどうにもならない事で非難する。・・・これは人の醜い部分だ。こういった者がいるから、差別は起こり、悲劇は繰り返される。」
「ナーティ・・・。」
「お前が旅に出たのは何の為だった? そういった悲劇の連鎖を断ち切る為ではなかったのか? 
「そうだよ・・・。あたしは、世界を救うために旅に出たんだ。」
「そのためには力が必要だ。お前が母親から受け継いだその力は、お前の為にあるのではない。力を持たない全ての者の為にあるのだ。それはお前が必要とする、しないという意思は関係ない。必要だからその力は備わっているのだ。力は自分の為ではなく、人々の為に使え。」
「でも、あたしは怖いんだ。いつ、力の暴走と止められなくて、夢が現実になるか・・・。」
セレナはナーティに、この頃見るあの悪夢の内容を話した。あのおぞましい、破壊の悪夢を。
「母さんも、こんな夢を見ながら、世界中を回ったのかな。」
「さぁな・・・。しかしそれは、きっと力を制御できない不安から来るものだろう。サンダースと戦っていた時も、力が暴走しかけていたな?」
「うん。体の中から、いつも以上に力が湧いて来て、頭の中がサンダースを、目の前の敵を斬り殺す事しか考えられなくなっていった。で、気付いたらサンダースは倒れてた。」


103: 手強い名無しさん :05/10/30 21:46 ID:9sML7BIs
「力を正しく使うも、悪に使うもお前次第だ。お前はもっと経験をつんで、その力を、自分の意思でコントロールできるようにならなければならない。」
「うん。」
「だから、悩むな。悩む暇があったら行動しろ。悩んでも何も変わらん。動いて反省する事はあっても・・・悩んで後悔する事だけは・・・するな。」
「あぁ、わかったよ。また、あんたに悩み事を聞いてもらったや。シーナとかにもめったに悩みなんていわないのに、どうしてあんたにはこう簡単に喋っちゃうかなぁ・・・。」
話しているうちに、船は漆黒の夜を抜け、暁の空に向かっていた。遠くには何か大きなものが見える。
「あーあ、結局寝られなかったや。ん・・・あれはなんだろ。」
「あれが・・・本土だ。昼ごろには上陸できるだろう。お前達の旅も、いよいよ本番というわけだ。」
「あれが噂に聞いたエレブ大陸! どんなところだろうなぁ! 早く見てぇ!」
先ほどまでの沈んだ顔はあっと今に消え去り、元の好奇心旺盛な少女の顔に戻っていた。今まで噂でしか聞いたことのなかった本土。その本土を、父さんや母さんが回ったように、自分達も回ることになる。
一体どんなところだろう。そう考えると、不安なんて消し飛んだ。
「ふっ・・・切り替えの早いヤツだ。さて・・・巫女をどう説得するかな・・・。」

皆が起きてきた。クラウドは寝癖でボサボサになった頭を掻きながら歯を磨いている。
「ふぁ〜あ、くそぅ・・・酔って昨日も寝られなかったぜ・・・。でも、このオンボロ海賊船とも今日でオサラバできるんだな。久しぶりに熟睡できそうだぜ・・・。」
そう言った途端、背後からギースが現れ、鼻唄を歌うクラウドの首を腕で締め上げる。
「てめぇ。狭いだのオンボロだの、ぐだぐだ文句ばかり言いやがって! やっぱりここで突き落としてやる!」
「ひゃめて・・・ゆるひて・・・もふいいましぇん・・・ぐえぇぇ・・。」
「クラウド、ギース殿に失礼だぞ。船を出して頂けただけでも感謝しなければ。それに、大陸ではもっと寝られなくなるぞ。」
「げほげほ・・・。えー! どういうことだよ、親父!」
「大陸はベルンが統治している。つまり回りは敵だらけということだ。我々はセレナ達を守らなければならない。だから、夜通しの番が必要だ。当然、番はお前にも手伝ってもらうからな。」
「とほほ・・・。海賊にはのされるし、俺の大切な睡眠時間も奪われるし、俺かわいそう。」
「あぁん? 誰が海賊だ! やっぱりてめぇはこうしてやる!」
「ぐ、ぐぇぇ・・・。」

「本土かぁ、一体どんな敵が待ち受けているんだろう。私達で敵うのかな。」
シーナが髪を結いながら言った。未熟な自分達が、強国相手に単身乗り込んでいく。どんな状況も自分達だけで解決しなければならない。それが果たして出来るのだろうか。
「今の大陸は、ハーフが牛耳っている。我々人間は、傭兵としてでなければまともに旅も出来ない。だから、シーナ。お前の出番は増えるだろう。」
ナーティが同じように濡れた髪を束ねながら寄ってくる。・・・いつの間に風呂に入ったのだろうか。
「どうして?」
「行けば分かる・・・。奴らは同族意識が強い。混血のお前なら、街中でも怪しまれる事はないだろう。」
「そっか。私頑張るよ。ということは、私達って傭兵団として各地を回るって事だね。」
「そう言う事だ。シーナをリーダーということにして、お前達は騎士見習いということにでもしておけば、よほどの事がない限り大丈夫だろう。」
「シーナが団長!? ・・・。」
セレナが横目でシーナを見る。自分やクラウドが見習いで、しかも親父を差し置いて妹が団長なんて・・・。
「な、何よ、姉ちゃん。建前は、でしょ?建前。」
「まったく・・・。自分がリーダーをやりたいというような顔だな。実際のリーダーはお前達だということを忘れるなよ。」
「わ、わかってるよ! あたしだってそこまで子供じゃないもんね!」
「やれやれ、どうだか。」
ナーティにからかわれてセレナが膨れ面をしている。アレンがそれをじっと見ていた。
「親父、どうしたんだよ。」
やっとギースから開放されたクラウドが父親の顔を見て不思議がる。
「ん・・・。いや。セレナ様のあの顔を見ていると、やはりシャニー様にそっくりだな、と。容姿も、性格も・・・。目元はロイ様似か・・・?」
「親父・・・。まだ後悔しているのか?」


104: 手強い名無しさん :05/10/30 21:46 ID:9sML7BIs
「・・・いや。俺は決心したのだ。この戦いで必ず勝利を収め、生きて祖国に帰る。そして姫様方とフェレを復興すると。それが、生き残った俺の果たすべき義務だ。もう後戻りは出来ない。クラウド、お前にも辛い思いをさせるかもしれないが、これがお前の父の生き様だ。・・・容赦してくれ。」
「辛いだなんて!・・・そりゃ、大好きな寝る事が出来なくなったり、色々あるけど・・・。俺は親父のその生き様に憧れて、騎士になることを望んだんだ。その選択に後悔はしてないぜ。」
アレンは息子に、かつての自分の姿を重ね合わせていた。そして、クリスを思い出す・・・。
「・・・そうか。よし、見っとも無い姿を見せていては天国の母さんにも申し訳が立たないだろう。上陸まで槍の稽古だ。さ、早く用意しろ。」
アレンはそういうと走っていってしまった。それを後ろから追うクラウド。
「親父・・・こんな船の上で稽古なんてやったらまた酔っちまうよ・・・。うっ、考えただけで吐き気が・・・。ちくしょう! 今度船に乗るときは豪華な客船がいいぜ・・・。」

船内で服を畳み、上陸の用意をするアリスの元に、シーナが寄ってきた。
「お姉ちゃん、私も手伝うよ。」
「あら、ありがとう。それにしても本土かぁ・・・何年ぶりかしら。」
「そっか。お姉ちゃんはイリアで暮らしていたんだもんね。早く帰りたい?」
「ええ・・・。」
アリスは服を畳む手を止め、何か思いふけるように下を向きながら相槌を打った。
その目は、何か思いつめたような何時もの優しい顔ではなかった。
「どうしたの?」
「うん・・・? いえ、なんでもないわ。もちろん早く帰りたいわね。 苦しんでいる民を救って、私の母や叔母、そしてたくさんの者達が守ろうとした祖国を一刻も早く取り返したい。そして、誰もが差別される事のない住みよい国を再建したい。それが・・・皆の願いだから。」
しかし、アリスの考えている事はそれだけではなかった。シーナには言わなかったがアリスは今でも覚えていた。自分を母様達の生家から叔母が連れ出す際、叔母は涙に濡れていた事を。それが何故か今でも分からなかった。イリアに行けば、それが分かるかもしれない。そう考えていた。
「うんうん。私のお母さんの故郷でもあるんだよね、イリアって。早く行ってみたい。」
「そのためにも、まずエトルリアを何とかしないとね。回りは敵だらけ。気を引き締めていきましょう。」
そんな会話をしていると、セレナが部屋に飛び込んできた。
「ねぇ! そろそろ上陸できるから用意しろってさ・・・ってもう準備してるのか。流石だね。」
「いつまでものんびり昼寝してるのは姉ちゃんだけだよ。はやく顔洗って準備しなよ。涎のあとがついてるぞ。」
「うわ、いけね・・・。気持ちいいとついつい。」
セレナが口元を拭きながら準備を始める。父から貰った家紋入りのマントはしっかり畳んであるが、それ以外はシワだらけだ。
「セレナ、しっかり畳んでおかなければダメよ。・・・よし、私が準備しておいてあげるから、あなた達は甲板に出て大陸を見てくると良いわ。」
「ありがとう、お姉ちゃん!」
二人とも跳ねる様に出て行った。元気一杯だ。
「ふふ、あの子達は元気ね。・・・母様、父様、それに叔母様。私は必ず祖国に帰ります。そして、皆が目指した真のイリアを創っていきます。だから、私やあの子達を見守っていてください。」
アリスは親子で映った映し絵の入ったペンダントを握りしめながら、天空のかなたにいる自分を大切にしてくれた人々に向かって祈りを捧げた。
甲板に出た双子は目の前に広がる陸を眺めていた。そこはエレブ大陸でもナバタ砂丘と呼ばれる、ナバタ砂漠に続く海岸線だった。
「いよいよだね、姉ちゃん。」
「あぁ、あたし達も、父さんや母さんのように世界を救っていくんだ。これが、最初の一歩なんだ。」
セレナ達はこうして、大きな一歩を踏み出す事になった。ロイ達がベルンの変の後、クリス達に助けられてナバタの里に流れ着き、そして進軍を開始してから18年。今度はその子供達が、自分達と同じ志を胸に再びナバタ砂漠を訪れる。世界を、いや世界を超え、全ての種族が平和に暮らせる秩序を作る為に。


105: 見習い筆騎士('-'*) 56J2s4XA :05/10/30 21:50 ID:9sML7BIs
ド━━━━━━(゚ロ゚;)━━━━━━ン

私としたことが、設定ミスを二つも犯していることに気が付きましたorz

アリスはキャラ紹介で魔道師となっていますが、プリーストでした。。
二つ目の訂正は、クレインとティトの子は女の子という風なっていたのですが、元の設定では男の子です。ごめんなさいm(_ _)m

106: 第十章:理想郷 :05/10/31 15:08 ID:E1USl4sQ
一行を乗せた船が無事に海岸へ到着した。
「よし、着いたぜ。」
「ギース殿、感謝します。必ずこの恩をお返しすべく、我々は世界を救済に回ります。」
アレンがギースに頭を下げる。そして、しっかり握手を交わした。
「礼なんていいってことよ。俺にはこのぐらいしか出来ねぇからな。こっちも嬉しいぜ。」
「しかし、このあと貴殿はどう為されるつもりなのだ?」
「どうって。そりゃまた船で西方に戻るぜ。戻ってエキドナたちを助けないとな。・・・俺も今回の航海で決めた。例えベルンが禁止していようが、俺は商船として航海を続ける。そして、西方の貧しい連中に物資を届けてやるんだ。今まで俺は何をビビッてたんだろうな。正しいと思うなら、堂々としていればいいんだよな。・・・例え法に反しようとも。」
「くー、やっぱ船長はカッコイイな。」
「へ、セレナ。お前の親父への借りは返したぜ。今度はお前が親に恩を返す番だ。」
「わかってる。絶対に世界を救って見せる。だから船長は西方をよろしくね。」
「おう、じゃ、がんばれよ!」
ギースは一行を海岸に残し、再び船で旅立っていった。一行はその姿が見えなくなるまで手を振っていた。
「行っちゃったね、ギースさん。」
「あぁ、あたしも船長みたいにカッコよくなるぞ。」
双子が改めて気合を入れなおし、歩みだす。
「例え法に反しようとも、正しいと思うなら堂々としていれば良い、か・・・。お前達もそう思っているかもしれないが、それには必要なものがある。何か分かるな?」
ナーティがそんな双子に警告する。何が大切で何を必要とするのか。それを明確にしなければ大義を掲げても骨抜きになってしまう。それではベルンだけではなく、周りのジョウシキを壊していかねばならない、いわゆる異端視される者にとっては目的が曖昧になりかねない。
「ああ。前、あんたに教えられた。あたしたちは、正しい事を主張する為にも、もっと力をつけて強くならなければいけないんだ。」
「うん。そしてその力は腕力だけじゃないんだよね。」
「そうだ。強い心も、大切な“力”だ。真実を見抜く心。どんな事にも動じない心。そして、万が一誤った判断を下した時にそれを認め、改めようとする心。そういった心の強さも、騎士として大切な“力”だ。・・・お前達はわかっているようだな。」
「当たり前だよ。もうあたしは決意したんだ。もう誰も、あたしの浅はかの考えで犠牲になる人を出さないって。犠牲を出さなくても勝てる方法はあるはず。・・・あたしはそれを頑張って考えるよ。」
「ふっ・・・。」
アレンはこの考えに、かつてのロイの言葉を思い出していた。犠牲を出しての勝利は勝利じゃない。だから、犠牲を出さなくて済む方法を考えるのだ、と。・・・やはり姫様方は、ロイ様の娘だ。
「ところで、姉ちゃん。姉ちゃんどこに行くつもりなの? エトルリアって北上しなきゃいけないんでしょ? なんで南下してるの?」
シーナがとうとう不思議がってずんずん前に進む姉に聞いた。エトルリアは、上陸地点からは北上した位置になるはず。なのに姉はどんどん南へ南へ歩いていたのである。
「え? あたしはあんたが歩き出したからそれにそっちが正しいのかと・・・。」
「えー!? 私も姉ちゃんについてきただけだよ??」
慌てる双子、周りは砂、砂、砂。何処を見ても青い空と黄金色の砂ばかり。一回迷えば復帰は難しい。
それでなくても二人はこの大陸に上陸してまだ1時間も経過していない、いわゆる「おのぼりさん」であるのに。
「お父さん、それにナーティさん! どうして教えてくれなかったのよ。」
「え、えっと。シーナ達が自信満々にずんずん進んでいるから予め進路を調べておいたのかと・・・。」
「・・・やれやれ。」
いきなり大ピンチの一行。とりあえず歩む事をやめて地図を確認しながら、進むべき進路を模索する。
「だーっ! 熱い! 熱すぎる! どうしてこんなに熱いんだよ! あぁ・・・焼きセレナになりそう!」
蒸し暑い事には西方育ちで慣れているセレナだが、砂漠の暑さは西方の暑さとは違うものだ。眩し過ぎる太陽の光が、カラカラに乾いた空を経て何の障害もなく大地に降り注ぎ、金色の砂がその光を跳ね返す。こんなところに立っていたら直ぐに体中の水という水が、跳ね返りの熱とともに空気中へ奪われそうだ。焼きセレナというより干しセレナである。
「砂漠なんだから仕方ないよ・・・。早く正しい道を探さないと・・・。」


107: 第十章:理想郷 :05/10/31 15:09 ID:E1USl4sQ
「うへぇ、船酔いの次は脱水症状のピンチかよ。俺こんなところで干物になりたくないぞ。」
「あづいー・・・。」
「ウルサイ事言わないの! ・・・あぁ、怒鳴ったらまた熱くなったわ・・・。」
そんな一行とは別に、ナバタの里を目指す二人の大男がいた。
「ねぇ、僕達迷子になったのかな、ラミス。」
「そうかもしれないね、ベリル。」
二人の大男は肩を寄せ合いながら更に話を続ける。二人はナバタ砂漠に住む山賊。力は強いが頭は弱い。今までもナバタ砂漠を渡る旅人を襲っては生計を立ててきた。そして、二人はこの前襲った行商人の持っていた古びた宝の地図をあてに、ナバタの里を目指していた。
「でも、隠れ里にあるという、とっておきのお宝は何としても手に入れたいね。ラミス。」
「だけど、このまま迷子になってミイラになっちゃうのはゴメンだよね、ベリル。」
「でも、お宝は何としても手に入れたいよね。ラミス。」
「ところで、あそこのいる人たちは行商キャラバンかな。ベリル。」
「だけど、みんな武器を持ってるね。ラミス。」
「じゃあ、行商キャラバンじゃなくて傭兵団だね。ベリル。」
「相手のほうが人数は多いし、僕達二人だけじゃ危ないね。ラミス。」
「でもあの人たち、北を指差してるし、きっと隠れ里に行くんだよね。ベリル。」
「あの人たちもお宝を狙ってるんだね、ラミス。」
「先を越されたら、僕達お宝を手に入れられなくなるね。ベリル。」
「じゃあ、あの人たちやっつけちゃおうか、ラミス。」
「でも、相手のほうが人数多いし、強そうな人もいるよ。ベリル。」
「じゃあ、仲間を連れてこようか、ラミス。」
「でも、仲間を連れてきたら、僕達の分け前が少なくなるよね。ベリル。」
「じゃあ、お宝を諦めるかい?ラミス。」
「あの人たちの後ろをついていくというのはどうだろう、ベリル。」
「それは名案だ。ラミス。」
ベリルと呼ばれている大男が、もう片方の男へ更に肩を寄せて言った。
「それで彼らが隠れ里に着いたら、僕達が宝物庫に先回りして、中身をいただいちゃえば良いんだよね。」
「そうさ、行こう。」
二人はセレナ達一行を岩陰に隠れながら尾行していくことに決めた。

