ファイアーエムブレム封印の剣の小説を書こうぜ!!


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ファイアーエムブレム封印の剣の小説を書こうぜ!!

1: スーパーサイヤ人名無し:04/11/16 20:41 ID:xwD.4YS.
さあ書け

2: 手強い名無しさん:04/11/17 11:35 ID:LNrVNTjs
やあ (´・ω・`)

ようこそ、ナバタ砂漠へ。
この砂嵐はサービスだから、まず視界を失って慌てて欲しい。

うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

でも、このマップを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした戦闘の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思って
このトレジャーを埋めたんだ。


じゃあ、必殺を喰らおうか。

3: 手強い名無しさん:05/04/08 15:39 ID:E1USl4sQ
封印のあとの話(イリア中心)欲しい人いる?

4: 手強い名無しさん:05/04/08 22:35 ID:9sML7BIs
とりあえず書くとすれば
既存のキャラで出てくることが決まっているのは
ロイ、シャニー、ギネヴィア、ニルス・・・ぐらいかな。
まぁ、はちゃめちゃな展開になること間違いなし、素人だし。
白雪姫とシンデレラを組み合わせた時みたいにスゲー展開に。。



5: ロードアンドペガサス RoH8fs26:05/04/09 15:52 ID:BL4LnRWU
>>3
実はホスィイ自分 orz

6: 手強い名無しさん:05/04/09 20:49 ID:9sML7BIs
イリア中心と書いたけど、構想練っていったらそうではなくなってきた。
長いからメインの部分まで出すら書けるかわかりません、おまけに
素人なのでホントごちゃまぜ世界観ですがが、できるだけ頑張ってみようと思います。
この頃この板も過疎化が進んでるし、これを機に人が増えるといいなぁ。
リリーナメインは多いので今回は珍しいシャニーで行って見ようと・・・
まぁ、すぐ死・・・うわなにをするあうぇxrcdftvygぶひこ。;


キーワードは
二つの世界、混血、差別、竜の門、裏切り、ベルン、竜化etc.

7: 第一部 第一章 1:光へ:05/04/10 05:02 ID:gAExt6/c
第二次人竜戦役とまで呼ばれたベルン動乱も、英雄ロイの活躍により収束するに至った。
共に戦った戦友たちも、故郷に戻りその復興に尽力を注ぐ者、戦火の中で恋を実らせ共に歩みだす者など、新たな一歩を踏み出すために各地へ散っていった・・・。
復興は急速に進んだ。特にイリア・ベルンの復興速度は速く、イリアでは数ヶ月で諸侯連合王国結成までこぎつけた。
「・・・そうか、僕は君に傍に居て欲しいけど、お互い国が大切な時期だし頑張らないとね。」
「うん、今回の事であたしも王家に血の繋がる人間ってのになっちゃったし、頑張るよ。」
イリア連合王国の結成式に参加したロイは、そこでシャニーと再会していた。
「うーん・・・。でもこの『公女』さまって言うのは何か落ち着かないや。」
「ははは、シャニーらしいね。何か困ったことがあったら何でも言ってよ。力になるよ。」
「うん、ありがとロイ様。しばらく離れ離れで寂しいけど、手紙出すからね!」
姉のティトはリグレ公爵家に嫁ぎ、エトルリアに行ってしまった。シャニーもロイと恋仲であったが
流石に結婚するには早い年であったし、イリアに残る数少ない王家の人間だったので周りが黙っていなかった。
そういった世間のしがらみに歯がゆい思いをしていたシャニーだったが、
ロイの最後の一言を信じ、何時もと変わらぬ明るい笑顔で皆と接していた。
「復興が一段落付いたら、君を迎えにいく。それと、
もう『様』は要らないよ。僕と君は対等な間柄なんだから。」
全てが光に向かって歩き出そうとしていた。そして、闇の存在を誰一人として気づかなかった。
それが、後に世界中を巻き込む計り知れない闇になるということを、今は誰も知らない・・・。


8: 第一章2:炎の英雄:05/04/10 06:18 ID:gAExt6/c
あれから4年が過ぎた。復興は終わり、発展期に突入していた。周りには光が溢れ
平和な時間が流れていた。
ここリキアでは、領主達が力をつけ、ある程度独立を保ちつつ共存する体制に戻った。
しかし、新トリア候ハドラーはオスティア、フェレ両候中心の体勢に不満を持ち
反対勢力を結成、連合内でも力を持ち始めていた。
「やれやれ、ハドラー候は事あるごとに邪魔してくれる。これでは話がまとまらないよ。」
「この大事な時期に反対勢力など、一体何を考えておられるのでしょうなぁ。」
「意見には必ず反論が出るものです。ロイ様、そう気を落とさないでください。」
正式にフェレ候に就いたロイは、参謀のマリナスやマーカスと今後の話をしていた。
「ベルンももう昔どおりになったそうですじゃ。流石ギネヴィア様ですのぉ。」
「しかしこの頃ギネヴィア様は民の前に姿をお出しになっていないようです。」
「何かあったのですかのぉ。気になりますわい。」
「うん、今度の4カ国会談でお会いできるだろうからそのとき聞いてみるよ。」
ベルンはギネヴィア指導の下、かつての栄光を取り戻そうとするところまで来ていた。
しかしこの頃は、ギネヴィアは部屋に篭りきりで、お付の司祭が王宮内を取り仕切っていた。その司祭の手腕は確かなものでギネヴィアの信頼も厚いそうだ。
「・・・ところでロイ様、そろそろ彼女をお迎えに上がらないと怒っているのでは?」
「うん、そうなんだけど、忙しくてなかなか会えないんだ。文通はしているのだけれど。」
「女心と山の空は〜と言いますぞ、あまり放っておくと・・・。」
「マリナス、からかわないでくれ。彼女に限ってそんなこと無いさ。」
復興が終わったら迎えに行くと約束したフィアンセも、イリアで頑張っている。自分も負けずに頑張ろうと、ここまでやってきた。そろそろ彼女と一緒になってリキアを支えて行きたい。そうロイは思っていた。
「ところで彼女はやはり自らの考えを曲げるつもりは無いのですかな?」
「うん・・・。イリアは私の故郷だから絶対に守るんだーって言ってたよ。結婚したらもう騎士は退いて欲しいと何度も言っているのだけれど・・・。」
「城でじっとしているタイプではないですからなぁ。」
「感心しないでよ。子供が生まれることも考えたら、彼女には城にいてもらったほうが良いんだ。」
「ロイ様、ロイ様がリキアのことを想うことと同様、彼女もイリアのことを想っているのでしょう。・・・わかってあげるべきです。」
「そうだね・・・。よし、話が逸れたから元に戻そう、それじゃ今後のラウス―オスティア間の街道整備についてだけど・・・。」


9: 第一章3:蒼髪の天使:05/04/10 19:34 ID:E1USl4sQ
前の戦争で国を守る騎士団が壊滅的損害を被ったイリアでは、生き残りの者を集めての
騎士団再建が最優先課題であった。最大規模であったシグーネを長とする天馬騎士団の大半は、冬将軍と共にイリアの春に消えた。ゼロットを中心として国づくりは進んだが、若い力が圧倒的に不足していた。
建国から2年後、ベルン動乱での功績から王都エデッサを守る王宮騎士団(テンプルナイツ)の長としてティトが抜擢されたのだが、彼女は既にリグレ家の人間となっていたため、それは叶わなかった。そこで選ばれたのが、シャニーであった。まだ若すぎるという話もあったが、若い力を中心に編成された騎士団ゆえ、そして何より本人の強い願いにより彼女に決まったのである。最初のうちは他国からママゴト騎士団と嘲笑されることもあった。しかし今では蒼髪の天使と言って恐れられ、イリアでも随一の騎士に成長したシャニーの下に統制された騎士団として有名であった。
「それじゃルシャナ、後のことは任せたからね。」
「おっけー、行ってらっしゃいませ団長様。」
幼馴染のルシャナが、からかい半分でシャニーを見送る。
「やめてよ、あたしには だんちょう なんて似合わないよ。普通に名前で呼んで。」
「はは、まだそんな事言ってる。しっかりしてよ。アンタ一応有名人なんだから。」
こいつはいつもこうだ。すぐからかい半分でものを言う。でもこいつの言う事はシッカリしていて信用が出来た。親のいない自分達はいつも互いに力を合わせて生きてきた。
戦場でも背中を任せられる数少ない存在だったのだ。
ベルン動乱を生き抜いた自分達はお互いの夢を語り合い、そしてイリアを変えていこうと約束したのである。そして王宮騎士団結成の知らせと共にシャニーが団長、ルシャナが副団長として立候補し、生まれ変わった若いイリアを引っ張ってきたのであった。
「あたしがいない間、お姉ちゃ・・・王妃様をしっかりお守りしてね。」
「アンタも国王陛下を頼むわよ。道中の安全を祈っているわ。」
お互いの信頼を確かめるようにして抱き合い、そして二人は分かれた。

「陛下、遅れて申し訳ありません。」義兄を陛下と呼ぶのにもようやく慣れた。
「おお、シャニーか。よし、ではそろそろ出発することにしよう。」
「は、我々天馬騎士が空路にてご案内いたします。・・・ところで、今回の会合ではどのようなお話を?」
「うむ、私もそれ考えていたのだ。ギネヴィア殿から急な知らせがあるから会合を開きたいと言う手紙が届いたのだが、どのような内容の会合なのかが記されていなかった。」
「左様ですか。では急がなければ。」
「そうだな、それにしても・・・お前はここ2年で変わったな。これもロイ殿のお陰か。
彼に感謝しなければな。あまり彼を心配させるなよ。お前は向こう見ずだからな。」
「・・・・・。」
確かに人をまとめる側としては全くの素人だった頃、心の支えとなったのは親友の存在
だけではなかった。ロイから届く励ましの手紙は何よりも自分を勇気付けてくれた。
彼がいなかったら、今の自分は無いだろうな。久しぶりに・・・会いたい。
そんなことを考えながら、シャニーは天馬を駆っていた。


10: 第二章1:運命の再開:05/04/11 01:46 ID:gAExt6/c
一方、ロイもリキアをリリーナに任せ、ベルンに向けて出発していた。腹心のアレンやランスは
もしものために本国に残し、傭兵団を擁護として同行させた。
「・・・・・。」
「なんだ、浮かねぇ面しやがって。何か不満でもあるのか?」
大男が横の長髪の男に話しかける。
「・・・何故俺まで・・・それにまたフェレ家なのか。」
「相棒なんだから当たりめーだろ。それに雇い主の顔がわかっててやり易いじゃねーか。」
「・・・まぁいい。何時でもお前の背中を狙うことができると考えれば悪い話でもない。」
「あのな、ルトガー。まだそんなこと言ってやがるのか。いい加減に・・・。」
「ディーク、待たせたね。今回もよろしく頼むよ。」
4年前見た少年は立派な青年となってディークの前に現れた。
もはやかつての頼りない少年の姿は消え、英雄としての風格を漂わせていた。
「おう、今回もしっかり働くから給金はずんでくれよ、じいさん。」
「じ、じいさんとは失礼な!!こう見えてもわしは現役の・・・!」
たわいも無い会話がはずみ、4年前の行軍とは雰囲気が明らかに違った。幸い(ディークにとっては残念な事に)、賊によるゲリラ攻撃もなく、不気味なほど平和にベルンまで到着してしまった。まるで、これから起こる嵐の前の静けさを表すかのように・・・。

会合は二日後に行われる事に決まった。それまでは自由時間だ。
「どうしたディーク、何を探している?」
「ん?あぁ、ここにシャニーがいるはずなんだ。あのガキが今じゃ蒼髪の天使とか言われてるからよ
どんなになってるのか見てみたくてな。」
「ふ、探さなくても相手から来ているようだぞ・・・。」
「あっ、ディークさぁ〜ん、お久しぶりぃ〜!!」
「(汗)・・・期待した俺が馬鹿だった、昔と何も変わっちゃいねぇ・・・。」
「・・・ふっ。」
「まぁっ、ごあいさつね。あたしだっていろいろ大変なんだよ。」
「へいへい、大変なのは分かるが少しはお淑やかにしたらどうなんだ?そろそろガキも卒業しないとな。」
シャニーは顔を膨らせてディークを睨んでいる。ディークは妹分が今も壮健そうなのを見て安心したようで、シャニーの膨れ面を見て笑みをこぼしている。そのときだった。
「・・・っ! シャニー?!シャニーじゃないか!!まさかこんなところで会えるなんて・・・!」
「え・・・?! その声は・・・まさか・・・。」
シャニーは膨れ面をやめて声のする方を見た。そこには、会いたいと願ったロイの姿があった。
こんな偶然があるだろうか。シャニーは神に感謝した。
「お、いい雰囲気を壊しちゃいけねぇな。おいルトガー、ずらかるぞ。」
ディークは気を利かし、ルトガーと共に向こうへ歩いていった。久しぶりの二人きりの時間だ。
「あー、やっぱり一緒だと落ち着くなぁ。」 シャニーはうんと背伸びして見せた。
「僕もだよ。この4年間、ずっと離れ離れだったけどやっと再開できたね。今まで放っておいてごめん。」
二人は、お互いの国の状況やこれから先のことを語り合った。互いに国の先端のほうにいる人間だ。
お互いの苦労は身にしみてわかる。互いの苦労を労い、夢を確認しあった。
そして、シャニーはロイに寄り添い、離れようとしなかった。ロイもまた、シャニーを優しく包み
もう話さないといわんばかりに抱きしめた。そんな至福の時間が二人をしばらく包んでいた。
どのくらいそうしていただろう、ロイがとうとう均衡を破り、シャニーに語りかけた。


11: 手強い名無しさん:05/04/11 01:55 ID:gAExt6/c
小説書くのって難しいですね(;´Д`)
恋愛ものにするつもりはなかったんだけど何かそっち系に(´・ω・)
話はどんどん暗い方向へ進んでいきます。(予定
つまらないかもしれませんが一生懸命やってますので
生暖かい目で見守ってくださいm(_ _)m

12: 第二章1:運命の再開2:05/04/11 10:20 ID:E1USl4sQ
「ねえ、どうしても・・・その、騎士を辞めるつもりはないのかい?」
唐突な質問に戸惑いながらも、シャニーは己の心中を語った。
「うん・・・。あたしも、ロイと一緒に居たかったから最初は辞めるつもりだった。でも、親友と話をしていたら、皆が苦労しているのに自分だけ幸せになっていいのかなって思えてきたんだ。」
「しかし、一緒にリキアを復興するって考えはなかったのかい?」
「リキアにはロイがいる。リリーナ様だっていらっしゃる。イリアにはお姉ちゃん達がいるけど、お姉ちゃんには育児がある。ゼロット義兄様だけじゃ苦労がかかりすぎちゃうよ。それに、あたしは一応王家と血のつながりがあるから、人の視線は自然に集まってた。そういったいろいろな事を考えたら、
イリアを見捨てられなくなってね・・・。ごめんね、我侭言って。」
「マーカスの言ったとおりか・・・。」
「え?」
「いや、なんでもない。わかった、もう何も言わない。でも、これだけは約束して。絶対に無茶はしない。一人で何でも抱え込んじゃダメだよ。必ず力になるから、ね?」
「ありがとう!うん、約束する。大丈夫。」
「それにしても・・・シャニーも変わったね。なんか大人っぽくなったというか。」
「あー!、今まであたしのこと子ども扱いしてたの?! ひどーい。」
「そうじゃないよ。昔に比べて周りがよく見えてるからさ。昔よく一人で突っ込んでたでしょ?」
「ディークさんのお陰。見習い時代にディークさんにいろいろ叱ってもらったからね。でも、ロイの前では羽伸ばさせて。何時も堅苦しいことばかりだから疲れちゃうんだよね。」
そういってシャニーはロイの横で大の字で寝転がった。それを見てロイは昔と変わらないシャニーを見た。自分が愛した女性の、一番見たい顔がそこにはあった。

「やれやれ、あいつも恋を語る歳か。早いもんだな。」
「後はロイに任せておけ・・・。お前の出番はもう終わりだ。」
「あ?ルトガー、てめぇなに言ってやがる?俺は別に・・・。」
「ふっ、しらばくれるな。大方心配してたのだろう?」
「ば、馬鹿野郎。なんで俺があんなガキのお守りをしなきゃなんねーんだ。」
自分にとっては妹とも娘とも取れる年頃の少女。元気だけが取り柄で危なっかしくて見ていられなかったあの子供が、今では一国の重役。世の中わからないものだな。ロイ、シャニーを任せたぞ。
そのじゃじゃ馬を上手く乗りこなして見せろよ。ディークはロイに心の中で語りかけた。
「さて、暗くならねーうちに剣の稽古でもするか。おいルトガー行こうぜ。」
そういうとディークは愛用の大剣を手に歩き出した。ルトガーはその背中に寂しさと共に何かを安堵するような、不思議なオーラを感じていた。
ベルンは竜騎士の国。城も山間部に作られた強固な守りを誇るものであった。
そこの中庭で寝そべっていると、温かい陽射しと草のにおいの中に鳥のさえずりが聞こえ、とても幸せな気分になる。数年前まで全くの他人だった人が、今自分の隣で一緒に夢を語っている。
こんな時間が何時までも続いてくれればどんなに幸せだろう・・・時間が過ぎていくのが惜しかった。
しかし、運命の扉は既に開かれていた。エレブ大陸を覆おうとする闇は、刻一刻と広がり、表に出る機会を狙っていたのである。まるで、草むらから獲物を狙う野獣のように。


13: 第三章:悪夢再来1:05/04/12 09:29 ID:gAExt6/c
会合の前夜も、ディークはルトガーと剣の稽古をしていた。お互い相変わらずの腕前だ。
「おい、今日はこの辺で辞めておこうぜ。これ以上やるとどちらか倒れるまでやっちまいそうだ。」
「・・・・・。」
「どうした?やり足りねぇのか?」
「・・・警備の兵がやけに多くないか?それに常に部屋の周りをうろついている。」
「まぁ、世界のお偉いさんが集まってるんだし、当たり前っちゃ当たり前だが・・・確かに。」
「今日は寝ずに番をするか。」
「そうだな、まだ全然働けてねぇし、そうするか。」
そう言うと、お互いロイ達の部屋の周りを巡回して、番をし始めた。
やはり、巡回のベルン兵が多い。世界の重役が揃っているといっても、ここまで警備を強化する意味が
いまいち理解できない。警備と言うよりむしろ、監視しているといったほうが良いかもしれない。
(ベルンがまた他の国を狙っている・・・? いや、あのギネヴィア様がそんなことする人には思えんしな・・・。 ・・・考えすぎか。) ディークは不信を募らせながら回廊の曲がり角を曲がった。すると、
「ふぁぁ〜〜あ。。。」
張り詰めていた気を一気に萎えさせる大きなあくびが聞こえた。犯人は誰だか容易に見当がついた。
「・・・シャニー、てめぇ、相変わらず緊張感ねぇな。それでよく団長が務まるな。」
「あ、ディークさん。だって、この頃忙くて寝れないんだもん。これだけ警備の人がいれば安心だしさ。」
二重人格かと思うほど、自分への対応の仕方と仕事中のそれは全く違っていた。心を許しすぎている。
「警備しているんじゃなくて襲撃のタイミングを見計らっているとは考えないのか?」
「ギネヴィア様がそんなことするわけないじゃん。考えすぎだよ。」
「・・・お前は他人を信用しすぎる。前にも言ったはずだ。信頼と過信は違うと。人の上に立つ立場になったのなら、余計に疑ってかかるべきだ。お前の判断はお前だけのものではないのだぞ?」
「そうだね、ちょっと安心しすぎていたかも。ありがとう。へへ、またディークさんのお世話になっちゃった。やっぱディークさんは頼りになるなぁ。よっ流石アニキ。」
「バカ、アニキはやめろって言っただろ。」
ディークは照れ隠しにシャニーの頭を軽く小突いてその場を離れた。やめろとは言っているものの、何度いわれても、嬉しい言葉であった。

会合当日の朝、ギネヴィアの腹心の司祭、エレンがテキパキと周りをまとめていた。
しかし、どこか感じが違う。前のホンワカした感じではなく、どこか冷たい印象を持っていた。
会合が始まった。右を見ても左を見ても気品の溢れる世界のトップばかりが集まっていた。
(うわ〜。すごい有名人ばっかりだ。こんな所に同席できるなんて、あたしってやっぱ偉くなったな〜。)
自分がお付であることも忘れ、シャニーはすっかりVIP気分になってしまっている。
ギネヴィアが入室してきた。相変わらずの美人だが、エレン同様やはりなにかおかしい。
「皆様、本日はご多忙の中、お集まりいただき光栄に存じます。・・・・・・・・・・」
いわゆる「堅苦しい」挨拶が始まった。シャニーは半分聞き流していた。
「では、早速議題に移ろうと思います。今回の議題は・・・。」
次のギネヴィアの言葉に、そこに居合わせた人間全員が耳を疑った。


14: 第三章:悪夢再来2:05/04/13 14:16 ID:E1USl4sQ
「私は、兄の遺志を継ぎ、世界を統合します。この世界を、差別のない平和な世界に変えます。
この考えに賛同できない国は徹底的に攻撃します。賛同する国は今すぐここで降伏してください。」
「?!っ」
その言葉はまさに狂気であった。一同は何が起こったのか全く理解できず、しばらく沈黙が続いた。
「我々は平和に向かって歩んできた。それなのにいきなりどうしたのですか?」
先陣を切ったのはミルディンであった。これを皮切りに口々に反論を始めた。しかし
「もはや言っても無駄のようですね。わかりました。では・・・。」
ギネヴィアの合図と共に部屋に押し寄せる兵士。その目には人間らしさが失われ、まるで人形であった。
ロクに武装していない要人達は次々と斬り殺されていく。ロイにも刃が向かった。
ロイは間一髪で避けたが、他の一撃が襲った。もう避けられない、そう思ったとき、ロイを狙った敵兵がばったりと倒れた。
「ロイ!大丈夫?早く!こっちだよ。」 左手に剣を握った蒼髪の女性・・・シャニーだった。
「ロイ殿、ここは互いに協力して突破するぞ。」ゼロットもロイに声をかける。
しかし、数が多すぎて3人だけでは突破の仕様がなった。
兵士達の目には心はなく、ただ、目の前の敵を殺すことのみを考えてた。
なんとか防戦しているが、それも長く続きそうにない。次第に囲まれ始めた、そのとき
「ロイっ、ここは俺たちに任せろ。お前達は早く外に出るんだ。」
ディーク達だった。彼らは相手をばったばった斬り倒していく。流石戦神と言われるだけはある。
「でも、ここで壁をしたらディークさん達が死んじゃうよ!」
「そう簡単に死ぬか! 早くロイ達を連れて逃げろっ。後は任せたぞ!」
「いやだよ! ディークさん達も一緒に逃げようよ!」
「見てわからないのか! ここで足止めしなかったら、お前達はどうやって逃げるんだ?」
「でもぉ・・・!」
「俺がお前に言った言葉をもう忘れたのか! お前の判断は、お前だけのものではないんだぞ!」
「・・・っ!」
「わかったら早く行け! これ以上俺を困らせるな。お前は強くなった。
しかし、まだ精神的に甘いところが多い。それをこれからの人生で学んで行け。わかったな!」
「ありがとうございました・・・。あたしの・・・師匠・・・。」
「ディーク、絶対死んではダメだよ! 絶対生きて戻ってきてくれ!」 ロイはシャニーを連れて叫んだ。
「ふっ・・・難しい事を・・・ルトガー俺たちの見せ場だ。しっかり働こうぜ。」
ディークは小さくなっていくロイ達の後姿を見ながらルトガーに向かって言った。
「ベルン相手なら・・・何も迷うことはない・・・。」 ルトガーもまた、相棒にあいづちを打った。
それにしても数が多い。二人だけでは処理しきれそうにない。
なにより、ディークにとっては兵士が人形のような目をしていることに疑問を持った。
(エレンとかいう司祭もギネヴィアもそして兵士も・・・薄気味悪りぃ目つきしやがって
一体何がどうなってやがるんだ・・・。)
また一人兵士を斬ろうと剣を振り上げる。その瞬間、金属のはじける音がした。
「?!っ」ディークの剣が折れた音だった。そこに兵士の剣が振り落とされる。もはやこれまでか。
「・・・っ。」 目を開けると、兵士は倒れていた。そしてそこには長髪の剣士が立っていた。
「・・・しっかりしろ。まだ死なれては困る。・・・お前を倒すのはこの俺だ・・・。」
「ふぅ、助かったぜ。大分片付いたし、そろそろオイトマするか!」
死ぬわけにはいかない。まだ、やり残したことがある・・・。
あいつの嫁入り姿を見るまでは、死ねぬ・・・。


15: 手強い名無しさん:05/04/13 14:30 ID:E1USl4sQ
どうも〜。人いないんですかね(ーー;
もともと漫画にする予定だったのを文だけで書いてるので会話が多いところはご容赦ください。
背景描写が足りないし、文がサバサバし過ぎてるのが自分でもわかる。。