「セレナ、地図をしっかり見ながら進むんだ。これ以上迷っていると、水が底をつく。」
アレンがセレナに警告する。遠足気分で好きに歩かれては命を落とす。
「わかってるよ。」
時刻は14時を回り、太陽の光は最高潮にギラギラと輝いている。汗をかいてもすぐに蒸発していってしまう。太陽光と、地面からの跳ね返りの光のダブルパンチで意識がもうろうとしてくる。
だんだんセレナ達も無口になってくる。こう熱くては、口も開くこともできない。
暫く進むと、それに加えて砂嵐まで巻き上がり始めた。
「うわ、目に砂が・・・! うへぇ口の中もじゃりじゃり・・・。」
「口を覆っておけ。・・・そろそろナバタの里が近くなってきた証拠だ。」
ナーティが布で口を押さえながら話す。ナバタの里は、かつて人竜戦役の時人と竜が手を携えて創ったいわば理想郷である。里人は、外部からの侵入を拒む為にナーガ神がこの砂嵐を引き起こしているのだと信じていた。実際、この砂嵐は季節関係なく吹き荒れ、外部の目から差と完全に隔離していた。
前の第一次ベルン動乱でその存在が明らかになって以降は、興味本位で訪れる冒険家が増えたが、それでもやはりこの砂嵐の前に立ち往生をせざるを得なかった。砂嵐の前に現れる幻影に惑わされ、いつの間にか砂漠をぐるぐる回ってしまうのだ。
「ここからは俺が先頭を行こう。」
アレンが先頭に出る。かつてロイと共にナバタの里に来た事があった。うろ覚えではあるが、里への正しい道は知っていた。しばらくすると、木々が見え、その向こうに巨大な建造物が見えてきた。
「ねぇ! あれは何?」
「あれが、ナバタの里だろう。」
里に近づくに連れ自然と砂嵐は収まり、視界がくっきりしてくる。そこには、オアシスや民家が並んでいた。・・・大陸最後の理想郷、ナバタの里である。
一行と二人(?)はその厳かな創りの里に入っていった。



108: 手強い名無しさん :05/11/01 13:02 ID:E1USl4sQ
里に入ったセレナ達は驚いた。こんな砂漠の中に、こんな集落があるとは。いや、それだけではない。
外は砂嵐が吹きすさぶ過酷な環境であったにもかかわらず、中は豊富な水をたたえる美しい光景が広がっていたのである。清浄で、静寂そして神秘的・・・まさに理想郷と呼ばれるに相応しい光景だ。
「す、すげー・・・。」
何時もは騒がしいセレナも、只々見入る事しかできない。しかし、このナバタの里が理想郷といわれる真の理由は、見た目の美しさだけではない。セレナ達はそれを知る事になる。
「・・・さてアレン殿、我々が長老と巫女に会って来よう。 セレナ、お前達は里の様子を見てくるが良い。この里が理想郷と言われる所以を知ることができるだろう。」
アレンとナーティは里の奥へと入っていた。ナバタの里は、外部からの来客をあまり良しとしない。それは、ここが種族を超えた共存の為の最後の砦であったからだった。
「よし、じゃ、見に行こうか。」
セレナ達が集落のほうへ歩いていく。そこにはさまざまな種族のものが住んでいる。人間、竜族、そして・・・ハーフ。しかし、彼らは大陸の他の地域と違い、いがみ合う事も、蔑むこともしていない。それは、彼らは皆キョウダイだからだ。大切な仲間だからであった。
「おや、またお客さんか。20年来誰も来なかったのに。騒がしいもんだな。」
村人の一人がセレナ達を見つけて物珍しそうに話しかける。どうやら自分達の前にも誰か来ていたらしい。
「こんにちは。突然の来訪をお許しください。それにしてもここは・・・皆がすごく仲が良いのですね。」
アリスが挨拶がてら村人に言う。ひどい差別が他の地域では繰り返されているのに。そこには笑顔が溢れ、ゆったりと時が流れていた。
「ああ。ここの人らは皆キョウダイだからな。人間も、竜族も、ハーフもみんな仲間だ。・・・むしろあんた達大陸の民のように、なんで種族が違うというだけでいがみ合うのかが俺には分からないね。」
そこに他の者も加わってきた。そのエーギルの波動は間違いなくハーフのものだ。
「そうだぜ。第一、ハーフっていうのは人間の血も竜族の血も混ざってる。自分と同じ血が半分は流れているのに、どうして差別なんか出来るのかねぇ。俺も同族だと思うと心が痛いよ。」
「あたしもそう思う。みんな大切な存在のはずなのに、どうして優劣が決められなきゃいけないんだ。こう思ってる。だから、世界を変えようと旅に出たんだ。あたしの父さんや母さんもそのために戦って命を落とした。あたし達はその意思を告ぐ。」
その言葉を聴き、村人達がセレナ達の顔をまじまじと覗く。そして言った。
「もしかして、あんたはロイ様の・・・?」
「そうだけど。」
「おお、英雄の再来か・・・? ロイ様には我々の巫女を救っていただいた。今までよそ者扱いしてすまなかった。しっかりおもてなししなければな。」
ロイの子孫と聞いて、村人達はセレナ達を歓迎する。こんな秘境にも、父さんの名は通っている。今更ながらに父さんは偉大な人だと、セレナ達は思った。
「ありがとう! じゃあ、村を一緒に回ってよ。」
セレナ達は村人と一緒に村の様子を見て回る。キレイな水を満々とたたえ、人々からは笑顔と笑い声が溢れていた。そして、そんな幸せな時間がゆったりと、ゆったりと流れる。まるで、他の地域に取り残されたように、そこは他の地域とは全く違う雰囲気を醸し出していた。
「元々この大陸も、ここのような場所で満たされていたんじゃ。皆が手と手を取り合って、嬉しい事も、悲しい事も分かち合う。それが・・・たった200.300年で変わってしまった。種族間でいがみ合い、欲に溺れた者同士による醜い争いが絶えない大陸に・・・。悲しい事じゃ。」
もう何歳になるのだろうか。ヨボヨボで足元も危うい。そんな老人がアレンに支えられながらセレナ達に近寄ってきた。
「じいさん・・・たった200年って・・・。」
「200年なんぞわしらにとっちゃたいしたことはないじゃろ。お姉ちゃんも竜族ならそのぐらいわかるだろうに。」
「あたしは竜石なんか持ってないもん。」
「なんと。・・・まぁ外であまりに長い時間を生きても辛いだけじゃ。時を共有できるものもおらんしの。」
「セレナ、失礼だぞ。このお方はこのナバタの里の長老様なんだ。この里の創設当時から生きていらっしゃる。」
「そうなんだ。ごめんなさい。じゃあ、お願いがあるの。ここに眠っているはずの神将器、それをあたし達に貸して頂きたいの。」


109: 手強い名無しさん :05/11/01 13:02 ID:E1USl4sQ
「フォルブレイズか・・・。あれはアトス様が平和の為に用いた。そなた達は何の為に神将器を?・・・人には過ぎた力。一歩誤れば平和どころか世界を暗転させる力を、そなた達は何に使うつもりなのじゃ?」
セレナ達は自分達の意思を長老に伝える。その理想をも超えた考えを。
「あたしたちは、この大陸を覆っている闇を吹き飛ばす。いや、大陸を超えて真の平和を目指す。種族間の差別とか、ベルンの暴挙。そういったものを止める。」
「私も同じ。・・・私はここを見て確信しました。真の平和って言うのは、一種族の為のものだけじゃない。みんなが笑って生きていける。そんな世界を私達は目指したい。そう思っています。」
双子の瞳をじっと見つめる。このまっすぐ物事を見つめる眼差しは・・・かつてのロイ・・・いやハルトムートそっくりだ。
「そうじゃな。じゃが、そなた達の考えは理想に過ぎん。それを理想止まりでなく、実現する為にはさまざまな壁が存在する事じゃろう。それに絶望したりするこもあるじゃろうて。」
「間違っていると思ったら、例え法に反していても貫く。・・・あたしはそう教えられたんだ。」
「それでも、お前さんがたでは心もとないのぉ。まだまだ弱々しいし。」
「私達は確かにまだ弱いかもしれません。でも、これから各地を回り、色々情報を集めながら、私達はがんばっていくつもりです。もう、これ以上大切な人たちを失いたくないから。もう、これ以上無意味な死を迎える人を増やしたくないから・・・。」
セレナやシーナに、アリスも続けた。
「例え私達一人ひとりの力は小さくても、集まればとても大きな力になります。かつてお母様から言われました。人々を照らす光というものは、たくさん集まってこそ。人もそれは同じ。一人では出来なくても、たくさん集まって協力すれば、できないことはない、と。私達には仲間がいます。まだまだ少ないですが、信頼できる仲間です。世界を回り、私達の考えを解いていけば、きっと共鳴してくれる人はいるはずです。」
長老は目を瞑り、じっとみなの声を聞いていた。身動き一つせず、息をしているかも分からないほどに。
「じいちゃん・・・? 寝てるの?」
「そうか。ではそなた達にフォルブレイズを貸し与えよう。フォルブレイズは水の神殿に・・・。」
そこまで長老が言った時、紫苑のような美しい紫の挑発を揺らし、巫女が走りよってきた。そばにはナーティもいる。
「どうした、ソフィーヤ。お前が走るとは珍しいの。」
「長老様・・・水の神殿に・・・賊が・・・。」
「な、なんだって!? セレナ、急ごう。フォルブレイズが危ない!」
クラウドがセレナより先に声をあげ、走っていった。セレナもそれを追う。
「アレン、ナーティ! 何をやってるんだよ! 急がないと!」
「あぁ、よし、ナーティ殿、急ごうか。あの仕掛けがある限る賊が取り出せるはずないが。」
「そうだな。ソフィーヤ殿、我々が賊を退ける。それまで貴女はここで待っていてくれ。」
「わかり・・・ました・・・。」
アレンに続き、ナーティが走り去ろうとしたところに、ソフィーヤがいつも以上に小さい声で言った。
「・・・さん、・・・ィさん。」
「ん?」
ナーティが立ち止まり、ソフィーヤが彼女に寄って話す。
「私は・・・何が正しくて・・・何が間違っているか・・・よくは・・・わかりません。でも・・・あなたのしていることは・・・正しいとは・・・思えません・・・。」
「・・・。」
ナーティは無言まま目をつぶった。そして首を横に振り、走り去っていった。
「ソフィーヤ、人見知りの激しいお前さんがあんな傭兵にお前から話しかけるとは珍しいの。知り合いか何かの?」
「いえ・・・そんなことは・・・ないです。」
「ふむ・・・。それにしてもあの傭兵、どこかで見た事があるような、ないような・・・。」
「いえ・・・多分・・・気のせいだと・・・思います。私も・・・初めて・・・会った人ですし・・・。」
「ふーむ。この頃ワシも物忘れが激しいからのぉ。そろそろ歳かもしれないわい。死ぬまでに・・・あの娘らが世界を変えてくれると良いが。死ぬ前に、世界中から笑顔が溢れる世界を見てみたいものよ。」
「・・・。」
長老とソフィーヤは走り去っていく一行を見送った。


110: 第十一章:大賢者アトスと「業火の理」 :05/11/01 22:01 ID:9sML7BIs
その頃水の神殿では、先ほどの賊二名が、必死にフォルブレイズの入った祭壇の扉をこじ開けようとしていた。
「おかしいね、ラミス。開かないよ。」
「呪文でも言うのかな、ベリル。」
「でも、そんなの知らないよね、ラミス。」
「うん。知らないよ。ベリル。」
「やっぱり、ぶっ壊すしかないのかな。ラミス。」
「手荒な事は嫌いだけど、仕方ないよね、ベリル。」
そう言いながら二人は、手にした巨大な戦斧を扉めがけて渾身の力で振り下ろす。しかし、扉は何か不思議な力に守られてビクともしない。
「お宝が僕達を嫌ってるのかな、ラミス。」
「僕達は閉じ込められてるお宝を助けてあげようと思ってるのに、酷いよね、ベリル。」
「善良な僕達の心を踏み躙るなんて、酷すぎるよね、ラミス。」
そんな会話をしていると、向こうから数名の駆ける足音が聞こえてきた。どうやら自分達が付いてきた傭兵団がこちらに向かっているようだった。焦る二人。
「ねぇねぇ、さっきの人たちがお宝を奪いに来たよ。ベリル。」
「あんな盗賊たちに奪われたら、お宝もかわいそうだよね、ラミス。」
「でも、このままじゃ僕達も危ないよね、ベリル。」
「じゃあ、このままお宝を諦めるかい、ラミス。」
「突然床がなくなったりしてずぶ濡れになったりしたんだ。そんな苦労をした僕達を、お宝が見捨てるわけないよ。戦おう、ベリル。」
「そうだね、正義の味方がやられるわけないもんね。ラミス。」

「おい、あまり急ぐな! ここには特別な仕掛けがあって一定期間ごとに床が・・・。」
アレンが叫んだ時にはもう遅かった。先を突っ走っていたクラウドとセレナの足元の床が突然、まるで水に溶けるかのように消えてしまう。
「うわっ?!」
その直後大きな水しぶきが上がり、クラウドが水面に浮かんできた。
「うへぇ・・・なんでこうなるんだよぉ・・・。」
セレナが空中から水面に降りてくる。セレナは落ちる間一髪に背中の翼を使って飛び上がったので水に落ちなかった。
「兄貴、大丈夫? 何で飛ばなかったのさ。」
「バカヤロウ! こんな鎧してて飛べるか! なぁ、岸まで連れてってくれよ。鎧が邪魔で泳げない。」
セレナが仕方なく兄を岸まで連れて行く。やっとの事で岸に上がったクラウドはすっかり水に濡れて服も鎧も重そうだ。
「まったく、何も考えずに突っ走るからだ。」
「親父に言われたくねぇよ・・・。」
「何か言ったか!? ・・・とにかく、ここはこういう仕掛けがあるから気をつけて進め。」
沈む床に翻弄されながらも、一行はようやく祭壇のある中央部までたどり着く。そこには大柄の男が二人、ハンマー片手に未だに扉をこじ開けようと奮闘していた。
「やっと着いたか・・・。」
「クラウド、一体何回落ちたら気がすむのだ。」
「うるせー! 1回も5回も変わんないだろ!? 親父だって1回落ちたくせに・・・。」
「・・・。」
「親子喧嘩は後にしたらどうだ? それよりあの賊どもを何とかしなければ。」
そういってナーティが前に出る。セレナも双剣を抜いて賊に向かっていく。
「ベリル、盗賊たちが来ちゃったよ!」
「しかたないね、やっつけちゃおうか、ラミス。」
「うん、そうだね。正義は必ず勝つんだもんね。」
「何こいつら・・・。大男同士が肩を寄せ合って・・・気持ち悪い。」
セレナがそう言ってちょっと引く。だが、逆に賊二人組みから攻めてきた。二人は細かい事は考えず、セレナ達を斧で叩き割る事しか考えていない。しかし、その一撃は驚異的で床に穴を開けるほどだ。
武器の相性的にはこちらのほうが優位であるはずなのだが、二人の息のあったコンビネーションの前になかなか決定打を出せずにいる。
「ちくしょう、なんだこいつら・・・。」
「よし、ベリル。僕達の必殺技を見せてやろう。」
「わかったよ、ラミス。」


111: 手強い名無しさん :05/11/01 22:01 ID:9sML7BIs
そういうと二人は巨体をものともせず、高く飛び上がった。
「いくよ! ベリルとラミスのラブラブダイナマイト!」
二人が斧を振り回しながら急降下してくる。それは真っ直ぐセレナを襲う。身軽なセレナならこのぐらい容易にかわせる・・・。セレナも相手の軌道を見て避ける体勢に入る。しかし
「ベリル、右だよ。」
「わかったよ、ラミス。」
二人は息の合った連携を店、セレナの回避を許さない。直撃は免れたが、衝撃でセレナは吹き飛ばされる。
「うわっ」
吹き飛ばされたセレナは何とか空中で態勢を取り戻す。回避したはずが、腕から少し血が出ていた。
「ふむ、あの二人なかなかやるようだな。」
ナーティは何時ものように静観している。アレンは慌てた。
「ナーティ殿! 今回も見ているだけなのですか! 今回は相手も強い。しっかり働いてください。」
ナーティは聞いているのかいないのか、剣は抜いたがまたセレナのほうを見て話しかけた。
「セレナ、これで分かっただろう。お前のように単独行動ばかりしていては強い相手には勝てないと。これからは皆と力を合わせることだな。」
言い終わると、やっと前に出た。そして、剣を構える。
「セレナ、私に続け。シーナ、お前は空中から遊撃するんだ。」
セレナがナーティに続こうとした。しかし、早い! セレナが気付いた時には既にナーティは賊の懐にもぐりこんでいた。そして、一気に斬り上げる。更にもう一人の賊の攻撃をひらりと避け、数発剣撃をお見舞いしている。・・・強い。
セレナも負けじと賊に飛び掛る。そして、シーナが空中から手槍で遊撃し、賊の的を絞らせない。
「この人たち強いよ、ベリル。」
「うーん、よし、じゃあもう一回必殺技だ。」
賊二人組みがまた先ほどの必殺技を繰り出す為に空中へ飛び上がった。
「セレナ、お前達は下がっていろ。」
ナーティがセレナ達を後ろに下げ、賊の落下地点に入る。そして、手を振り上げた。
「ねぇ! あれ何やってるの? あんなところにいたら・・・!」
シーナが慌てた。あんなところにいたら、二人の斧の直撃を受けてしまう。そうなれば一撃で昇天だ。
しかし、次の瞬間、セレナはナーティの周りの水のエーギルがざわめいている事に気づいた。
「出でよ! 蒼冷なる白銀の使徒、フィンブル!」
ナーティから、いや、ナーティの周りの水から発せられた鋭利な氷の槍が凄まじいスピードで賊を襲う。
その威力に、賊二人を為す術もなくその巨体を吹き飛ばされた。
「やっぱりお宝に見放されたのかな・・・、ラミス。」
「そんな・・・。正義の味方がやられるなんて・・・あんまりだよ、ベリル。」
賊がそのまま動かなくなった。セレナはただ驚くばかりであった。
「よし、賊は片付いた。巫女を呼びに行くとするか。」
そういうとナーティは元来た道を歩き出す。それをシーナやクラウドが追いかける。
「すごい! 剣技も魔法も凄い強い! やっぱりナーティさんってカッコイイね。」
「・・・そんなことはない。」
「照れちゃってー。」
懐くシーナを先に行かせ、クラウドがまたナーティに疑惑の目を向ける。
「なぁ、ナーティさんよ。」
「何だ?」
「さっきあんた、魔道書無しに魔法撃ってたよな。熟練の賢者でも難しいことを、傭兵のあんたがそう軽々しくやってのけるなんて。・・・あんた、本当に人間か?」
「ふっ、お前は私を怪しんでいるのか? 怪しいなら監視していればよかろう。案外、ぽろっと尻尾を出すかもしれないぞ。」
「仲間を怪しみたくはねぇけど、あんたはその・・・凄腕過ぎるからよ。」
「・・・ここは八神将の一人が祭られている。エーギルもその分豊富だ。その為だ。」
「・・・。」
「それより早く鼻水を拭け。主を守る騎士がそれでは見っとも無いぞ。」
慌てて鼻水を拭くクラウド。それ見てナーティは笑いながらソフィーヤの元へ向かった。
「・・・ちっ、話し逸らすなっつーの。 ・・・それにしても、さっきの戦い、なんかあいつが将みたいだったな。傭兵がセレナ達を指揮するなんて・・・。セレナ、しっかりしろよまったく。突っ込んでるだけじゃダメだろ・・・。」


112: 手強い名無しさん :05/11/03 12:45 ID:E1USl4sQ
暫くして、シーナたちがソフィーヤを連れて戻ってきた。
「フォルブレイズかぁ・・・一体どんな魔道書なんだろうな! 早くみたい!」
セレナがわくわくしながら言う。
「別名『業火の理』。天まで昇るその灼熱は、竜のブレスをも焦がし、各地の火山を共鳴させたと言う。」
ナーティが続けた。伝説上の話ではあるが、それほどの力を秘めた魔道書であることを示している。
「そうです・・・。では・・・扉を・・・開けます。」
ソフィーヤが扉に手をかざし、ゆっくりと目を閉じる。すると、今まで賊たちが、その自慢の腕力をもってしてもびくともしなかった扉が、ゆっくり音を立てずに水にすべるかのように滑らかに開いていった。
セレナ達はその腕力ではない、不思議な力にただ見ているだけしか出来なかった。
「すげー・・・。なぁ、巫女さん、どうやって開けたの? ねぇねぇ!」
「姉ちゃん、巫女さん困ってるよ。やめてあげなよ。」
「・・・アトス様に・・・話しかけたのです・・・。神将器を・・・必要と・・・している・・・人が・・・いると・・・。」
「へ? アトス様って!・・・誰だっけ。」
お約束とも言えるセレナの言葉に、一同は愕然とする。これから世界を救おうという人間が八神将の名前すら知らないとは。
「姉ちゃん・・・学問所を1年生からやり直したら・・・?」
「アトス様は・・・人竜戦役で・・・人々を光に導いた・・・大賢者様です・・・。」
「人竜戦役なんて1000年以上前の話でしょ? どうしてそんな人と話せるのさ。」
セレナがシーナの耳を引っ張りながらソフィーヤに訊ねた。
「アトス様は・・・生きておられます・・・そう・・・フォルブレイズの魔道書の中に・・・。」
「えぇ?! 閉じ込められちゃってるの!?」
何と言うことだ。アトスはフォルブレイズの魔道書の中に閉じ込められてしまったのだろうか。使い手の魂を封印してしまう、恐ろしい力を持った魔道書・・・。確かに人には過ぎた力かもしれない。
「いいえ・・・。アトス様は・・・精霊として・・・フォルブレイズの魔道書を・・・守っておられるのです・・・。だから・・・アトス様に・・認めてもらえなければ・・・フォルブレイズの・・・魔道書を・・・扱う事は・・・叶いません・・・。」
「なるほど。ところで、ソフィーヤ殿。そのフォルブレイズの書は何処にあるのですか?」
アレンが尋ねた。扉の中には礼拝堂はあるものの、魔道書と思われるものは一切見当たらない。
「はい・・・。フォルブレイズの魔道書は・・・先日こちらにいらした旅の人が・・・持って行かれました・・・。」
「な、なんだって?! じゃあ、もしかしたら今頃盗賊の手に・・・。」
セレナが焦る。自分達より先に来ていたという客人が既にフォルブレイズを持ち出してしまっていたのである。消息は当然分からない。・・・いきなりピンチの連続だ。
「だが、アトス様がお認めになられたほどの人物なら、よほどの事がない限り心配はいらんだろう。問題は今何処にフォルブレイズがあるか、だ。我々には何としてもフォルブレイズが必要なのだ。」
ナーティがセレナを諭す。セレナも落ち着きを取り戻し、ソフィーヤに訊ねる。
「じゃあ、どうやったらアトス様とお話できるの?」
「アトス様が・・・認めてくだされば・・・精霊術師を媒体に・・・対話する事ができます・・・。貴女方が・・・認めていただかなければ・・・いけません。だから・・・私は・・・お手伝いできません。」
アトスに認められ、交信可能な巫女、ソフィーヤに助けてもらっては、自分達が認められたことにはならない。自分達の力で、アトスに求めてもらう必要があった。精霊術師・・・目に見えない力と対話する事のできる不思議な力を持つ者。ソフィーヤが巫女と呼ばれる所以であった。
「あ、そういえば、アリスお姉ちゃんもあの竜騎士に精霊術師って言われてなかったっけ?」
そういえばそうである。西方でアリスたちを襲った謎の集団。そのリーダーと思しき竜騎士がしきりに言っていた。精霊術師を渡せ、と。そして狙っていたのがアリスであった。
「確かに・・・耳を澄まして木とかとお話しすることはあるけど、そんな精霊と放すなんて下事もないし、やり方だってわからないわ。」
「しかし、貴女しかできそうな者はいないのだ。・・・やってもらわねば困る。」
ナーティに言われ、アリスがソフィーヤに話しかけてみる。
「あの、巫女様、どうすれば精霊と対話が出来るのでしょう?」
「特別な事は・・・しなくても良いのです・・・。ただ・・・アトス様を心で見て、心で話しかければ・・・。」
アリスは言われたように祭壇のまで祈りを捧げる。そして、いつも木に話しかけるように、アトスに話しかけてみる。・・・お願い、私達の祈りを聞いて・・・!
暫くすると、アリスは目の前に人が降り立ったように思えた。アリスはそのまま心で祈り続ける。


113: 手強い名無しさん :05/11/03 12:47 ID:E1USl4sQ
「皆さん・・・。アトス様が・・・あの方に降臨なさっております・・・。あのお方に触れて、一緒に心で対話なさってください・・・。」
一行はアリスの周りに寄り添うようにして集まり、一緒に祈りを捧げだす。
そして次第に声が聞こえてきた・・・。
「お前さん達か、このわしを呼ぶのは。」
「あたしはセレナ。フェレ候ロイの娘です。こっちは妹でシーナって言います。」
「フェレ・・・そうかお前達はエリウッドの子孫か。」
「はい、エリウッドはあたし達の祖父に当るそうです。」
「ふむ、ところで、お前達は何の為にわしを呼び出したのじゃ?」
「フォルブレイズの在り処を教えていただきたいのです。あたし達にはそれが必要なんです。」
「この大陸に起きたこと、そして起きようとしている事、わしには皆分かっておるよ。お前さん達がここに来る事も・・・。」
「え!? じゃあ、この先この大陸はどうなってしまうの?」
「ほほほ・・・。人というものは、先が見えない人生を歩むからこそ楽しいもの。全て歩んだ先が分かってしまっては絶望しか残らん。・・・絶望に打ちひしがれ、諦めてしまうだろう。そうなったら生きてはいけんよ。お前さん達は、自分の力で、自分の意志で歩かなきゃならん。希望と言う言葉を考えて見なさい。薄い望み、残りは絶望。希望を信じられるのは、先が見えないからじゃ。」
「わかったよ・・・。じゃあ、フォルブレイズは何処にあるの?」
「ほっほっほ。そう急かすでない。どんなに焦っても、時に流れは一定じゃて。時の流れに背こうともいつかは流れに飲まれてしまうものじゃ。」
「あー! いいから教えてよ!」
セレナの短気がとうとう表に出てくる。アリスが心の中でセレナを拳骨して沈める。
「私達には、何としてもその魔道書が必要なのです。お願いです、どうか在り処をお教えください。」
「ふむ。しかし、お前達は本当に世界を救えるのか? お前達も人だ。いつかは絶望し、諦めてしまうのではないか?」
「そんなことはない! あたし達は決心したんだ。 皆が平和に暮らせる世界を作ろうと。あたしには仲間がいる。みんなと助け合えば、怖いものなんてないよ。」
「ほっほっほ、軽々しく言ってくれるのぉ、セレナよ。お前の母親も、ナーガ様から認められるほど、心のキレイな者じゃった。だが、実際どうじゃ。仲間の裏切り、大切な者との決別・・・さまざまな絶望の前に、とうとうその志を果たせぬまま行方知れずとなってしまった。お前も・・・同じ道を歩むかもしれないぞ?」
「あたしは・・・あたしは母さんとは違う。でも、今の状況が正しいとは思えない。行動を起こさなきゃ、何も変わらないよ。行動して反省する事があっても、何もしないで後悔するのは嫌だ。あたしはあたしの考えを元に行動してる。そしてあたしは決心したんだ。世界を変えてやるって。種族を超えた平和を大陸に取り戻したいって。」
セレナとアトスの対話は続く。自分達の想いを少しでも正確にアトスに伝えたい。そして認めてもらわなければならない。
「だからと言って力に頼るか? 力による平和は、結局何処かで歪みを生み、やがてその歪みが大きな亀裂へと発展していく・・・まさに今の大陸の如く。」
「それは・・・。必要以上に力に頼ることはなしないよ。あたしだって出来れば無駄な戦闘は避けたいし、人を殺したくない。でも、話し合って分かってくれないのなら、それに訴えるしかないよ。」
「・・・変化に犠牲はつき物と? そのための犠牲は致し方ないと?」
「そういう意味じゃないよ。 ベルンによって多くの罪も無い人々が無意味な死を遂げてきた。そして、ベルンを・・・いや、ハーフを憎んで更に種族間の憎しみは増していく。
そんな悪循環を断ち切るには、ベルンを止めなきゃいけないんだ。そのために出る犠牲は計り知れない。その犠牲を最小限に食い止める為にも、早く戦争を終らせなきゃいけないんだ。・・・結局力にとよる事になっちゃうね・・・。」
セレナは次第に、自分の言っている事が矛盾に満ちている事に気付いていった。しかし、自分の言っている事が間違っているとも思えなかった。
「・・・わかった。お前さん達も分かったろう。お前さん達の理想は、多くの矛盾を抱えていると。その矛盾を乗り越えてこそ、真の平和は実現される。矛盾に矛盾を重ねた儚いもの。それがお前さん達の求めるものじゃ。その矛盾に押しつぶされないよう、しっかり心を磨くのじゃぞ。」


114: 手強い名無しさん :05/11/03 12:49 ID:E1USl4sQ
「え、じゃあ!」
「うむ、フォルブレイズの書は、生前の弟子、パントの孫が持っていったわい。彼はエトルリアに戻っておる。
忘れるでないぞ。お前の武器は仲間と強い意志じゃ。物理的な武器は、ただの人殺しの道具でしかないと言う事を肝に銘じておくのじゃ。例えそれが神将器と言えどもな。」
そういい終わると、アトスは消えていき、セレナも意識が遠のいていく。目覚めた時には元の場所にいた。
「よし、進路は決まった。目指すはエトルリアだ。パント様の孫と言う人と何としてもコンタクトをとろう。明日朝一番に出発だ!」
シーナは意志を明確にした姉を見て、何か何時もより凛々しく感じた。今日一晩はナバタの里に泊めさせて貰い、明日からエトルリアへ向け出発する事になった。

その夜、シーナは何か眠れなくて目が覚めた。横では姉と兄が同じような寝相で同じように涎を垂らして寝ていた。
「もう・・・どこまで気が合ってるんだか。見てるこっちが恥ずかしいよ。」
そう言いながら、シーナは宿の外に出て、集落の中央にある噴水のところで水の調べを聴こうと歩き出した。しかし近づくと、誰かがそこにいる事がわかった。
(誰だろう・・・。こんな遅い時間にまだ起きてる人がいるなんて。)
シーナは木の陰に隠れて様子を見る。それはナーティとソフィーヤだった。何か話し込んでいる。シーナはもう少し近づき
何を話しているのか聞くことに決めた。盗み聞きは良くないけど、やっぱり気になる。
「・・・そうなんですか・・・。悲しい事ですね・・・。」
「ふっ・・・。私の力不足が招いた事だ。この責任は取らねばならぬ。」
「しかし・・・。」
「ん?」
「昼にも言いましたが・・・貴女のやろうとしていることが・・・とても正しい事とは・・・。」
「・・・もう何も言わないでくれ。私には・・・いや世界にはもうこの手しか残っていない。どんなに綺麗事を言っても、力で力を支配する限り、悲劇は繰り返される。理想は結局・・・理想でしかない。」
「だからと言って・・・そこまで思いつめた考えをすることは・・・無いと思います・・・。あなたの考えていることに・・・私は・・・賛同できません・・・。世界が・・・正しい方向に向かうとは・・・思えないし・・・貴女もそれでは余りに辛すぎます・・・。」
「私が辛い・・・? ふ、私は大切なものは全て失った。もうこれ以上失うものはない。怖いものなど・・・何もない。」
シーナは二人の会話の意を全く汲み取れず、ただ聞いているしかなかった。しかし、何か重い雰囲気が流れている事は確かだった。
「貴女は・・・まだ・・全てを失ったわけでは・・・ありません・・・。最も大切なものが・・・まだ・・・残っています・・・。」
「ほう、それは何か聞きたいものだな。」
そこまで二人が話を進めた時、シーナが足元の木の枝を踏みつけて音を立ててしまう。二人はすぐに勘付き、ナーティが茂みに剣を突っ込んだ。
「・・・何者だ。」
「い、いやぁ・・・ナーティさん嫌だなぁ・・・ははは。盗み聞きなんてしてないよ?私。あはは・・・。」
喉元に剣を当てられ、流石にシーナも腰が抜けてしまう。
「子供は早く寝ろ。明日からの作戦に支障が出る。」
剣を鞘に収めながらナーティは言った。
「さて、ソフィーヤ殿、我々も解散するとするか。今日は本当に助かった。ありがとう。」
ナーティはシーナを連れて宿に戻っていく。ソフィーヤはその二人の姿をずっと見ていた。
「ねぇねぇ、さっき巫女様と何をお話していたの?」
「ちょっとした世間話だ。お前が気にするほどの事ではない。」
「ふーん。それにしてもナーティさんは憧れちゃうなぁ。」
「私に? ・・・止めておけ。私のようになったらお終いだ。」
「えー。だって、いつも冷静で、剣も魔法も強くて、おまけにいつでも私達を守ってくれるし。私もナーティさんみたいな凄腕の騎士になりたいよ。」
「・・・お前達を守るのはそれが傭兵としての私の務めだから。逆に言えば、私は力でしかものを訴える手段の無い、これからの世界には不必要な人間だ。・・・お前達の理想とする世界には。」
「そんなこと無いよ。ナーティさんは優しい人だよ。西方でも竜騎士を賞金首と知って逃がしたり。それにナーティさんの目、優しそうだもん。」
「私の目が・・・? 希望を捨てた私の目が、優しい?・・・笑わせるな。」


115: 第十二章:いざエトルリアへ :05/11/03 12:50 ID:E1USl4sQ
そういうとナーティは宿とは反対の方向に歩いていってしまった。シーナはその姿を何故か追うことが出来なかった。哀愁に満ちたその背中を。
「ナーティさん・・・。悲しそうで、鋭い目つきだけど、時々しているよ、優しそうな目つき。私はそれが大好きなんだ。だから、そんな悲しい顔しないでよ。・・・一体ナーティさんの過去に何があったんだろう・・・。」
床に戻った後も、シーナはそれが気になって眠れなかった。