16: 第四章:犠牲の上に立つ命:05/04/13 14:55 ID:E1USl4sQ
ディークたちに後ろを任せ、彼らは走った。向かうものがあれば3人で協力して切り抜けた。
もうすぐ出口、最後の大広間の階段を滑り降りる。
しかし、ここも兵士が待ち構えていた。ディークたちも天馬騎士団も、もうここにはいない。
いちいち相手にしていたら、たちまち囲まれ進退路を塞がれる。
「シャニー。お前の天馬はどこに留めてある?」ゼロットが走りながら聞いた。
「中庭の木に繋いであります。しかし・・・3人も乗せられません。」
「・・・お前はロイ殿を乗せて逃げるんだ。私に兵士が気をとられているうちに天馬のところまで走れ。」
「ゼロット殿、それは自らを犠牲にされるということですか? それなら賛同しかねます!」
ロイが反論した。 ロイは、誰かを犠牲にして行う作戦が一番嫌いであった。
「そうですよ。今陛下を失えば、イリアは大混乱に陥ってしまいます。お姉ちゃんだって・・・。」
「確かに・・・ユーノやアリスは心配だ。だが、逆に言えば、イリアにはユーノがいる。私は王国の基礎を築いた。あとは・・・若い者達が創っていく部分だ。私の役割は終わった。」
「そんなのわかりません! イリアには陛下が必要なのです! 一緒に逃げましょう。」
「くどい。それに誰が死ぬといった? 上手く逃げてみせる。私もイリアの聖騎士。その名に恥じぬ
行いをするまでだ。」
ロイは、もはやゼロットを説得する事は不可能だと悟った。しかしシャニーは諦めない。
「しかし・・・!」
「お前には、まだやってもらわねばならないことが多い。お前はロイ殿をお助けしなさい。」
「私は、義兄ちゃん・・・陛下まで失いたくありません!」
「やりたいことと、やるべきことの順序を間違えてはならぬ。
今のお前はロイ殿を連れてここを脱出する任務があるのだ。生き抜かねばならんのだ。分かってくれ。」
「・・・わかりました。必ず生きて帰ってきてください。御武運を心からお祈りしています・・・。」
「うむ、お前もロイを頼んだぞ。さ、早く行け! 一刻も早く世界にこの危機を知らせるのだ。」
「ゼロット殿、必ず生き延びてください。貴方はイリアに、いや世界に必要なお方です。」
「ロイ殿、私もイリア連合の王。そうむざむざとやられはしない。私を信じて一刻も早く逃げるのだ。」

・・・お前達は若い。お前達をここで失うわけにはいかない。後は頼んだぞ・・・・。


17: 第四章:犠牲の上に立つ命2:05/04/13 17:17 ID:E1USl4sQ
どうしてこうなってしまったのだろう。昨日まであんなに平和だったのに・・・。
仲間は散り散りになって、残ったのは自分とロイだけだった。周りに見えるものは全て敵。
自分は、守られているだけ。一人前になったつもりだったが、結局は他の人の助けがないと何も出来ない。シャニーはこれで団長を語っている自分が情けなく思えてきていた。
イリアを創っていくなど、自分には荷が勝ちすぎたのかもしれない。皆、ロイが生きていれば何とかなるというような言い方をした。自分もこのように信頼される人間になりたいと思った。
しかし、今はうつむいている余裕はなかった。自分には、陛下から託された任務がある。恋人でもあるロイをなんとかベルンから帰して、事を世界に知らせなければならなかった。
無事に天馬の所まで辿りつき離陸の準備を始めた、そのときだった。
「無駄な足掻きを・・・私が主人の代わりに始末して差し上げます。」
シャニーははっとして後ろを見た。そこにいたのはエレンだった。手にしている魔道書は・・・見たこともない魔道書だ。しかし相当高位のものであることぐらいは容易に想像がつく。
エレンが詠唱をはじめた。彼女が光に包まれ、大気中のエーギルが集まる。
魔法とは、大気中のエーギルを体内に取り込み、魔力に変換することによって威力を発揮する。
魔力切れとは、即ちエーギル不足を意味する。そのまま魔力を使えば、いずれ死ぬ。
「ロイ、早く乗って。飛ぶよ!」
ロイは天馬に乗ろうとしているが、不慣れなためにてこずっていた。急がなければ、エレンの魔法の直撃を受けてしまう。
「冥土の土産に教えてあげましょう。この魔道書はルーチェと言われる裏の魔道書です。
しかし、主人が探しているのはこんな紛い物ではない・・・。」
「エレンさん、どういうことなんだ?! 何故ギネヴィア様は・・・!」
「劣悪な人間に語ることは何もないのよ、さぁお受けなさい。裁きの光を!!」
エレンから強力な閃光が発せられる。それはロイめがけて一直線に向かって行った。あんなのが当たったらロイと言えども危ない。
また、見ているだけなのか。また、守られるだけなのか。・・・そんなのはもう嫌だ。
「ロイ、危ない! 伏せて!!」 やっと馬上に身を移したロイにシャニーはそう叫び、ロイの体に自らの体を重ねた。ロイを庇ったのだ。
その直後、凄まじい衝撃と激痛が体を襲った。自分を押しつぶし、食らおうとする禍々しい光。
言葉にもならない声が漏れた。が、気が遠くなりつつも、シャニーは天馬の腹を蹴った。
天馬はそれに応じ、空に舞い上がった。そして次第にその姿は小さくなっていく。
「ちっ、あの小娘、邪魔しおって。今度こそしとめてくれる・・・!」
「待ちなさいエレン、どうせ奴の帰るところなどありはしません。リキアとも密約が出来ています。」
「は、ギネヴィア様、左様ですか・・・。」
「それに、奴には竜の血が流れている。その波動を辿れば居所などすぐに知れます。こちらから討って出ればよいことです。」
「他の取逃した者共はいかがいたしましょうか?」
「劣悪種がいくら束になったところで私たちに敵うはずありません。それよりも、神将器回収に全力を注ぎなさい。あれがなければ、我らの計画は進まないのです。」
「了解いたしました。全ては神の御心のままに・・・。」


18: 手強い名無しさん:05/04/14 10:17 ID:E1USl4sQ
やっと4章終了・・・一体何章になるか検討が(ーー;
できるだけ最後まで頑張りたいので、ここをこうしたらもっと良いとか
ご意見を募集しています(‥´
今まで登場したオリジナルキャラの説明をしておきますね。

ルシャナ:(女:ファルコンナイト)
シャニーの親友。王宮騎士団副団長
容姿は赤の上跳ねのショート

アリス:(女:?)
ゼロットとユーノの娘(勝手に名前付けちゃいました)
第二部のキーパーソン。
容姿は紫のロングウェーブ

19: 第五章:奪われし祖国:05/04/15 16:59 ID:E1USl4sQ
大分逃げてきた。もう追ってもこないだろう。ロイはぐったりしているシャニーに声をかけた。
「シャニーっ、大丈夫か?!」
「ロイ・・・無事・・・? なら・・・よかった・・・。」
「よかったじゃないよ、なんであんなことを! 無茶するなって約束しただろ?!」
「だって・・・あんなの喰らったら、ロイ死んじゃうよ・・・。あたしなら・・・少しは・・魔法に抵抗力ある・・・し・・・。」
意識はあるものの、防御体勢もとらずに直撃を食らったためか、深手を負っている。
「だからってなんであんな無茶を・・・。君が死んでしまったら、僕はどうすればいいのさ・・。」
「へい・・・き・・。もう・・・守られてるだけは・・・いやだよ・・・。」
そう言うとシャニーは目を瞑ってしまった。早く休ませなければ危ない。
そうロイが思っていると、天馬も主人の危険を察知したのだろうか。村のあるほうへ飛んでいく。
その先には何やら大きな建造物・・・竜殿だった。
その夜、二人はその村に泊めてもらった。シャニーは深手を負ってはいるが、命に別状はないらしい。
あのような高位魔法の直撃を受けて生きているのだから、やはり実力があるのか単に運が良いのか・・・。
村長に事を話すと、最初は驚いたようだったが、その後はやけに落ち着いていた。
「僕は、このことを一刻も早く世界に知らせないといけません。また戦争が始まろうとしています。」
「ふむ・・・しかし、やはりギネヴィア様は・・・。」
「? やはり? 村長、それはどういう意味ですか?」
「うむ・・・ギネヴィア様はお優しいお方だった。しかし・・・ある日を境に変わってしまわれた。
ゼフィール前国王の剣を、竜殿に納めてから・・・。」
何があったのか気になるところだが、今の自分が詮索したところで何も始まらなかった。
ロイは、次の日にシャニーを村人に任せて単身フェレに帰るつもりで床に就いた。

しかし、事態は悪化するばかりであった。次の日の朝、一騎の騎士が村めがけて飛び込んできた。
「ロイ様! ロイ様はいらっしゃいますか!」
「!アレンじゃないか。どうしてここがわかったんだい?」
「シャニー殿の天馬がこちらに向かったと聞き、ここしかないと思いました。」
「でも、アレンにはフェレの留守を頼んだじゃないか。なのにどうして?」
「・・・リキアで反乱がおき、フェレも我々の力及ばず・・・陥落しました・・・。」
「なんだって?! リリーナは?」
「リリーナ様は何者かによって暗殺されました。反乱軍はハドラーをはじめとする反対勢力です。
それに加えベルン竜騎士も加わった混成部隊がリキアを占領しています。」
「なんということだ・・・。ベルンの動きがこうも早いとは・・・。リリーナまで失ったのか・・。
それで、残りの者は?」
「ランス率いる部隊が防戦に徹していましたが、ほぼ半壊状態で。私はロイ様に事を知らせるため
エリウッド様の命により戦場から脱出し、ここまで参りました・・・。」
「そうか・・・フェレに残ったものはもう生きてはいないだろう・・・。父上・・・。
僕も部隊の殆どを失ってしまった。今僕と共にいるのはシャニーだけだ。その彼女も目を覚まさない。」
「ロイ様、ベルン城での攻防は聞いております。手に入れた情報によると上手く逃げおおせた者もいたようです。彼らはきっとロイ様の元に戻ってくるはず、しばらくこの村に留まっては如何でしょう?」
「僕たちは帰る場所を失った。しかし、あまり長居をするわけにもいかない。
まず何をすべきか考えよう。とりあえずこのままじゃリキアには帰れないし。」

ギネヴィアの凶行、ベルンの暴走、リキアの反乱・・・前の戦争から10年も経たないうちにまたこのような状況に陥った。一体何が起ころうとしているのか、そしてギネヴィアの目的は・・・。


20: 第5章:奪われし祖国2:05/04/16 01:29 ID:gAExt6/c
「ふぃ〜、やっと着いたぜ・・・。」 最初に到着したのはディークだった。
「ディーク! 無事だったんだね。よかった。」
「当たり前だ。そう簡単に死ねるかよ。なぁルトガー。」
「ふっ、死にかけたくせによく言う。」
二人のいつ戻りの会話に少し安堵したところに聞いた。
「ところで、ゼロット殿は?大広間で戦ってくれたのだけど。」
「ん?俺たちは見なかったぞ?俺らは天馬が飛んでいくのが見えたからこっちに来たんだ。」
「なんだって?! ・・・ということは・・。」
「ゼロットはイリアの王・・・。彼を殺せば、イリアは混乱する。どの道イリアも潰す予定なら、ベルンがゼロットを生かしておくメリットはない・・・つまり・・・。」
ルトガーの台詞にロイは固まった。もはやゼロットが生きている可能性はゼロに近かった。
「要するに俺たちはどうでもいいから殺されなかったわけか。・・・なんか気にくわねぇな。」
「・・・それよりどうするのだ? 聞くところによればリキアは内乱状態らしいではないか。」
「俺たちが行って収拾つけてぇところだが、こんな人数じゃなぁ、ところで、シャニーはどうした?」
「シャニーは・・・僕をかばって怪我をした。さっきやっと目を覚ましたところだよ。」
「あのバカ・・・、すぐに背伸びしたがる。守られた側がどんな思いをするのか考えた事・・・。」
ここまで言ってディークは自己嫌悪に陥った。 ルトガーが何時ものように鼻であしらった。
「それよりこれからのことなんだけど、村長の話によると竜殿に前王の剣を納めてから、ギネヴィア様は変わってしまわれたらしいんだ。だから竜殿に何か手がかりがあるかも知れない。」
「ではすぐにでも出発しましょう。私めが先陣を切らせて頂き・・・。」
「待て、シャニーはどうする? あいつだけ置いておく訳にも行かないだろう。明日の早朝にしよう。」
焦るアレンをディークが止める。アレンは一刻も早くフェレに戻りたかった。祖国奪還の為に。
しかし、この戦力ではどうにもならない。まずギネヴィアがどうしてこのような凶行に出たのか、その手がかりを探し、できるだけ不要な戦闘は避けようと、ロイは考えたのであった。

夜、竜殿の周りは静かである。ディークは草むらで用を足していた。すると・・・
「立ちションはいけないんだぞぉ〜。」
ディークは背筋の凍る思いをして後ろを見た。すると後ろには体中包帯姿の物体が近づいてきていた。
ディークは慌てたが、次の瞬間、何時もの人懐っこい声が聞こえたのでふぅと胸をなでおろした。
「へへっ、驚いた? あたしだよ〜。」
「このバカ、何が重症だ。全然ピンピンしてるじゃねーか。」
「まだ体中痛いんだよ。でも、弱音吐いてられないでしょ? ・・・お義兄ちゃんが死んじゃったんだから。・・・あたし、何も変わってなかった。団長に任命されて、少しは成長した気でいたけど、何も変わってなかった。」
「シャニー、それは違・・・。」
「守ってもらってばっかりでさ・・・あたしが守る立場のお義兄ちゃんにまで守られて、そしてお義兄ちゃんは死んだ。・・・これじゃあたしは、お姉ちゃんや団員に合わす顔がないよ・・・。」
「だから自分も何かを守りたくて、無茶をしたのか?」
「・・・。」
「お前が傷ついたら、どれだけの人間が悲しむ? お前は守られて誰かが傷ついた時どう感じた?
そのとき味わった思いを、自分の大切な人間にも味わいさせるつもりか?」
「そ、それは・・・。」
「安心しろ、お前は前より全然成長している。瀬お伸びする必要はない、お前は若いんだからな。
少しずつ学んでいけばいいのだ。長と言うものは突撃することだけが仕事ではないぞ?」
「わからないところもあるけど・・・何となくわかったよ。でも、やっぱりあたしは、大切なものを守りたい。守るって決めたんだ。」
「お前って奴は・・・。まぁ、お前らしくていいかもしれないな。
まぁ、お前が正しいと思う道を進め。ただし、自分の選んだ真実には必ず責任を持つんだ。いいな。」
「はいっ、師匠!」
「あのなー・・・師匠も辞めろ。」
「えー、あの時は師匠っていっても怒らなかったじゃん。」
「あんな時にいちいち返事なんかしてられるかっ。大体お前はだなぁ・・・・!」
静寂の夜空に、二人の声が止め処もなく響いていた。



21: 手強い名無しさん:05/04/16 01:32 ID:gAExt6/c
ガーン( ̄ロ ̄|||
スイマセン打ち込みミスが・・・。
瀬お伸びって何だ・・・背伸びです、すいません(;_;)

22: UNKNOWN:05/04/17 19:28 ID:CBb8Eslw
面白いです。続きをどうぞ。

23: 手強い名無しさん:05/04/18 16:32 ID:E1USl4sQ
翌朝、ロイ一行は竜殿へ軍を進めた。軍と言っても10人にも満たない人数である。これで戦っても勝ち目はない。ロイ達はベルン兵に気付かれないよう、慎重に進軍をはかった。しかし、不思議な事に、警備の兵がひとりもいない。ロイにはそれが不思議でならなかった。
竜殿に到着したロイ達は、改めてなかの異様な雰囲気に違和感を覚えた。何か強力な力を感じる。これが竜族の力なのか・・・。
「ふぅ〜、相変わらず気味の悪いところだぜ。」
「まったくだ、さっさと用事を済ませて帰るべきだ・・・。」
「わぁ〜、やっぱドキドキするねぇ〜」一同はこの緊張感のない台詞に呆れた。
「シャニー・・・。もう少し緊張感持とうよ。それにまだ怪我は全然治っていないんだから無茶しないでね。」
「ったく・・・。どうしようもねぇな。このバカは・・・。」
しかし、竜殿の奥に進むに連れ、皆無口になった。竜族の怨念とも取れるまがまがしい力を皆感じていたのであった。
そして、かつて魔竜、イドゥンと戦った竜殿最上部に辿り着いた。そこでロイ達はあるものを見つけた。
「これは・・・エッケザックス?!・・・そうか、ギネヴィア様が奉納した剣とはこれのことだったのか。」
「でも・・・これ宝珠がないよ?ほら、剣の柄のところにあったヤツ。」
「ん?本当だ。確かにねぇな。・・・賊が盗んでいったんじゃねーか?こんな時勢だしな。」
「この剣を奉納してから、ギネヴィアは変わってしまったと聞く。・・・その事と何か関係があるのではないか?」
「ほう・・・劣悪種にしてはなかなか鋭いですね。何故宝珠が無いのか、私自らが教えて差し上げるとしましょうか・・・。」
「何者だ!」アレンはロイの前に出て剣を抜く。ディークたちもその周りで構えた。
その目線の先に居たのは、ギネヴィア本人であった。周りにはあの心の無い兵士が大勢・・・こんな人数一体何処からロイは驚きと共に非常に分が悪い事に気付いた。・・・・囲まれている。ロイ達は最上部にいた。これ以上逃げる場所はない。追い詰められていた。
「兄上の剣についていた宝珠なら、ほらここにありますよ。」そういってギネヴィアは胸元を見せた。そこには、エッケザックスの宝珠が埋め込まれていた。
「この宝珠は、わが兄の形見。そして、わが兄の意思そのもの。私は兄と共に、この世界を差別の無い平和な世界に変える。
それを邪魔すると言うのなら、誰とて容赦はせぬ。 ロイ、例え貴様でもな!」
「何故です?!ギネヴィア様。皆平和に向かって歩き出したと言うのに、何故また戦わねばならないのですか!」
「平和?笑わせる。何処が平和なのだ?お前たちは結局、滅亡を先延ばししただけに過ぎん。劣悪種は滅びる運命にあるのだ。」
「そ、そんなこと!」
「ふん、竜族も所詮は力だけの能無し、お前たちも数だけの能無し。われわれ優良種にとっては邪魔でしかない。先の戦争でこの大陸の竜族を滅ぼしてくれた事には例を言うぞ。手間が省けたというものだ。」
「この大陸?優良種?一体何をおっしゃるのです?! 貴女も人間でしょう?」
「劣悪種に語ることは何もない。お前たちはここで朽ち果てる運命だ。大人しくしてもらおうか・・・。」
そう言うとギネヴィアはロイめがけていきなり光弾を放ってきた。魔道書も何もなしに。ロイは避けきれず直撃を受けてしまう。
「ぐっ・・・。」凄まじい魔力だ。ロイは致命傷を受けてしまった。
「ロイ様っ、おのれ、いくらベルンの女王と言えど、許せぬ!」
アレンはギネヴィアめがけて突撃し、剣で斬りつけた。しかし、そこにはもうギネヴィアはいない。背後にワープしていたのだ。
「アレン、後ろだ!」ディークが叫んだ時にはもはや遅かった。アレンもまた光弾の直撃をまともに受けてしまう。
「ははは・・・無駄な足掻きだ。おとなしくすれば楽に逝けるものを・・・。
さぁ、貴様たちの死に、最高のプレゼントを用意した。ありがたく受け取るがいい。開け!異界の扉!!」
ギネヴィアがそう言った途端、エッケザックスが・・・いやエッケザックスの周りが光り始めた。その光は次第に大きくなり、凄まじい衝撃を伴って何かが現れた。
「?!」
それは、紛れもなく竜であった。前の戦争で全滅したはずの竜であった。それが今目の前に現れたのである。
「さぁ・・・燃え尽きるがいい!」竜がその灼熱のブレスがロイを狙う。もはやここまでか・・・ロイは諦めかけた。
「ロイ!!」
ロイの前にシャニーが立った。ブレスの前に華奢なシャニーの体など盾にはならず、二人共吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。
「シャニー?!大丈夫か?」元から深手を負っていたシャニーに反応する力は残っていなかった。




24: 手強い名無しさん:05/04/19 12:21 ID:E1USl4sQ
「ふふふ、美しい愛情と言うものですか? 安心しなさい。ロイ、貴方もすぐその小娘のもとに送ってあげます。お二人共あの世でどうか末永く、お幸せに。」
「この野郎・・・っ、ぶった斬ってやる!」ディークがルトガーと共に竜に斬りかかる。
しかし、ディークたちの力を持ってしても、竜を怯ますことすら出来ない。
それどころか、二人とも竜の尾で吹き飛ばされ、やはり壁に叩きつけられてしまう。
「がはっ・・・」
「こいつは・・・倒せる気がしねぇな・・・。何だ、この力は・・。」
「ははっ、当たり前だ。そいつは我々が改造したもはや兵器のような物。それに自我などない。
攻撃しか考えない兵器だ。理性もない、力を100%発揮できるのだ。素晴らしいだろう?」
「改造・・・?そんな酷い・・・。」
「改造と言っても奴らの持っている竜石にちょいとエーギルを注ぎ込んで暴走させてやるだけです。
なぁに、暴れ終わったら体内のエーギルを切らして死にますから、我々に害はないですよ。」
「貴方は何て酷い事を・・・。人の命をなんだと考えておられるのですか!?」
「人の命? 劣悪種が一人前に命を語るな。どの道滅びる運命にある種族だ。有効活用しない手はないでしょう? さぁて、お遊びもここまでにして、そろそろ観念して頂きましょうか?」
ロイめがけてもう一度、竜のブレスが向けられる。ロイはシャニーをかばいつつ直撃を免れる。
「くっ・・・。僕たちでは敵わないのか・・・っ」
ここで命運尽きようかと言うそのとき、エッケザックスのほうから凄まじい光が竜に向かって放たれ、
竜に直撃した。竜はその場に倒れこんでしまった。
ロイがその方向を見ると、見知らぬ女性達が立っていた。
「くっ、すでにここまで計画が進んでいるとはね・・。しょうがない、こいつらを連れてずらかるよ!」
その女性は仲間たちに声をかけ、ロイ達を運び出した。
「待てっ、貴様達、また私の邪魔をしようと言うのか!」
「当たり前サ、アタイたちはそのために組織されているんだからね。邪魔して当然でしょーよ。
それじゃ、じゃーね〜。」
女性達はギネヴィアの放った後段を結界で防ぎつつワープで消えてしまった。
「・・・ちっ、小賢しい竜族共が・・・。まぁいい。告ぎ会うときは八つ裂きにしてくれる・・・。」


25: ロードアンドペガサス RoH8fs26:05/04/19 18:49 ID:9RWdJLPA
ッは!
何時の間にこんな状況に・・・
長編小説を書くとは思っていなかった上、
書き手の人がこんなに凄い人だったとは・・・
正直ビックリです。
どうぞドンドン書いていってください。

偉そうなこと言ってすみません

26: 手強い名無しさん:05/04/19 20:14 ID:9sML7BIs
いえいえ、とんでもないです(´・ω・`)
こんな素人の妄想たっぷり小説で楽しんでもらえるなら、喜んで書かせていただきます(`・ω・´)

それと余談ですが・・・ここまではほんの序に過ぎません。



27: 驚愕の真実:05/04/21 00:32 ID:gAExt6/c
「・・・・?」
もうどのくらい寝ていたのだろうか。ロイは自分が生きていることに気づいた。しかし、ここはどこなのだろうか・・・。少なくとも竜殿ではない。ロイには、竜のブレスを受けた後の記憶がなかった。
「ロイ様、お目覚めですか。あぁ、よかった・・・。」アレンが安堵の声を上げた。
「あ、アレン!良かった無事だったんだね。他の皆は?」
「ディークもルトガーも既に外で剣の稽古をしています。巫女からは安静にするように言われているのに、全く困ったものです。」
「そうか・・・シャニーは?それにここはどこ?」
アレンはシャニーの名前が出た途端慌てて話題を逸らした。
「ここは・・・ナバタの里です。我々はあの後、謎の集団に助けられ、ナバタの里に運ばれました。」
「ナバタの里?! そうか・・・あれからどのくらい経過した?」
「あれから既に1週間経っています。ベルンはリキアだけでなく、エトルリアやイリアにも進出を始めている模様です。」
「なんてことだ。ここで寝ているわけには・・・くっ・・・。」
「はいはい、怪我人は大人しく寝てな。そんな体で出発しても足手まといになるだけだよ。」
そう言いながら現れたのは、竜殿で見たあの金髪の女性であった。自分と同い年、又は少し年上のようであった。
「竜殿では助けていただいてありがとうございました。ところで・・・貴女は一体何者なのですか?」
「アタイはクリスって言うんだ。よろしく。んで、正体を言うとね・・・アタイは神竜族の竜さ。」
「神竜?! 貴女もファと同じ神竜なのですか? しかし、何故・・・?」
「信じてないのかい? だったら証拠見せてやっても良いんだよ。神竜族には背中に翼があるのを知っているかい? そいつをみせてやるよ。」
そういうとクリスは背中の翼を広げた。ファより大きく、美しいハリのある翼だ。
「これで信じてもらえたかな。んで、本題。アタイ達があんた達を助けたのは、アタイらの世界のバカ共があんた達の世界に迷惑をかけているからサ。」
「貴女達の世界・・・? 貴女はこの大陸の者ではないというのですか?」