翌朝、一行は里を発ち、一路エトルリアを目指し北進を始めた。ナバタ砂漠を抜けて暫くすればすぐエトルリアの領土内に入る。一行は再び灼熱の砂嵐の砂漠を踏破せざるを得なかった。
「うー。熱い・・・。 干物になっちまう・・・。」
皮鎧の上から更に騎士用の厚い鎧を装備する騎士にとっては、砂漠では蒸されるような気分に陥る。まだまだ騎士としての経験の浅いクラウドにはそれが我慢できなかった。
「クラウド、文句が多いぞ。そんなことで根を上げていては騎士は務まらないぞ。 それそろしっかりしてくれ。戦場でお前の世話まではしていられないぞ。」
「な、言ったな! 見てろ、いつか親父を抜いてやるからな!」
クラウドがアレンに挑発され、向きになって歩き出す。アレンはそんな姿を微笑みながら見ていた。 一方の双子はと言うと、疲れ知らずで元気だ。
暫くすると砂嵐は止んだ。地形も砂だけの金色の世界から、草の緑色が少しずつ目立ち始めてきた。
どうやらナバタ砂漠を抜けたようだ。
もう少し歩けば、エトルリアの国境。ここがまず最難関だ。 国境警備隊に見つかれば、たちまち投獄、極刑である。だが、傭兵団を装っているし、ハーフのシーナがうまく言ってくれれば心配は無かった。
「よし、次、検問所に入れ。」
ベルンのエトルリア駐留軍、すなわちリゲル配下の兵達がセレナ達を取り囲んだ。
「お前がこの傭兵団のリーダーか? 随分若いリーダーだな。」
ベルン兵がシーナに話しかける。その話し方は柔らかい。同族同士だからか。
「うん。実際働くのは劣悪種だからね。 私は管理役。」
「はっ、なかなか強かな娘だな。 よし、通れ。道中の安全を祈っている。」
思った以上にすんなり通過できてしまった。警戒レベルは最低といったところか。
「なんだよ。案外うまく行くもんだな。正直期待はずれだぜ。」
「クラウド・・・。お前と言うやつは。 気を抜くなとあれほど言っているだろう。我々は一刻も早くセレス様に合わなければならないのだ。」
「わぁ、親父。怒るなって。」
いつもどおりの家族の様子にセレナは笑ってしまった。しかし、妹の顔色は優れなかった。
「シーナ・・・? どうかしたの?」
「あ、姉ちゃん。 いやさ、演じて放った言葉でもあまりいい気がしないなぁってね。」
「劣悪種云々ってヤツ?」
「うん。 自分の大切な家族を劣悪呼ばわりするのは、何か嫌だよ。」
「気にするなって! あんたはそう思ってないならいいじゃない。 ほら笑いなよ。」
姉が何時もの笑顔で私を抱きしめる。悩みやすい私をいつも励ましてくれる姉。
こういう時だけは、こんな姉を持って幸せだと思えた。そこにナーティやアリスも話しに加わってくる。
「そうよ。考えすぎよ、シーナ。 もう少し気を楽に持って、ね?」
「気になるなら一層、世界を変えるために努力する事だ。 皆がお前と同じように、差別する事に違和感を覚えるようにな。」
同じ励まし方でも、ここまで違うものなのか。セレナは妹の肩を抱きながらそう思っていた。そして、まだ見ぬ自分の従兄妹、セレスの顔を想像していた。
「ねぇ、シーナ。セレスってあたしの名前に似てるよね。どんな顔してるんだろ。カッコイイといいなぁ。」
「従兄妹だから似てるのかな。・・・それより姉ちゃん、何変な事考えてるのよ。ナンパでもする気なの?」
「冗談じゃない。従兄妹だよ? 親族相手にナンパしてどうするのさ。 男はカッコいいほうが良いに決まってるでしょ。」
「姉ちゃんが言うと冗談に聞こえないんだよなぁ・・・。」
「何だと?! もう一回言ってみろよ!」
セレナがシーナのポニーテールを後ろから引っ張る。それをクラウドがずっと見ていた。それにアレンが気付き、話しかける。」
「どうした、クラウド。」
「いやぁ、すぐそばにこんなカッコイイ兄がいるのに、セレナは一度もナンパしに来た事ないなぁって思っただけだよ。」
「やれやれ、お前と言うヤツは。」


116: 手強い名無しさん :05/11/04 17:20 ID:E1USl4sQ
一行はエトルリアの市街地近くの村で山賊退治をし、そのお礼にとその晩止めてもらう事になった。
そして、この先のことについて話し合っていた。
「そのセレスって人に会おうにも、どこにいるのわからないんじゃ探しようが無いよ。」
セレナが困ったと言うような顔で言う。確かにエトルリアはエレブ大陸一の大国。一口にエトルリアと言っても、南はミスル半島から、北はイリアとの国境レーミーと、非常その範囲は広い。セレスがエトルリアにいる、と言われてもその具体的な地方が分からなければ探し出す事は困難を極める。
「セレスはクレイン卿とその妃ティト殿のご子息。つまり、リグレ侯爵家の人間だ。アクレイアにいる可能性が高いと俺は思っている。」
アレンが具体的な進路を説明しながら言った。ティトはアレンにとっては戦友だった。そのティトも前の変で戦死したと言う。そのご子息がエトルリアにいる。自分が守ってやらねばと、何故か妙に気合が入る。
「しかし、いまやアクレイアはハーフの牛耳る商業地域だ。かつての貴族達は没落し、その貴族街には新たにハーフの貴族達が住むという。リグレ侯爵家も当然例に漏れないだろう。」
ナーティが何時ものようにさらっと冷たい現実を言い放つ。静まり返る一同。そこに村人がスープを運んできた。
「今日は賊どもから我々を助けていただき、ありがとうございます。」
「いいよ、そんなの。あたしたちの力は、力を持たない人全ての為にあるんだもの。助けて当然だよ。」
セレナが村人に返す。その言葉に村人は涙を流して喜んだ。
「あぁ・・・神よ、聖女エリミーヌよ。貴女の御慈悲に感謝いたします・・・。 貴女方が英雄ロイ様の姫様がであると言う事に、疑いを持つものは我々にはおりませぬ。どうか我々の出来る事なら何でも仰ってくださいませ・・・。」
このリアクションにはセレナは驚かざるを得なかった。自分は本当のことを言ったまでなのに、どうしてこんなに感動してくれるんだろう。
「そんな、泣かないでよ。当然の事をしたまでだってば。オーバーリアクションだよ。」
「それだけ、ベルンの支配が酷かったという事だろう。」
アレンがセレナを諭す。右も左も、そして上も下も、全てが闇。その中にたった一点、自分達を救ってくれる光。感涙もやむをえない状況だ。
「そうだ。ここはまだ地方だからよいものの、王都の風紀は乱れに乱れている。これもあのリゲルとか言う総督のせいだが。」
それにナーティが付け加えた。リゲルも成り上がり貴族の一人だ。
「リゲル? それに風紀が乱れているって?」
「リゲルはベルン五大牙の一人でエトルリア地方を支配している。風紀がひどいと言うのは、実際行ってみれば分かる。」
流石に傭兵として世界を回っているだけあって、ナーティは各地のことについてよく知っている。知りすぎているような気もするが。
「ところで、セレスという名前の人について心当たりはありませんか?」
アリスが村人に聞いてみる。分からないのなら地元の人の聞く他に情報収集源はない。一か八かで聞いてみる。すると、思わぬ答えが返ってきた。
「おぉ、セレス様ですか。あのお方は今やパーシバル様の右腕として活躍なさっておられます。まだまだお若いのに、ご両親に似てしっかりなさったお方で・・・。我々の期待の星なのです。」
どうもセレスもセレナ達同様、ベルンと敵対しているようだ。そして、その組織はパーシバルを中心にしたあの対抗組織だったのである。同じことを考えるとは、流石自分の母と血を分けた叔母の子だと、セレナは思い、期待した。
「ということは、セレス様もパーシバル様と一緒にアクレイアのおられると言う事ですね?」
「ええ。アクレイアのどこかに組織のアジトを持っておられるはずです。」
そうと決まれば話は早い。明日朝一番にアクレイアへ発てば、夕方ごろには到着できる。アクレイアで情報を収集すれば、そこを拠点としているならばすぐに見つかるだろう。
「かぁー! このスープうめぇ! おばさん、おかわり!」
不安要素が消えて安心したのか、セレナとクラウドは何時ものような明るい顔に戻った。
「こらっ、クラウド。お前はどうしていつもそうなんだ! もう少し落ち着かないとだな・・・!」
「セレナ、お前もだ! 将としての自覚があるのか? おい、聞いているのか!」
アレンとナーティがそれぞれクラウドとセレナの首根っこを捕まえて説教をする。もう見慣れた光景だ。アリスはそんな周りの様子に微笑む。こんな和やかな空気がいつまでも続けばどんなに幸せだろうか。
「いててっ、兄貴が親父に怒られるのは仕方ないとして、どうしてあたしがあんたに怒られなきゃいけないんだよ!」


117: 手強い名無しさん :05/11/04 17:21 ID:E1USl4sQ
一方、ここは王都アクレイア。一人の若者の周りに、古着をまとった大勢の男達が集まっている。
「セレス様。いつまで我々はこんな苦境に立たされていなければならのですか?」
「もう限界です。我々スラム街の人間を集結させ、一気にハーフどもを追い出しましょうよ!」
「そうだ。そうだ。一刻も早く我らのエトルリアを取り戻そうぜ。」
その若者の名はセレス。今は無きリグレ公クレインの息子。皆口々にセレスに向かって叫ぶ。その男達をなだめながら、セレスは言った。
「皆さん、落ち着いてください。僕としても一刻も早く我々のエトルリアを取り戻したい。しかし、戦争をして奪い返すのでは意味がないのです。パーシバル様ともよく話し合い、なんとか和解の道を模索しているところです。」
「セレス様、和解ってできるのか? 相手がその気なら、こちらもそれ相応の手段を用いないと・・・。」
「確かに、話し合いだけでは難しいかもしれません。しかし、ハーフと戦争をするだけでは、後々まで禍根を残しかねません。
大丈夫です。きっとうまく行く方法があるはず。もう少しの辛抱です。がんばりましょう。」
セレスはスラム街の最奥にあるアジトに入っていった。その中にはパーシバルとララム、そして
パントがいた。
「あ、セレスちゃ〜ん。おかえり。」
「おぉ、セレス、遅かったな。」
「爺上、只今戻りました。・・・ララムさん、“ちゃん”は止めてくださいと何度言ったらわかるんです。」
セレスがちょっと拗ねたように言う。いつまでたっても子ども扱いだ。
「だって、可愛いんだもん。ねぇ、パント様。」
ララムももういい年だが性格は相変わらずだ。年相応に落ち着いたとは言え・・・。
「ははは。いいじゃないか、セレス。いい母親代わりがいて。」
「まっ、パント様。私はそこまでまだ年をとっていませんよ! こう見えてもまだピチピチの・・・。」
ララムの声が狭いアジトに響き渡る。アジトの中は洗っていない食器やら書類やらが乱雑に積み上げられている。土壁に土間だけのつくりで中は暗く、そしてホコリ臭い。炊事場はララムが料理でもしたのか、何か焦げた物が不気味に煙を上げていた。
「セレス・・・遅かったな。近況はどうだ?」
今まで沈黙を保っていたパーシバルがとうとう口を開いた。苦労は絶えず、年以上に老けて見える。が、それでも昔のままの面影は残している。かつてのエトルリアの最高指揮官。今では落ち武者とハーフに蔑まれているが、その姿は今でも体も意志も健在だった。
「パーシバル様。遅くなりました。状況は相変わらずです。ハーフ達の傍若無人な行いはますます酷くなっています。特にリゲル総督の女狩りはエスカレートするばかりで・・・。
この頃では旅人の金を巻き上げる為に新たな賭博場も開設したとか。・・・悪化の一方です。」
セレスがアクレイアの状況を淡々と話す。どれも良いものは無く、日に日にその度は増していく。
「そうか・・・。では、同志達はどうだ。」
「はい、皆口々に一揆を企てようと団結しています。・・・皆そろそろ限界のようです。僕だってこれ以上は見ていられない・・・。」
「うむ・・・致し方ないか・・・。ミルディン王子がご覧になられたらいたく悲しまれる事だろう・・・。
これも全て、私に力が無かった為だ。あの時もっと私がベルンの侵攻を抑えることが出来たならば・・・。」
パーシバルのその言葉を聞くや否や、今まで和やかな顔をしていたパントが突然、厳しい口調でパーシバルを叱った。
「パーシバル、過去の事を後悔していても始まらぬ。過去は変えられぬ。だが、この先はお前の行動一つでどんな風にも変えて行ける。生き残った我らがするべきことは、後悔ではない。・・・わかっているのだろう?」
「はい、パント様。心得ております。しかし、単なる殺し合いで勝利しても、それは真の勝利ではないでしょう。互いに手を取り合ってこそ、真の勝利・・・。ミルディン様のお言葉です。」
「そう。だから戦いは虚しい。だが、まずはこの悪循環を断ち切らねばならん。順序をとり間違えてはならぬ。」
「は・・・。」


118: 手強い名無しさん :05/11/04 17:22 ID:E1USl4sQ
パーシバルは再び考え込んでしまう。主の遺言と反する現状。だがそれを打開する為には主の意志と反することをしなければならない。もはや迷わないと誓った自分が・・・情けない。
そんなパーシバルを見て、パンとはいつもどおりの穏やかな顔に戻る。
「そう悩むもんじゃないよ。時が来ればきっとうまくいくよ。」
パントは多くは語らず、また魔道書を覗き始めた。・・・パントには分かっていたのである。セレナ達がここアクレイアの向かっている事が。数日前、寝ているときにアトスが話しかけてきたのであった。
「数日後に、お前達の元に炎の天使たちがやってくる。それまでは平静を装うのじゃ・・・。ワシは精霊。世の中の事に首を突っ込むことは禁忌なのじゃが、どうしても見ておれなくての・・・。パントよ。お前なら信頼できる。若輩者たちをうまく先導してやってくれ。」
確かに警戒レベルが上がっているなら今の戦力で突っ込んでも自滅行為だ。今は情報を収集し、ベルンの動きを探ったほうが得策だと、パーシバルも思った。
「はーいはい。悩んでないで、ね。パーシバル様。ほら、私特製のララムシチューを召し上がれ!」
そういってララムは真っ黒に煤けた鍋を厨房から運んできた。吹き上がる湯気が不気味である。
それを見た途端、パーシバルは別部屋に移っていった。
「ラ、ララムさんの料理!? い、要らないよ。爺上、どうしてララムさんに料理なんかさせたんです!?」
「ん? たまにはいいかなってね。」
「たまにはって・・・無責任な・・・。」
「なーに言ってるの。セレスちゃんも食べないとパーシバル様みたいにかっこよくなれないぞ?」
「・・・ララムさんの料理を食べるぐらいなら死んだほうがマシです。」
「あー、言ったわね!? 可愛くないヤツ! 乙女心を傷つけたらどうなるか教え込んであげるわ!」
そういうとスプーンにたっぷりと白と黒の混ざったシチューを盛り、セレスの口に押し込む。
「うわ・・・!? おえ・・。やめて・・・。」
涙目で懇願するセレス。それを見て更に頭に血が上るララム。それをパントは笑いながら傍観していた。
「ははは、和むねぇ。・・・さて、アトス様。炎の天使とやら、お待ちしておりますよ。我々とてこのまま手をこまねいている訳にも参りません。私も孫達と、アトス様のように、平和の為にこの力を用いて見せます。」
やっとララムから逃れたセレスは別部屋に逃げ込んだ。そこにはパーシバルが外を見ながらコーヒーを飲んでいた。
「ふぅ・・・ララムさんの料理はホント一級品ですよ・・・殺人道具として。」
「ふっ・・・。ところでセレス。お前は何の為にこの組織に与した?」
「え、それはもちろん、現状のハーフが支配する差別と困窮の世界に終止符を打つためです。そのために、僕は爺上から、いえアトス様からフォルブレイズを継承しました。」
「ふむ。では、その力を何に用いるつもりだ? ハーフをその焔で焼き殺し、憎しみを増長させるか?」
「それは・・・。わかっています。僕達の求めるものは、矛盾だらけであると言う事を。でも、世界を変えていくためには、もはやこれしかないのです。種族間の関係を歪めるだけ歪めた人間族が勝手な事を、とハーフの人たちは思っているかもしれません。しかし、その誤解は僕達の考えを知ってもらえれば解けるはずです。」
「お前は・・・両親に似て、考えがしっかりした子だな。」
「パーシバル様がお悩みになられるのは立場上仕方ない事だと思います。しかし、アトス様はこう仰っておられました。“人間は悩み多き生き物。悩む事で後悔もし、成長もする。悩む事は決して悪い事ではない。逃げるのでなければ。」
「・・・。」
「パーシバル様は逃げておられるのではないはずです。だから、悩んででも、最善の方法を考え出してください。僕達はそれに従いますから。」
「そうか、ありがとう。私も私なりの最善の方法を考えてきた。そして行き着いた結論は
やはり、ベルンの総督府を叩き、ハーフの支配を終らせる事だった。まずは現状を変えなければならぬ。それは分かっていた。
しかし、ミルディン王子や、ゼフィール全ベルン国王の言葉を思い出すと、これでいいのか、と悩んでしまうのだ。」
「・・・。」


119: 手強い名無しさん :05/11/04 17:23 ID:E1USl4sQ
「叱られるような事を平気でするからだろう!? まったく、お前は将としての自覚に欠ける。第一・・・」
シーナはそんな姉を見て呆れながらも、こんな性格の正反対な二人がどうしてあんなに気が合うのか不思議でならなかった。
「普通あそこまで性格違ったら離れ離れでいる気がするんだけどなぁ・・・。蓼食う虫も好き好きってやつかなぁ。」

「しかし、やはり順序を取り違えてはいけない。まずは目の前にある問題を解決しなければ。先々の事にとらわれて目先の問題に二の足を踏んでいては、またあの時のようになってしまう・・・。」
「あの時?」
「いや、セレス、お前は知らなくてもよい。よし、武器などの物資を調達してくれ。時を見て反乱を起こす。」
「わかりました。では、早速手配をしてきます。」
セレスはマントを翻しながら走っていった。
ミルディン様・・・ダグラス様・・・セシリア・・・私は今度こそ、やり遂げてみせる。今度こそ皆の死を無駄にはしない・・・。

その頃、エトルリア駐留のベルン総督府では、いつもどおり、リゲルが快楽におぼれていた。
「くっくっく、私に優雅なひと時をもたらしてくれる者はおらんのか?」
リゲルは手にしたレイピアの先を手で曲げながら剣奴隷達のほうを見た。どの剣奴隷も傷だらけで動けなかった。騎士剣を扱わせればベルンでも右に出るものはいないと言う。毎日模擬戦や、遊女を侍らせての賭博などの遊興に明け暮れていた。植民地の統治などは二の次、いや三の次ぐらいの片手間でしか行っていない。風紀は乱れて当然だった。
「流石でございます、リゲル様。ところで、街の風紀回復の件についてはお考えいただけましたでしょうか。」
「風紀? ふっ、分かりきった事を申すな。アクレイアの風紀が乱れている原因は、スラム街の劣悪種共だろう。劣悪種・・・あぁ、美しい私にはその呼び名すら汚らわしい、ゴミ以下の存在。どうしてあんな醜い種族が現存しているのだろう。・・・お前はそう考えた事はないかね?くっくっく・・・。」
「は、はぁ・・・。」
「そうだ・・・いい事を考え付いた。劣悪種などこのアクレイアから一掃してしまえばよいのではないか・・・。私もその血の宴に出陣する。
出撃は三日後の天馬の刻。それまでに出陣の準備をしておけ。・・・くっくっく・・・。久々に優雅なひと時を過ごせそうだ・・・。」