28: 驚愕の真実2:05/04/21 00:57 ID:gAExt6/c
「そうさ、アタイたちの世界は、あんた達の世界とどこかで繋がってはいるけど別世界だよ。
一つはあの竜殿さ。あの剣が世界を繋ぐ鍵になっているみたいだね。アタイたちはあそこからこちらの世界にはいってきたのさ。」
「なるほど・・・ところで、あなたの世界のものがこちらで迷惑をかけるとは・・・?」
「竜殿であんた達を殺そうとした女・・・あれがそうだよ。あれはアタイたちの世界の異端者さ。」
「?! ギネヴィア様が?」
「あぁ、姿はこちらの世界の人間だけど、中身は違う。きっと何らかの形でとりついているんだよ。」
「そんな・・・。でもその目的は?」
「さぁねぇ、何考えてるかわかんないよ。ハーフの連中はねぇ。」
クリスは少々軽蔑の意も込めてそう言い放った。ロイは続けて聞く。
「ハーフ・・・?」
「人間と竜の混血のことさ。ほら、そこのねーちゃんも、アンタもハーフだろ?」
クリスはソフィーヤやロイを指差してそういった。確かにソフィーヤは竜との混血児だと聞いている。
しかし、自分は・・・?ロイは今まで自分を人間だと思い込んできた。
「僕が・・・ハーフ?」
「あぁ、間違いないよ。あんたの母親は氷竜だろ?ハーフになって当然じゃん。」
「僕の母親が氷竜?! そんなこと初めて聞いた・・・。」
「間違いないよ、なんたってアンタの母親はうちのリー・・・おっと。」
クリスはここまで言って止めた。そして話を変えた。
「話を戻すね。んで、うちらの世界のバカの仕業だから、あんた達を助けた。そして、あんた達に味方する。これでわかったかな?」
「うん、まだ信じられない話もあるけど・・・。要するにギネヴィア様は何者かに操られているってことだね。」
「そういうこと。このままじゃあんた達の世界は終わりだからね。そうなったら繋がってるこっちの世界もいずれは終焉を迎える。そうなったら困るからね。」
「ロイ様、私も協力するべきだと思います。今は世界の危機です。他に頼るものもない以上
彼女らと協力する事しか選択肢はないと思います。」アレンが助言する。


29: 第八章:飛翔転生:05/04/21 01:37 ID:gAExt6/c
「おう、ロイ起きてたのか。そのねーちゃんなかなか強いし協力してもいいんじゃねーか?
ただ、本当に女なのかが気になるがなぁ〜。」
ディークがクリスに挑発まがいの事を言った。感情がすぐに表に出る性格なのか、クリスは反発した。
「ふざけんじゃないよ!。どこからどう見たって女だろ?」
「へっ、あんなおっかない武器を軽々と振り回すくせによく言うぜ。」 クリスは閉口した。
「みんなの意見も同じようだね。・・・あれ、ところでシャニーは?」
ロイがそういった途端、皆は黙ってしまった。しかし、沈黙を嫌ったのかクリスが口火を切った。
「シャニーってあの蒼髪の子だろ? あの子なら、もう目を覚まさないよ。きっと。」
「なんだって?! それはどういう意味ですかっ? シャニーはどこに?!」
「あの子ならあっちの部屋に寝かせてあるよ。どういう意味って言われてもそのまんまさ。
体からエーギルが殆ど抜けちゃって、辛うじて生きてるって程度。何時死んでもおかしくないね。」
ロイは向こうの部屋に飛んでいった。そこにはソフィーヤとベッドに横たわるシャニーがいた。
「あ・・・ロイ様・・・。お体は・・・もう・・大丈夫・・ですか・・?」
「あ、ソフィーヤ。シャニーはどういう状況なの?」
「死力を・・・尽くしましたが・・・・・助けられなかった・・・。彼女は・・目を覚まさない・・・。」
ロイはシャニーにすがりつき、泣いた。どうしてこうなってしまったんだ・・・。
つい先日まで、一緒に話したり、食事をとっていた天真爛漫なあのシャニーが・・・・今・・。
話しかけても全く応答はない。触ってみても何時もの温かみを感じない・・・。シャニーはいまや死を目前にしたただの人形であった。
「・・・なぁ、ディークさんよ。あいつとあの娘ってどういう関係なの?」クリスが訊ねた。
「あいつは・・・ロイのフィアンセだ。 あのバカ・・・無茶ばかりしやがるから・・・。」
「そうかい、そういうことかい・・・だからあいつあんなに泣いているのか・・・。哀れだねぇ」
「ロイ様は早くシャニー殿と一緒になりたいと仰っておられました。それが・・・こんなことになってしまって・・・。これでは流石にロイ様もお気を落とさないわけはないでしょう・・・。」
それから数日間、ロイはシャニーの横で看病に努めた。しかし、シャニーは一向に目を覚まさなかった。
それどころか、クリスやソフィーヤに言わせれば、どんどん体内のエーギルが逃げ出していて死に近づいているらしかった。



30: 手強い名無しさん:05/04/21 01:43 ID:gAExt6/c
キャラ紹介〜
クリス(♀:ディヴァインナイト)
使用武器:武器全般(彼女のメイン武器は・・・まだヒミツです)

異世界から来た神竜族の女性。姐御肌で男勝り。
感情がすぐ表に出る性格で曲がったことは大嫌い。
容姿は金髪のセミショート

31: ロードアンドペガサス RoH8fs26:05/04/23 13:47 ID:yigRMr3g
>>30サンクス!
勝手に自分でこの先を想像したりしてみたりしましたが・・・
まぁ兎にも角にも、
スローでも早めでもいいのでドンドン書いていってくだい

もしメール欄に書いた自分の読みが当たってたら・・・ orz

32: 飛翔転生2:05/04/24 05:58 ID:gAExt6/c
「それにしても・・・世界が滅亡に向かいつつある時に、恋人の看病かい。わからんでもないけどねぇ。そろそろ出発しないとヤバイんじゃない? 他の地域にも何時攻め込むかわからないよ?」
クリスは苛立ちを隠せなかった。このままでは二つの世界は共倒れする。少なくとも自分は、ハーフの者達が何を企んでいるのか、調べなければならなかったからだ。ルトガーが珍しく口を開いた。
「・・・俺にもロイの気持が少しはわかる。・・・俺も自分の大切な人たちを殺された・・・。
俺はその結果・・・憎しみで戦っている。ロイが憎しみで戦うことができるだろうか?」
「無理だろうな。あいつなら、敵を憎む事をするだろうが、それ以上に、シャニーを何とかして元気にする方法を模索するだろう。クリスさんよ、諦めな。ロイはああいう奴だ。」
「でもこのままじゃねぇ・・・。」
「しょうがねぇよ。自分の納得行くまで自分のやり方貫かなきゃ気が済まない性格だからよ。
俺たちはアイツに雇われた傭兵だ。何とかしたけりゃあんたが何とかしなよ。」
「あ〜、もうイラつくねぇ。要するにあの娘が元気になればそれでロイは気が済む、そういうわけだね?」
「まぁ、そういうことだな。」
ロイは相変わらず、シャニーの手を握り、ベッドの横で祈っていた。いつか目を覚ますと信じて。
「ロイ様・・・そのようなお顔・・・しないでください・・・。」
「ダメだよ・・・ソフィーヤ・・・。何が・・・誰も犠牲にしたくないだ・・・。結局僕は、だれかの命を犠牲にして、ここまで生きてきたんだ・・・。シャニーにまで死なれたら・・・僕は・・。」
「・・・ロイ様・・・。きっと・・・大丈夫です。この人からは・・・強い力・・・が感じられる。」
そのころシャニーは、自己の深層心理の中で、激しい戦いを繰り広げていた。
まさに生きるか死ぬかの戦い。シャニーが目を覚まさないのは、その戦いのために、心にプロテクトがかかってしまっているからであった。


33: 第九章:自らとの戦い:05/04/24 07:01 ID:gAExt6/c
「あぁ・・・あたし、とうとう死んじゃうんだ・・・。もっとロイと一緒に居たかったな・・・。
イリア・・・どうなっちゃうんだろ・・・。まだ、死ぬわけには行かないのに・・・。」
どう祈っても、自分の意思とは裏腹に、体は動かなかった。それどころか、自分の体がどんどん枯れていっている事が、嫌になるほど伝わってきた。もはや、何もすることが出来ず、死を前にして泣くしかなかった。死を前にした恐怖を、初めて味わった。戦場ですら、味わったことはなかったのに。
「お姉ちゃん、ゼロット義兄さん、ワードにロット、イリアの皆・・・そしてロイ・・・。皆今までありがとう。あたし幸せだった・・・かな・・・。」
近くにロイの声が聞こえる、でも、声すら出せない、目を開くことも叶わない。もうこんなことなら
いっそのこと早く死んでしまいたい。そう思い始めた、そのときであった。
誰かが自分の中に話しかけてきた。今まで聴いたことのないような、懐かしいような声・・・。
「誰?! あたしを呼ぶのは・・・。あぁ・・とうとう天国からお迎えが着ちゃったか・・・。」
「我名はナーガ。竜族を纏めし、神竜族が王。そなたに問う、何をそんなに嘆いている?
自らが死んでしまうことか? それなら、自然の摂理に従うまでのことだ。嘆く必要もあるまい。」
「神竜族の王?!・・・って言われてもピンとこないけど・・・。あたしが嘆いているのは死んでしまうことだけじゃないよ。大好きな人や、大好きな国、そして大好きな世界が大変なことになっているのに、自分はもう何もすることが出来ない・・・こんなのあたしには耐えられないよ・・・。」
「こうなったのは当然の結果ではないのか? 自らと違うものを受け入れられない、それが何時も戦争の起こる原因だ。そんな心の狭いものが大切なのか?」
「ロイは・・・っ、皆が平和に暮らせるように努力してきた! そんな心の狭い人じゃない!
あたしだって、イリアが住みよくなる様に願わなかった日はないよ。大事な祖国だもの!」
「戦争さえなければ平和なのか?欲望や嫉妬、そのようなつまらぬものに惑わされ、他人を痛めつけ、そして自らが幸せになることが、平和ということなのか。もしそうであるならば、私の知らぬ間に言葉は随分と様変わりしたのだな。」
「それは・・・っ。でも、ロイはそういうことがなくなるようにがんばってきた! あたしだって・・」
「もはや取り返しの付かないこともある。 所詮そなたも人間。いつかは絶望し、諦めるだろう。」
「そんなことない! あたしは・・・いろいろな人に守られて生きてきた。 あたしが今諦めたら
あたしのために犠牲になた人たちに顔向けが出来ない! あたしは諦めない、絶対に・・・。
できることがあるのなら、命ある限り、戦ってやる・・・。」 
「・・・ならば私を倒して見せよ。そなたが、自らの考えを貫いていけるほどの力があるのか
試させてもらおうか・・・。 さぁ、どこからでもかかってまいれ。」


34: 第九章:自らとの戦い2:05/04/24 07:32 ID:gAExt6/c
そういい終わると、目の前に、自分が今まで見た戦闘竜より遥かに大きい金色の竜が現れた。
たったブレス一吹きで身も心も灰にされそうな大きさだった。・・・しかし戦うしかない。
愛する人、愛する祖国、愛する世界のためにも、絶対に負けられない。
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」シャニーは竜に向かい突撃した。持ち前のフットワークを生かし、ブレスを避けつつ接近する。隣接し、斬りかかろうとしたそのときだった。・・・??何かおかしい。
「どりゃぁぁぁ・・・って・・・。武器ないじゃん!!」
そうだった。自分には武器がなかった。ドラゴンキラーはおろか、鉄の剣すらなかったのである。
そこにしっぽによる素早い一撃が振り下ろされた。シャニーは直撃を受け、壁に叩きつけられる。
「うぁ・・・・っ」口から血が吹き出た。心の中なのに、痛い。心の中で更に意識を失いそうになった。
「どうした・・・そなたの力はその程度か・・・やはり所詮は人間よ・・・。」
「くそぉ・・・。」
もはや手段はこれしかない。シャニーは竜に隣接し、素手で殴った。・・・武器を持ってしても、かすり傷を負わせることすら難しい相手だ。ダメージを与えられるはずもない。何度も殴っているうちに、相手の鱗の硬さに負け、自分の手が赤く染まり始めた。
手が駄目になると今度は足を使った。やはり相手は無傷だ。それどころか、自分の足がだんだん傷ついていく。シャニーは、防具はおろか、服すらない、生まれたままの姿だったのである。
足が傷つく事により、フットワークが徐々に悪くなっていく。だんだん相手の攻撃を避けられなくなってきた。そしてまた竜の一撃を喰らってしまい、吹き飛ばされる。
「ぐはっ。」 今度は頭も打ってしまった。がっくりとうなだれ、首筋に赤い筋ができていく。もう動けない・・・。今度こそ・・・年貢の納め時か。
「やっぱりあたしは・・・口だけの人間だったのか・・・。」
脳裏にいろいろな考えが飛び交う。このままいっそ死んでしまえば・・・楽になれるかもしれない。
竜の尻尾が再び迫った。シャニーは計り知れない実力差の前に絶望し、諦めかけた、その時であった。
「シャニー! 死んじゃダメだ!生きるんだ!」・・・?!ロイ?
「シャニー、貴方は強い子・・・がんばりなさい・・。」 え・・っ?まさか・・・お母さん?!
「こんな事でへこたれたら、騎士の名が廃るぞ、立ちなさい。」 お、お父さん・・・。
「シャニー、君ならできると信じている! 僕のところに帰ってくるんだ!」



35: 第十章:死闘の果てに:05/04/24 21:11 ID:9sML7BIs
それは、自分が最も大切にしたい人たちの声であった。しかし、もう力が出ない。
「もう無理だよ・・・。もう動けないし、武器もない。あたしじゃ敵わないよ。」
「バーカ。何時もの元気はどうした? さっさと片付けて戻って来い。」 ディークまで現れた。
「シャニー。私の代わりにイリアを引っ張ってくれるのではなかったのか? お前が倒れたら誰がイリアを創っていくのだ? さぁ、立つのだ。」なんとゼロットまでもが現れた。
「しかし・・、今のあたしではこのような竜に勝てるはずが・・・。」
「決して諦めるな。自分を信じるのだ。そしてお前は、一人ではない。お前の周りには、常に仲間がいる。その者達を信じて、戦うのだ。・・・お前の武器は・・・仲間だ。」
「あたしの武器は・・・仲間・・・? そうか・・あたし・・・信じるよ。大事な人たちだもん。」
シャニーは立ち上がると、最後の力を振り絞って竜に突撃する。なぜか先ほどより、竜が小さく感じる。
竜に近づくとロイ達の姿は光に溶けて行き、次第にその光が収束し始めた。そしてそれは一本の剣の形になり、シャニーの手に握られる。
「あたしは諦めない! 大事な人が、大事な国が、そして大事な世界があり限り!」
シャニーが手にした光の剣で竜を斬りつける。すると、竜はあれほどの大きさにも拘らず砕け散って小さな光の粒が回りに飛び散った。
「勝った・・・のか?」
「見事だ・・・。そなたは自分の闇に打ち勝った・・・。そなたは運命を変えていける一人かもしれない。 ・・・よかろう、我はそなたに、我の力を貸し与える。この力を使って、世界に真の平和をもたらすのだ。」
「えっ?」
「そなたは人間としてはもう死んでいる。我の血を使い、竜族として再びこの世界に根を下ろすのだ。
しかし、体は人間。竜石を用いて竜に転生することはできぬ。それだけは覚えておくのだ・・・。」
そういい終わると、先ほど砕け散った光の粒たちが、一斉にシャニーの体の中に入ってきた。
暖かく、そして凄まじい力が体にみなぎるのを感じた。・・・これが竜・・・神竜の力・・・。
そして、全ての光が体に入り終わった時、体に今までにないものが加わった。背中に翼が生えたのである。それは、自らが人間でなくなり、神竜族に生まれ変わったことを示していた。
「うわ?! 背中に羽が・・・! もしかして本当に神竜族ってやつになっちゃったの?!」
「嘘か誠か・・・目を覚ましてみた時にわかるだろう。ただ一つだけ警告しておく。いくら竜になれないといっても、神竜族の力というものは他の種族に比べても非常に高いものだ。そなたが力に溺れるようなことがあれば、そなたは世界を何時でも暗転させることができる。それだけは忘れるでないぞ・・・。」
「待ってよ、なんであたしなんかにこんな力をくれるの? 他の強い人ならいくらでも・・・。」
「そなたはこの世界を正しい方向へと導く男にとってなくてはならない存在。今そなたがいなくなれば
もはや世界を救う事はできないであろう。そなたは真っ直ぐで穢れのない心の持ち主だ。その心の美しさは、周りにいるものを笑顔に変える。その男にとって、仲間の笑顔は大切な武器なのだ。」
「わかったよ。あたしは大切なもののために戦う。容姿が変わったって、種族が変わったって、それは同じ。がんばってみせるよ。」
「種族が変わっても・・か。そなたのように心の広い者ばかりなら、このようなことにはならなかっただろうに・・・。」
「え?どういうこと?」
「今のそなたが知るべき事ではない。いいか、そなたの力は皆の為にある。決してそなた一人のため、一種族のためにあるのではない。それを忘れるな・・・。」
そうナーガがいい終わると、シャニーは夢から次第に意識が遠のいて先ほどから聞こえるロイの声が、次第に大きくなっていった。


36: 手強い名無しさん:05/04/26 18:06 ID:E1USl4sQ
尼崎は大変な事になっていますね・・・。
亡くなられた方には心よりご冥福をお祈りいたしております。

37: 竜王ナーガ:05/04/26 19:21 ID:E1USl4sQ
「シャニー・・・。」 ロイは祈り続けた、何度も呼びかけた。目を覚ますことを信じて。
その気持が伝わったのか、シャニーがうなり声を上げた。
「うぅ・・・」
「シャニー?!」
「あ・・・ロイ・・・。おはよう。」 まるで何もなかったかのように声をかけた。
「・・・おはよう。良かった、無事で・・・。」
シャニーは夢の中のナーガの話を思い出し、背中に手をやった。
「・・・・っ!」
翼が・・・あった。夢は本当の話だったのである。自分は・・・人間としての自分はもう死んでしまったのである。今生きている自分は、ナーガの力で蘇った神竜族としての自分であった。複雑な心境であったが、生きていることの喜びはそれを補って余りあるものであった。ロイが変わってしまった自分を嫌ってしまうかもしれない。でも、黙っているなんて自分には出来ない。シャニーは正直に夢の中の出来事、そして自分が人間でなくなってしまったことを説明した。
「そうだったのか・・・。でも本当に無事でよかった。やっぱり君が元気でいてくれないとね。」
「ありがと、ロイのお陰だよ。あたしはロイのために蘇ったんだから・・・。」
「え? 何か言った?」
「ううん、何でもない。でも・・・嫌じゃないの? あたし・・・もう人間じゃないんだよ?」
「何言ってるんだよ。シャニーはどうなってもシャニーだよ。種族なんて関係ないさ。」
「ありがとう! やっぱりロイの事あたし大好きだよ。」
「あはは・・・。でも、すごいよナーガだっけ? 神竜族の王に認めてもらえるなんて。流石シャニーだよ。」 ロイの言葉にクリスが反応した。
「ナーガだって?! シャニー、あんた夢でも見たんじゃないのかい?」
「夢?見たよ。だから、夢であったんだってば。」
「あー、そっだったね。ナーガって言ったら神竜族の伝説の聖王だよ? あんたが会えるわけないじゃん。ナーガがいた時代は何万年前だと・・・。」
「う〜ん・・・でも背中の翼見ればわかるでしょ? あたしホントに会ったんだもん。」
「まぁ、いいか。何はともあれあんたと同士になったわけだし、仲良くやろうよ、ね?」
「うん、よろしく〜。でも・・・クリスってアネゴって感じがするね〜。迫力があるというか・・・。」
「おっかなくて、野蛮そうでか?」
「そうそう・・・ってディークさ〜ん。」
「おう、元気になったじゃねーか。それでこそおまえだ。」
「誰が野蛮だい! あんただって十分野蛮人じゃないか。このムサ男!」
「あぁ? なんだとぉ?」 この二人は相変わらず仲がいいのか悪いのか、すぐに煽り合いはじめる。
「ところでシャニー。あんたはまだ神竜になって間もないから何も知らないだろ? 後でいろいろ教えてやるよ。時間も余りないしね。」
「うん、ありがと〜。頼りになるね〜。よ、アネキ!」
「やめなよ、テレるだろ?」
「でも、本当に姉妹みたいだな。」 アレンが言った。
「お?アレンじゃないかい。 また手合わせしないかい? あんたぐらいの実力ならやりがいあるし。」
「うむ、クリス殿。今度こそは負けん。いざ勝負。」
二人ともまっすぐすぎる性格のせいか、とてもよく気があっているようだ。この頃よく二人で手合わせなどをしていた。
「あれー? クリス、いろいろ教えてくれるんじゃなかったの?」
「後でって言ったろ? あたしゃ忙しいんだよ。」
「ぶー。」 シャニーの膨れ面を見て、ロイもディークも心底安心したようで安どの表情を浮かべていた。
しかし、情況は極めて厳しかった。ナバタの里から出れば、周りは全て敵と思っても過言でない情況であった。



38: 第十一章:新たなる出発:05/04/27 15:45 ID:E1USl4sQ
「さて、これからどうするかだね。この戦力じゃリキアに攻め込むことは出来ないし。」
「必然的にエトルリア、イリアルートでリキア、ベルンに向かうことになるだろうな。
三軍将はまだ生きてるはずだし、エトルリアと手を組めればまだ勝機はあるぜ。まぁ、問題は・・・。」
「竜族二人をエトルリアがどう判断するか・・・だな。」
「そうだ、それにエトルリアも攻め込まれて俺たちに構ってる暇はないだろうし・・・どうするかな。」
「・・・お姉ちゃん。リグレ公と公妃が力になってくれないかな。」
「クレインか・・・。しかしあいつは既に軍を退いているしなぁ・・・難しいだろうな。」
「ロイ・・・どうするのだ? 急がなければエトルリアすら手遅れになるぞ。」
「決まってる。 エトルリアに行こう、そしてなんとしてもリグレ公爵の力を借りるんだ。」
エトルリアはこのナバタ砂漠の北東にあるエレブ大陸でも最大の王国で、ベルン動乱の後世界を引っ張ってきた。騎士軍将によって統率された騎馬隊に加え、大軍将管轄下の歩兵の兵力は、大陸最強と言われていた。 
「よし、それじゃ早速出発しよう。エトルリアのことはディーク、よく知ってるよね?」
「ん?あぁ、あそこは俺の庭みたいなもんだ。昔と変わっていなければな。」
「ロイ様、我々は常に狙われている以上、昼に行軍することはキケンだと思います。
できるだけ目立たぬよう、夜に行動するほうがよろしいかと。」
「そうだねぇ、偵察はアタイとシャニーでやるから、あんた達はゆっくり来るといいよ。」
「え?! あたしも?」
「当然だろ? 何言ってるんだい。妹なら姉のいうことは聞くもんだよ。」
「こういうときだけ姉貴ぶってさ〜ぶつぶつ・・・」
「ウルサイねぇ。ついでに、そっちの野蛮人二人はともかく、シャニーやロイさん、あんた達一発で平民じゃないってばれるよ。服着替えたほうがいいんじゃない?」
「だれが野蛮人だ! この妖怪暴力鬼女!」
「・・・ディークはともかくとして・・・何故俺まで・・・。」
「そうだね、適当に着替えておくよ。それじゃ、クリス、シャニー、頼んだよ。」
「あいよ。任せときな。」
「ロイ、しばらくお別れだけど元気でね。お姉ちゃんをならきっと力になってくれるから安心して。」
「うん、君も、絶対に無茶しちゃダメだよ? 今度無茶したら絶交だぞ!」
「わかってるって。大丈夫! それじゃーね。」
シャニーがクリスの後について出て行った。残ったのは野郎4人組。
「・・・ところで、ロイ。」ルトガーが話しかける。
「なんだい? 剣の勝負なら僕はゴメンだよ?」
「・・・あいつを前線に置くのはやめたほうがいいのではないか? お前も子供が欲しい年頃だろう?」
「おう、そういえばお前ももう20代か。どうなんだ? 夜の仕事は?」
「ふ、二人ともからかわないでよ・・・。恥ずかしいじゃないか・・・。」
「お、その反応からするに・・・ヤっちまったのか?」
「ディーク殿、ロイ様をあまり困らせないでください。」
「ははは、冗談に決まってるだろ? さてと、武器屋で武器を調達してくるか。」
そういうとディークは部屋を出て行った。ルトガーもそれを追う。
ロイはそれを見届けると、真っ赤になった顔で胸をなでおろした。
流石に夜の二人の関係を言うなんてできなかった。例えそれが真実だとしても。
「・・・あいつが子持ちになるのか・・・。ふっ、早いもんだ。」
「・・・ディーク、お前、この頃オヤジ臭くなったな・・・。」
「あぁ? ルトガー、またてめぇは俺をジジイ扱いしやがったな。いくらお前でも・・・。」
「ふっ、お前の心中など読めている。・・・あいつが危険に陥ったときは、俺も助けよう・・・。」
「! ルトガー・・・てめぇ・・・。」
「ふっ・・・。」
そういうとルトガーは砂塵の中に消えた。
「・・・すまねぇな。相棒。」




39: 手強い名無しさん:05/04/27 15:56 ID:E1USl4sQ
今更だけど、>>25のメル欄へレス〜
キャラが死んでいるのには理由がありますよ〜。
それを言っちゃうと面白くなくなるので書きませんが(−−;
性格が違うと感じるのはきっとシャニーのことだと思いますが
一応封印から4年経っている、つまり封印の時、シャニーが14だと仮定すると
18になっているわけです。 流石に18で14の時と同じ言動はヤバいかな、と。。
他のキャラでしたらすいません(´・ω・`)