120: 手強い名無しさん :05/11/04 17:23 ID:E1USl4sQ
「了解いたしました。遠距離砲はいかがいたしましょう。」
「あんなもの必要ない。その代わり弓兵部隊を大量に投入しろ。火矢攻めにしてくれる。
劣悪種の鮮血と業火。二つの赤が、私の美しさをこれ以上ないほどに彩ってくれるだろう・・・くっくっく・・・ふはははははっ。」
そう言うとリゲルは遊女を侍らせ、外に出て行く。
「リゲル様。これから出陣と言う時にどこへ行かれるのですか。作戦は・・・。」
「ちょっとバカラ賭博の様子でも見てくる。ふふふ、あそこの収入が我々の貴重な臨時軍用費なのだ・・・。」

「ふー、やっと着いた・・・。」
セレナががっくりとうな垂れながら言う。アクレイアの城門は豪華絢爛なエトルリア文化をふんだんに取り入れた豪華なつくりで、旅人の心を動かす。
しかし、セレナにとってはやっと宿にありつけると言う思いが強く、それどころではなかった。歩兵の行軍は辛いものである。
「やれやれ、お姉ちゃん、情けないね。」
「あんたはペガサスに乗ってるんだからいいわよね! こっちはもうヘトヘトだよ・・・。」
「よかろう、ではもうすぐ日の入りであるし、宿を探すとするか。」
ナーティが座り込むセレナを引き摺りながら城下町に入っていく。アレンは未だに城門を眺めていた。そんな父親にクラウドが声をかける。
「親父・・・? どうしたんだよ。この門すげー豪華なつくりだな。」
「あぁ・・・しかし、俺が昔来た時より・・・なんか絢爛さに欠けると言うか・・・。きっと管理されていないのだろうな。
昔は所々に宝石も散りばめられていたのだが、ものの見事に外されている。きっと生活に困ったスラムの人々が盗って行ったのだろう。」
「許せねー話だな。大切な文化物に手を出すとは・・・。いや、文化物に手を出さないと生きていけない人々を出す今の統治機構がおかしいんだな。」
クラウドが改めてベルンに敵意を燃やす。だが・・・間違えるなよ。ハーフの支配する前にもそういった困窮者はいた。ハーフだからという理由ではないと言う事を・・・。だが、確かに今のハーフの政治は酷い物がある。何としても現行の総督府を倒し、困窮した人たちにも光を・・・。それが我が主ロイ様の願いだった。ロイ様、見ていてください。このアレン、息子のクラウド共々、ロイ様の志を見事に達成して見せます。
アレンは門から目を離し、紅の夕日に沈むアクレイアの街に消えていった。


121: 見習い筆騎士('-'*) 56J2s4XA :05/11/04 17:37 ID:E1USl4sQ
うお・・・。やってはいけない過ちを・・・。
>>119の上三行は、>>116の最終行に繋げて読んでください。。
ワードから切り取った時に何かミスを犯したようです。。
秋のアレルギーは辛いよ、ママン。

遅れましたがキャラ紹介です。
リゲル(♂:ロードナイト)
はい、敵将にしてロードナイトです。こんな設定もアリかと・・・。
性格は読んでいただければ分かるように、自己中にしてナルシスト。そして危険なほど野心家。
ナーシェンとは違うのだよ! ナーシェンとは!!
ちなみに元ネタは某格ゲーの四天王・・・。

セレス(♂:賢者)
第二部に入ってから気付いた・・・。セレナと名前が似すぎている!
しかし今更ながらに名前も変える事も出来ず、・・・あ、名前を変えちゃったことにすれば・・・あべしっ。
そう考えると悲劇の公子・・・。
性格は親共々生真面目だった為かきわめて真面目。キツイ言葉もさらっと言えてしまう。
見事なツンデレさを醸し出し(?)ます。 セレナやクラウドとは正反対の性格で、きっと二人を見たら説教せずに入られないでしょう。

122: 第十三章:繁栄の光と闇 :05/11/07 16:28 ID:E1USl4sQ
宿に入ったセレナやクラウドは、早速ベッドに飛び込む。繁栄を極めるエトルリアだけあって、宿の設備も質が高い。
「わーい。久々にフカフカのベッドで寝られるぞ! こんな乙女が野宿なんて耐えられないよ。」
「うおー、このベッドふかふかじゃん。すげー。」
二人とも大はしゃぎだ。特にさっきまでへたれこんでいたセレナの元気は何処から沸いてくるのやら。
「こらっ、二人とも見っとも無いぞ! ベッドで飛び跳ねるなって母さんにも散々言われてたじゃない!」
そんな二人をシーナがたしなめる。一体どちらが姉なのやら。
そんな三人を呆れつつも元気で何よりとアレンは笑いながら、休む間もなくアクレイアの地図を広げだした。
「この人数ですし、明日からの作戦は人数を分けてやってみましょうか。」
アクレイアは広い。全員でまとまって動くより、分かれたほうが広域の情報を探せるとアレンは考えたのである。

「名案だな。よかろう。では、私はセレナとシーナで総督府を探る。アクレイアは何度も来ているから土地鑑はある。」
「では、俺とクラウド、そしてアリス様で対抗組織について調べて見ます。」
ベッドの上で跳ね回っていたクラウドだが、父親のその言葉を聞いた途端、はしゃぐのをやめて父親に耳打ちした。
「おい、いいのかよ。セレナ達をあの傭兵に任せちゃってよ。」
「うん? ナーティ殿は我々の大切な仲間だ。我々はエトルリアの地理に疎い。土地鑑のある人が居たほうが、総督府を探るにも都合がいいだろう。」
クラウドはまだナーティを怪しんでいた。親父をはじめ、皆あいつを信用しすぎている。絶対裏に何かある。クラウドはそう思っていた。だが、今は詮索していられない。目の前の問題を一個ずつ片付けていかなければならなかった。

翌朝、早速二班に分かれてアクレイアを探索する事になった。アレン達は情報収集のために、商業地域へ足を運んだ。
そこは、人に溢れ、活気に満ちていた。笑い声、威勢のいい客引き・・・そしてそれに勝るとも劣らない物量。
まさに大陸一と呼ぶに相応しいほどの繁栄振りだ。西方と言う辺境しか知らなかったクラウドは、その人の多さに圧倒され、周りをきょろきょろしている。
「うわー・・・、何この人。すげぇ・・。」
「ははは。そんなに周りをきょろきょろして、おのぼりさん候だな。」
息子の様子に、久々にアレンから笑顔がこぼれた。そういえば自分が騎士としてロイ様に仕え、初めてエトルリアに来た時、息子と同じ事をしていたか。それをランスに嘲笑されていたな・・・。
「それにしても、本当に人が多いですね。それにみんな幸せそう・・・。」
アリスも幼いころはイリアに住んでいたが、物心がはっきりつくころには既に西方に移っていた。イリアもその城下町は人が多かったが、やはりエトルリアには敵わない。
それ以上に、ここの人たちは幸せそうだった。大陸中が闇に包まれているはずなのに。
「ここにいる奴らはみんなハーフみたいだぜ、姉貴。俺と同じエーギルの波長をしてる。」
そうである。この商業地域、言ってしまえばエトルリアの「表の世界」の住人は皆ハーフなのである。ハーフの者達にとっては今の世界は闇どころか光なのかもしれない。
クラウドが早速、情報収集のために武器屋に入り、主人に声をかけてみる。
「なぁ、ちょっと聞きたい事があるんだけど。」
「ん、騎士かい。どう? この槍。綺麗な槍だろ? 銀製の良い槍だよ? どう、買わない?」
「おぉ!これが銀の槍かぁ。すげー、カッコイイな! ・・・って違うだろ。話を聞けよ!」
「ははは、血の気の多い兄さんだね。で、何なんだい?」
「総督府にあだなす反乱軍が居るって聞いたんだが、そいつらってどこにいるんだ?」
「お、兄ちゃんも志願兵なのか。だったら尚更良い武器が必要だな! さ、この槍、お安く14000Gでどう?」
「だーかーら! 俺は槍が欲しいわけじゃないの! 居場所が知りたいんだよ! おまけに足元見やがって! 銀の槍の国定価格は1200だろ。」
「あはは、知ってたか。おのぼりさんっぽかったから買ってくれると思ったが・・・。じゃあ、槍を買ってくれたら教えてやるぜ。」


123: 第十三章:繁栄の光と闇 :05/11/07 16:28 ID:E1USl4sQ
「誰がおのぼりさんだ!」
クラウドがそう言った途端。主人とアリスがクラウドを指差した。それに釣られてアレンも息子を指差してしまう。
「お前ら・・・。って親父まで! ちくしょう、覚えてろよ・・・。で、どうする。」
「まだ子の子は見習い騎士なので、銀の槍など持たせてはすぐに折ってしまうだろう。そっちの鉄の槍をいただけるかな、ご主人。」
アレンが主人に声をかけた。だが、その反応はクラウド相手のときと全く違うものだった。
「ん、あんた人間か。人間に売るものはないよ。さっさと帰りな。」
やはり人間相手には厳しいものがある。アレンとアリスはクラウドに槍を買って情報を仕入れるよう耳打ちし、店を出て行く。
「いいか、絶対に熱くなってはいけないぞ。我々の目的をしっかり頭に入れておくんだ。」
「わかってるけど・・・やっぱムカつくな。」
クラウドは再び店主の元へ戻り、槍を購入する代わりに情報を聞き出す。
「へへ、毎度あり。で、ゲリラ勢力の居場所だったか? お兄ちゃんが聞きたいのは。」
「ああ、約束どおり槍を買ったんだ。さっさと教えてくれよ。」
「詳しい居場所は知らねぇけどよ。奴らはきっとスラム街をアジトにしてるぜ。ゲリラ集団は人間族の集団だし、アクレイアで人間族が居るのはスラム街だけだ。」
「そうか・・・。わかった。」
「にしてもリゲル総督もなんで居場所が分かってるのに叩かねぇのかねぇ。自治らしい自治を何もしてくれないから、人間共も好き勝手やりやがるのに。」
クラウドは、好き勝手やっているのはそっちだろとでも言ってやりたかったが、父親に釘を刺されていたために我慢して外に出た。外では二人がハーフに絡まれていた。
「おいおいおい、劣悪種が表を出歩くんじゃねーよ。邪気が移っちまう。」
「騎士か・・・。こいつらゲリラ勢力の人間じゃねーか?」
周りにいたハーフ達が集まりだし、アレンたちを囲んでいた。騒ぎを起こせば総督府に捕まってしまう。二人だけではどうすることも出来ない。
「おい、やめろ。そいつらは俺の傭兵団の連れだ。」
間一髪クラウドが間に入り、騒ぎを鎮圧する。
「やれやれ。クラウド、助かった。ありがとう。」
アレンが安堵したように言う。やはり、周りは全て敵であるといっても過言ではないようだ。気をつけなければ。
「親父が謝る事ねぇよ。 それにしても、やっぱりこの世界はどうかしてるな。リゲルとか言う総督・・・ぶっとばしてやる。」
三人は仕入れた情報を元に、スラム街を目指した。

一方、セレナ達三人も繁華街に出ていた。セレナもシーナも、クラウド同様周りをきょろきょろしている。
「お前達・・・。やめてくれ。田舎者候で見ているこっちが恥ずかしい。」
ナーティが呆れたように二人を見る。二人とも物珍しそうに、商店の商品などにくまなく目をやっている。
「だって、こんなに人や物で溢れている場所に来たのなんて初めてなんだもん。流石に大陸一の繁栄地域だけはあるね。」
「ふっ、上辺だけの繁栄だ・・・。その内部を知れば、そんな事は言えなくなるだろう。」
「ナーティさん、それはどういうこと?」
「それを今から調べるのだろう? 自分の目で見れば如何に酷いか分かる。」
それを聞いてセレナが何かひらめいた様に言った。
「あ、それ知ってる! 飛んで火にいる夏のムシってやつでしょ!」
「・・・。」
「はぁ? また姉ちゃんの間違いウンチクか・・・。」
呆れる二人にセレナは得意げに続けた。
「だから、火の熱さを知る為には、実際飛び込んで見ないと分からないって事でしょ? それと同じで、現状の酷さは体験してみないと分からないってことじゃないの?」
シーナは顔を抑えて笑うのを必死になって押さえている。ナーティは最初か呆れて物も言えないといった顔をしていたが、やっと口を開く。
「・・・ふ。 まぁ、あながち間違ってもいないかもしれないな。」


124: 手強い名無しさん :05/11/07 16:29 ID:E1USl4sQ
「え? ナーティさんそれってどういうこと・・・?」
シーナが不思議がって聞いた。姉のことをまた叱るかと思ったが、ナーティの口から出たのは違うものだったからだ。
「ふ。行けば分かる。」
そう言うと、着いて来いといわんばかりに、ナーティは早足で歩き出した。
着いた先は総督府に近い、なにやら大きな建物。人が多く出入りしている。
「ナーティさん、ここは何?」
「ここはいわゆるカフェだ。飲み物や軽い食事を取りながら一服する為の場所。だが・・・それは真の目的を隠す為のカムフラジュ・・・。」
「あー、そういえばお腹すいてきたな。なぁ、ナーティ。軽く一服していこうよ!」
セレナの一言にシーナがまた怒る。セレナはまた妹が怖い顔をするので取り繕おうと必死である。シーナもナーティが姉を叱ってくれるだろうと思っていたが、そうはならなかった。
「そうだな・・・。じゃあ、ケーキでも食べながら一服するか。ここのケーキはおいしいぞ。」
「ちょっと、ナーティさん。いいの? 私達は総督府を調べなきゃいけないのに、そんな油売ってて。」
「腹が減っては戦は出来ぬ、だろう? それに・・・まんざら寄り道と言うわけでもない・・・。」
「え・・・。ナーティさんがそう言うなら私も何も言わないよ。・・・姉ちゃんうるさい!」
「わーい、ケーキだケーキ。」
三人はカフェの中に入っていった。中はやはり人が多い。
三人は奥のほうに座り、コーヒーとケーキでくつろぐ。
「うは、このケーキサイコー。」
セレナが嬉しそうにケーキをほおばる。西方でもこんな焼き菓子はめったに食べた事はなかった。
「お前は食べる時は本当に幸せそうな顔をする奴だな。」
このときばかりは、ナーティも何時もの厳しい顔つきは消え、笑ってしまった。
「でも、こんな風にくつろいでて良いのかな。 お父さん達はきっと今頃必死に情報を探してるのに。」
「大丈夫だ。もう少しすればわかる・・・。」
ナーティがもったいぶって教えてくれない事が、シーナをよけに不安にさせた。この人って凄腕だけど何考えているか分からない時があるのが怖い。・・・姉ちゃんと同じで。
しばらくすると、たくさんの女性親衛隊に囲まれ、煌びやかな軍服をまとった長身の男がカフェの中を通っていった。
「うわー。今の男の人かっこよかったね。ナーティも見とれてるところを見ると・・・タイプなの?ねぇねぇ。」
「あれが・・・このエトルリアを支配する総督府のリーダー。リゲルだ。」
流石にセレナも驚いた。自分達が倒すべき相手が今真横を通って行ったのである。
「うそっ!? でも・・・街中で騒ぎを起こすわけにも行かないし・・・ねぇ、後を追いかけようよ。」
「お前にしては妥当な判断だな。よし、そうすることにしようか。」
ナーティが歩き出す。シーナもそれに続く。セレナはシーナやナーティの食べ残したケーキを口に目一杯つめてその後を追った。
一方リゲルはそのままカフェを素通りし、奥にある扉を抜けていった。一行もそれを追って中に入る。そこはカフェとはまるで雰囲気の違う場所であった。
「うわ、何、ここ。」
シーナが思わず声を上げる。カフェの明るい雰囲気とは正反対に、光を嫌うような暗い雰囲気だ。
「ここは賭博場だ。リゲルは無類のギャンブル好きでな。だが・・・賭博場の本当の狙いはそれではない。」
「ふごふご、ほれ、ごーしゅーほと??」
後ろからやっと追いついてきたセレナが話しかける。口はまだケーキで一杯のようで何を喋っているのか分からない。
「姉ちゃん・・・卑しすぎ。」
「お前というヤツは・・・早く口の周りを拭け! クリームだらけで見っとも無い。」
セレナが口の周りを拭き終わったのを見届けると、ナーティは言った。
「お前達の持ち金全てを私にかけろ。今からリゲルと勝負してくる。」
その言葉に双子は驚いた。
「持ち金全部賭けちゃったら、もし負けたときどうするのさ?!」
「そうだよ。せめて半分は残しておかないと・・・。」
「大丈夫だ。私を信じろ。」
いつも冷静沈着なナーティが言うんだから大丈夫か。そう思い、二人は全額をナーティに賭けた。