40: 第十一章:新たなる出発2:05/04/28 17:59 ID:E1USl4sQ
クリスとシャニーは屋外に出て、それぞれの準備を始めた。
「シャニー、あんた武器何使うんだい?」
「剣だよ。昔は槍も使ってたけど、重いからさ〜。クリスは?」
「アタイ? アタイはこれだよ。」そういうとクリスは大きな鎌を持ち出した。
「うわ、何それ。すごく重たいんじゃないの?」
「何言ってるんだい。このぐらい軽いもんだよ。あんたも神竜ならこのぐらいもてるだろ?」
そういうとクリスはシャニーに鎌を渡した。とてつもなく・・・重い!
「うがが・・・重い〜。」 シャニーはふらついて転んでしまった。
「情けないねぇ。ホントにあんた神竜かい? やっぱその羽つけ物じゃないのかい?」
「なにを〜?! そんな事言うなら勝負だ! あたしだって一応団長なんだぞ!」
「いいよ? アンタがアタイに勝てるわけないだろ? かるーくひねってやるよ。」
シャニーは剣を握った。やはり、前にはない、不思議な力が体の底からこみ上げてくる感じがした。
「! 速い!?」 クリスはシャニーのその速さに驚いた。人間の時から速かったためか、竜族に転生して、更にそれに磨きがかかったようである。
「あーっ。ゴキブリみたいにカサカサ動いてウザイ奴だねえ!! さっさとくたばりな!」
クリスはブンブン鎌を振り回す。あんなのが当たったら一発で首が飛びそうである。
シャニーに一発も当たらないので頭にどんどん血が昇っている。逆に急所を何度も狙われて体力を削られ始めた。しかし、とうとうクリスの攻撃がシャニーのわき腹をかすめた。
「うぎゃ!」 やはり凄まじいパワーである。ディークが女じゃないといっていたのは本当だ。
その後もシャニーは鎌を避け、クリスは剣を柄で払う。しばらく攻防が続いた後、クリスが見せた隙をシャニーは見逃さなかった。
「トドメだ!」 シャニーが攻撃しようしたそのとき、誰かの声がした。
「やめろ、二人とも。それ以上やったら死んでしまう。我々の目的を忘れた私闘はロイ様も許さないぞ。」
アレンだった。シャニーは声に驚いて攻撃をやめ、クリスもそっちを向いた。
「邪魔すんじゃないよ。そう簡単にはアタイたちは死なないから大丈夫だよ。」
「何言っているんだ。そんなに怪我を負って・・・。こっちに来るんだ、治療するから。」
アレンはクリスを心配しているようだ。しかし、クリスは恥ずかしいのかそれを拒んだ。
「大丈夫だって! このぐらいの傷セルフヒールするさ。自己治療術ぐらいアタイにだってできるよ。」
「そうか・・・。無理するなよ。君はまるで猪だからな。」
「どういう意味だい! まぁ、心配してくれてありがとよ。」
「猪だって! あはは。ふっ、あたしは蝶の様に舞い、蜂のように刺す華麗な騎士さ。」
「蝶?蜂? アタイにとっちゃハエの様に飛んで、蚊の様に刺すウザイ存在だけどね。」
「なにを?! って、すごーい。」
クリスは魔法を使い、自分の傷を治していた。神竜の力とはやはり際限の無いもののようだ。


41: ロードアンドペガサス RoH8fs26:05/04/29 09:02 ID:z8u40Ve2
>>39
スマソ、ヴィネアとエレンのことを指してたんですが・・・
別人とは思いませんでした。
自分の小説では、
レイソフィのソフィーヤが竜の血を犠牲に
レイを助けるシーンがあるんですが・・・
そんなの書いてるからか
シャニーに竜の血を分けることは考えませんでスタ。
意外性たっぷりの小説ガンガレ

42: 手強い名無しさん:05/04/29 10:18 ID:E1USl4sQ
ありがとうございます。誤解が解けて何よりです。
この頃就活で更新が滞り気味ですが、なんとかがんばります。

43: 新たなる出発3:05/05/01 20:28 ID:9sML7BIs
「こんなの誰でもできるだろ? あ、人間には出来ないのか。今のあんたならできると思うよ、やってみなよ。あんたきっと魔力高いクチだよ。力に特化してないし。」
クリスはシャニーにやり方を教えた。シャニーが言われたとおり呪文を詠唱してみた。すると
先ほど出来たわき腹の傷がみるみる治っていく。今までにはない力であった。
「うおー! すごーい。 あたしホントに神竜になったみたいだよ。」
「おぉ〜。 やっぱあんた結構いい魔力持ってるじゃんか。騎士やめて魔道士にでもなったら?」
クリスは笑いながらそう言いつつも、心中は複雑だった。(これほどの力を持ってるとは・・・ナーガ神に会ったと言うのもまんざら嘘でもないようだねぇ・・・これはリーダーに報告すべきか・・・。
しかし、帰る道は竜殿しか今のところわからないし・・・。)
「冗談じゃない! あたしはせっかく騎士になったんだもん。魔術師なんていやだよ。せめて魔法剣士って言ってよ。」
「あー、わかったわかった。それじゃ、行くよ。」 クリスがシャニーの肩を叩きながら言った。
「行くって、どこへ? まさかエトルリア? どうやって? あたし天馬失ってるんだよ?」
そうである。シャニーのペガサスは竜殿に放置してきたままであった。大方ベルン軍に捕獲されているだろう。そしてここはナバタ。新しい軍用ペガサスなどいるはずもない。
「どうやってって・・・。 あんた背中についてるものを忘れてないかい?」
そう言うとクリスは翼を広げた。それを見てシャニーは、やはりクリスが人ではないということを再認識した。 そしてまた、自分の背中にも同じものがあることを思い出した。
「え、まさかこれで飛べるの? ・・・飾りだと思ってた。」
「(汗)あのねぇ・・・。まぁいいや。 どうせ不慣れだろうし、ゆっくり教えながら行くから安心しな。」
クリスに言われた通りに魔力を込めて羽ばたいてみる。羽根が周りに飛び散る。すると、体がみるみるうちに宙に浮いた。
今までペガサスに乗っての空中飛行は何度も経験したが、自らの翼を使ってなど、当然初めてのことであった。ペガサスの時より、更に空中で自由だった。気持ちよく飛ぶことができる。
「うわ〜。 超気持ちいい。 すごいね〜。」
シャニーはそう言いながら飛び回っている。クリスはそれを見て笑った。
「ははは、アンタ、本当にハエみたいに飛ぶねぇ。ハエに様に舞い、蚊の様に刺す。魔法剣士さん。」
「なんだと〜。 この猪!」
確かにシャニーの素早さは、空中と言う何の制限もないフィールドでは更に磨きがかかっていた。
しかし、自らで飛ぶという事は、更に弓に弱くなったことも意味していた。シャニーにはまだそこまで考えてはいないだろう。まだ手取り足取りフォローが必要だと、クリスは妹分を見ていた。
「よし、じゃあ出発するよ。早くあんたの姉さんに会って話しつけないとね。」
「うん、レッツゴ〜。」
二人は宙に飛び出し、次第にナバタからその影が見えなくなっていった。


44: 手強い名無しさん:05/05/08 17:01 ID:E1USl4sQ
ロイ達は夜を待って出発した。この戦力でベルンに見つかれば一巻の終わりである。ロイはディーク傭兵団の一員として行動せざるを得なかった。
「なあ、ロイ。お前、そのカッコウもどうしてかよく似合ってるぜ?」
ディークが冗談交じりにロイをからかう。ロイは傭兵らしい平民の服に着替えてきた。
「ディーク殿!ロイ様にあまり失礼なことをおっしゃらないでいただきたい。 ロイ様、エトルリアでリグレ公爵と会うまでの辛抱です。どうかご容赦ください。」
「わかってるよアレン。 でもこの服装のほうが何か動きやすくて良いね。・・・少し寒いけど。」
砂漠の夜は意外と冷える。一行は息を白くしながらエトルリアへの道のりを急いだ。
そして次の日、ロイ達はエトルリアに近いある村に泊めてもらった。ロイ達はアクレイアへの進入方法を模索していた。きっと戦場になっているに違いない、城門は閉まっているはずだった。
あれこれ策を練っていると泊まっていた民家のおばあさんが話しかけてきた。
「あんたたち、エトルリアへ行くのかい? よしたほうが良いよ。 
かなり劣勢らしいから。旅の傭兵団なんかが行ったらすぐに殺されちゃうよ。
ベルン軍は手当たり次第に殺してるらしいしねぇ。」
「な、なんだって?! じゃあ。リグレ公も危ないじゃないか・・・それにシャニー達も・・・。」
「そのための偵察だろ? なーに、あのねーちゃんも付いてるし、大丈夫だよ。
それより進入経路だ。門が閉まっているとなると進入経路はひとつしかない。それはな・・・。」
「それは?」
「・・・下水道だ。今回は手段を選んでられねぇからな。少々キタネェがやむを得んだろう。」
「ふっ、野蛮人の考えそうな案だな・・・。まぁ、それしか方法はなさそうだが。」
「それしかないならそれでいこう。今の僕たちに躊躇している時間はないさ。」
「後は二人が戻ってくるのを待つだけだな。シャニーがドジ踏んでなきゃそろそろ帰ってくるはずだ。」
エトルリアの力を借りればまだ勝機はある・・・しかしエトルリアが劣勢に陥るほど、ベルンの攻撃は激しい。それをこれだけの数で相手にできるのだろうか。もしベルンが竜を持ち出していたら・・・
ロイの脳裏にあの竜殿で凄まじい力を暴走させた竜の姿が浮かんだ。
しかし、自分のいった言葉を思い出し、とにかく前を向こうと、ロイは決心した。
躊躇する時間はない。やれることがあるのならそれに賭けるしかない。



45: 第十二章:死闘エトルリア:05/05/08 17:41 ID:E1USl4sQ
「うはー、気持ちいいねぇ〜」
シャニーは相変わらず空中の感覚に酔いしれている。クリスもだんだん呆れてきた。
「あんねぇ・・・遊びに来てるわけじゃないんだからもう少ししっかりしとくれよ。そんなにはしゃぐと後にくるよ。魔力温存しないと知らないからね。」
「わかってるって! あー、でも翼だなんてまるで天使様にでもなったみたい。聖女エリミーヌ様と天使が天空から光臨したって神話があるんだよ。」
「あぁ、その天使って言われてるの、多分ウチら神竜族のことだよ。神竜族っていうのは他の種族より高い能力を持ってる。空を飛ぶことが人の状態でできるのも神竜族と飛竜族だけなはずサ。」
やはり神竜族というのは竜族の中でも特別な存在らしかった。そんな凄いものに自分がなってしまったいうことが未だに信じられなかった。しかし、実際翼があり、空を飛んでいた。自分は神竜族。そしてその力は世界のためにある・・・。改めて思い出した。
「へぇ・・・やっぱ神竜族ってすごいんだね。ほかにどんなことができるの?」
「後であんた自身にやらせてやるから魔力温存しとけって言ってるの。道草食ってないで急ぐよ。アタイらには時間がないんだからね。」
そういうとクリスはスピードを上げた。シャニーもそれについていく。竜騎士が飛ぶ高さよりはるか高くを飛んでいる。とても景色がきれいだった。この下では誰かが殺されているかもしれない。そんな事がとても信じられないくらい、平和に見えた。・・・見せかけの平和。真の平和とは何なのか、シャニーは頭の中でいろいろ考えていた。

「ふえぇ〜・・・。疲れたぁ・・・。」
下にはエトルリアが見える。最初は威勢がよかったシャニーも疲れてふらふらしていた。
「だらしないねぇ。だから魔力を温存しとけって言ったんだよ。さて・・・んじゃ、そのリグレ公爵様っていうのに会いに行こうかね。」
「会いに行くってどうやって?それに偵察して来いって言われてるんだよ?命令無視して自分たちだけで戦闘なんかできないよ。それに二人だけじゃ・・・。」
「大丈夫だって。あんた場所知ってるんだろ?」
「まぁ・・ね。結婚式に招待されてお屋敷に行ったことあるからさ。場所は知ってるけど・・・。」
「ならいいじゃないか。アタイが前に出て敵をなぎ払っていくから、あんたは後ろから魔法使ってりゃ良いよ。どーせあんたの腕力なんか高が知れてるからね。」
「魔法の使い方なんかこの前の回復しか知らないよぉ。惑う書もないし。それにやっぱ危険だって・・・!」
「魔道書?あんなもん人間が使うものじゃないか。人間はエーギルを体に取り込んで魔力に転換する力があまりないのさ。だから魔道書という媒体を用いてエーギルを魔力に変換する。それだけのことさ。
賢者といわれる人間がどうして長生きか考えてみれば良いよ。エーギルっていうのは生命力そのもの。
それを他の人間より少しでも蓄えられる人間が魔法使いになっているのさ。その中でも賢者っていわれるのは魔道士の中でも高位の者。よりエーギルを蓄える力がある人間さ。もっとも、いくら蓄える力があるといっても、竜族の子供並みしかないと思うけどね。」
「・・・難しい話はわかんないよ。(ほとんど聞き流しちゃった・・・。)とりあえず呪文が分からなきゃどっちにしろ出来ないジャン。」
「敵に遭遇したら教えてやるよ。さて、防御が手薄なところから行こうかねぇ。
久しぶりに腕がなるよ・・・フフフ・・・。」
シャニーには、大きな鎌を握るクリスの後姿が、天使というより悪魔に見えてしょうがなかった。


46: 手強い名無しさん:05/05/08 19:12 ID:E1USl4sQ
リグレ公爵家の屋敷はアクレイアでも王宮に近い上流階級の地区にあった。三軍将率いるエトルリア精鋭部隊の善戦もむなしく、ベルンの手は王宮にかろうじて届かない程度まで迫っていた。もはや落城も時間の問題であると言っても過言ではなった。
ベルンの二人の巡回兵が上空に何かを見つけた。高速に移動する物体が二つ・・・。
一人が双眼鏡でそれを何か確認しようとしたところであった。
「!?・・・!ぐはっ」
巡回兵はその物体から放たれたとてつもないスピードの光弾・・・いや光の槍の直撃を受けてしまう。凄まじい威力で一撃のうちに倒されてしまった。
もう一人のベルン兵が吹っ飛ぶ仲間に焦って目をやっているうちに何かが上空から迫ってきていた。
「うおおおおおおおぉぉぉ!」クリスだった。クリスはベルン兵に向かって鎌を振り下ろす。
臨戦態勢をとっていなかったベルン兵は悲鳴をあげるまもなく、一撃で沈んでしまう。二人のベルン兵を倒すまであっという間であった。
「うへぇ・・・。クリス・・・エグいなぁ・・・。」
「何言ってるんだい。それにしてもやっぱアタイが見込んだだけのことはある。
凄かったじゃないか。さっきの魔法。やっぱあんた魔道士のほうが合ってるんじゃないのかい?」
「だからあたしは魔法騎士・・・ぶつぶつ」
「あーわかったよ。もう良いからさっさとこいつらを茂みに運ぶよ。こんなのを他の連中に見つかったら侵入者が居るってすぐばれちまうからね。それに、こいつらの服を着てればそう簡単にはバレないだろうし。」
「なるほど、クリスあったまいい〜。 でも・・・竜騎士の鎧なんか重いからイヤだなぁ・・・。」
「いちいち文句が多い! さっさと着替えな。」
二人はベルン兵に成りすまし、街中を歩いてみた。右を見ても左を見てもベルン兵だらけであった。
シャニーはこの占領下でクレインや姉が無事で居るのかと心配でたまらず、リグレ公爵の屋敷へと向かう足が自然と早歩きになっていた。かつては結婚式に礼服で赴いた屋敷に、敵国の服を着て再びくることになるとは夢にも思わなかった。ひたすら、姉と義兄の無事を祈って歩き続けた。

リグレ公爵家に着いた。やはり、周りにはベルン兵がうろつき、占領されているようであった。
しかし、やはり外見上まったく分からないためか、すんなり中に入ることが出来た。
前の戦争で武官を退き、文官になっていたためか、たいした抵抗もせずに降伏した様子であった。
中で争った形跡がほとんどなかったからである。シャニーは少しほっとした。
「リグレ公に用があるのだが、どこに居る?」中に居たベルン兵に問うてみた。
「奥の間に監禁してある。それにしてもここの女達は綺麗な人ばかりだぜ・・・。監禁しておくなんて勿体ねぇや・・・。ひひひ。」
斬りかかろうとするシャニーをクリスが押さえ、奥の間に急ぐ。ここで騒ぎを起こすわけには行かなかった。
奥の間に入った。中のベルン兵に交代だと適当なことを言って外に出した。
クレインとティトのほかに、パントやルイーズ、そしてクラリーネの姿もあった。全員少し疲れた顔をしていたが、怪我もなさそうで元気であった。シャニーは安心し、少し姉を驚かしてやろうとティトの前に立った。ティトが不安げに見上げる。
「・・・お久しぶりです。姉上。」そういいながら兜をはずした。姉上なんて言葉を使ったのは生まれてはじめてであった。ティトは目を大きく見開いて驚いた。
「あなたはシャニー?! どうしてここに?イリアはどうしたの!?」
シャニーは今までの経緯をすべて姉たちに話した。そして自分が人間でなくなったことも・・・。更にはロイ達がアクレイアに向かっていることも話した。
「だからお姉ちゃんたちの力を貸してほしいの。それに三軍将の力も合わせればベルンをエトルリアから追い出せるはずだよ。」すると、パント達が口を開いた。
「よし、危険な賭けだがやむを得まい。正義のためならば動かないわけにはいかないだろう。」
「私も父上に賛成です。戦いは好みませんが我らのエトルリアを一刻も早く取り戻したい。」
「シャニーとか言いましたわね。私も協力して差し上げますから感謝なさい。」
「シャニー、私たちは何をすればいいのかしら?」
「ありがとう、みんな。あのね、ひとつ教えてもらいたいことがあるの。
この屋敷につながってる下水管はどれかなぁ?」
「げ、下水管!?」 一同が口を揃えて言ってしまった台詞であった。



47: 手強い名無しさん:05/05/08 20:26 ID:9sML7BIs
ディークが村の高台から見張りをしていると、エトルリアの方角から何かが飛んでくるのが見えた。
シャニーたちが帰ってきたのであった。.シャニーは早速リグレ公爵家の無事と、彼らの意思を伝えた。
「よし、それならすぐにアクレイアへ向かおう。ぐずぐずしていてはリグレ公も危ない。」

ロイ達は一路エトルリアへ向かった。王国の城壁の外にある下水道の入り口をディークが案内した。
「よくこんな経路を思いつきましたね、ディーク殿。」アレンが驚嘆しながら言った。
「俺は幼い頃ここの闘技場で剣闘士をやってたんだ。だから街の事なら覚えているぜ。」
下水道を経て、リグレ公爵の屋敷内に潜入を果たした。まず彼らと合流を図らねばならなかったのだが・・・。
「ん? 貴様たち何者だ!?」 あっさりベルン兵に見つかってしまった。
「しがない傭兵団だっ帝っても通用しねぇよな。ちっ、しょうがねぇなぁ・・・。おいルトガー、行くぜ。俺たちが外の敵を片付ける。お前らはまずリグレ公を救出してくれ。」
「あいよ。アレン、アタイらが前衛となって突っ込むよ。出遅れるんじゃないよ!
シャニー! あんたは前の時のよう後ろから攻撃しな。」
「おっけー。任せといて。ロイ、あたしの新技見せてあげるからね!」
「よし、わかった。ロイ様、我々がお守りしますゆえどうかご指示をお願いします。」
「・・・僕も前で戦うよ。後ろで見ているなんて僕には出来ないからね。」
そういうと4人は屋敷内に突入していった。まず入り口付近のベルン兵は魔法で吹っ飛ばされた。
「ひえー、あいつあんなデカイ魔法使いやがって。おっかなくなったもんだぜ。」
「・・・。それにしてもこいつらは戦っててもいやな感じがしないな。ちゃんと心があるみたいだな。」
そうである、かつて竜殿で対峙したギネヴィア直属の部下たちは、すべて心を失っているようであった。
ここの兵士たちの目には人間らしさがあった。
戦神二人の前に、ベルン兵達は為す術もなく倒れていく。更に二人の息の合った攻撃は、竜騎士さえも一撃の下に葬っていた。


48: 手強い名無しさん:05/05/08 20:27 ID:9sML7BIs
屋敷内に入った4人は、相手の攻撃をものともせずに進んでいく。性格的によく合うのか、アレンとクリスのコンビネーションは抜群であった。ロイも負けず劣らずその巧みな剣捌きで敵を沈めていく。
シャニーは覚えたばかりとは思えないほどの威力の魔法を使って突破口開き、よく怪我をするアレンとクリスの回復に尽力を注いだ。流石に神竜族二人とベルン動乱を鎮めた英雄たちである。少数でもこれだけの大勢にまったく引けをとらない戦いをしていた。
そして、あっという間に屋敷全体を制圧してしまった。なぜこのような脆弱な部隊にエトルリアを占領されてしまったのか、ロイにはまったく理解できなかった。
「ロイ殿、久しぶりです。今回のことは本当に申し訳ありません。我々の力不足でした。」
「あ、クレイン殿。こちらこそこれからよろしくお願いします。それにしても、なぜ大陸最強を誇るエトルリアがこうも簡単に占領されてしまったのですか?」
「それが・・・敵が突然現れたのです。何もなかったところからいきなり竜騎士の大群が押し寄せて
臨戦態勢をしいていなかったために、その後はあっという間でした。」
「いきなり?! そんなことが・・・。しかし、大丈夫です。我々と三軍将が力を合わせればきっと勝てます。まずは王宮まで攻めあがりましょう。」
「ロイ、市内はどうする?そこまで手勢を割くわけには行かないだろ?」ディークが問うた。
「おお、ディークではないか。お前まで参加しているのか。これは頼もしいな。」
「パント様・・・お久しぶりです。俺の恩人が大変な目にあってると聞いちゃぁ放って置けませんよ。」
ロイには部隊を分けるしか策がなかった。ロイは市内の一般兵をディーク、ルトガー、ティト、そしてクラリーネに任せることにした。
「・・・またこいつと一緒なのか・・・。騒がしくなりそうだな・・・。」
「まったくだ。たまんねぇな。せっかくあいつがロイにくっついていったと思ったのに。」
「まぁ! あなたたち、私が参戦して差し上げますのよ?もっと感謝したらどうなのですか?
杖も魔法も使えるこの私が居れば戦力アップは間違いない・・・。」
「ティトさんだったか? 前の戦争以来だな。大丈夫か?もう騎士は退いているんだろ?」
「ええ、しかし、私も天馬騎士団団長に推薦された者。それに恥じぬ働きをして見せます。」
「よし、なら行こうぜ。磯がねぇと罪もない国民が殺されちまう。急ぐぜ。」
「・・・ティト。無理はするなよ。我々にはもう子供が居る。母親が居なくなったら子供がかわいそうだ。君はもう君だけのために生きているんじゃない。くれぐれも気をつけてね。」
「ええ、クレイン様。クレイン様もどうかご武運を。」
クレインとティトは別れのキスをし、抱き合っている。
「もう、何でみな私のことを無視するのかしら! 私が参戦して差し上げますのよ!?・・・ブツブツ。」



49: 手強い名無しさん:05/05/20 08:01 ID:gAExt6/c
忙しくてなかなか書けない(´;エ;`)ウゥ・・・
どれだけ時間かけても完結させるんで生暖かい目で見守ってください。

50: 手強い名無しさん:05/05/23 15:48 ID:lyc0FuXE
orzOTZ○| ̄|_

51: 手強い名無しさん:05/05/23 16:23 ID:E1USl4sQ
軍事行動は急がねばならなかった。リグレ公爵の屋敷を占領したとなれば、当然市中の兵に連絡もいっているだろう。混乱が生じる前に市民を避難させ、ベルン兵との対峙に臨まねばならなかった。
そして、王宮で繰り広げられているベルン優位の戦いを鎮圧しなければならない。ロイ達は休む暇なく二班に分かれ、それぞれがエトルリアを取り返すべく出撃していった。

その頃アクレイア王宮では、エトルリア三軍将が背水の陣を引いて防戦にあたっていた。
「セシリア、補給部隊の帰還はまだか?! そろそろ前線の武器が消耗し始めて危険だ。」
パーシバルが叫ぶ、彼の剣ももはや限界に近い。
「まだ帰還しておりません。偵察に出したものも帰ってきておりませんし、おそらくは・・・。」
セシリアも前衛の回復に補給部隊の管理を連日のように行っているため、疲れて魔力が尽きてきていた。
戦いは長期戦になっていた。いくら倒しても倒しても、ベルン兵は後から後から現れた。
エトルリア本丸守護隊全体に、消耗の色が隠しきれないほどにじみ出ていた。
(それにしてもいくらベルンが強国といえど、ここまで兵力を持っているものなのか・・・。
兵数だけで言えば前の戦争のときより多い気がするな。それ以上に彼らの目には魂がこもっていない気がする・・・。これは・・・一体。) ダグラスは疑問を隠しきれなかった。
「パーシバル、セシリア。うわさではロイ殿がまた兵を挙げたと聞く。我々もミルディン王子がお帰りになられるまではなんとしても持ちこたえるのだ。」
「は、仰せのままに。」
ここの戦いだけを見ていると、明らかにエトルリア優勢であった。しかし、どれだけ倒しても戦線を前に持っていくことが出来なかった。しばらくの防戦の後、ピタリとベルン兵の攻撃が止まった。