125: 手強い名無しさん :05/11/07 16:29 ID:E1USl4sQ
「貴公子殿、次はこの私がお相手いたしましょう。」
ナーティはそう言いながらリゲルに向かって貴族風の挨拶をして見せた。こんなことまで勉強しないといけないのか。セレナはそう思っていた。
「ほう・・・貴様、傭兵風情の割には礼儀を心得ているようだな。面白い、たっぷり可愛がってやろう。くっくっく・・・。」
二人は数人の女性親衛隊と共にバカラ賭博を始めた。セレナ達はルールも分からないのでナーティがかっているのか負けているのか全く分からなかった。
数分後、リゲルはニヤッと不気味な笑顔を見せ、後ろのほうにいたガタイのいい男共に目で合図した。
「ふふふ・・・また私の勝ちか。美しい私には勝利が似合う・・・はっはっは。おい、お前達、後の事は任せた。私は総督府に戻る。」
リゲルは高笑いしながら金色のマントを翻しながら颯爽と去っていった。暫くしてナーティが戻ってきた。
「なぁなぁ、あんた負けちゃったのかよ、どうするんだ。」
「すまない。私としたことが・・・。」
そう言いあっていると先ほどのガタイのいい男達が寄ってきた。
「さて、お前達はここの賭博場に借金が出来ちまったわけだな。さ、追加分の10000Gを払ってもらおうか?」
なんとナーティは、双子の賭け分だけではなく、更に借金をして賭博を行っていたのである。
「そんなお金もうないよ! ナーティ、どうするのさ!」
「すまない・・・。」
そんな様子を見て、男達が笑いながら言った。
「金がないのかぁ・・・だったらその分稼いで貰おうかね!」
男達はセレナ達をつかむと、賭博場の奥から暗い地下道へと連れて行く。そしてその地下通路の先は、何と牢獄だった。三人は牢獄に投じられてしまった。
「おい! 出せよ!」
「暫くしたら出してもらえるぜ。十分リゲル様のために奉仕するんだな。がはは。」
男達はそう言いながらまた地下道に入っていった。どうやら賭けに負けた人間はここに送られる仕組みらしい。
「ねぇ、これって姉ちゃんが言ってたみたいじゃない・・・。飛んで火に入る夏の虫・・・。」
「な? だから言っただろ? あたしの言う事は正しいのだ。」
セレナが得意げ言う。シーナはそんなのんきな姉に怒鳴りつつ、心配そうにナーティに尋ねる。
「何喜んでるのよ! ・・・どうするの、ナーティさん。」
「ふう・・・。演技も疲れるものだな。」
ナーティがやれやれと言った様な素振りを見せながら、牢に投じられた時についたホコリを落としている。
「演技って・・・。 まさか、ナーティさん、わざと負けたの?」
「ああ。これで・・・自由に総督府の中を調べる事ができる。」
「自由? 何言ってんだよ。あたしたち囚われの身じゃないか。」
「ここは・・・総督府の中だ。こうして賭けに負けたものに強制労働をさせるのだ。賭博場での収入に加え、こうして労働力も確保しているというわけだ。」
「なるほど・・・。でも、そんなにうまく行くのかな。」
シーナはやはり慎重だ。確かに囚われの身で総督府の中を自由に歩き回る事などできるものなのだろうか。
「大丈夫だ。リゲルのことだ、女には心を許す傾向がある。うまく事を運べば相手の隙をつくことも容易だ。今回は情報を収集する事だけに集中するのだ。
この少人数だし、リゲルを倒そうとは思ってはいけない。わかった、特にセレナ。」
「何であたしを名指しで言うのさ! 全く信用されてないんだから。」
セレナがまた膨れ面をしてみせる。ナーティにはそれがたまらなく可愛く見えるようだ。
暫くすると、先ほどの男達とは違い、正装をした総督兵が牢の扉を開けた。
「お前達、外に出ろ。リゲル様がお呼びだ。」
そういって総督兵たちがセレナ達を連行する。中は意外と警戒感が無い様で、兵も疎らだ。
「セレナ、シーナ。中のつくりを良く覚えておけ。後で再び侵入した時に迷わない為にな。」


126: 見習い筆騎士('-'*) 56J2s4XA :05/11/09 00:49 ID:gAExt6/c
こんばんわ。どうも横書きでは読みにくいと言う人は
ttp://nagumo-hij.hp.infoseek.co.jp/novel/mado/mado.html

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今日はそれだけです。。

127: 手強い名無しさん :05/11/11 15:01 ID:E1USl4sQ
三人はひときわ豪華で大きな扉の前まで連れてこられた。
「さぁ、この中にリゲル様はいらっしゃる。しっかり働いて来いよ!」
総督兵がそのまま三人を部屋に押し込む。中には無数の女達と賭博場で見たあの長身の男・・・リゲルが居た。
「リゲル様、先ほどの者どもを連れてまいりました。」
リゲルは周りにまとわりつく女どもから目を放し、セレナ達のほうを見た。
「ご苦労・・・。くっくっく・・・また私のコレクションが増えそうだな。三人とも美しいではないか・・・。」
リゲルはそう言いながらセレナ達に近づき、まじまじと顔を見る。
「な、なんだよ。」
「おう・・・威勢のいい少女だ。劣悪種でなければ・・・私のコレクションでも5本の指に入るところだったのにな。実に惜しい・・・ふっふっふっ。」
そういうとリゲルは、セレナとナーティを部下に命じて部屋から外に出す。その間に、リゲルはシーナの顔に手を伸ばした。
「優良種でありなおかつ美しい・・・。お前は私のコレクションに相応しい!」
その手を払いのけようとするシーナに、すれ違いざまにナーティが耳打ちした。
「いいか、どんな事があってもリゲルを怒らせるな。我々は情報を収集する為に潜入しているのだ。・・・シーナ、お前なら大丈夫だ。がんばってくれ。」
立ち止まるナーティに総督兵が鞭を打ちながら部屋の外に出す。シーナは自分ひとりだけ離されて、リゲルの元に残された事に不安を感じたが、同時に自分に課せられた任務をどうにかうまく遂行しようと考えた。

外に出された二人に、総督兵が何かを持って寄ってきた。
「おい、これに着替えろ。リゲル様の命令だ。それを着てそこら辺を掃除でもしてろ。」
渡されたのは侍女服と雑巾だった。
「げぇ・・・何だよこの服。 あの男、気持ち悪いし趣味も悪いのかよ・・・。」
「腰元か・・・。私の趣味には合わぬ服装だが・・・今回ばかりは止むを得まい。」
仕方なく着替える二人。それを見届けると総督兵たちは去っていった。 一体自分達は何をしにここに来ているのかわからなくなりそうだった。
「シーナ、大丈夫かなぁ・・・。 あいつって意外と気が小さいんだよね。」
「大丈夫だろう。リゲルも気に入っていたようだし。・・・さて、これである程度は自由に館内で身動きが取れるな。奇襲に使えそうな出入り口や、館内のつくりを今のうちに覚えるぞ。」
「うん、こんなところさっさとおさらばしたいしね。」
二人は掃除をする振りをしながら、館のあちこちを探索して回ることにした。

一方、アレン達はアクレイアでもスラブ街と呼ばれる貧困層、つまり人間族が集まる地域に来ていた。先ほどの商業地域とは違いひっそりとしている。
それに下水やゴミ処理施設が整備されていないのか、悪臭が漂っていた。まさに繁栄世界の裏の闇を浮き彫りにしている。
住民達は襤褸切れを羽織り、芋つるを煮て食事を取っていた。しかしその水も何処で汲んできたものだろうか、結構濁っている。衛生状況は最悪だ。
「ここは・・・酷いな。 さっきの場所とえらい違いじゃないか。」
クラウドは目の前の現実に驚きながら、そんな言葉を漏らした。もはやそれしか言う事のできない悲惨な状況だ・・・。
「ああ・・・。俺が昔来たときにも貧困街はあったが、こんなに酷くはなかった。国もある程度貧困者を援助しているようだったし・・・。今のここは・・・まさに地獄を具体化したような場所だ・・・。」
アレンも変わり果ててしまったエトルリアにただ驚くしかなかった。あのころも貧民街は酷いところだと思ったが、そんなレベルとはワケが違った。
「酷い・・・。イリアも・・・こんな事になっているのでしょうか・・・。」
惨状を目の当たりにし、アリスは祖国を考えてしまった。祖国も統治体制が崩壊しているはず。そうなれば弱者救済、ことのほか人間族への救済は皆無のはず・・・。更にイリアはその一年の大半が雪と氷に閉ざされる極寒の国。冬にここのような生活をしていたら・・・。
「わかりません。しかし、エトルリアを救った後、すぐにでもイリアへ向かいましょう! まずは目の前の問題を解決しましょう。」
アレンに励まされ、下を向いていたアリスが前を向く。俯いてはいられない。
しかし、一行は別の不可思議な現象に気づく。・・・女性の姿が見当たらない。何処を見ても男と子供だけしか居ないのである。
不思議に思った一行は、人だかりが出来ているのを見つけ、その真ん中に居る若者に聞く事にした。
「青年、ちょっとお尋ねしたい。」
アレンがその青年に話しかける。青年は少し警戒したのか、一歩距離を置いた。


128: 手強い名無しさん :05/11/11 15:02 ID:E1USl4sQ
「なんでしょうか?」
「何故ここには女性が居ないのですか? 先ほどから全く見かけないのですが。」
その青年はアレンたちを総督兵だと思ったらしい。旅の者と分かった途端、接し方も、回りの視線も変わった。
「女性達は・・・皆リゲルという総督のところに身を売りに言っているのです・・・。 貧困層の人たちは今日食べるパンにも困っているのです。それで仕方なく・・・酷い事です。」
リゲルは女性であれば、人間といっても寛大だった。だから女性達は僅かな現金を得る為に、リゲルの元に身を売りに行っていたのである。リゲルの周りにいた無数の女性の多くは、スラムの女性達だったのだ。
「何ということだ・・・。 しかも、風紀を向上すべき統治者自らがそんなことをしているとは・・・。」
アレンはただ驚くしかなかった。そしてそれと同時に怒りもこみ上げてきた。
「ひでぇヤツだな。そのリゲルってヤツは。 あーっ 余計にぶっ飛ばしたくなってきたぜ!」
「ええ、全くです。ただ、全てを力で解決しようとするのはいただけませんが。」
その青年は熱くなるクラウドを鼻で軽くあしらった。
「なんだよ、お前。むかつくヤツだな。」
「ムカついていただいて結構です。僕達はできるだけ争いによって犠牲が出ないように総督府を倒そうとしているのです。」
「くーっ! ムカツク!」
頭から湯気が出そうなほど熱くなっているクラウドをアリスがなだめながら聞いた。
「え、じゃあ、ベルンに対抗してる秘密組織って言うのは・・・。」
「そうです、僕達の事です。」
それを聞いてアリスは泣きつくクラウドを放り出して更にお願いした。
「お願いです。リーダーのパーシバルという方に会わせてください!」
アリスたちが事情を話すと、青年は快く了承してくれた。
「そうですか、それは僕達にとっても朗報です。さ、リーダーはこの奥におられます。」
一行は青年に案内され、スラム街の一番奥の家についた。中からは黒い煙が上がっている。
「こちらです・・・って! わぁ、またララムさんがなんか作ってるな!」
青年は家の中に走りこんでいった。一行もそれを追う。ララム・・・聞いた覚えがあるな・・・。確かダグラス様の養女様だったか・・・。その方もおられるのか。アレンはそう思いながら家の中に入った。
「遅かったな、セレス。」
「パーシバル様! どうしてララムさんに料理をさせるんです!」
「私は関与していない・・・。パント様が怖いもの見たさに作らせているんだろう・・・。」
その二人の会話を聞いて、アリスはびっくりした。アトス様が仰っていた、パント様の孫・・・セレスが今目の前に居たのである。
「貴方がセレスなのね! あぁ、神に感謝します。」
一行はパーシバルとセレスに事の全てを話した。最初は信じられないと言う様な顔をしていたが、暫くしてパーシバルが口を開いた。
「そうか・・・ロイ様の姫様達が・・・。姫がおられるということは結局あの後二人は結ばれたわけか。今頃天国で仲良くしているだろう・・・。」
「いえ・・・。お二人は、あの戦争が終ったら一緒になろうと約束しておられたようです。それが・・・あんなことになって。結局お二人は結ばれる事もないまま・・・。」
アレンが泣き出しそうになりながら語った。ベルンを後もう一歩というところまで・・・幸せをつかむまであと一歩というところまで迫っていた二人を襲った悲劇。それを救えなかった自分・・・。そう思うとアレンには今でもたまらなく辛かった。
「・・・。しかし、その姫様方ががんばっておられるなら、この大陸もきっと救われるだろう。我々も、貴殿らのお役に立ちたい。」
「感謝いたします。我々で力を合わせ、エトルリアにかつての栄光を取り戻しましょう!」
アレンとパーシバルはがっちりと握手した。パーシバルはこのとき、待っていた時が来た。この時を逃せば、二度はないと自分に言い聞かせていた。その様子を見てパントはいつもどおり穏やかな顔をしていた。
「アトス様・・・。炎の天使の使いが来ました・・・。時は満ちました。今こそ我々は立ち上がります。どうか見守っていてください。」
クラウドとアリスは、奥へ走っていったセレスを追って扉を開けた。するとその途端真っ黒な煙がもうもうと立ち込めた。
「うわっ、なんだ?!」
「おい、閉めろ! 何であけるんだ! ララムさん! もう止めてくださいってば! 普通の料理はこんなに煙は出ませんよ!」


129: 手強い名無しさん :05/11/11 15:03 ID:E1USl4sQ
暫くしてセレスが部屋から出てきた。顔は煤だらけである。
「ははは、お前何だよその顔!」
クラウドがセレスの真っ黒になった顔を見て笑い出す。セレスは怒ったように反論する。
「人の顔を見て笑い出すとは失礼な人ですね。先ほどから荒い人だと思っていましたが、やはり野蛮人でしたか。」
「なっ、何だとこのやろう! くそぅ、さっきから俺の事バカにしやがって! 何処が野蛮なんだよ!」
「全部です。」
「何をぅ!? 姉貴、何とか言ってやってくれよ!」
クラウドがアリスに助け舟を求める。
「セレスさん。無理を承知でお願いがあるのだけれど、フォルブレイズの書を・・・。」
「先ほども言いましたが、これは私がアトス様から直々に継承を許されたものなのです。まだ僕は貴女達を認めたわけではありませんから。」
そういうと外に出て行ってしまった。確かに従兄妹は見当たらないし、いくら盟友といっても出会ったばかりに人間に、はいそうですかと渡せるほどの物ではない。アリスは何とかあの子に信用してもらわなければと思っていた。
「かー、なんだよ。あの石頭! すかした喋り方しやがって! まるでどこかの女傭兵みたいだ!」
クラウドはまだ興奮が収まっていなかった。そこへパントが寄ってきた
「お若いの、どうもうちの孫が悪いね。あの子は不器用なところがあってね、ああ見えてもきっと君のことを親友だと思ったんじゃないかな。知り合い以外には気を許さない子だから。まぁ、仲良くしてやってよ。」
そういわれてやっと興奮の収まるクラウド。親友かぁ・・・西方では同年代の男の親友は少なかったからなぁ・・・。そう思いながら、クラウドは父親の元へ戻った。

そのころセレナは、家政婦姿で怪しまれない事を良い事に、屋敷内を徘徊していた。
「うわー、これすげー。ねぇねぇ、ナーティ。この像全部金で出来てるよ!」
駆け寄って金製と思われる像を触ったり、それに顔を映したりしてみる。
「やれやれ・・・。好奇心旺盛なのはいいがもう少しわきまえてくれよ。私達がここに居る目的を思い出せ。」
ナーティはセレナの首根っこを引っ張って像から降ろす。しかし、あまり威圧感はない。何時も格好ではないからだ。傭兵の服に細い騎士剣・・・ではなく、侍女服にホウキだ。どうも笑えてしまう。
「ぷぷっ。」
セレナは今までは我慢していたが、とうとう堪えられずに声が漏れてしまった。
「なんだ、いきなり。」
「だってさ、ナーティのその格好・・・。意外と似合ってて・・・あははっ。」
「う、うるさい! 私とて趣味で着ているわけではないのだ。言ってくれるな・・・。」
そうやって話を弾ませていると、向こうから怒鳴り声が聞こえた。
「おい! 劣悪種共! しっかり働け! さもないとお前らの連れがどうなっても知らないぞ!」
そうだった。シーナは半人質状態なのだ。行動を慎まないと・・・。ナーティはセレナを連れ、そのまま館の中のつくりや情報を仕入れようと再び動き出した。暫く歩いていくと、城の外に出られる場所を発見した。そこにはずらっと大きな機器が並んでいる。
「うわー・・・これはなんだ・・・?」
「それはアーチ発射台だ。噂には聞いていたが・・・これほどまでに並んでいると壮観だな。」
「アーチ台?」
「そうだ。遠くの敵に対して攻撃の出来る投擲台だ。お前には大きい弓といったほうが分かりやすいだろう。」
「なるほど・・・。」
「外から攻めてくる者はこのアーチの一斉掃射で一気に壊滅へと追い込まれ、そこへ歩兵が突撃されて息の根を止められるのだ。」
「ふーん・・・。だから容易には攻撃を仕掛けられなかったんだね。」
「そうだ。だから中に侵入する経路を予め探しておく必要があったのだ。・・・よし、他の場所も探してみるぞ。」

そんな日が三日ぐらい続いた。今日もセレナ達は雑用、シーナはリゲルの相手である。
リゲルはシーナを気に入ったようで、ずっと傍に置いて放さなかった。いわゆる「コレクション」の仲間入りを果たしたようである。
「くっくっく・・・。お前ほどの美形はそうそうはおらぬ。まだ幼さも残す容姿、雪のように白い肌、そして細く美しい肢体・・・フッフッフッ、私の求めていた美しさをお前は持っている・・・。」


130: 手強い名無しさん :05/11/11 15:04 ID:E1USl4sQ
リゲルがシーナの顔を手で撫でながら言う。シーナは心の中では逃げ出したい気分だったが、何とか情報を手に入れようと抵抗しなかった。
それに・・・周りの女性達から聞いた。この女性達は生計を立てるために嫌な思いをしながらリゲルにつかえているのである。それに比べれば・・・。
「私もリゲル様は最高にお美しいと思います。」
「くっくっくっ、そうだろう。我々は優良種の中でも特に美しいのだ・・・。お前と一緒に来た連中も、表面は美しいが、中に流れる血は劣悪種のもの。内も外も綺麗でなければ美しいとは言わんのだよ。」
「そうですね・・・。」
「ところで、お前は劣悪種をどう思う?」
姉達の事を汚く言うのは本当に心が痛む。・・・しかし、ここでホンネを言ってしまっては今までの苦労が台無しだし、周りの女性達を救うことも出来ない。
「醜くて・・・野蛮で・・・邪魔な存在だと思います。」
「そうだろう、そうだろう。ふふふ・・・お前は姿形だけでなく、考え方も美しいようだ。そうだ、今日の天馬の刻、私は劣悪種を一掃する為、スラムを襲撃する。お前も一緒に見物に来ないか?」
「えっ!?襲撃?!」
「そうだ。アクレイアの風紀が乱れているのは、醜くて野蛮で邪魔な劣悪種のせいだと私は考えた。だから、このアクレイアから根絶やしにすれば、アクレイアはもっと住みよくなる。」
「そうですね! 私もお供させてください!」
「くっくっく・・・お前ならそう言うと思っていたよ。じゃあ、私の美しいコレクションたち、私はその作戦を練るから、今日の宴はお開きとしようか。」
リゲルはソファーから立ち上がると、マントを翻し、隣の作戦室に入っていった。
その夜、牢獄に戻ったシーナはセレナ達に牢獄越しに先ほどリゲルが言っていた事を伝える。セレナ達の牢獄に方には、他の人間の女性も多く囚われていた。・・・スラム街の女性達である。女性達はセレナ達の正体を知っていたから、口々にセレナ達に救いを求める。セレナもこれ以上この人たちの泣き顔は見たくなかった。牢獄に囚われてから三日経つが、牢獄に戻ってくる女性達は皆泣き崩れていた。シーナも泣くまいと堪えていても、姉の顔を見るとやはり泣き出してしまう。セレナは妹を泣かせるリゲルが許せなかった。
「なぁ、ナーティ、情報もある程度収集したし、そろそろ親父たちと合流して一気にリゲルを倒そうよ。」
「そうだな・・・。アレン殿たちはきっとスラムへ出向いているはず。リゲルに狙われる前に対抗組織とコンタクトが取れていればよいが・・・。」
「姉ちゃん、悩んでる暇はないよ。急いで脱出してリゲルの蛮行を止めないと!」
三人の意志は同じだった。一刻も早く脱出して、アレンや対抗組織と合流する。そして総督府を倒す。しかし、その意志を、目の前の鉄格子が阻む。
「くそぅ・・・こいつをどうにかしないと・・・。」
「セレナ、お前のあの必殺魔法、あれと私の魔法で一気に鉄格子を吹き飛ばす。少々手荒だが致し方ない。鉄格子を破ったら一気に地下通路まで走れ。」
「わかった。」
二人は鉄格子めがけて気を集中し、大気中のエーギルを集める。巡回していた総督兵がそのエーギルの異常な流れに気付き寄ってきた。
「おい、お前達何をやっている!」
その総督兵を巻き込んで、二人は溜め込んだエーギルを一気に魔法として放出した。
「ホーリーランス!」
光の槍が無数に二人から放たれる。その槍は一気に鉄格子を突き破り、寄ってきたベルン塀を壁にたたきつけた。砂煙が上がり、視界が開けたときに壁を見ると大きな穴が開いていた。
「よし、総督兵が駆けつける前に一気に脱出するぞ。他の者達はここに残っていてくれ。必ず助けに戻ってくる!」
三人は電光石火の勢いでもと来た地下通路を通り、賭博場からカフェを抜けて一気に外に飛び出した。そして夜の光と闇に紛れてわからなくなった。

同刻、アレン達は着々と反乱の為の準備をしていた。武器に消費物資に・・・色々大変だ。戦は補給が絶たれては勝てない。
だから今のうちに用意する。更に総督府に気付かれないようにする必要もあった。念の入れように過剰という言葉はない。
「ん? パーシバル殿、この剣は・・・?」
「ああ、その剣はドラゴンキラーだ。相手がベルンということもあるし、18年前のように改造竜石を総督府が所有しているという事も考えられる。アレン殿も一本は携帯しておくといい。」


131: 第十四章:歪んだ正義 :05/11/11 15:08 ID:E1USl4sQ
そうだ・・・。18年前、エトルリア軍を半壊に追い込んだあの改造竜石。もしあれを使われたら厳しい戦いとなる。いや、街中で使われようものならハーフの者達にだって命の危険が迫る。特効剣で一気に切り崩す事以外に解決法はない。
こんな準備の間にも、アリスはなんとかセレスに心を開いてもらおうと必死だった。
「やっぱりセレスは魔道師なのね。私も光魔法の練習をしているのだけど、なかなかうまくいかなくて。」
「ええ、僕の祖父は伝説の八神将の一人、大賢者アトス様の唯一の弟子でしたから。僕もその祖父を師と仰ぎ、基本的なことから学んできました。」
「そうね、貴方のお爺様はかつて魔道軍将をお勤めになられたほどらしいですしね。」
「はい。そして僕も、とうとう理の神将器を扱う事をアトス様から許されたのです。アリス様はプリーストなのですから、攻撃より味方の援護に徹したほうがよいのでは? 僕も癒しの杖の研究をしていますが、思うように出来なくて・・・。」
そこへクラウドが話しに入ってくる。
「へぇ、お前も杖が使えるのかよ。なぁなぁ、俺さっき怪我しちゃったから使って見せてくれよ!」
セレスにクラウドが腕を見せる。先ほど武具を移動させる際に擦り傷を作ったようで、赤くなっていた。セレスはそれを手ではたいた。
「いってー! 何しやがるこのやろう!」
「まったく、杖も無限に使えるわけじゃないんです。騎士ともあろう人間がそんな擦り傷で騒がないでください。」
「いちいちむかつくヤツだな。・・・ははーん、お前、本当は使えないんだろ?」
「な、何を言うんです。僕は破壊も癒しも扱う賢者なのですよ? 仕方ない、見ててください。」
セレスが自信満々にクラウドの腕にライブの杖をかざす。そして、気を集中し、その気を杖に送った。その瞬間だった。
「!? うぎゃっ。」
クラウドが悲鳴を上げて倒れこんでしまった。・・・どうやら失敗したようだ。
「何!? こんなはずは・・・。」
「いってぇ! 何だよ、やっぱお前使えないんじゃん!」
それにしてもこの二人、面白いように性格が正反対だ。アリスは二人の会話を聞いていると、まるでコンとでも見ているかのような感覚に襲われた。そんな騒ぐ二人の元にパントが寄ってきた。
「やれやれ、セレス。世の中にはお前より腕の立つ魔道師などいくらでも居る。余計な自信は捨てること。自信を持つことは悪くないが、過剰な自信を自信とは言わぬ。それは驕り、慢心というのだ。」
「はい・・・。申し訳ありません。」
「魔法を破壊に使うも、癒しに使うも、それは使い手次第。両立できてこその魔法だ。お前は破壊魔法は一級品だが、癒しはまだまだ素人。精進しなきゃいかんよ。」
「はい。クラウド・・・その・・・すまなかった。」
「へへっ、いいってことよ。それよりさぁ、フォルブレイズって見てみてぇなぁ! なぁなぁ、見せてくれよ!」
「ダメです。これは見世物じゃないんです。まったく、謝ったのがバカらしくなってくる・・・。」
「何だよ、ちぇ、連れないヤツ。」
そんな会話をしていると、なにやら突然あわただしくなってきた。向こうでは爆発するような音もする。一体何が起きたというのか。その方向に向かうと、血まみれの男が寄ってきた。
「皆さん、一体どうしたんです!?」
「ああ、セレス様、大変です! 総督府の奴らがここに攻めてきてやがる!」
「な、なんだって・・・?!」
まだ準備も万端でなく、皆調達などに出かけている為戦力も整っていない。総督兵たちが好き勝手に暴れている。そこにパーシバルが走ってくる。
「セレス、住民を奥に避難させろ。この状態で戦っても勝ち目はない。一旦退くのだ。」
後退する事は悔しかったが、今出て行って犬死しては元も子もない。かつて大国の軍の頂点に居たパーシバルにとっても、後退という選択は身を切る思いだった。
「撃て撃て! 全てを紅に染めつくすのだ! がははっ。」
リゲルは配下に命じて火矢をスラム街に撃ち続けた。簡素なつくりの家々は瞬く間に火に包まれる。逃げ惑う人々。
「くっくっく・・・このアクレイアに醜悪な存在は必要ない・・・。今日この場で全てを焼き払い、アクレイアに平和をもたらす。」
レイピアを鞘から抜き、逃げ惑う人々に向かって馬を走らせていく。その目は狂気に満ちている。しかも、その心に罪悪感はない。これこそが正義と思い込んでいるのだ。



132: 手強い名無しさん :05/11/11 15:08 ID:E1USl4sQ
「はっはっは・・・。何処まで逃げるつもりだね! 今日の私は何時もと違って紳士的ではないのだよ・・・私のコレクションが逃げ出してしまったからね・・・。」
とうとう追いつき、逃げている人の背中にレイピアの鋭い突きをお見舞いする。半裸同然のスラムの人々は為すすべなく倒された。スラム街は血の赤と、火の紅で真っ赤に染まった。繁栄を誇るエトルリア内での流血・・・しかもそれが統治者による住民への攻撃・・・あってはならないことだった。
「はっはっは・・・美しい・・・。この鮮血と業火の赤が、私の勝利を美しく飾る・・・。劣悪で醜いものは地獄に落ちるのだ!」

攻撃は1時間足らずで終った。リゲル達が去った後には、おびただしい血の海と、真っ黒になった町並みが、赤く怨恨の炎をくすぶらせるという、同じエトルリア内とは思えない惨状が残った。
「くそっ、遅かったか!」
その瓦礫の山に、ようやくセレナ達が到着した。総督府から脱出してスラム街を目指したが、アクレイアの中央から一番隅まで歩くには時間がかかりすぎた。火の手が上がったのを見て急いだが、手遅れだった。
「酷い・・・。これみんな、総督府の・・・リゲルの仕業だよね。」
シーナも許せなかった。これが、心の美しいもののすることか、「優良な」種族のやる仕業か。シーナのリゲルに対する怒りは頂点に達していた。
「・・・悔やんでも仕方あるまい。皆が生き残っているか探すしかない。」
三人は瓦礫の山と化した街を歩く。暫くすると人影が見えてきた。どうやら生存者が居るようだ。
「ちくしょう! 俺たちは見てるだけで結局何も出来ないのかよ! 俺たちは何の為に西方を出てエトルリアまで来たんだ! ・・・ちくしょう!」
「クラウド、落ち着いてください。あの状態で戦っても勝ち目はありません。相手は準備万端なのですから。・・・街は失いましたが、殆どの者はうまく逃げ切ったようです。」
「でもよう・・! なぁ、パーシバル将軍、あんたもこのまま手をこまねいて見てるってワケじゃないんだろ?!」
「勿論だ・・・。この借りは必ずや返す・・・!」
アレンは熱くなる息子を押さえながらふと総督府側を見た。すると、なにやら人影が見える。思わず剣に手が行くが、次第にその輪郭が明らかになってくると、アレンは安どの表情を浮かべた。
「セレナ、シーナ、無事だったか!」
「親父! これは一体どう言う事!? ここは街なんでしょ?!」
アレンはセレナ達と互いの情報を交換し合った。そして、反撃を開始する事に決めた。
「そうか・・・姫様方があのロイ様の・・・。」
パーシバルがセレナ達に寄ってきて顔を見る。・・・似ている・・・。顔つきも、後姿も、物事を真っ直ぐ見る眼差しも・・・。
「あなたがパーシバル様?」
「いかにも。これから我々は総督府を倒す為に攻撃を仕掛ける・・・そのお力是非お貸し願いたい。」
「もちろん! あたし達だってもうこれ以上あの総督を許しておけないし、ねぇ、みんな!」
セレナが仲間のほうを見る。皆既に覚悟を決めているようだ。
「おう! リゲルとか言う野郎! ぶっとばしてやる。 なぁ!セレス!?」
「今回ばかりは君と意見が同じようですね。僕もリゲルは許して置けません。」
皆士気は最高潮だ。中央で虐げられ、隅で何とか暮らしていたがそれすら否定され、帰るところも失った。もはやこの上状況を打開する為には総督府を倒すしかない。全てを力で解決するのはあまり好ましい事ではない。しかし、もはやこれしかなかった。
「我々も・・・貴方達に協力します! 私達も・・・ここの住人ですから・・・。」
そこに現れたのは・・・このエーギルの波動は・・・なんとハーフだ。セレナ達は最初は驚いたが、すぐにここの住人である事に気づいた。
結構な人数が居るのである。それは商売に失敗したり、リゲルに捨てられた女性なども含まれていた。
「私達ハーフを・・・人間達を蔑視するハーフを、ここの人たちは受けて入れてくれました。」
「あぁ、俺たちは考え間違いをしていたんだ。今のベルンの思想は間違ってる。同族として恥ずかしいよ・・・。」
「皆思想統制されてるんだ。俺も子供のころから人間は劣悪だと教えれてきた。だが・・・それが間違っている事にようやく気付いた。中に流れてる血なんて関係ない。問題なのは劣悪な心なのだと。」
セレナ達はハーフの中にも現状が間違っていると思っているものが他にも居る事に勇気付けられた。そして、いつかはこの考えが世界に浸透するように願った。そのためにも、自分達は前進あるのみだ。
「ありがとう! よぉーし、一気に進撃してエトルリアに光を取り戻そう!」


133: 手強い名無しさん :05/11/11 15:09 ID:E1USl4sQ
セレナが皆に掛け声をかける。皆は声を張り上げ、最高潮の士気を更に高めあった。進軍の作戦を練る為に一時解散する。その時セレナはセレスに話しかけた。
「よっ、従兄妹!」
「ふむ・・・君がセレナか。元気な子だな。よろしく。」
そこへシーナとナーティも寄ってくる。
「セレスさん、私はセレナの妹のシーナです。よろしくお願いします。」
「よろしく。・・こっちの方はお淑やかだね。」
それを聞いた途端、セレナが怒る。その様子を見てセレスもナーティも笑ってしまった。
「ふっ・・・。私はナーティという傭兵だ。以後お見知りおきを。貴方がティト殿のご子息か・・・。」
「こちらこそよろしく。僕の母上の名は確かにティトですが、貴女は私の母上をご存知なのですか?」
「いや、『疾風の天馬騎士』と謳われた傭兵の鏡だからな。 私の尊敬する人物だ。」
「母上の事をそう言って貰えると光栄です。さ、皆さんも早く奥へ。パーシバル様がお待ちです。」
皆で作戦を練ることになった。しかし、作戦も何も、選択肢は一つしかなかった。街中での本戦を避けて、深夜に総督府へ少数で潜入し、一気に潰す。これしかなかった。その侵入が勘付かれないようにする為にも、街中で騒ぎを起こす必要があった。
そこで、対抗組織の人間がまず街中で反乱を起こし、注意がそっちに向かっている間に、セレナ達が一気に総督府を制圧してしまうという作戦に出ることになった。
しかし、やはり問題はリゲルだった。性格が狂気的な上に、ロードナイトと言うクラスに就いているということはかなりの腕前という事だ。歩兵は分が悪い・・・がこの戦いをものにしなければ、エトルリアは・・・いや世界は終る。セレナ達のとってこの宵が、まず訪れた峠だった。

深夜でも商業地域には静寂という言葉は存在しない。いつでも活気に溢れ、騒がしい。しかし、今日の夜は何か違った。活気によって騒がしいのではなく、怒号と悲鳴によって空が裂けんばかりの騒がしさが商業地域を襲っていた。
「暴動だ! 劣悪種共が暴動を起こしたぞ!」
逃げ惑う商人や、武器を持って反撃するものまで、商業地域は一気に混乱に陥った。その混乱は瞬く間に周辺に広がっていく。とうとう火が放たれる家まで現れる。商人の家に押し入り、小麦の詰まった樽を打ち壊す。それに乗じて火事場泥棒まで現れる。警備をしていた総督兵達だけでは全く収拾がつかない。
そんなときも、リゲルはコレクションたちと戯れていた。まるで他人事のように。
「リ、リゲル様!」
「なんだ、こんな深夜に騒がしい・・・。」
「街中で暴動が起き、収集の着かない状態となっております!」
「何・・・? 劣悪種共は根絶やしにしたはずだろう。それなのに何故だ。」
リゲルは不思議がった。先ほどの戦いでスラム街―劣悪種の巣窟―は叩き潰したはず。それなのに何故だ。
「わかりません・・・暴動は周りへ周りへと徐々に波状しております。どうかご指示を!」
「やむを得ん・・・。総督府の総力を持って鎮圧に当れ。私は遠距離砲の指揮を取る。」
「リゲル様!? 街中に向けてアーチ台をお使いになられるのですか? それだと住民にも被害が出て賛同できま・・・うぐっ。」
ルゲルはその兵に向かって容赦なくレイピアで突いた。レイピアを抜き取り、血を振り払いながら他の兵に言った。
「貴様達は私の僕だ。僕が主人に意見するなど言語道断・・・。お前達は美しい私に従っておればいいのだ、散れ!」
兵達は焦って走り出す。そして、リゲル自身も部屋を出て、大声で叫んだ。
「全軍、戦闘配備に就け! 騎馬隊は暴徒の鎮圧の為に出撃せよ! アーチ部隊はすぐさま主砲の発射準備に取り掛かれ!」
リゲル自身も騎馬兵だが、彼は前線に出ようとはしなかった。前線に出れば遠距離砲の巻き添えを食らう危険性があったからだ。
「フッフッフ・・・。これからの英雄は何も戦場で前に出ている必要はない・・・。安全な作戦室で参謀と作戦を練り、それを部下に伝える・・・これこそが美しい戦い方だ。」

街中では徐々に反乱軍が勢力を広め、総督府に近づきつつあった。
「諸君、私はセレナ殿たちと共に、一気に総督府に侵入する。諸君らは街中で総督兵の勢力を抑えていてくれ。ただし、武器を持たない住民へは絶対に攻撃するな!」