52: 手強い名無しさん:05/05/23 16:24 ID:E1USl4sQ
「・・・・?!」
「ベルン兵が・・・動かない? 一体何が・・・。」
ベルン兵は攻撃はおろか、瞬きひとつしなくなってまるで人形のようにその場で止まっている。
エトルリア兵が困惑している中、不気味な声が聞こえてきた。
「ふぉっふぉっふぉ・・・。劣悪種どもよ、無駄な足掻きは止せ。見苦しいわい。」
現れたのは頭から漆黒のローブを被った老人であった。その姿は、かつて見た竜族達と似ていた。
「貴様は・・・竜族か?」 パーシバルは持っていた剣を更に強く握りながら訊ねた。
「竜族だと?! 劣悪種と同視されるとはな。
まぁ、冥土の土産に教えてやろう。ワシの名はアゼリクス。ベルン五大牙随一の知将。
我々ハーフはついに竜族の力を我が物とした。もはや数だけの人間など相手にもならぬわ。
我らの研究の成果を味わってもらおうかのぉ・・・ふぉふぉふぉ。」
そういうとアゼリクスは懐から不気味な色の竜石を取り出すと、傍にいた動かぬベルン兵の体に埋め込んだ。すると、目を開けていられないほどの閃光と衝撃が周りを覆い、エトルリア軍は危うく吹き飛ばされそうになった。
「何が起きたというのだ・・・・?」
困惑するパーシバル達を見て不気味な笑い声を上げるアゼリクス。そして視野の開けてきた先にいたものは・・・
「?! 竜だと・・・。まさか・・・またベルンは竜を復活させたというのか・・・。」
「少し違うかな、お若いの。その竜石は確かに竜石じゃが、装備した者のエーギルを暴走させることでその者の力を最大限発揮することが出来る素晴らしい物なのじゃ。今はまだ暴走を制御する手立てがないから実験中という訳じゃ。まぁ、暴走しきればそのまま死ぬじゃろうから問題なかろうて。」
「実験ですって?! 人の命を何だと思っているの? 」
「ふぉふぉふぉ・・・劣悪種などギネヴィア様がその気になればいつでも葬り去れるのだ。
せっかく実験に使えるのだから、使わない手はないじゃろう? 有効活用というヤツじゃ。
さて、お話はこれぐらいにするかの。さぁ、わが僕よ、すべてを灰燼に帰すがいい!」
暴走した火竜の灼熱のブレスの前にエトルリア兵は手も足も出ない。アゼリクスはあちらでも一人
ベルン兵を竜化させたようだ。そこらじゅうが火の海、地獄図であった。」
「くっ・・・我々ももはやこれまでか。しかし、最後まで諦めるな。我々も名誉あるエトルリアの騎士
最後まで陛下をお守りするのだ。よいな、皆隊列を崩すな。崩すと逆に危険だ。」
さすが大軍将である。皆慌てることなく、効果的に竜に対し攻撃を加えていく。一発一発は蟻の一撃であるが、その傷は次第に大きなものになっていく。
しかし、こうも与えるダメージが小さくてはラチが明かない。エトルリア軍も少しずつ押され始める。
「セシリア、確か前の戦争のとき、竜に特別効果のある剣が何本か製造されたな。あれは今どこにある?」
「は、確か武器庫に眠っているはずです。しかし、今ここで兵力を割いてそちらに行くことは危険では。」
「・・・セシリア、お前が行け。ここは我々がなんとしても食い止める。急いでくれ。」
「しかし!」
「どの道このままではラチが明かない。少しでも可能性のあるほうにかけるべきだ。」
「わかりました。ダグラス様、パーシバル殿、どうかご武運を。」
セシリアは武器庫へ向かった。自分の行動ひとつに、エトルリアの命運がかかっていた。

53: 手強い名無しさん:05/05/26 16:18 ID:E1USl4sQ
武器庫に着いたセシリアは早速ドラゴンキラーを探した。
「あったわ!これね。」
セシリアが剣に手を伸ばそうとした、そのときであった。突然壁を押し破り、すさまじい轟音とともに竜が武器庫に侵入してきた。
「なっ・・・・。」
いくら竜に特攻といっても、自分は剣を扱うことは出来ない、かといって魔法が効く相手でもなかった。
竜が大きく息を吸い込む。灼熱のブレスを吐こうとしているに違いない。しかし、どう考えてもこの狭い武器庫の中でそれをよける手立てはなかった。
今ここで自分が倒れれば、エトルリアは沈む。絶対に倒れるわけにはいかない。しかし・・・目の前の敵は強大すぎた。荒れ狂う怪物に一人で太刀打ちできようものか。
竜のブレスが吐かれる。それはまっすぐセシリアの方向へ向かっていった。セシリアは覚悟を決め、目をつぶった。(ダグラス様、パーシバル殿・・・申し訳ありません・・・。)
次の瞬間、セシリアは異変に気づいた。ブレスの波が、自分を避けて通っている。何故?
流石智将と呼ばれるだけの人間だ。このような場合でも、すぐに自分のおかれている状況を把握した。・・・何か結界に包まれている・・・?しかしいくらセシリアでも、隣に誰かがいることには気づかなかった。
「ふー、間一髪間に合ったか。大丈夫かい?一人で行動なんて無茶もいいとこだよ。」
クリスだった。ロイ達がちょうど王宮に到着したのである。
「セシリアさん、大丈夫ですか?!」
「あ、ロイ・・・。またみっともないところを見せてしまったわね。」
「何を言うんです、ご無事で何よりです。」
「うむ、こんなことで命を落としては魔道軍将の名が泣くよ。」
「パント様ではありませんか! よかった幽閉されたと聞いて心配していたのですよ。」
「ロイ殿に助けてもらってね。それにしても戦局は思った以上に厳しそうだね。状況は?」
「はい、我らエトルリア軍は竜の出現により押されております。戦況を打開すべく、私はダグラス将軍の命を受け、武器庫にドラゴンキラーを探しに来たのです。」
「やはり竜が・・・。セシリアさん、ここは僕たちと力を合わせましょう。僕たちもエトルリアを取り返したいのです。」
「願ってもないことだわ。急がなければ皆が危ないの。だからまずは・・・」
「いつまで喋り込んでるつもりだい! 結界はってるほうの身にもなってくれよ。」
クリスが早くしろといわんばかりにロイに向かって叫ぶ。
「よし、じゃあ皆であの竜を何とかしようか。せっかくドラゴンキラーもあることだし。」
「パント様はもう引退なされておられるのですから、あまりご無理はなさらないでくださいね。」
「大丈夫。無茶なのはいつものことだし、ねぇ奥さん。」
「えぇ、私たちが力を合わせればどんなことにも打ち勝てます。」
「しかし・・・」
「まぁ、セシリア、見ていなさい。」
そう言うとパントは荒れ狂う竜に向かって手を広げ、魔道書を手に呪文を唱えた。
「出でよ! 蒼冷なる白銀の使徒、フィンブル!」
パントから発せられた氷銀の矢が竜のブレスを引き裂き、そのまま竜に突き刺さった。
竜は仰け反り、大きな隙を見せている。ロイはその隙を逃さなかった。一気に竜に詰め寄り、そしてドラゴンキラーで斬りつけた。
「ギャオォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーン」
凄まじい唸り声を上げて、竜が倒れる。そして、竜の姿から見る見るうちに人の姿に戻っていく。
それは紛れもなくベルン兵であった。ロイ達は驚いた。人間が竜になっている・・・?
「どういうことなんだい?! こいつ、竜族じゃないじゃないか。人間がどうやって・・・。」
一番驚いたのはクリスだった。人間が竜になるなど、考えられなかったからだ。
セシリアはロイたちに事の成り行きを説明した。ベルン五大牙を名乗るアゼリクスという将軍がベルン兵を突然竜に変えた、と。



54: 手強い名無しさん:05/05/26 17:42 ID:E1USl4sQ
「アゼリクスだって?! ・・・こりゃぁ厄介なことになってきたねぇ・・・。」
クリスは独り言を漏らした。何か深刻そうである。
「ねぇねぇ、そのエセクリスって誰?クリスの知り合い?友達?」 シャニーが聞いた。
「(汗)アゼリクス! まったく、どうやって聞いたらそんな風に聞こえるんだい!
それに友達でもなければ知り合いでもないよ。あいつは危ないヤツさ。そんなことより、今はお喋りしている暇はないだろ?急ぐよ。」
「シャニーさん、お久しぶりね。あなたも確か剣を扱えるわよね? この剣を渡しておくわ。」
セシリアとはエトルリアで開かれた軍事会議で会ったことがシャニーはあった。シャニーはセシリアから剣を渡されると、何か背筋に寒気が走った。今まで感じたことのない感覚であった。
「はぁ、やっぱ嫌だねぇ。このドラゴンキラーっていうのはさ。」 クリスが愚痴った。
「クリスもなんかいやな感触するの? 何かあたし寒気がするんだけど。」
「当たり前サ、考えてもみなよ。この剣は誰に特効なんだい?」
「特効って・・・竜だね。それがどうかしたの?」
「はぁ。どうしてあんたはそう頭の回転が悪いんだい。竜に特効ということは、自分に特効ってことだよ? 自分を殺せるほどの強い力を秘めた剣なんだから寒気も起きるサ。」
「うわ、そう言われれば・・・。って頭の回転が悪いは余計なお世話よ!」
「クリス、今回も我々で前衛を務めよう。君となら何だかうまくいきそうだ。」 アレンが声をかける。
「あいよ! 丁度アタイもそう言おうと思ってた所だよ。シャニーと喋ってるといつも一線ずれてくるけど、あんたとはよく話が合うよ。 ホントあんたとアタイは気が合うねぇ!」
「そうだな。君とは考え方もよく似ているし。動きやすい。これからも頼むよ、相棒。」
「じゃあアレン、クリス、いつも通りで行こう。 ロイが皆に声をかけた。
「よーし、今回はパント様たちが後衛になっていただけるし、あたしも前に出てロイたちと戦うよ!」
「いや、シャニーはパント様たちを守ってあげて。」
「ちぇ〜、またあたし後衛かぁ。 たまには前に出て戦いたいよぉ。クリスばっかりずるいー。」
「ウルサイねぇ、あんたの腕力なんかじゃ竜にかすり傷すら負わせられないだろ? 適所適材ってヤツだよ。 これは遊びじゃないんだからね。将の言うことは聞くもんだよ。」
「わかってるけどさぁ。」やはり不満そうである。
「シャニー、出来るだけ君には後ろで戦ってほしいんだ。君にもしもの事があったら、と考えると僕は不安なんだ。ね、お願いだから。」 ロイが諭した。
「ロイがそう言うならそれに従うよ。あたし、がんばるからね。」
「よし、じゃあ行くとするかい!」クリスが叫んだ。

その頃、ダグラスたちは次第に押され、玉座のある部屋の入り口まで戦線を後ろに下げていた。
竜の猛攻に、エトルリア軍は必死に防戦しているが、勝ち目の薄いことは誰にでも予想がついた。
「ふぉふぉふぉっ、劣悪種共、絶望せよ、恐怖せよ! ふぉふぉふぉふぉふぉ・・・・。」
「くっ、なんと激しい攻撃なのだ・・・。このままでは・・・。」
「パーシバル。」 ダグラスがパーシバルに声をかける。
「ダグラス様、如何なされましたか?」
「お前は王国になくてはならない人物だ。お前を失えば、多くのものが心のよりどころをなくす。
だから・・・・・万が一のときは・・・。」
「私は逃げません。 もう二度と、私は・・・。」
「パーシバル、間違えるな。逃げるのではない。万が一我々が全滅してしまえば、エトルリアはどうなる。ミルディン王子がお帰りになられたとき、誰が国を守る?」
「しかし、ダグラス様・・・。私は前の戦争のとき、同じように目の前の事実から逃げました。
ミルディン王子を失った私は、守るべきものを失いただ毎日を抜け殻のように・・・。
そしてロアーツ達の陰謀を阻止できたにも拘らず・・・私は・・・。」
「パーシバル! そう思うのならなおさらだ。過去の罪にとらわれすぎてはいかん。
大切な人を失った悲しみは、お前は一番よく分かるはずだ。今度は王子御自らにその悲しみを味わいさせるつもりなのか! よく考えるのだ。パーシバルよ。」
「・・・!」
「やっとわかってくれたようだな。よいな、わしは最後まで戦場に残る。しかし、お前は万が一のときは王をお連れして戦場から脱出せよ。」
灼熱のブレスによって吹き飛ばされる兵士達。その絶大なる力を前に、エトルリア軍は勝ち目のない戦いを挑んでいた。それを嘲笑するアゼリクス。エトルリア史上、かつてここまで劣勢の戦いを強いられたことなどあっただろうか。



55: 手強い名無しさん:05/05/27 17:52 ID:E1USl4sQ
それでも騎士達は戦う。己の騎士としての誇りをかけて。そして、みなの団結力がひとつの結果として現れた。3体の竜のうち、一体を倒すことに成功したのである。詳しく言えば、人間が無理やりそのエーギルを暴走させられて竜化し、エーギルを使い切って死んだ、と言う方が正しかった。消耗戦の末の勝利であった。しかし、その勝利もつかの間の出来事であった。
「ふぉふぉふぉ、無駄な足掻きは止せと言っておろうに。我らはいくらでも竜を創ることができるのだぞよ、ほれ。」
アゼリクスはまた近くにいたベルン兵をあの竜石で竜に変えた。竜は3体に戻った。
「何ということだ・・・。」
「・・・。」
ダグラスもパーシバルも、これには流石に絶望せずにはいられなかった。一体でも強力な竜を、相手はいくらでも生み出すことが出来る。それに比べて自分達は消耗するばかり。結局自分達は全滅への時間を引き延ばしているに過ぎないのか・・・。
「パーシバル、先ほど言った言葉を忘れるなよ。お前は万が一のときは・・・。」
「・・・・了解・・・・しました・・。」 その時であった。
「お二人とも! 何故もう負けた気で話を進めているんですか! 勝負はこれからです。諦めずに僕達と協力してエトルリアに光を取り戻しましょう!」
「そうですとも、我々エトルリア三軍将にロイ様達、それにパント様達も協力なさってくださいます。
これだけの英傑がそろえば、何も恐れるものはありません!」
「セシリア、それに・・・おお、ロイ様にパント様。・・・そうじゃな、まだわしらは負けたわけではない。わしらは少し臆に入っておったのかもしれん。勝負は・・・これからだ!」

「よし、クリス、我らのコンビネーションをとくと見せてやるぞ。」 アレンが先陣を切る。クリスも負けずに風を切っていった。
パントやシャニーも負けてはいない。二人の鋭敏な魔法は、竜のブレスをいとも簡単に跳ね除け、竜の体に突き刺さる。
「眼前の汚れし魂を汝の力で清め給え。ホーリーランス!」
「へえ、君なかなかやるじゃないか。その魔法が我流かい? 聞いたこともない魔法だけど。」
「えへへ、カッコいいでしょ! あたしの必殺技なんだ。」
「うおおぉおおおおおおおおおおおお、食らえぇ!」
魔法でひるんだ竜に、アレンが剣を振るう。剣は竜の硬い鱗を突き破る。そこへ間髪入れずクリスの一撃が入る。見事なまでのコンビネーションだ。特攻剣で責められ、流石の竜もあっという間に倒れてしまう。後、竜は2体。
「よぉし、一丁あがりっと。」
「よし、流石だ、クリス。次に行くぞ。遅れるな!」
エトルリア組みも負けてはいない。パーシバルが先陣を切る。・・・もはや迷いはない。自分は王国の剣。王国にあだなす者がいれば、それを切り捨てるのみ。国のため、そして自分が忠誠を誓う王子のために、臆することなく最後まで戦ってこそ、自分であった。
「先ほどの礼だ、受け取れ!」
パーシバルが竜に斬りかかる。その剣捌きは流石というほかない。迷いの吹っ切れた彼に、もはや敵などいなかった。どんどん竜にダメージを追わせていく。それに伴い、エトルリア軍は戦線を少しずつ前へ前へと持っていく。しかし、パーシバルをもう一体の竜が襲った。残りの一体と交戦中だったパーシバルは後ろからの攻撃に気づくのが遅れてしまう。
「しまったっ」
パーシバルが急いで防御態勢に入ったそのとき、目の前に鉄の巨人が現れ、パーシバルをかばった。
「ふぅ、パーシバル、お前もまだまだだな。わしもまだ若い者には負けんぞ。」
ダグラスだった。ダグラスもパーシバルに負けじと、渾身の力で竜に斧を振り下ろす。
「散っていった我が同士の無念、今こそ思い知れ!」

戦局は次第にエトルリア有利へと変わってきた。戦線もどんどん前に進み、竜が倒れたかつての前線が今はシャニーたちのいる後衛の陣よりも後ろになっていた。


56: 獅子身中の虫:05/05/27 18:53 ID:E1USl4sQ
その頃市内では、ディークたちがベルン兵の一掃作戦を展開していた。
「二手に分かれるぞ、俺達がベルン兵の相手をする。クラリーネ、お前は人々を避難させてくれ。」
「まぁ! 傭兵の分際で私に指図などと・・・。いいですこと?私が指揮を取りますわ!」
「はぁ?!」
「(クラリーネ様・・・あぁ、また暴走が始まってしまうわ・・・なんとかしなくちゃ) ク、クラリーネ様、やはりリグレ公爵家の人間である私達が人々を先導したほうがよろしいかと・・・。」
ティトが慌ててその場を取り繕う。どうやらこちらでも苦労が絶えないようだ。
「そうですわね・・・。わかりましたわ。では、私は人々を避難させますわ。」
(よかった・・・)一同は心の中で胸をなでおろした。
「しかし、レディー一人では心もとないですわ。そこでルトガー、あなたを特別に私の護衛として同行させます。よろしいですこと?これは‘特別’ですのよ?」
「・・・断る。」
「まぁっ、あなたの意志など関係ありませんわ。第一、か弱い私が怪我でもしたらどうするつもりなのです。これは名誉なのことですのよ!」
「か弱い? お前が・・・笑わせるな・・・。」 ルトガーは珍しく頭を抱えてため息を漏らした。
「よかったな、ルトガー。姫様じきじきの御指名とは羨ましいぜ。ははは。」
「ディーク・・・後で殺す・・・。」
「さぁ、行きますわよ。ほらもっときびきび歩きなさい!」
エトルリアの市民街へ二人の姿が消えていった。
「はぁ、一時はどうなることかと思いました・・・。クラリーネ様の暴走癖には困ったものです。」
「まったくだ、あいつ何も変わっちゃいねぇ。どうして俺の周りの女は餓鬼っぽい奴が多いんだか・・・。」
「すいません、私もまだまだひよっこで。」
「ん? ティトさんはいい人だぜ? あいつにしてもシャニーにしても、外見ばっか変わって中身がちっとも変わってねぇ。困ったもんだぜ、まったく。」
「あの子ったら、まだディーク殿に迷惑をおかけしているのですか。後できつく言いつけておきます、本当にすいません。」
「あんたが謝ることないって。それより急がないとな。混乱が生じる前じゃねぇと意味がない。」
「ええ、私も及ばずながら精一杯戦います。」
「いや、あんたはクレインの嫁だろ? あんたになんかあっちゃクレインに顔向けできねぇ。あまり前には出ないでくれ。敵は俺がすべて片付ける。あんたは周りの状況を教えてくれればそれでいい。」
「しかし、それでは・・・。」
「クレインの台詞を忘れたか? あんたの命はあんただけのものじゃねーんだ。戦いは俺みたいな独り者に任せておけばいいんだ。な? それじゃ、行くぜ!」
ティトは天馬にディークを乗せて一路住宅街へ向かった。
住宅地ではベルン兵が徘徊し、住民は軟禁状態にあった。幸いベルン兵は住民に対し攻撃を加えていなかった。むしろこの占領軍の長、ミレディが攻撃を許さなかったのである。
そこへディークが降り立った。ベルン兵は驚き、無造作に攻撃してきた。しかし、所詮数だけの雑兵である上に何の作戦もなくタダ突っ込んでくるだけである。
多少の傷を負わすことは出来ても歴戦の勇者、ディークを倒すことなど無理であった。


58: 獅子身中の虫:05/05/30 09:31 ID:gAExt6/c
「オラオラ、死にてぇ奴は前に出な!」 ディークは臆に入るベルン兵を恫喝する。
占領軍の参謀が血相を変えてミレディのところに走ってきた。
「た、隊長! やたら強い‘山賊’が攻めてきて苦戦しております!」
「山賊? 賊相手に何をてこずっている。それでも貴様はベルンの竜騎士か?!
まぁよい、私自らが相手をしてくれる。山賊相手では住民が危ない。」
ミレディは参謀とともに竜を駆り、その‘山賊’の居るところまで飛んでいった。
「あいつです!」
「あれは・・・ディーク殿!? なぜこのような場所に・・・。」
ミレディは竜を飛び降り、ディークの前に立った。
「おう、肝の据わったねーちゃんじゃねーか・・・ってお前は・・・。」
「お久しぶりですね、ディーク殿。前のベルン動乱以来かしら。」
「てめぇ見損なったぞ。お前はギネヴィアとともに平和を築くんじゃなかったのか?!
それがなんだ、こうやって住民を軟禁して、これが平和か? ふざけるな!」
「私もこの住民への対応が本意ではない。しかし・・・命令なのだ。ギネヴィア様は変わってしまわれた・・・。私はギネヴィア様を裏切ることは出来ない。ギネヴィア様の命令は絶対だ・・・。」
「・・・ホンモノのギネヴィア様がこんなことをご命令されると思っているのか?」
「本物・・・だと?」
「それにあんたがギネヴィア様に忠誠を誓っていたのは、ギネヴィア様が世界のことを考えて行動していたからだろう? そんなお方が逆に他国民とはいえ、力を持ってねぇ人たちにこんな仕打ちをするか? 親衛隊長だったお前なら俺よりよーく分かるんじゃねーか?」
「どういうことなんですか? ディーク殿、教えていただきたい。・・・ギネヴィア様が偽者とでも・・・。」
ディークは事の経緯をすべて話した。今まで忠誠誓ってきた相手が、全くの別人であったということに、ミレディは動揺を隠しきれなかった。


59: 獅子身中の虫:05/05/30 09:32 ID:gAExt6/c
「そんな・・・ギネヴィア様が・・・そんなことに・・・。 つまり私は、忠誠を誓った君主が本物か偽者かの区別も出来ずに、世界の滅亡に力を貸していたということなのか・・・。」
「まぁそんなに自分を責めるなよ。俺だって最初はこんな話信用できなかったんだが、あの豹変振りを見ると流石に信用しないわけにも行かなくてな。・・・さぁ、どうする?本物のギネヴィアなら、この状態に対し、どんな命を下すと思う? なぁ、親衛隊長さんよ。」
「・・・ギネヴィア様ならば、このようなことをお許しになるはずがない。むしろ民を守れとご命令なさるはずだ・・・。よし、わかった・・・。」
ミレディはそう言うと、心配そうに事の成り行きを見守っていたベルン兵たちに向かってこう言い放った。それは真にギネヴィアに忠誠を誓ってこそいえる言葉であった。
「全軍に告ぐ! これよりエトルリア国の国民を解放する。だが、まだ王宮付近では戦闘状態にあり、危険な状態だ。そこで我々が民を保護する。その為に一時的にエトルリア軍と休戦する。・・・民に攻撃を加えようとする者があれば同族でも攻撃をやむなし。これは・・・私が槍を捧げたギネヴィア様の本意なり。」
「ミレディさん・・・母国を敵に回すことになるのですよ?! そんなことを仰って大丈夫なのですか?」
ティトが訊ねる。元イリア傭兵であるティトにとって裏切りはタブーであった。
「私はベルンの騎士という以前に、ギネヴィア様に仕える騎士。たとえ母国を敵に回しても、私はギネヴィア様への忠義を貫くのみ。信じるものがあれば、何も恐れることはない。」
ティトはこの一言に感銘を受けた。かつて自分は、戦場で国か妹かを天秤にかけてしまった苦い思い出があった。あの後数日間、ティトは後悔の念に押しつぶされそうになっていた。それはきっと信じるものが曖昧だったからに違いない。しかし、ミレディの瞳には迷いが一切なかった。自分も信じるもののために戦いたい・・・それは愛する家族。そう考えると、ティトはいても立ってもいられなくなった。
「ディーク殿! 何かお手伝いできることはありませんか?!」
「どうしたんだよ、いきなり。」
「何かお手伝いしたいんです、私も愛する家族のため、国のために働きたいんです!」
(どうしたんだ? ティトさんがこんなにアツくなるなんて)「そうだな・・・さっきの戦闘で皆怪我しちまったから手当てを手伝ってくれねぇか?」
「わかりました。あ、そうだ。このごろ私、クラリーネ様から杖の扱い方についていろいろ教えていただいているんです。それを使って治療してみます。まだまだ未熟なんですけれど・・・。」
「おう、頼むぜ。」
ティトは傷口に杖を向け、気を集中した。次の瞬間。
「うぎゃ!?」
ディークが珍しく悲鳴を上げた。ティトが驚いて訊ねる。
「あれ?! ディーク殿どうしました?」
「いや・・・なんでもねぇ・・・。よし、怪我も癒えたし、見回り行って来る。」
「ディーク殿、ぜんぜん直っていませんよ!」
ディークは足早にその場を去り、少し離れた場所で倒れこんだ。
「・・・ティトさんよぉ。あんたその杖で攻撃できるぞ・・・。何で回復の杖でダメージ受けるんだよ・・・いててて(涙)」



60: aiai:05/05/30 12:13 ID:LtuqoHVw
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61: 死闘の果てに:05/05/31 15:20 ID:E1USl4sQ
王宮での戦いは、終焉に向かおうとしていた。すでに竜は殆どが倒れ、残るは一体となっていた。
エトルリア軍の士気も最高潮に高まり、いわゆる押せ押せムードというものが漂っている。
「ふむ、劣悪種にしてはやりおるの。それにしても、どこかで見たことのあるようなお姉ちゃんがいるようだが・・・。はて、誰だったかの。」
アゼリクスは劣勢に回っても至って冷静であった。それはこの戦いが、彼にとっては研究成果を試すための実験でしかなかったからであった。自軍やエトルリア軍がいくら損害をこうむろうと、研究結果さえ見ることが出来れば後のことはどうでもよかったのである。
「さて・・・、エーギルを使い切った媒体にエーギルを注ぎ込めば、再稼動するか調べなければならんの。・・・竜族がエトルリア軍の中におるみたいだのぉ。ちと混乱を起こしてやるか。ふぉふぉふぉ。」
アゼリクスが両手を広げ何かを詠唱しだした。クリスもシャニーも、そしてパントも今までにない凄まじいエーギルの流れを感じ取っていた。
「彼の者に再び光を、リザレクション!」
アゼリクスに集まったエーギルが、竜となって暴走していたベルン兵に注ぎ込まれた。すると、どうだろう、再び竜化し、何事もなかったかのように暴れだしたではないか。しかも、竜が復活した場所は、後衛のいる場所、つまりシャニーたちのいる場所であった。
竜は迷うことなく、後衛の陣に向かってブレスを吐いてきた。後衛は数名ではあるが、固まって行動していたため、そこにブレスを受けたら被害は甚大であった。
「しまった!」
クリスが焦って戻ろうとしたその時、間一髪のところでシャニーが結界を張り、難を逃れた。そこへクレインが正確無比な矢を打ち込み、その矢は竜の目を射抜いた。のたうちまわる竜を見てクリスがほっと胸をなでおろしたのもつかの間、最も恐れていたことが起こった。シャニーがそのまま翼を広げ、竜の頭に斬りかかったのである。ドラゴンキラーで急所を攻撃された竜はあっという間に沈んだ。しかし、周りには動揺が走った。
「?! 背中に羽!? あいつも竜族か、あいつも敵だ。斬り殺せ!」
このような混戦状況では、正確な判断など難しかった。三軍将の声も全体には行き届かない。大部隊ゆえの弱点であった。弓兵部隊の攻撃が一斉にシャニーへと向けられる。
「わ、わっ、何で?! どうして攻撃してくるのよ!?」

弓兵に釣られたほかの兵も攻撃に加わり、戦場はパニックに陥った。隊列は乱れ、収拾がつかない。
そしてとうとう放たれた矢の一発が翼を貫いた。
「ぎゃぁっ」
今までに味わったことのないような激痛が体中に走り、悲痛な悲鳴ともにシャニーは墜落した。
「くっ・・・・。」
激痛に加え体中がしびれて動けなかった。見習いの頃、何度もペガサスから落ちた経験はあったが、自分が墜落するというのは初めてだった。その衝撃は、ペガサスから落ちた時より相当大きいものであった。シャニーは受身も取らずに落下したため、もしかしたらどこか折れているかもしれないと思った。
そこへクリスが来て、やむを得ずシャニーをつれて後衛の陣まで飛んで帰った。
「あんた! 何で翼を出したんだいっ、あれほど出すなって言っただろ!」
「だって・・・、あの時はああするしかなかったし・・・。それにしても・・・なんで攻撃されるのよぉ・・・。ここの軍の人たちの目は節穴なのかなぁ(涙)」
「ちょっと考えれば分かるだろ。ここの人たちには竜族と無理やり竜化した人間の区別なんかつくはずないだろ? 彼らにとっちゃ竜族も竜化人間も敵なんだよ。わかったかい?」
「うぅ・・・、それを早く言ってよぉ。 いたたた、死にそう・・・。」
「そこでおとなしくしてな。・・・まったく、あんな高さから落ちて骨折すらしないなんてどういう強運なんだか。ホント トラブルメーカーなんだから。」
しかし事態は思ったより深刻であった。この混乱をアゼリクスが黙って見ている訳がなかったのだ。


62: 手強い名無しさん:05/05/31 15:21 ID:E1USl4sQ
「ふぉふぉふぉ、流石劣悪種じゃのぉ。思ったとおりに動きよるわい。そろそろ遊びも終わりにしようかの。食らえ、我が最高位魔法。メティオストリーム!」
広範囲に及ぶ火の超魔法が、隊列を崩したエトルリア軍に向かって放たれた。その憎悪の灼熱は何もかも焼き尽くし、破壊した。間延びしたエトルリア軍の中盤より後ろはほぼ灰燼と化した。
その炎は、後衛の陣のすぐそばまで及ぶほどの恐ろしい破壊力と範囲であった。
「そんな・・・これは・・・あたしのせい・・・・。」
シャニーは動けぬ体で一部始終を見てしまった。自らの考え浅はかな行動が原因で、数え切れない人々が犠牲になった。直接でないにしろ・・・自分が殺したようなものだ。流石のシャニーも、これにはショックを隠しきれず、顔が蒼ざめて、呆然としてしまった。自分は世界を救う為に蘇ったはずなのに、今目の前で起こっていることは全く逆であった。自分が多くの人の命を奪ってしまった・・・。
しかも、当の本人である自分は生き残ってしまっている。あたしは、居るだけで、存在するだけで罪なのかもしれない。やはり世界を救うなどという大業は、自分には荷が勝ちすぎているのしれない・・・。
シャニーは自分を責め続けた。
前線のほうでも駐英舞台の被害を聞き、情報が錯綜したが、やっとセシリアが事を認知し、冷静に兵達に指示を出した。セシリアはかつてナバタに同行し、ある程度の知識があったし、シャニーのことはイリア王宮騎士団長としてある程度認知していたからであった。
アゼリクスが戦争の終焉に向けてもう一発魔法を撃とうとした、しかし、目の前に立ちはだかるものが居た。クリスであった。
「アゼリクス! あんた今度はこっちの世界でそういう命を粗末に扱うようなことをしているのかい!
こちらの世界では好き勝手やらせないからね。覚悟しな!」
「おぉ、どこかで見たことのあるお姉ちゃんだと思ったら・・・クリスじゃったか。どうじゃ、元気していたか? それよりどうじゃ、今回のワシの研究成果は。」
「ふざけるんじゃないよ! 今日という今日は生かしておかないからね!」
そこへロイも駆けつけた。
「あなたのせいで数え切れない人々が無意味な死を迎えた。この償いはしっかりとっていただく!」
「フン、同族だからと思って貴様には攻撃を加えなかったのに、恩をあだで返しよって。」
「何が恩だ! これだけの人々を殺しておいてよくそんなことを・・・許せない・・・!」
「ふぉふぉふぉ、そういきり立ちなさんな。老人には優しくするもんじゃぞ。
まぁ、もう一発デカイのをお見舞いしてやるからお前こそ覚悟するのじゃな。ふぉっふぉっふぉっ。」
そう言ってまたアゼリスクが詠唱を始めたその時であった。何者かがアゼリクスの背中に目にも止まらぬ速さで剣戟を叩き込んだ。これはアゼリクスも予想外だったようである。
「先ほどはよくもコケにしてくれたな・・・。これはほんの礼だ。散っていった我らの同志の分をしっかり受け取ってもらおうか・・・。」
パーシバルであった。その目には迷いは一切なく、真っ直ぐアゼリクスを見据えていた。
「がは・・・っ、己劣悪種の分際で・・・。くっ、ここは一時引き上げる。しかし、次ぎ会うときはこうは行かぬ。絶望と恐怖の中で灰すら燃やしつくしてくれる・・・覚悟しておくのじゃな!」
捨て台詞とともに、アゼリクスはワープの術を使い、消え去った。竜もすべてが倒れ、エトルリア軍は辛くも死守を果たしたのであった。
その為に失われた命は数知れず、残ったのは虚しさと心の傷であった。





63: 手強い名無しさん:05/05/31 16:12 ID:E1USl4sQ
訂正っす

>>62-13行目
駐英舞台⇒中衛部隊 orz

64: もえ:05/06/01 05:18 ID:P.G8Ht0U
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65: 勝利と犠牲と:05/06/04 19:59 ID:E1USl4sQ
その夜、アクレイアでは大規模な祝勝会が開かれた。エトルリア兵達は自らの国をも守り切った勇気と誇りをお互い称え合う。大きな犠牲を払った戦いであったが、ベルン一国支配を防ぐ大きな足がかりと考えられたこの戦いの意味は大きかった。
「諸君の働きのおかげで、我らは祖国を守り通すことが出来た。これも諸君らの勇気と忠義の賜物であろう。我らは決して臆することなく、王子が帰られるまで国を守り続けなければならない。」
ダグラスが祝杯をあげる前に皆に説く。
「諸君、今日の勝利は、最初のほんの一歩に過ぎない。世界の兵を真に実現するためには、ベルンとの一日も早い講和を実現しなければならない。その為には諸君の更なる精進が必要だ。散っていった同志のためにも、エトルリアに更なる栄光があらんことを!」
パーシバルもダグラスに続いた。その叫びにエトルリアの兵士達が歓喜で応える。宴は最高潮に盛り上がった。 皆の瞳は誇りと希望で輝いている
ティトもクレインとともに出席し、他のエトルリア貴族との話に夢中になっていた。傭兵時代には考えられないほどの豪華な生活である。自分だけイリアを離れてこのような暮らしをしていて良いのかと考えることもあるが、これからはエトルリアのために尽くしていこうと決めていた。しかし、やはりイリアの事や妹のことは気になって仕方がなかった。特に妹については口には出さずとも非常に心配をしていた。他の貴族との話も一段落つき、妹と久しぶりに話をしようと周りを見回した。しかし、彼女の姿は何処にも見当たらない。そこへロイが少々焦った顔をして寄って来た。
「あら、ロイ様。そのような慌てた顔をなされてどうかなされたのですか?」
「あ、ティトさん。シャニーを知らないかい? 先ほどから姿が見当たらないんだ。」
「私も話をしようと探していたところなんです。ロイ様と一緒かと思ったのですが違ったのですか?」
「ああ。ちょっと目を放した隙にどこかにフラッと居なくなってしまったんだ。」
「あの騒ぐ事大好き人間がいないなんて珍しいですね・・・。一緒に探しましょうか。」
二人は手分けして宴会場の中を探し回った。しかし、やはり見当たらない。向こうでディークたちが葡萄酒の一気飲み大会をやっていた。
「ディーク殿。うちの妹が今何処にいるかご存知でないですか?」
「あ? よっ、ティトさんじゃないかぁ〜。 うぃっ。あいつならさっきふらふらと外出てったぜ〜。
何かしょぼくれてたけどなぁ。せっかくの宴会なのにどうしまちまったんだか・・・ひくっ。
あいつが元気ないと何か気味悪いぜぇ。がはははは!」
「・・・ディーク、もう止せ、情けないぞ・・・。」
ディークは相当酔っているようであった。これ以上話していると絡まれそうだった。
あの子がしょぼくれている・・・。なんとなく、ティトにはシャニーの居場所が分かった。15年近く一緒に暮らした、たった一人の妹だ。大体考えている事は予想がついた。
ティとは足早に宴会場を離れ、シャニーが居るであろうあの場所に向かう。
「・・・あの子も成長したのね。 でもここで私が支えてあげなければ潰れてしまうかもしれないわ。
あの子の為にも、そしてイリアの為にもここで踏ん張ってもらわないと・・・。」


66: ロードアンドペガサス RoH8fs26:05/06/05 14:02 ID:eiAfK9qA
>>63
ガンガレ!
人が少なくても!

67: 手強い名無しさん:05/06/10 12:43 ID:QJm2gbqA
すげえよ、神だアンタ

俺もシャニーでSS書いてたけど
ここまでうまく使えないyo!

68: 勝利と犠牲と:05/06/11 19:49 ID:E1USl4sQ
その頃シャニーは、先ほどまで激戦地であった王宮の広間に居た。そこはすでに人気はなく、あるのは瓦礫と散乱した武具だけだった。竜のブレス攻撃の凄まじさを、煤けた壁が物語る。
ひっそりとした月明かりのみの中をゆっくり、記憶をたどるようシャニーに歩いた。そして、目の前に落ちているエトルリア軍の兜を拾い上げた。その兜は、かつての持ち主がアゼリクスのあのおぞましい程の火炎魔法を受けたことを、真っ黒に焼けて証言していた。
シャニーは手ですすを払いながら、悩み続けていた。
(この人もあいつの魔法を受けちゃったんだよね・・・。あたしのせいでこんなことになるなんて・・・)
しばらく一人でうつむきながら考え込んでいた。脳裏に焼きついたあの時の瞬間。もう二度と拭い去ることの出来ない事実だった。シャニーはいつの間にか泣いていた。
「こんな所にいたの? 探したわよ。」
シャニーは聞き慣れた声にもかかわらずびっくりしてしまった。ティトである。シャニーは焦って涙をぬぐった。
「な、なんだお姉ちゃんか。何よ? どうして探すのよ。」
「あなたが一人で外に出て行ったとディーク殿が言っていたかよ。あなたのようなお祭り大好き人間がこんな時にひとりでこんな所に来るなんて、一体どうしたの?」
ティトには分かっていた。が、今シャニーをあまり興奮させすぎてはいけないと、慎重に言葉を選んでいた。
「べ、別にいいでしょ。あたしだって時には一人で考え事をすることだってあるよ。 もう子供じゃないんだし。 ほら、わかったでしょ? 早く行ってよ。」
「・・・過ぎてしまったことをいつまでもくよくよ考えるなんて、あなたらしくないわね。」
「・・・・! 放って置いてって言ってるでしょ!? あたしだっていろいろ考えることがあるよ。
何でいちいちそうやって説教しに来るのよ!」
やはり、今のシャニーは情緒不安定であった。ティトは続けた。
「心配だからよ。 世界でたったり一人の妹が、そうやって悩んでいるのに放っておけるわけないでしょ? それとも、私はそんなに信用できない?」
「そ、そんなことは・・・。」
「なら、一人で考え込まずに相談してみなさいよ。何年一緒に暮らしてきたと思っているの? ごまかしても無駄よ。 さ、言ってみて。」
シャニーはティトの今までにないほどの優しさに、心が揺れ、大泣きしてしまった。
「・・・あのね、あたしのせいで多くの人が死んでしまったでしょ? あたしは、世界を救うロイを助ける為に、この世に今留まらせてもらってる。・・・・でも、あたしのしていることは、それと全く逆のこと・・・。あたしにはやっぱりこんな大業は無理なんじゃないかと思えてしまって・・・。」
「そんなことないわ。あなたは立派に使命を全うしているわ。」
「でも!・・・でも、あたしのせいで死んだ人達が大勢いる。みんなにも迷惑かけっぱなし。
何かね、あの時あのまま死んでた方がよかったのかなって思っちゃうんだ・・・。生きてるだけで罪って言うか・・・。」
「・・・戦いに犠牲はつき物よ。あなただってそのくらいは心得ているんでしょ? 上に立つ立場になったのなら、なおさらそれを肝に銘じて行動しなければ何も出来ないわよ。」
「お姉ちゃんは・・・っ、作戦のためなら大勢死んでもいいって言うの? ・・・信じられないっ。
あたしは、そんなのいやだよ。ロイだってそう言ってた。」
「そんな事言ってないわ。犠牲は最小限に留めるべきだけれど、犠牲に躊躇して戦いに負けたら、元も子もないでしょ? あの時死んでればよかったなんて、あなたは逃げているだけだわ。もっとしっかりしなさい。もう子供じゃないんでしょ?」
「・・・お姉ちゃんは・・・厳しすぎるよ。」
「逃げているだけ・・・か。私も逃げていた。だが、もう二度と、私は迷わないぞ。」
二人は突然の聞きなれない声にびっくりして周りを見回した。


69: 勝利と犠牲と:05/06/11 19:49 ID:E1USl4sQ
そこにはパーシバルが立っていた。
「私も、自らの迷いのために、多くの者を犠牲にしてきた。私はそのことでかなり悩んだ。シャニー殿もきっと同じことで悩んでいるのだろう。しかし、失われた命は二度と戻らない。死んでしまいたいと思ったこともあった。だが、それはやはりティトどの言うとおり、逃げているだけなのだ・・・。
生き残った我々は、散っていった仲間の命を背負わなければならないのだ。彼らが求めた光を生きている我々が実現しなければならない。そう考えたら、悩むんでいる暇などないだろう?」
「・・・・。」
「君の場合は、既に亡きゼロット王の願いを背負っている。君が倒れる時、諦める時、それは同時にゼロット王の願い、そしてイリアが倒れる時だ。安心することだ。君は必要だからこの世に生きている。君は君の全力を持って使命に当たればそれで良いのだ。結果はきっとついてくる。」
「・・・あたしは何か考え間違いをしていたかもしれない。 あたしは逃げてるだけだね・・・。
イリアの為にもお義兄ちゃんのためにも、そして、あたしのしたことで犠牲になった人たちの為にも、最後の最後まで戦い抜いてやる・・・。」
シャニーは何か、頭の中で吹っ切れるのを感じた。もう迷わない。迷っている暇はない。そう自分に言い聞かせた。確かに迷っている暇はなかった。エトルリアは一段落ついたものの、イリアでは王も騎士団長も不在のまま、着実にベルンの間の手が忍び寄っていたからである。そしてリキアはいまや反乱軍が全土を占領しようかと言う勢いであった。まだ各地で抗戦が続いているが、全土占領はほぼ時間の問題であった。イリアからリキアへ抜け、ベルンへと進軍する予定のロイ達にとって、イリアを奪還できるかは何よりも重大な問題であった。しかもベルンのエトルリアへの脅威が潰えたわけではないので今回はエトルリア軍の協力もそこまでは借りられない。
シャニーは一刻も早く祖国に帰り、姉と自分を姉のように慕うアリスを救いたいと考えていた。しかし、ユーノにどうやってゼロットの事を言えばよいだろう。出掛けにルシャナとも約束したのに、それも果たすことが出来なかった。今思えば、自分はなにもできていなかった。
しかし、もはや悩んでいることなど出来なかった。迷いは判断を鈍らせる・・・。もうこれ以上、自分のせいで犠牲を出したくない。そのためにも、今まで以上に全力で戦い抜くことを誓うのであった。
「さて、こんな所にいつまでもいないで、早く皆のところに戻るわよ。ロイ様も心配していたわ。」
「・・・そうだね。悩むなんてあたしらしくなかったかな。よーし、いっぱい食べるぞ!」
妹の元気な後姿を見て、ティトはうれしかった。
「・・・あなたには周りを笑顔に変える不思議な力があるわ・・・。それでどれだけ皆が救われていることか。あなたはいつでも笑っていればいいのよ。それだけで貴重な存在なんだから。」


70: 手強い名無しさん:05/06/11 19:53 ID:E1USl4sQ
>>66
もちろんガンガリます(`・ω・´)
>>67
神だなんて・・・。素人ですよ('・ω・`)
でも、喜んでいただけるならがんばって続けます!

71: 手強い名無しさん:05/06/23 00:20 ID:cUMyOmjQ
忙しいんでしょかね。気長に待ってます。楽しみに読んでますんで。酒のんで情けないディークが良いなあ。

72: 手強い名無しさん:05/06/24 07:52 ID:gAExt6/c
すいません、マジ忙しいです。。
今日も今から面接へGOな状態でして・・・orz

73: ロードアンドペガサス o9qLp8jM:05/07/12 16:33 ID:eywzB6WQ
忙しいでしょうか、なんか凄く大変そうですね・・・
まぁ忙しいなら頑張ってください
忙しくなくても頑張ってください

74: 手強い名無しさん:05/07/14 10:55 ID:E1USl4sQ
なんとか就活も終了しました。
だらけ気味ですが最低でも1週間に一度は更新していきたいと思います(`・ω・´)
まだ内定辞退の断りをしにいかないと・・・な状況ですが。。

75: 手強い名無しさん:05/07/14 11:42 ID:E1USl4sQ
「こらっ、シャニー、がっつかないの!」
ティトがいつものようにシャニーを叱る。イリアに一緒に住んでいた頃は日常茶飯事な光景であった。
「だって、いろいろ考えたらお腹すいたんだもん。それに(モグモグ)こんなご馳走(モグモグ)めったに(モグモグ)
食べられ(モグモグ)ないじゃん(モグモグ)。」
会場に戻ったシャニーはまるで別人かのように食べて笑っていた。切り替えが早い事も彼女の取り柄である。ティトからすれば、いくら説教しても三歩歩けば忘れるので困りものでもあったが。
「食べながら喋らない! ・・・もうあなたってホント成長ないわね・・・。それで本当に王宮騎士団の団長が務まっているのか心配だわ。そんな事だから男の子と間違えられるのよ?」
「ははは、そいつは少々落ち込んでるぐらいが静かで丁度いいのさ。」
「なによー、クリスまで! 大体、何でこんな可愛い子が男と間違えられるのよ!」
「はいはい・・・」ティトもクリスも半場呆れていた。
「あなたがクリスさん? うちの妹がずいぶんお世話になったみたいで・・・。」
「あんたがティトさんかい。まぁ手のかかることは確かだけどこっちも可愛い妹分ができてうれしいよ。・・・にしてもシャニーの言ってた通りだね。」
「? 妹が何か言いました?」
「“うちのねーちゃんは、妖怪説教連発女なんだよー”って言ってたよ(笑)」
向こうのほうで、シャニーが説教とこぶを貰った事は言うまでもない。

「お?ティトさんではないか、久しいな。エトルリアでの生活はどのようなものなのだ?」
「あ、アレンさん。お久しぶりです。」
戦場の旧友同士が世間話を始めた。その横でクリスがアレンを見ている。
「どーしたの?(モグモグ) クリス?」シャニーが後ろから声をかける。
「わぁっ、ってあんたかい。(まだ食ってるのかこいつは・・・)別になんでもないよ。」
「ふーん・・・ずっとアレンのこと見てるね。」
「そ、それがどうかしたのかい?別に誰を見てようが勝手だろ?」
「・・・・」 シャニーがクリスを疑り深い横目で見た。
「・・・あんた、何が言いたいんだい?言わないと殴るよ?」
「アレンのこと、好きなんでしょ!」
「!!」
「あいつさー、鈍感だからこっちから攻めないと・・・うぎゃ!」
「ガキは黙りな!」
「うー、ちゃんと言ったのに殴るなんて反則じゃん! 本当のこと言われたからって殴らなくて・・。」
シャニーは今度は二つこぶを作って、ロイのところへ泣きながら走っていった。
「こっちから攻めるねぇ・・・。」



76: 大軍将:05/07/14 12:38 ID:E1USl4sQ
翌日、今後の軍事行動に関する会議が行われた。
ディークたちはその間は休みである。普段は稽古をしているはずなのだが・・・。
「・・・だから程ほどにしろと言っただろう・・・。」
「ち、この程度・・・・・おぇ・・・。・・・葡萄酒は悪酔いするぜ・・・。」
「・・・」
「ところで、今後の進路なんて決まっていそうだがな、何を決めて・・・おぇ・・・。」
「もう喋るな・・・。敵と多分竜族に関してのことで話し合っているのだろう。今回の敵はワケが違う。」
「確かにな、エトルリアの官僚共がクリスの夢物語みたいな話を信じるかどうか・・・。」
確かに、進路はリキアが占領されている以上、イリアから南下する方が無駄な先頭は避けられそうではあった。しかし、イリアの陥落も時間の問題と言ってもよいことも事実であった。
さらに、前の戦争と違い、リキアと言う、エトルリアと接する国がベルンの支配下にある以上、エトルリアもベルン本国への出兵にに全力を注ぐと言う事はできなかった。
結局、閣議でもエトルリア軍の大半はエトルリア自身の復興と警備に当て、ベルン討伐への出兵は最小限に抑えると言う指針が示された。実際に竜化する人を見ていない文官達には、異世界の者がギネヴィアにとり憑くなど作り話にすら思えてしまったのである。何より、王子不在では、国民の出兵に対する士気が低いということもあった。
「・・・ダグラス殿、私は今回の閣議決定には同意できません。王子が不在になった原因考えれば・・・
私が直接でも敵を討ちたい・・・。」
「落ち着けパーシバル。民は前の戦争で少々戦に対し消極的になっているのだ。総動員戦争なぞすれば
それこそ前の戦争の二の舞になってしまう。ここは我慢するのだ・・・。」
「しかし、ダグラス殿。」
「お前やセシリアはまだ若い。若いお前達が国を作っていかねばならんのだ。王子の救助はわしらに任せるのだ。わしの居ないその間、お前には大軍将を代任してもらう。」
「・・・!? 私にはまだ・・・。」
「お前ならできる、いや、やってもらわねばならぬ。エトルリアに再び栄光を取り戻すその中核を、お前が担っていかねばならぬ。もはや迷う時期ではないぞ?」
「ダグラス殿・・・。私も精一杯がんばってみます。ダグラス殿も、どうかご武運をお祈りします。」
「うむ・・・。ところで西方のほうはベルンの侵攻はないのか?」
「西方ですか? あそこは自治集団の発達のおかげでベルンの侵攻を逃れているようです。」
「そうか・・・。」
「義娘様が心配なのですか。」
「うむ。わしがエトルリアから離れれば彼女との距離も離れる事になる。やはり心配だわい。」
「エトルリアの防衛線は必ず私たちが守ります。西方はエキドナ殿がたにお任せしましょう。
我らは不介入を原則としていますし、彼女らの団結力は相当なものだと聞いております。」
「そうじゃな・・・。武人に要らぬ心配は不要だ。出発はエトルリアの復興がある程度済んでからだが、留守中は頼んだぞ。」
「は、ダグラス殿こそ、道中お気をつけて。」
ロイ達はエトルリアを当分の拠点として、今後の戦略を練っていくとことにしていた。