134: 手強い名無しさん :05/11/11 15:09 ID:E1USl4sQ
パーシバルが皆に叫ぶ。そして、次第にあの地下牢へと続くカフェに近づいてきた。セレナ達は一気に地下牢を経て総督府内に侵入するつもりだ。中の構造はバッチリ頭に入っている。警戒レベルも統治レベルも最悪のアクレイアだ。街中で警備していた総督兵だけでは全く歯が立たない。
しばらくして、総督府の騎馬兵隊の第一陣が到着した。反乱軍と壮絶な衝突を引き起こす。こんな密集地帯では安易に魔法は使えない。セレナ達も最前線で一緒に戦う。セレナはナーティもすばやい身のこなしと巧みな剣撃で総督兵を切りきり舞いさせている。シーナは得意の空中遊撃で騎馬兵隊の隊列をうまく乱していく。隊列の乱れた部隊の中で弓兵が弓を構えることなど出来なかった。アレンが渾身の力を槍にこめて一気に突き抜く。その槍は総督兵が構えた槍をへし折り、胸元へと突き刺さった。一撃の元に倒れる総督兵。磨き抜かれた槍術は総督兵のそれとは比べ物にならなかった。
それに負けじとクラウドも総督兵と互角の戦いを見せる。傷は増えてしまうがこれぐらいでギャーギャー言ってられない。そう思っていると後ろからリブローが飛んできた。セレスだ。
「まったく、君だけですよ、ボロボロなのは。しっかりしてくださいよ!」
「うっせ! 俺だってがんばってるんだぜ?!」
二人の会話にはとげがあるように見えた。しかし、それも相手をよく知っての事。一緒になって余り時間は経っていないが、二人はお互いの事をよく理解していた。
戦況は反乱軍有利だった。しかし、相手も数が多い。騎馬兵隊も二陣、三陣とどんどん送り込まれてくる。彼らの武器も、賭博などで住民や旅人から搾り上げた金のおかげで質がよいものばかりだ。しかし、数だけではなかった。こんな密集地域では騎馬兵はうまく機能できないのである。
街中という狭いところでは圧倒的に歩兵が有利だった。
そのまま反乱軍有利で進むかと思われたその時、突然闇夜から真っ赤な火の玉が飛んできた。
「いかん! 下がれ!」
パーシバルの声で一回引く反乱軍。先ほどいた場所に大きな日のついた塊が振ってきて、大きな穴を開けた。
「I? なにこれ!」
セレナが声を上げた。いきなり空からとんでもないものが降ってきたのである。驚くのもワケがない。
「これが・・・アーチだ。まさか市内に向けて撃ってくるとは・・・リゲルは正気か・・・?」
ナーティもこれには流石に驚かずに入られなかった。いくらリゲルでも、同族に被害が出るような戦い方はしないだろうと読んでいたのである。その読みが見事に外れてしまった。
アーチ弾はどんどん放たれてくる。もうこうなっては戦う何処炉ではなかった。無差別に攻撃を仕掛けている・・・というより、アーチにそこまで正確な精度は期待できなかった。総督兵もかなりの数が巻き添えになっている。
「全軍、守りを固めろ! シーナ殿! あなたもあまり上空を飛ばないほうがいい。狙い撃ちにされる。」
パーシバルに指摘され、シーナはペガサスに命じ低空飛行を始める。アーチ弾がまるで流星群の如く降り注ぐ。その火の玉が町を火の海に変えていく。リゲルは平原での戦法をそのまま城下町で行ってしまっていたのである。被害は大きくなるばかりであった。
しかし、暫くしてぴたりとアーチ弾が止んだ。その場に居た全員が、敵味方問わず上空を見上げた。
「しめた、相手はタマ切れだ。次の充填までしばし時間があるだろう。一気に進軍するぞ!」
アーチによる爆撃の少しの合間を縫って進軍し、やっとの事で、反乱軍の最前線がカフェを通過した。
「諸君、では我々は敵将を討伐に向かう。諸君らの善戦を期待する!」
パーシバル率いる精鋭部隊が一気にカフェ何になだれ込む。当然中には人はいない。カフェも奥の賭博場もそのまま騎乗したままで突っ切り、一気に総督府の中に潜入する。
そして、中にいたわずかな総督兵を疾風の如きスピードで沈めながら作戦本部たる遠距離部隊を狙う。
アーチ発射地点では、リゲルが指揮を振るっていた。
「はっはっは! 撃て!撃て! 劣悪種共を見殺しにしろ! 戦いに犠牲はつき物だ!」
その狂気の目がアーチの着弾点に注がれる。そこでは小さな赤い塊が一気に爆発して広がる様があった。
「くっくっく・・・いいぞ!いいぞ! 美しい! 最高だ! はははは!」

そこへ総督兵が血相を変えて走りこんでくる。
「た、大変です! リゲル様!」
その慌てように、リゲルも何かと後ろを振り向いた。
「総督府内に侵入者が・・・がはっ。」
そこまで言うとその総督兵は倒れてしまった。後ろには黒い騎士・・・。
「き、貴様は・・・!」
「覚えていたか、リゲル・・・。今日こそは今までの借りを返させて頂く!」
パーシバルだった。周りにはセレスやシレナ達もいる。


135: 手強い名無しさん :05/11/11 15:09 ID:E1USl4sQ
「お前がリゲルか! この野郎、散々住民を苦しめやがって! 同族として許して置けねぇ!」
「そうよ! それに昨日までの借りをたっぷりと返してあげるわ!」
クラウドとシーナが前に出る。同じ血が流れるものとしてリゲルは許しておけなかった。
「なんだ・・・? 私を裏切った薄汚い豚と、醜い下賎な輩か。貴様たちには用はない、皆のもの、こやつらを討ち果たせ!」
今までアーチ台を操作していた総督兵たちが一斉に弓に持ち替える。
セレナやナーティはその弓兵たちに向かっていく。二人で協力しながら遠距離攻撃をする敵を片付けていく。光速の二刀流でセレナがまた一人、弓兵を斬り倒す。
「へへっ、どんなもんだ!」
そこへ背後から他の弓兵が狙った。剣士であるセレナは、騎士と違いそこまで装甲の厚い鎧は着ていない。身のこなしが遅くなるからだ。しかしそれは防御力は紙であることも意味していた。矢など当ればかなりのダメージを受ける。
「危ない!」
ナーティが駆け寄ってきて、放たれた矢を件で叩き落とす。そして次の矢を番えようとするその弓兵に神速の如きスピードで近づき、一気に斬り倒した。セレナはその闘気に一瞬ヒヤッとした。
「まったく! 気を抜くなといっているだろう! しっかりしろ!」
「ありがとう・・・。また助けられちゃったね。しっかりしないとダメだねあたし。」
「わかったらグズグスするな。」
ナーティはそういうとまた他の敵に向かっていった。あいつ・・・いつもあたしを心配してくれているんだなぁ・・・。あたしが将なのに・・・情けない! がんばらないと!
その間にパーシバルやクラウドにシーナ、それにセレスはリゲルと対決していた。
「貴様ら醜き劣悪種が束になったところで私には敵わん。美しいものは敗北を知らぬのだ!」
リゲルが一気に間合いをつめてクラウドの襲い掛かる。相手はレイピア。レイピアというのは騎士や重騎士に対して特に威力を発揮する突くタイプの細剣で、素早く攻撃することが出来る。クラウドは槍でレイピアの射程に入らないように何とか応戦しているが、なかなか攻撃をあてることも出来ない。
「くっくっく・・・貴様の生兵法では私には勝てぬぞ! 喰らえ!」
とうとうリゲルのレイピアがクラウドのわき腹を貫いた。
「うがっ。」
鎧をしていた為に致命傷には至らなかったが、かなりのダメージを受けてしまう。アリスがすぐさま回復魔法を飛ばす。
クラウドに追撃を入れようとしたリゲルに手槍が飛んできた。リゲルは避けきれずに顔をかすめた。
「兄ちゃん! 大丈夫?!」
シーナだった。重い手槍の扱いにも大分慣れた。今では立派に天馬騎士としてその仕事を果たしている。
「貴様ぁ! この美しい私の顔に傷を着けおって! 許さん! 降りて来い!」
リゲルがシーナに向けて手槍を投げ返そうとした。しかし、その槍を何か光速の風刃が弾いた。エイルカリバーだ。
「僕の従兄妹には指一本触れさせませんよ!」
セレスだ。そのときを見計らい、パーシバルが一気に銀の槍で突っ込む。リゲルは避けきれず直撃を受けてしまう。
「うお・・・っ」
「忘れるな・・・貴様の相手はこの私だ。 エトルリアを蹂躙した罪・・・その身であがなってもらう!」
「くっ・・・ちょこざいな!」
アレンとパーシバルという熟練の騎士二人がリゲルに襲い掛かり、クラウドやシーナ、そしてセレスにアリスがそれを支援する。いくらリゲルがベルン五大牙の一人といえど、歴戦の勇者二人と更に若い力の前に少しずつ押され始める。
とうとうシーナが背中からリゲルを捉えた。それに反撃しようとするリゲルをクラウドが抑える。
「おのれ! 雑魚共めが!」
リゲルがクラウドに向かってレイピアを向ける。この至近距離では避けられない・・・! しかし、次の瞬間、漆黒の剣がリゲルのレイピアを弾き飛ばした。
「!?」
そしてそのまま銀の剣を振り上げ、一気に切り倒した。 パーシバルだ。
「そんな・・・この私が・・・世界で一番強く美しいこの私が・・・こんな劣悪種に・・・!」
パーシバルは静かに剣を鞘に収め、倒れたりゲルに近づく。周りの総督兵を倒し終えたセレナ達も集まってきた。


136: 手強い名無しさん :05/11/11 15:10 ID:E1USl4sQ
「優良か・・・劣悪か・・・。それは流れる血で判断できるものではない・・・。劣悪なるもの、それは悪しき醜い心だ。 お前の心は醜い・・・。」
パーシバルの台詞に、リゲルは逆上した。
「劣悪なものは悪しき心だと!? 私が醜いだと!? ふざけるな! 私の母上を・・・抵抗もしなかった我が母を殺した人間が! 軽々しく語るな!」
「それが・・・お前が人間を恨み蔑む理由か・・・。」
ナーティが訊ねる。そうだった。リゲルは幼いころ、人間によってその母を虐殺されていたのである。弄るだけ弄って最後には殺してしまった。まるで人とは扱わないかのように。その日からリゲルはおかしくなっていた。美しい母様を殺した人間は醜い生き物であると言い聞かせ少年時代を過ごした。その環境が彼を狂気的な人へ変えてしまったのである。
「そうだ! 貴様らこそ醜い心の持ち主だ! 劣悪種と呼ぶに相応しいのだ! お前達は私と道連れにしてくれる!」
そう言うとリゲルは懐から何かを取り出した・・・。
「!? いかん! 皆離れろ!」
ナーティが皆に叫んだ。次の瞬間、凄まじい閃光と衝撃波がリゲルから発せられ、目を開けて散られなくなった。アレンやパーシバルにはわかった。これは・・・改造竜石! 
案の定、目の前には大きな翼竜が現れた。その目は狂気に満ちている。
「な・・・っなにこれ・・・。」
あっけにとられるセレナ達。セレナ達は竜を見るのは始めたの事だった。その大きさに仰天しながらも、なんとか倒す方法を模索する。
「消えろ! 消えろ! 貴様ら劣悪種は滅びる運命にあるのだ!」
翼竜と化したリゲルは空中からブレスを放ってくる。先ほどの衝撃で総督府は天井が吹き飛び、まるで闘技場の如く何もない空間になっていた。
「くそっ、空中に居られたのではドラゴンキラーも役に立たないではないか!」
アレンが歯軋りした。せっかくのドラゴンキラーも空中に相手が居るのでは届かない。
その間にも、容赦なくリゲルはブレスを吐きまくる。狭い足場では避けることもままならない。
セレナとシーナが空中に舞い出た。二人なら空中攻撃をすることが出来る。
当為の二刀流ドラゴンキラーで一気に・・・。セレナはそう考えていた。しかし、相手とは実力が違いすぎた。リゲルに翼で体当たりを喰らい、空中から地面へ叩きつけられてしまった。
「うあっ!?」
「セレナ!」
アレンが走り寄る。体を強く打ったためか、体が動かない。パーシバルも手槍で反撃するが、硬い鱗の前に全くはがたたない。
「そうか! フォルブレイズだ! セレス、フォルブレイズを撃て!」
パーシバルがセレスに叫ぶ。しかし、この狭い足場で絶えずブレスが吹きすさぶのでは、フォルブレイズのような高位で詠唱に時間のかかる魔法など撃てるはずもない。
「劣悪な心を持つ貴様らこそが劣悪種だ! 劣悪種をこの世から排除することの何がおかしい! 貴様らは滅んでしかるべき種族なのだ! フッフッフ・・・燃え尽きろ!」
その圧倒的な力の前に、どんどん消耗していく。このままでは皆が危ない・・・。そんな時、セレナは自分の奥からあの声が聞こえてくるのを感じた・・・まずい!
「・・・? セレナ? どうした?」
セレスを抱いていたアレンがセレナの異変に気付く。・・・何かをつぶやいている。その声は次第に大きくなり、皆に聞こえるほどになってきた。
「ワレニ アダナスモノ、スベテ ソノ チカラヲ モッテ、メッセヨ。」
「! まずい、アレン殿! セレナから離れるんだ!」
ナーティが叫び、アレンをセレナから離れさせる。その途端、セレナが起き上がり、翼を広げたかと思うと一気に空中まで飛び上がった。さっきまで身動きが取れなかったはずなのに。
「セレナ!? 一体どうしたんだ! そんな状態で行ったら危険だ!」
アレンが呼び止める。しかし、本人には全く聞こえていないらしい。光の槍の魔法を放ちながらどんどんリゲルに近寄っていく。
「まずい・・・セレナが力の暴走を起こしている・・・しかも完全に。今のあいつは、意思に反して体が勝手に動いている状態だ。何を言っても通じない・・・。」
「そんな!」
皆はただ見ているしかなかった。性格が豹変している・・・。


137: 手強い名無しさん :05/11/11 15:10 ID:E1USl4sQ
「あはははっ。 私に歯向かう者は皆塵に変えてくれる! 消え失せろ!」
詠唱もせずに魔法を連射する。それに怯んだリゲルに目にも留まらぬスピードで剣撃をお見舞いする。持っているのはただの鉄の剣のはず。鉄の剣で竜相手にダメージを与えられるはずがないのだが、リゲルは反撃はおろか、仰け反ってしまっている。
「ぐわっ、何だ・・・この小娘の力は・・・! 体が・・・動かぬ・・・。 うがっ・・」
リゲルが悲痛なうめき声を上げる。そんなリゲルの反応を楽しむかのように、セレナは攻撃を休めるどころか逆に激化させる。
「ぎゃはははは! もがけ!苦しめ! 全てのものは私の前にひれ伏すのだ! 逆らうものは微塵に砕けろ!」
鉄の剣が、リゲルの硬い鱗を突き破った。一気に崩れ落ちるリゲル。だが、それでも攻撃を止めようとはしない。
「あははははっ!」
見かねたナーティがセレナに近寄る。そして、何とか大人しくさせようとした。
「セレナ、落ち着け!」
セレナはそちらを鋭く睨んだ。シーナはその目を見てゾクっとした。鋭く光る眼光に、血走った目、そしてどこか輝きのない瞳・・・今の姉は自分の知る姉ではなかった。
「私に命令するのか? 面白い。」
セレナが今度はナーティに刃を向けた。ナーティは避けているが攻撃は出来なかった。
「どうしたどうした! ぎゃはははは!」
「やむを得ぬ・・・。」
ナーティは仕方なく剣を抜き、セレナに向かって突撃した。その際、セレナから強烈な一撃を貰ってしまう
「くっ・・・。」
気が薄れそうになるほど強烈な力。こんな小娘の何処からこのような力が沸いてくるのか・・・。そう思いながらも、ナーティはセレナの翼を切りつけ、怯ませた。
「ぎゃああ!」
間髪居れずにみぞおちを殴りつけて気絶させた。・・・やっと静かになる・・・。
「はぁはぁ・・・この・・・手間をかけさせて・・・。」
ナーティも倒れこんでしまった。一堂があっけに取られていると、後ろから何かうごめく音が・・・。リゲルが起き上がったのである。
「ぬおおおぉぉぉっ、死ねん! 貴様らを道連れにしなくては死ねん!」
「今だ!」
セレスが魔道書を広げ、詠唱を始めた。周りのエーギルの流れが一気に変わり、渦巻いた。地響きまでもが起こりだした。
「受けろ! 炎の超魔法! 業火の理! フォルブレイズ!」
リゲルの足元が地響きを起こしなら真っ二つに割れいく。そして、その地割れから、凄まじい勢いで炎とマグマが噴出した。その熱風が、竜化したリゲルを軽々と持ち上げる。そして、その灼熱にどんどん焼かれていった。
「うお・・・・! ・・・私は・・・敗れるのか・・・! 母上・・・。」
地響きと熱風が止むと、リゲルはそのまま力なく倒れこみ、人の姿に戻って行った。
「私は・・・一体何の為に・・・生まれてきたのだ・・・。母上と楽しく過ごしたかった・・・それを・・・人間が・・・!」
リゲルを前にパーシバルが膝を突きながら言った。
「人間にも・・・確かに悪しき心を持つものは居る・・・しかし、それはハーフとて同じこと。お前も元はそうではなかったにしろ、住民の命を顧みない統治を行った心悪しき者だ。一部だけを見て・・・全体憎んではならんのだ・・・。私はハーフだからと言って憎むようなことはしない。騎士の誇りにかけて誓おう。」
それを聞いたリゲルは、何か悟ったように答えた。
「くっくっく・・・私は・・・母の愛が欲しかった・・・。それを人間に奪われた・・・その事実に変わりはないのだよ・・・。だが・・・、貴様のような偽善者が一人ぐらい居ても・・・いいかもしれぬな・・・。」
そういうとリゲルは静かに目を瞑って逝った。ここに、やっとエトルリアの平和は取り戻された。いや、こここそが平和へのスタートラインなのだ。これからやらねばならぬことが山のようにある。感慨を催している暇はない。ミルディン様・・・私は必ずや、王国を再建して見せます。パーシバルの背に何か強いものを、セレスは感じ取っていた。


138: 手強い名無しさん :05/11/14 17:27 ID:E1USl4sQ
エトルリア終了・・・。