77: 特別番外編?鈍いヤツ:05/07/17 17:48 ID:E1USl4sQ
その夜、シャニーは場内の庭を散歩していた。
「はぁ〜、早くイリアに帰らないとお姉ちゃんやアリスが心配だなぁ・・・。騎士団の皆にもこれじゃ顔向けできないよ・・・。」
シャニーはシャニーなりに焦っていた。自分の母国が戦火に曝されている、しかも自分はそれを守る立場である。それなのに故郷に帰ることが叶わない。歯痒かった。
そう考えながら歩いていると、何か聞こえてきた。
「えーと、攻めるたってどうすればいいんだい・・・。戦場で攻めるのは得意だけど
こういうときの攻めるってなんなんだい・・・。あいつに聞くとからかわれるし・・・はぁ。」
クリスだった。冗談のつもりだったのにどうやらホンキにしているようだった。自分の気持ちに素直なクリスだったが、こういうところはシャニーと違い苦手だった。困っている人を見るとほうっておけない(この場合、人はそれをお節介と呼ぶ)シャニーはすぐさま声をかけた。
「よっアネキー!」
「げっ・・・こんな時に遭いたくないやつナンバーワンが現れた・・・。」
「なによー、その言い方。せっかくこの可愛い妹がアネキの恋のキューピット役になってあげ・・・。」
「余計なお世話だよ!子供はもう寝な。それに何が恋だい。アタイは別に何も・・・。」
「いたた・・・。殴る事ないじゃん!あいつは鈍いからさー、こっちから積極的に攻めないとさー。」
「だからその攻めるって言うのが分からなくて困っているんじゃないか!! ・・・って」
「ほーら、やっぱり(笑) ここは素直にあたしに教えてもらいなさいって〜。あたしはイリアでもモテモテなんだぞー。安くしとくからさ〜。」
「・・・あんたがモテモテかどうかはこの際置いといて、今回は助けてもらうか・・・。で、攻めるって言うのは何なんだい?」
「へへっ、すばり告白しちゃうんだよ。あいつはもう直接言わなきゃわかんないって。もうそういうことに関しては重騎士並みに鈍いからさ。うちのお姉ちゃんも言ってたよ。“あそこまで鈍いと救いようがない”ってさー。」
「こ、告白って・・・あんた飛躍しすぎじゃないかい?いくらなんでもそんないきなり・・・。」
「あれ? 戦場での勢いはどうしたのかなぁ? 攻めて攻めて攻めまくるのがモットーなんでしょ?」
「だーいじょうぶだって! いざという時はあたしが助けてあげるから!」
「それは遠慮する。あんたが入ると纏まるものも纏まらなくなるよ。でも・・・何て言えばいいんだい
まさかストレートに好きだって言うわけでもないだろ?」
「へ? 違うの? それでいいじゃん。妙に分かりにくく言うと気づかないよ、あいつ。」
「うむむ・・・難しいな・・・。よし、グダグダ言うのもアタイらしくない。言ってくる。」
「(うわー。ホンキだよ、この人。)うん、がんばって!」
「ところで・・・一つ聞いていいかい?」
「ん?なにー?」
「あんたはどうしてアレンのことを『あいつ』呼ばわりなんだい?知り合いなのかい?」
「知り合いも何も・・・。あたしはロイのフィアンセなんだよ? アレンともよく話すよ。
すぐ練習に付き合わされるけどね・・・。」
「ふっ、あいつらしいね。よし言ってくる。あんたは来るんじゃないよ?」
「はーい。(と言いつつ、気になるなぁ・・・。こっそり付いて行って気の上からでも観察しますか。)」



78: 特別番外編?鈍いヤツ:05/07/18 09:37 ID:gAExt6/c
何か最初は冗談半分だったのに、いつの間にか本当に告白する事になっていた。
しかし、シャニーは戦場での彼らのコンビネーションを考えると別に不思議に思わなかった。
むしろなぜ今までそういった話がなかったかというほうが不思議だった。
アレンはロイの部屋の前で見張りをしていた。さすがアレンだ。気を抜くことなく使命を全うしていた。
彼にも彼なりに積もる気持ちがあった。主を危険な場所に置いたまま、自分だけ戦場を離れ、ロイの元に向かった。その時の心の葛藤は今でも忘れない。だから、今はその葛藤を拭い去る為にも、全力でロイのために尽くす。今までも誓っていた事をさらに心に刻み騎士として全力で生きていた。
そこにクリスが来た。何か、覚悟を決めたような鋭い目つきでこちらを見ている。
「あれ? クリス、どうしたこんな時間に。もう寝ないと体に悪いぞ?」
「アレン、少し話がある。」
「ん、今は見張りの当番だ。だからこの場で聞かせてくれないか?」
「見張り役なら後ろにいるよ。付いてくるなって言ったのに・・・このお節介が・・・。」
「うわっ?ばれてたのか。・・・しょうがない。ここはあたしが見張ってるから行って来なよ。」
「シャニー殿、すまない。すぐ戻る。」
「どうぞごゆっくり〜。(あー、やっぱ気づいてないな、あの鈍。)」

夜の中庭はひっそりしている。そこにはアレンとクリスしかいなかった。
いくらクリスと言えども、いきなり踏み込む事は出来ず、たわいもない世間話ばかりだった。
「ねぇ、アレン。あんたの今の生き甲斐って何?」
「もちろん、ロイ様をお助けする事だ。俺はエリウッド様から直々に命を受け、ここにいる。」
「それもそうだけど、他に自分の楽しみみたいなものはないのかい?」
「今は自分のことに現を抜かしている場合ではない。主を危険な場所に残してきている以上、一刻も早く祖国に帰り、主を救い出さねば・・・。」
(あぁ・・・、やっぱりこいつはアタイが考えていた通りの男だ。)アレンのその真剣な眼差しに、クリスはそう思った。クリスもまた、同じような境遇だった。自分の世界にリーダー達に託し、こちらの世界に単身残っている。早く故郷に帰りたい気持ちもあるが、今は世界の危機のために自分が頑張らなければならない。境遇を共有できるアレンの存在は、彼女にとって貴重だった。
「君の生き甲斐みたいなのはなんだい?」
逆にアレンから問われた。もう我慢できなかった。恥ずかしさより、我慢する歯痒さのほうがたまらなくなっていた。・・・今回だけは、あいつの言う事を信じてみよう。


79: 手強い名無しさん:05/07/18 09:41 ID:gAExt6/c
「・・・アタイの生き甲斐は、あんたと一緒にいることだよ。」
言った、言ってしまった。言ってみるとそこまで恥ずかしくなかった。・・・が、
「そうか、そういわれると俺もうれしいよ。」
アレンは即答でそう答えた。告白が成功したのか、そうクリスが思った次の瞬間、アレンが続けた。
「君のような強い人が一緒なら、俺も安心して前線に立てる。これからも一緒に我が軍の中核を担っていこう。そして一刻も早く戦争を終らせよう。」
「・・・。」
クリスは下を向いて沈黙してしまった。アレンが慌てて声をかける。
「ど、どうした?何か気に障ることでも言ったか?」
「なんでそうなんるんだい! アタイはあんたが好きだって言ってるんだよ!どうして戦場での関係に話が進むんだい!」
ぶち切れてしまった。言ってから気づいた。今、シャニーが言っていたように直接好きだといってしまった。
さっき告白した時よりの何十倍にも恥ずかしくなった。穴があったら入りたいという言葉が、これ以上に適用できる心境もなかった。
アレンにとってクリスはいい戦友だ。真っ直ぐなものの見方や考え方は自分とそっくりで一緒にいても疲れない存在だった。だから必然的に一緒にいる時間も長かった。だが、今まで女性として見てこなかった。それは何故なんだろうか・・・。種族の違いかそれともクリスが男勝りだからか・・・。
ここまで言われてようやくアレンも気づく。
「すまない。俺は今まで君の気持ちを全く分かっていなかった。いつも一緒にいながら、俺は・・・。」
「・・・。」
クリスはそのまま立ち去ってしまう。追いかける事もできず、ただその場に立ち尽くすアレン。
シャニーのところにクリスが帰ってきた。眠そうなシャニーだったが、結果を知りたくて姉の帰りを待ちわびていたようだった。
「おかえり〜。ねね、どうだった?うまくいった?」
「ったく・・・あいつホントに鈍だねぇ。こっちが恥ずかしいよ。」
「え? もしかして・・・?」そういってシャニーは指でバツ印を作った。
「恥ずかしい事聞くんじゃないよ!」
そう言いながらシャニーの頭を平手で軽く小突いてクリスは部屋に帰って行った。去り際に、シャニーに見えるように手を上に上げて指で丸印を作ってやった。
「おー! やったじゃん!すごいすごい!」
「ば、馬鹿。デカイ声出すんじゃないよ、恥ずかしいだろ!」
「だって〜、おめでとう!」
シャニーはまるで自分のことのようにクリスを祝福した。


80: 大切な人:05/07/18 17:51 ID:E1USl4sQ
暫くして、アレンが部屋の前に帰ってきた。
「おかえり〜。」
「あ、あぁ・・・。俺の代わりをさせてすまなかった。」
「いいよ、そんなの。ロイはあたしにとっても大切な人だし。」
さすがのアレンも意気消沈しているようであった。好きか否か以前に、自分にとって大切な人を怒らせてしまった。ところで、何故大切なんだろう。シャニーにとってのロイ様は恋人同士だから大切なんだろう。では自分にとってクリスは何なのであろう。本当に戦友なだけか?戦友ならランスだって勝るとも劣らず大事な友だ。しかし、クリスとは明らかに何か違う・・・。
「じゃ、あたしも寝るね。おやすみ〜。」
そういうとシャニーはロイの部屋に入っていった。
「あぁ・・・おやすみ・・・。」
なま返事をしながら、アレンは考え込んでいた。

「おかえり、遅かったね。早く寝ないと体にわるいよ。夜更かしはお肌の敵なんだろ?」
「ただいまー。そういうロイだって何してるの?」
「うん、ちょっと考え事さ。」
いつにないロイの真剣な眼差しに、シャニーはいつもとは違う何かを感じ取った。ロイが自分の前でこんな顔を見せる事などめったにない。見せる時は・・・何か迷っている時だった。
「ねぇ、何を考えてるの? あたしでよければ相談に乗るよ?」
「ありがとう、じつは悩み事が二つあってね。一つ目が、自分の今までやってきたことは本当に正しいのかって事だよ。」
「え・・・?」
「人々は皆、僕の事を英雄と呼ぶ。でも、実際僕が今こうしてここにいるのは、戦で散っていった人々がいるからこそなんだ。僕は君すら犠牲にしかけてしまった。命をかけてでも守りたい君さえも。僕は結局、誰かの命を踏み台にして生きながらえている。そんな僕が、本当に英雄なんて呼ばれていいのだろうか・・・。」
「そ、そんな・・・!」
「ふふ・・・。言ってる事とやっていることが違うよね。何が・・・誰も犠牲にしたくない、だ。
何が・・・犠牲を伴う勝利は勝利じゃない、だ。多くの犠牲を出し、多くの憎しみと悲しみを生み僕は戦に生き残っている。こんなヤツが英雄だなんて・・・おかしいと思わないかい?」
「ロイが考えてる事がおかしいことだなんて、あたしは思えない。確かに戦いに犠牲はつき物だし、犠牲に躊躇してたら勝てないと言うのも分かってはいるけど・・・。」
「・・・そうなんだよね。 僕の考えている事は、理想を越えて狂気に近いのかもしれない。
でも、勝利の為なら犠牲が出ても良いなんて、僕には思えないよ。」
「あたしだってそう思ってる。さっき言った事だって、分かっていてもやっぱりそんな風には割り切れない。でも・・・出てしまった犠牲は取り戻せないよ。その人たちのためにもあたし達はもっとがんばらないと・・・。」
「そうだね・・・。しかし、どうすればいいのだろう。本当にこのやり方で正しいのだろうか。もっといい方法はないのだろうか。犠牲を出さないいい方法が・・・。そう思うと、寝れない。」
「・・・ロイは、ロイが正しいと思う事を精一杯やればいいと思うよ。 皆がロイについてきているのは、きっとロイのやり方、理想に惹かれてるからだと思う。あたしだってそう。あたしはロイの全てが好き。特に、そういった優しいところが大好きなんだよ。だから、これからも一生懸命がんばろうよ!あたしも精一杯、命ある限り協力するからさ!」
「あぁ・・・それしかないんだろうな。ありがとう、シャニー。やっぱり君と話していると元気が出てくるよ。君と一緒になれて本当によかった。」
「て、照れるなぁ〜。・・・ところで、二つ聞いていい?」
「なんだい?」
「ロイは・・・その・・・あたしのドコを好きになってくれたの?」
「全部に決まってるじゃないか。でも、一番好きなのは、君の笑顔さ。君と一緒にいると、元気が出てくる。どんなに疲れていても、不思議とこちらも笑顔になる。そんな君の元気なところに惹かれたのさ。今でも、僕を笑顔に変えてくれた。君ってすごいよ。」
「な、なんかそんな風に言われると照れるなぁ〜。 二つ目の質問なんだけど、二つ目の悩みって何?」
「二つ目の悩み?それはね・・・。」
ロイはシャニーをベッドに寝かせつつ彼女の耳元でささやいた。
「そろそろ赤ちゃんが欲しいなぁ〜、ってね。」
「えぇっ!? わっ、ちょっと! まだ心の準備がって・・・うわー!」


81: 手強い名無しさん:05/07/20 17:29 ID:E1USl4sQ
「あ、アレン。おはよう〜。」
次の日の朝、少々疲れ気味の顔でシャニーがアレンに声をかけた。
「よっ、朝から元気ないな。頭もボサボサじゃないか。」 アレンも声をかける。
「まぁね、ちょっと寝苦しかっただけだよ・・・ふぅ。そんなことより、どうしたの?朝っぱらからからそんな元気なんて。」
「いや別に。ところでクリスを知らないか?」
「クリス? クリスなら食堂にいるはずだけど。」
「そうか、ありがとう。」
アレンはそういうと疾風の如く駆けていった。アレンが走る時は、何か急ぎの用があるときだった。
シャニーは何か嫌な予感がして、アレンを追いかけた。
一方クリスはディークやルトガーと共に朝食をとっていた。男勝りなクリスは、大柄のディークとも全く物怖じせずに話をする。そして時には大声で笑う。
「あははは、あいつのやりそうなことだねぇ。」
「だろ? もう見てられねぇのなんのって。笑うのを堪えるのに必死だったぜ。がはははっ」
「・・・野蛮人どもが・・・。朝から騒がしいな・・・。」
「あん?アタイのドコが野蛮なんだい?ディークはともかく。」
「あぁ? お前こそ野蛮人だろ。この妖怪暴力鬼女め。」
「なんだって?!もう一度行ってみな!」
「あー、言ってやるよ。この妖 怪 暴 力 鬼 女!」
「外に出な!ぶっ飛ばしてやる!!」
「ふぅ・・・。」 ルトガーは半場呆れた表情パンをかじっている。そこへアレンが来た。
「クリス、おはよう。ちょっと聞いてくれ。」
「なんだい、アレン。あたしゃ今いそがし・・・。」
「俺はお前が好きだ! 結婚してくれ!」
その瞬間、その場の時が止まった。騒がしかった食堂が、一瞬のうちに静まり返って、視線が一気にクリスに集中した。
(あぁ〜。遅かった・・・。) シャニーは頭を抱え、食堂の入り口の影で事の行く末を見ていた。

クリスは一瞬何が起こったか理解できずにいたが、状況を把握すると、真っ赤になってしまった。
ところが当のアレンは気にせず(気づいてすらいないかもしれない)続けた。
「昨日あれから俺は、君が俺にとってどういう存在なのか考えてみた。君は戦場で背中を任せられる大切な戦友であり、そしてこれからも俺を支えてくれる大切な存在だ。だから、俺もお前を支えてあげたい。この騎士の誇りにかけて誓う。お前を絶対に幸せにする。だから一緒になろう!」
言い終わった途端、食堂の一同は拍手喝采した。一方のクリスは恥ずかしさが頂点に達し、走り去ってしまった。
「あ、クリス、どこへ行くんだ? まってくれ!」 アレンも後を追う。
「・・・なんだったんだ、今のは?」」
「さぁな・・・。」
「あーあ。アレンってどうしてああ鈍いんだろうね〜。理解できないよ。」
「確かに時には一段置く事も必要だよなぁ。昨日のロイもそうだしな。」
「?昨日のロイがどうかした?」
「どうかしたって・・・知らねぇのか、お前。昨日ロイがシャニーを襲ったんだぜ?
まぁそろそろ子供が欲しい年頃なんだろうなぁ、早いもんだぜ(しみじみ)。」
ルトガーは身の危険を感じ、そそくさと食堂を出て行った。
「ディークさん・・・聞いてたの?・・・昨日の事・・・。」 シャニーの手が震えている。
「あ・・・? げっ!? シャニー?! て、てめぇ、いつの間にここに・・・。」
「さっきからいたじゃん! 人のプライベートを覗くなんて最悪!!!」
「うわ、お、落ち着け。剣をしまえ、おい、早まるな。・・・うわー!」


82: 19章:真の平和:05/07/21 12:45 ID:E1USl4sQ
「待ってくれ、どこへ行くんだ!?」 アレンがクリスに追いついた。
「あんた・・・どういうつもりだい! あんな大勢いるところで・・・恥を知らないのかい!」
「俺のお前への気持ちに比べれば、恥などほんの小さいものだ。しかし、昨日はすまなかった。」
「あぁ・・・。(こっちが恥ずかしいんだよ・・・)」
「さっき言った事は本当だ。俺にとって、お前はなくてはならない存在だ。これからも俺を支えて欲しい。そして、俺も大切な人を守りたい。・・・俺もお前が好きだ。」
どうも配慮が欠けているようだが、アレンの実直さは自分が一番知っていた。この男なら、自分を任せられるだろう。告白もしているし、もう後には引けない。
「しょうがないねぇ。これからもよろしく頼むよ、相棒。」
そういった途端、アレンはクリスを抱いた。いくら男勝りとは言え、体はやはり女性である。すっかり包まれてしまった。クリスは恥ずかしかったが、そのままで居たかった。ところが・・・そこへシャニーが来た。
「うわ、いきなりラブラブモード? ヒューヒュー。熱いね〜。」
「!!」
「遭いたくないやつナンバーワン登場っと・・・。」
「じ、じゃあ、俺は持ち場に戻る。また後でな。」
そういうとアレンは逃げるようにその場を去っていった。
「・・・ったくあんたってヤツは、どうしてこういうときに限って現れるんだい。このお邪魔ムシ。」
「なによー。せっかく心配してきてやったのにさー。・・・それにしてもアネキとアレンの子供かぁ・・・うわ・・・想像したくないかも・・・。」
「うるさいね。子供なんか作れないよ。あんたも昨日ロイとヤったみたいだけど、よしたほうがいいよ。」
「・・・ディークさんめ・・・一体どれだけの人に情報を流したんだか・・・。それにしても何でダメのさ。それに何でやめたほうがいいの?」
「・・・人間と竜族の間の子供は混血児、つまりハーフになるだろ? ハーフはこちらの世界では迫害されてるのさ。野蛮で危険だってね。あんた達だってハーフが生まれないと言う保証はないよ?」
「えぇ!? どうしてさ。こっちではそんなことないのに。」
「さぁねぇ・・・ハーフの異端者が最初に何か事を起こしてからその風潮が強くなったらしいけどね。
アゼリクスとか見れば分かるだろ?あんな連中ばっかりさ、ハーフなんて。」
「でもさ、ロイはすごくいい人じゃん。それに、クリスもアレンも普通の人なのに(ちょっと頭悪いけど・・・)その子供だけがそんな風になるなんておかしいじゃん。」
「そんな事言われてもねぇ。実際の社会の風習がそうなんだからそうするしかないじゃないか。」
「・・・。」
「迫害されるって分かっている世界に生まれたら可愛そうだろ? だからあんたも辞めときな」
「・・・クリスは、何の為に今戦ってるの?」
「は? そりゃあ、世界の滅亡を防ぐ為だろ? それ以外に何があるのサ。」
「ハーフの人たち皆が野蛮だってどうして分かるのさ。あたしの周りのハーフの人は皆良い人だよ。
そうやって最初から野蛮って言って迫害したから、こちらの世界に流れ込んできたんでしょ!?」
「シャニー、あんた一体どうしたのさ。」 クリスは何かシャニーから彼女とは違う何かを感じ取った。
「どうして今の風習がおかしいと思っているのに、それを変えようとは思わないのさ。
皆がやるから自分もやるだなんて、あたしは嫌だよ!」
「あのねぇ、言ってる事は尤もだけど、世の中のジョウシキを変えるなんて、そう簡単にできるもんじゃないんだよ? あんただってそのぐらい分かるだろ?」
「でも! おかしいと思うなら、変えようと努力すれば良いじゃない。最初から諦めるなんて逃げてるだけだよ。ロイだって言ってた。少しでも可能性があるならやるべきだって。」
「だからぁ、わかんないヤツだね。アタイら少人数で何が出来るんだい。できる事から確実にやっていかなきゃダメだろ。あんたやロイの言う事は理想止まりなんだよ!」
そこに突然、誰かの声が割り込んできた。

83: 手強い名無しさん:05/07/21 12:46 ID:E1USl4sQ
「・・・確かに、世の中の一般を変えることは難しい・・・。特にそれが差別ならばなおさらの事だ。」
「あれ、ルトガーさん。どうしてこんなところに?」
「・・・お前がディークをのめしてくれたおかげで稽古相手がいなくてな・・・。こうして見回りをしている。」
「人のプライーベートを覗くなんてサイテーだよ。正直見損なったもん。」
「あれだけ大声で叫べば何かあったかと思って見に行くのは当然だと思うがな・・・。」
「う・・・。だって・・・いきなり襲ってくるから・・・ぶつぶつ。」
「・・・我々サカ人も、肌の色が違うやら、文化が違うとやらでいろいろ差別を受けてきた。一方我々も、自分の文化を保守するのみで、他文化を取り入れようとしてこなかった。それどころか、反他文化的な教育すらあった・・・。差別というのは・・・お互いが相手を認められないところから生じる。」
「それがわかっているのに、なんでおかしいって言わなかったの?」
「・・・差別というものは・・・頭で分かっていても・・・割り切れるものではないのだ・・・。今でも俺は、ベルンに対し憎悪の念を持っている。・・・ベルン人でも善人がいないはずはない・・・それはわかっている・・・しかし、頭の中では、ベルンは敵だ、殺せとささやくのだ・・・。」
「・・・。」
「お前の言っていることは・・・間違ってはいない・・・。だが・・・それは世界を否定し、敵に回す可能性もある・・・。」
「そ、そんなこと、わかっているよ。」
「本当か? 世界を敵にしても、それに打ち勝つ力が、お前にはあるのか? 無勢を跳ね返すには、それ相応の力が必要だ・・・。お前にはそれがあるのか・・・?」
「・・・。」
「力のないものが・・・何かを叫んだところで、何も変わりはしない・・・。それどころか逆に迫害されるだろう。・・・ハーフのものが異端視されたのも、それが原因だろう・・・。」
「へぇ、あんたネグラなヤツかと思ったら結構キレモノじゃないか。見直したよ。」
「・・・お前がガサツなだけだ・・・。」
「二人ともおかしいよ! 力がなくたって、皆で主張すれば言いだけじゃない。おかしい事はおかしいって言わなきゃ、どんどんおかしくなるじゃん! 保身ばっかり考えて他の人はどうでもいいなんて酷いじゃない。」
反論しようとするクリスをルトガーが抑える。シャニーは続けた。
「皆が幸せになれる方法を探して実践するのが私たちの役目でしょ? 悪い事をしてるハーフの人たちを倒してそれで終わりなんじゃ、いつまでたっても根本が解決しないじゃない!」
「・・・。」 クリスも反論できなくなってきた。
「あたしは諦めない。たとえ世界を敵に回したって、正しいと思う事を貫く。それが命を背負うってことだと思う。世間体に流されて、考える事、動く事を辞めたら、あたしのせいで死んでいった人たちに顔向けできないよ。」
「ふっ・・・。」 ルトガーはいつもの笑みを浮かべ、シャニーを見つめた。
「な、なによ・・・。」
「そこまで言うのなら・・・お前を信じてやる・・・。俺の剣を、お前やロイの理想のために使ってやろうではないか・・・。ただし、お前の言う事が嘘だとわかったときは・・・容赦しない。」
「なんだか怖い気もするけど・・・ありがとう。」
ルトガーはそういうと去っていった。クリスはそれを追いかける。
「確かにアタイは、根本的に間違っていたのかもしれないねぇ・・・。」
「気にするな・・・あいつの言っている事は綺麗事だ・・・。」
「じゃあ何であんたはあいつに剣を捧げたのサ?」
「・・・俺は今まで信じるものなく、ただ復讐の為に剣を振るってきた。あいつの目には・・・何か強く信じる強い意志を感じた・・・。そういう風になれなかった者として・・・そういった得体の知れないものに付き合うのも悪くないと思っただけだ・・・。」
「・・・いや、アタイはリーダーの言葉を間違えて理解していたのかもしれない。リーダーは、平和の為に行動せよと言った。アタイの平和は竜族にとってだけの平和だった。 ・・・考えが浅はかだったかもしれないね・・・。」
二人で話していると、ディークがふらふらで寄ってきた。
「・・・まだ生きていたのか。」
「当たり前だ! ・・・いてて。あいつ本気でやりやがって・・・。」
「デリカシーのない野蛮人だからそういうことになるのさ。」
「あぁ!? 何だとこの妖怪暴力鬼女!」
(・・・進歩のない馬鹿共だ・・・。) ルトガーはそう思いつつ相変わらずな二人から離れ、天を見つめた。
「竜王ナーガ、か。ふっ・・・」

84: 20章:いざ祖国へ:05/08/01 10:52 ID:E1USl4sQ
あのエトルリアでの戦いから1ヵ月後がたった。エトルリアの復旧もひと段落がつき、ようやくイリアへ向けての出兵の準備が始まった。イリアはまだ陥落はしていないが、急がなければ王都への侵攻も近い。
前の盟約どおり、エトルリア三軍将のうちダグラス大軍将とその配下のみがロイ軍に加わり、軍名称はベルン討伐軍となった。人々はまたベルンとの全面戦争になる事を恐れ、討伐にあまり積極的ではなかった。民の支持を大切にする官僚はベルン討伐に対しあまり積極的に出なかったのである。
「よし・・・。やっと、やっとイリアに帰れるよ。お姉ちゃん達無事でいてよ・・・。」
討伐軍出兵の知らせに一番喜んだのはシャニーだった。やっと祖国に帰ることが出来る。自分の居ない間に祖国はきっとベルンに蹂躙されているに違いない。一刻も早く国に帰り、騎士としての勤めを果たしたかった。だが、その気持ちの反面、国へ帰ることをためらう自分がいた。守るべき立場の自分が守るべき存在に守られて生きながらえ、代わりに守るべき存在を失った。姉や騎士団に部下に、どうやって顔を合わせばよいのだろう。団長とは言え、18歳の少女には過酷な現実だった。
そして、イリア出発を心待ちにしていた人物がもう一人いた。
「やれやれ、これだけ説得してもわかってもらえないのかい?ティトも言い出したら引かないね・・・。」
「ごめんなさい。でも、イリアは私の故郷ですし、姉も心配です。どうか私の参加をお許しください。」
「君は騎士を引退したのだろう? それにセレスだっている。戦場に子供を連れて行くわけには行かないじゃないか。我々は共に武器を捨てた身だ。後方から他の支援を考えたほうがいい。」
「確かにセレスはいます・・・。でも大切な国や家族が戦火に晒されているのに、自分だけ幸せになるなんて私には出来ません。お願いします。どうか・・・。」
クレインは困ってしまった。ティトは淑女ではあったが、こうと考えたらテコでも動かない芯の強さも併せ持っていた。多分今回も引いてはくれないだろう。しかしこちらも引くわけには行かない。
「それは違う。直接戦うこと以外にも、できることはあるじゃないか。それを僕たちがやろうといっているんだよ。もし君に何かあったらどうする? 母親のいない悲しみは、君が一番分かっているはずだろう。」
「・・・。」
「わかってもらえたかな?」
「私は・・・私は祖国のために最期まで尽くした両親を誇りに思っています。私もそうでありたいと願って騎士の宣誓を行いました。その気持ちは今も変わりありません。確かに、両親がいなくてさびしい思いをしたこともあります。でもその両親が命をかけてでも守りたかった祖国を、私も守りたいんです!どうかお願いです・・・私の参加を・・・」
「泣かないでくれよ・・・。やれやれまいったな・・・。」
「クレイン、セレスは私たちが責任を持って預かろう。お前達はロイ殿をお助けしなさい。」
そこに現れたのはパントだった。どうやら先ほどから会話を聞いていたらしい。
「ち、父上!? し、しかし・・・。」
「ロイ殿には我々を救っていただいた恩がある。それに・・・お前も本当は参加したいのであろう?
悪を見つけると放っておけない性質のお前が本心でそう思っておるはずがないよ。」
「確かに・・・ベルンの行動は見過ごせないものがあります。しかし我々には子供もいるし、戦争ではなく、外交で和解出来ればそれに越した事はないと思います。」
「話し合いで解決できればそれが一番だが・・・。今回の首謀者は他ならぬギネヴィア様だ。たとえ中身が違っても、ベルン最高権力者自身が各国に降伏を呼びかけている。それに・・・ベルンは各国の要人をことごとく殺している。我が国の王子も未だ行方不明。イリアに関しては国王を失っている。
到底話し合いで解決できるレベルではない・・・。」
「・・・。」
「本当は私も参加したいが、もうこんな老いぼれは戦力外だろう。私の分も・・・存分に戦って来い。」
「お父様、許可していただけるのですね?」
「ああ、正義の為に存分に戦ってきなさい。ただし、無理をしてはいけないよ?君は一児の母であるという事を肝に銘じ、クレインを助けてやってくれ。」
「ありがとうございます、父上。娘をよろしくお願いします。」
「クレイン様、では私は妹と手合わせをしてきます。」
そう言うとティトは珍しく走って出て行った。
「では父上、私も少し弓の練習をしておきます。しばらくぶりでロイ様のお役に立てるかどうか・・。」
そういうとクレインも出て行った。
「がんばれよ。まぁ、ディークもいるしまた彼に助けてもらう事になるな。
・・・それにしても、射手と天馬がああも引き合うものか、世の中面白いものだな。」


85: 手強い名無しさん:05/08/01 12:22 ID:E1USl4sQ
シャニーはディークと剣の練習をしていた。
「うりゃ!そりゃ!」
「力不足だ! もっと大きく振り下ろせ。そんなんじゃ重騎士にかすり傷も負わせられないぞ。」」
「重騎士には魔法使うからいいもん。」
「あのなぁ・・・。大体、お前は槍使いだったのにどうして剣に転向したんだよ。」
「だって槍って重いじゃん。」
「・・・そんな理由で剣にしたのか?」
「うん、そうだよ。急所攻撃は得意だし。もうペガサスに乗らないなら剣の方がいいじゃん。」
「・・・。」
「な、なによ。その哀れそうな目つきはさー! あたしをバカにすると痛い目にあうぞ!」
「はいはい・・・。」
「ぶー・・・。」
そこへティトがきた。見慣れたドレス姿・・・ではない。鎧に脛あて・・・軍服姿だ。
「シャニー、探したわ。ちょっと手合わせ頼めないかしら。しばらく槍を扱ってないから手元が心配なのよ。」
「おk〜。じゃあディークさんありがとー。いい練習になったよ。さすがあたしの剣の師匠。」
「へっ。師匠は辞めろって言ってんだろ。」
シャニーは姉と手をつないだりしている。余程嬉しいのだろう。ティトのほうは恥ずかしがって辞めさせようとはしているが、やはり妹の無邪気な顔を見ると気が和らぐようだ。
「あのねー、ディークさん。あたしが剣に転向したホントの理由、教えてあげるー。」
「ん? なんだ? カッコイイからとか言うなよ?」
「ディークさんがかっこよくて憧れたからー! んじゃね〜。」
そういうとシャニーは走って姉のところに戻っていった。
「・・・ちっ。あいつ、ツマラン洒落を言いやがって・・。」


86: 手強い名無しさん:05/08/01 12:23 ID:E1USl4sQ
久々に行う姉との手合わせだ。自分の強くなったところ見せてぎゃふんと言わせてやりたかった。
「シャニー、いくらブランクがあるからって気を抜いていると、痛い目にあうわよ?」
「へーんだ。どっからでもかかってきなさいってやつよ!」
しかし、シャニーの思惑とは裏腹に、姉はホンキで襲いかかってきた。
「うわ?! ちょ、ちょっとホンキ? うそー。」
気を抜いていたシャニーは危うく槍の直撃を受けるところだった。ティトは妹の実力を知っていたからこそ、全力を出してきたのである。いくらブランクがあるとはいえ、ティトの槍術は正確だ。確実に急所を狙った攻撃をしてくる。
「だー、空中から攻撃してくるなんてヒキョーだぞ!」
「・・・なに言ってるの。あなただって元天馬騎士ならそんなこといえないはずでしょう?」
「うー、こうなったらこっちだってホンキで戦ってやる!」
シャニーも自らの翼を出し、空中に躍り出た。自らで飛ぶのと天馬の乗って飛ぶのでは明らかに自由度が違う。ティトはすぐに背面をとられ、猛攻を受けてしまう。
「・・・っ。さすがにやるわね。」
ティトも槍を振り回し応戦する。しばらく空中戦が続いたが、やはりティトが明らかに劣勢だ。
(この子めちゃくちゃ強くなってるわね・・・。このままじゃやられてしまう・・・。)
「へへ、やっぱりお姉ちゃん弱くなってるねー。相手にならないよ〜♪」
しかし、ティトは慌てなかった。冷静に壁を背にして背面を取られないように努めた。
「そろそろいくよ。覚悟! うりゃぁー!」
シャニーが突撃してきたのを見計らい、ティトはすっと横へ逃げた。
「うわ?!」
猛スピード手突進した先は壁。当然避けられずにシャニーはそのまま壁にびたーん。
「あ、あがぁ・・・」
そのままシャニーは墜落して、下の方で顔を抑えてながら跳ね回っている。
「私の勝ちね、シャニー。」
「いたたたた(涙) そんなんひきょーだよ!!」
「何も考えなしに突撃するからでしょう? 全く昔と何も変わってないわね。」
「うー。でもあたしも強くなってたでしょ? どう?団長っぽい?」
「まだまだね・・・もう少し周りを見て動きなさい。あなたは大丈夫でも部下がそれでは付いて来れないわよ? 戦い方が変わったなら部下の事も考えた行動を考えないとね。」

やっぱりお姉ちゃんは凄い。引退しても的確なアドバイスをくれる。自分も部下にこういったことが出来ていたのかな・・・できていなくてもできるようにがんばろう、うん。
「怪我しちゃったわね。見せてみて。治してあげるから。」
「お? お姉ちゃん杖使えるようになったんだ。すごーい。」
「ふふふ、まだまだなんだけれどね。みててみなさい、あっという間に治してあげるから。」
そういうとティトは杖を傷に当て気を集中した。やはりその途端
「うぎゃ!!」
「ど、どうしたのシャニー。」
「お姉ちゃんのヘタっぴ! 何で回復の杖でダメージ受けるのよ(涙) あぁもう死にそう・・・。」
「えぇ!? ごめんね。もう一度やってみるから。」
「い、いらないよ・・・って・・・ぎゃー!!! お姉ちゃんのバカー!!」


87: 21章:真の強さ:05/08/02 09:59 ID:gAExt6/c
出発を明後日に控えた日の晩。その夜もロイ達は進軍のスケジュールなどでエトルリア軍部との会議を続けていた。当然、その間は恋人といえども勝手に部屋に入ったりは出来ない。シャニーは暇を紛らわす為に黙々と剣を振るっていた。姉の事や王女の事、そして義兄のことを思い出すと握る剣にもおのずと力が入った。自分のこの手で・・・義兄の敵を討ちたい・・・。何度そう思った事か。でも、それをいつもロイの言葉でかき消してきた。憎しみでは、何も生まれない、と。ロイだって故郷のフェレを奪われて、もしかしたら・・・こんな事を言っていいのかな。もしかしたらお父さま達も死んでしまっているかもしれないのに。やっぱりロイは凄い人なんだなぁ・・・。
気が付くとびっしょり汗をかくまでやっていた。どのくらいの時間がたったのだろう。シャニーは剣を鞘に収めて地面に置き、自分も寝転がった。しかしまだ会議室の明かりはついたまま。ロイ、今日も徹夜かなぁ。明日おいしい手料理でも作ってあげるかな。そう思いながら星をボーっと眺めていた。
シャニーはこういったボーっとする時間が好きだった。何もかもから開放されて、ただ広い空を眺めていると、不思議に心が落ち着いてくる。悲しい事や腹が立った時は必ず空を見上げて寝転がった。
・・・今でも信じられないな・・・あたしが14で傭兵見習いの修行に出てそんなヒヨっこがベルン動乱を鎮めた英雄のうちの一人だなんて・・・そんな傭兵がエレブ最高の英雄の婚約者だなんて・・・未だに信じられないなぁ・・・。それよりももっと信じられないのはその後だけど・・・。たった16で団長になって・・・平和だったはずなのに突然また戦争になって・・・義兄ちゃんが死んで・・・。
そしてあたしも死んで・・・竜になって・・・。信じられない事ばかりだな・・・。でもあたしは今この世に生かされている身。弱音なんか吐いてられない。ロイのためにも、皆の為にもがんばらなくっちゃね・・・。あぁ、またつまらない事で悩んじゃったな・・・。あたしらしくない!よし、汗かいちゃったし、水浴びでもしてこよう。ロイだって汗臭い女の子なんか近づいて欲しくないだろうし。
シャニーがいつものように足を大きく振り上げ、上半身を起こす。そして大切な剣を握って立ち上がる・・・剣がない! シャニーは慌てて剣を探す。
「おいおい。こんな刃こぼれした剣なんか使ってやがるのか。いくら銀製だっつっても、こんなナマクラじゃこの先やっていけねぇぞ。イリアの王族ならもう少しいい剣使えよな。」
ディークだった。見回りに来ていたのだろうか。しかし、シャニーは激怒した。
「ちょっと!その剣返してよ! その剣はあたしの大事な宝なんだから!」
「あ、あぁ、すまねぇ。しかしそんなナマクラが宝だなんて、お前も変わり者だな。」
「・・・。」
ディークに悪気のないことは分かっていた。しかしあえて怒った振りをして睨んでやった
「あー悪かったよ。機嫌直せよ。な?酒おごってやるから町に行こうぜ。」
「それって口説いてるの?」
「バーカ。ほら行くぜ。」
二人は町の酒場に入った。夜の酒場は荒くれの住処だ。エトルリアといえどそれは同じ。夜に女一人で酒場に入るなんて危なくて出来ないが、今日は頼れる用心棒が一緒だ。
「それにしても、お前と酒を飲める日が来るとは思ってなかったぜ。」
「ふふっ。あたしだって、こうやって夜の酒場にディークさんとデートに来るだなんて夢にも思ってなかったよ。」
しばらく酒を酌み交わしながらたわいもない会話で盛り上がった。
酒がまわってきた頃、ディークはふと、シャニーの顔を見た。そういやこいつの顔をまじまじと見るなんてのは初めてだな。・・・意外にきれいな顔立ちしてるじゃねーか・・・。
そこにあるのはかつてのやんちゃ顔ではなかった。確かに面影はあるが、それは立派な一人の女性の顔だった。整えられた短髪に小ぶりな顔立ち。そして耳には、ロイから貰ったのだろうか、きれいなピアスをしている。ホンワカした中から、妖艶さがにじみ出ていた。
「お前・・・綺麗になったもんだな。」
酔いのせいか、ついつい口からこんな言葉が漏れた。
「え?! やっぱディークさん、あたしを口説いてるんでしょ。 ダメだよ、あたしにはもう心に決めた人がいるんだもんね。」
「へっ、誰がお前みたいなじゃじゃ馬を口説くかよ。黙っていれば美人って言うのはまさにお前の事だぜ。」
そういうとディークはコップに入っていた酒を一気飲みして新しく注ごうとした。
「ディークさん気をつけてよ。この前も二日酔いで一日中げーげーやってたらしいじゃない。」
「大丈夫だ、この程度の酒じゃ俺は酔わねぇよ。」
ところが、その後酔って大変だったのはシャニーのほうだった。大声で騒ぐは近くの荒くれに喧嘩売るはで大暴れだ。


88: 手強い名無しさん:05/08/02 10:00 ID:E1USl4sQ

「あん? 小僧やるのか?!」
「ぎゃははは! 死にたい奴は前に出なさいよぉ〜だ。」
「バカやめろ。」
ディークがシャニーの首根っこを捕まえて席に戻す。
「ったく・・・やっぱりお前はじゃじゃ馬だぜ。酒癖悪すぎだっつーの。」
「えへへへ・・・。」
これ以上ここにおいておくと危険なのでやむを得ずディークはシャニーを連れて外に出た。
しばらく騒ぎ散らしていたが、急に寝転がってしまった。
「おいおい・・・こんなところで寝るなよ・・・。」
「ディークさん。」
今までの声とは明らかに違う声でシャニーがディークに声をかけた。ディークは何かあると思い、シャニーの横に座った。
「なんだ?」
「あたしは強くなったかな・・・?」
「ん?」
「さっきの剣は・・・陛下から・・・義兄ちゃんから直接賜った大切な剣なの。あたしは、この剣で義兄ちゃんの敵をとるってそう決めた。」
「確かに・・・剣の腕は上がったな。しかし・・・。」
「しかし?」
「剣の腕だけが強さではない。・・・それがわかっているから、聞かずにはいられなかったんだろう?」
「ロイは憎しみからは何も生まれないってあたしを諭した。頭では分かってる。敵討ちしただけで解決するような、そんな簡単な話じゃない。でも・・・思い出すたびにその衝動が止められなくなるの。あたしが力を暴走させたら、世界は逆に滅びる。いつ自分が暴走するか分からなくて、正直なところ怖いんだ。」
「お前は技術的には以前とは比べ物にならないほどに成長している。魔法も会得しているし
お前が本気を出して戦えば、相手になる奴はもう殆どいないだろうな。俺も・・・お前が暴走したら止められないだろう。」
「やっぱり危険だね・・・。」
「大丈夫だ。お前はもう以前のじゃじゃ馬じゃない。」
「うん・・・。」
「心の強いじゃじゃ馬になった。」
「がくっ。結局じゃじゃ馬なの? なんかほめられているんだかバカにされているんだか・・・。」
「過ちを認める心。それを悔い忘れない心。その心がお前にはある。心の強さもまた、『強く』なる為には必要だ。お前はもっと強くなる。後お前に足りない心は・・・何か自分が一番分かっているだろう?」
「うん・・・自分の衝動を抑える心・・・だね。」
「バーカ。女らしいお淑やかな心だ。」
「ぶー! 何よその言い方! まるであたしが女の子じゃないみたいじゃない!」
「へっ、酒場で大暴れして男と間違えられるような奴が言える台詞かよ(笑)」
「・・・。」
「ま、お前は笑ってりゃいいんだ。それだけで周りのムードががらりと変わるしな。ヘタに難しいこと考えるな。悩み事があったら何でも相談しろ。お前が黙ってると気味が悪ぃからな。」
「やっぱりバカにされてる気がするなぁ・・・。」
しばらく二人とも星空を眺めていた。本当はお前みたいな可愛い奴の顔が苦悩にゆがむのは見たくない、とでも言いたかったが、流石にそれは恥ずかしくて言えない。ロイなら言っただろうが。
「おい、そろそろ城に戻るぞ。あまり長い事お前をとってるとロイが怒るしな。」
反応がない。そのまま寝てしまったらしい。寝顔が最高に可愛く見えた。
「ったく・・・。どこまで世話の焼けるヤツなんだか・・・。ロイも大変だな。」
そういうとディークはシャニーを背負い、城へと戻っていった。
へっ・・・あんな自分の都合だけで動いていたじゃじゃ馬が、責任感を備えた立派な娘に成長しやがって。・・・だが、まだ脆い。いつ潰れてもおかしくないほど、なよなよしい。もう少し面倒見てやらねぇとな。だから俺も死ねん。お前の嫁入り姿を見るまではな。
「だーっ! てめぇ!ヨダレたらすんじゃねぇ! 汚ねぇだろうが!」
「うーん、むにゃむにゃ。ディークさんのバカ・・・。」

89: 手強い名無しさん:05/08/02 11:21 ID:E1USl4sQ
どうもー('・ω・`)
楽しんでいただけてますでしょうか。
何かご意見ございましたら何なりとお申し付けください。
他の方の小説などを見て日々勉強していますが、やはり自分の作品の悪いところはなかなか気づかないものでしてorz
ちなみに細かい事ですが>>87のしたから9行目の右端「妖艶」は「妖麗」のほうが意味が合う気がするので修正しておきます。。


90: 手強い名無しさん:05/08/02 14:56 ID:Ab/swztg
>89
結婚しよう

91: 手強い名無しさん:05/08/02 23:23 ID:.Kds.sRI
酔って大虎なシャニーがいい。

92: 22章:冷血なる風将マチルダ:05/08/03 12:18 ID:E1USl4sQ
いよいよ出発の時を迎えた。イリアは既に冬期に突入している。急がなければまた冬将軍を相手にしなくてならなかった。進軍の途中、ディークがロイに訊ねた。
「で、ロイ。今度イリアを攻めている軍の将はどういうやつなんだ?」
「うん、なんでも五大牙唯一の女性騎士なんだそうだ。槍術に加えて風の魔法も巧みに操るとか。名前は確か・・・マチルダだったかな。」
「魔法も使うという事は・・・またハーフか・・・。」
「あぁ、マチルダだね。あいつはいけ好かない女だよ。勝利の為なら手段を選ばない。もっとたちが悪い事に出来るだけ自らの手は汚さない様な作戦を執る、狡賢い雌狐さ。」
クリスが説明する。どうやらこの様子だと五大牙はハーフで構成されている模様だ。
「風の魔法か・・・天馬は風の魔法に弱いんだよね。・・・みんな大丈夫かな。」
「それを今から助けに行くんだろ? 心配しても始まらないよ。」
ロイがシャニーを励ます。ベルンの手はまだ王都付近で止まっている。エトルリアからイリアに進軍するのは比較的安全だ。早ければ2週間で到着するだろう。それまで無事でいてくれよ・・・。


93: 手強い名無しさん:05/08/03 12:20 ID:E1USl4sQ
国王、団長不在のイリアでは、副団長ルシャナとその恋人で騎馬兵隊総司令のラルクが背水の陣でベルンに戦いを挑んでいた。イリア民の結束力は高く王都以降の侵攻を許していなかった。
「ルシャナ・・・ゼロットやシャニーはまだ帰ってこないのですか?」
ユーノがルシャナに声をかける。民の前では気丈なユーノも、ルシャナの前では流石に疲れを隠せないといった表情をしていた。要人達が数多く殺され、夫も妹もその現場にいたはず・・・そして今も消息がつかめない。ユーノはいつ心痛で倒れてもおかしくなかった。
「二人ともきっと無事です。それに二人が帰ってくるまでは私が団長代理としてこの命の代えてでもユーノ様をお守りします。ですからどうか安らかにしていてください。」
「ありがとう、ルシャナ。あなたも無理をしてはだめよ? あなたが死ねば、多くの人間が悲しむわ。
私も・・・そしてラルクもね。」
「先輩とは・・・騎士として最後まで誇りある生き方をしようと誓い合っています。そしてどちらか危険に晒されたら必ず助けにいくと・・・。だから死ねません。しかし、主の為に槍を取り、その結果し死ぬのであれば悔いはありません。」
そういうとルシャナは仲間の待つ会議室に戻った。流石にブリザードの荒れ狂う間はベルンとて攻撃は出来ないはずだ。
「ルシャナさん、シャニーさんはいつ戻るんですか?」
「わからない。でも、ロイ様の軍がエトルリアを出発したと聞くし、もしかしたらそこに一緒にいるかもしれない。国王陛下もね。」
「団長代理、この戦いに勝ち目はあるんですか? 攻めども攻めども戦況はこう着状態のままですし、
こちらの消耗は激しすぎます。このままじゃ長く持たないのでは・・・?」
「勝ち目があるとかないとかじゃなくて、陛下や后妃をお守りする事が私たちの勤めでしょう?
それにそんな気の持ち方では成るものも成らなくなるわよ。気合入れていきましょう。」
結束の堅い騎士団の中にもそろそろ疲れが見え始めている。シャニー・・・あんたならこんな時どうするよ・・・?やっぱり笑ってみんなの沈んだ気持ちをやわらげる? 今更ながらに思うけど、あんたってやっぱりすごいよ。どんな時でも笑って明るく振舞ってさ・・・。ドジなあんたを団員が慕う理由がやっと分かった気がするよ。・・・私には、この任は荷が勝ちすぎてる・・・。早く帰ってきて・・・。
「どうした?ルシャナ。また悩み事か? お前はすぐに一人で抱え込むからな。何か言って見ろよ。」
「あ、先輩。なんか騎士団の気持ちがばらばらになってきてるんじゃないかと心配で。」
「そうだな・・・。確かに騎士団の中には敗色が立ち込めているな。」
「やっぱり、私は団長なんて柄じゃないね。こうやってみんなの心が離れそうな時に、何をすればいいか、私には分からない。あいつ早く帰ってきてくれないかな・・・。」
「シャニーか?」
「ええ。何だかんだ言ってあいつは適任だったんだよ。どんな時でも笑っててさ。あいつの笑顔を見ると、何だか頑張ろうって不思議に思えた。今の皆に必要なのは、あの笑顔だよ。」
「どんな時でも笑顔で振舞うには、心の鍛錬が必要だ。あいつはヘラヘラしているように見えて、実は心の強い人間だったのかもしれない。尤も、あいつの場合はヘラヘラしているだけの可能性もあるのが怖いがな・・・。」
「ふふ、そうかもね・・・。早く帰ってこないかな。きっとあいつが帰ってくれば皆また一緒になって戦えるよ。」
「ああ、聞いているとは思うが、ロイ様率いるベルン討伐軍がここイリアに向かっているらしい。
あいつがいる居ないに関わらず、それまで持ちこたえる事が今の俺たちにとっての最大の任務だ。」
「ええ、もう少しの辛抱だね、がんばろう。」
「おう、陛下から直々に託されたこの氷雪の槍さえあれば、ベルン軍などおそるるに足らん。」

しかし、事はそううまく運ばなかった。ロイ軍は王都到着まで@4-5日と迫っていたが、イリアの冬期恒例のブリザードで進軍を止めざるを得なくなっていた。ベルン軍の猛攻を防ぐ役割をしていた冬将軍が、逆に援軍の到着をも妨げる結果となっていた。一行はかつての天馬騎士団の拠点であったカルラエ城でブリザードがやむのを待つことになった。シャニーは何日も続くブリザードを、窓越しにじっと見ていた。

94: 手強い名無しさん:05/08/03 12:21 ID:E1USl4sQ
「シャニー、そんな窓辺にいたら風邪を引くわよ。暖炉のところにきなさいよ。」
「あ、うん。すぐ行くよ。」 シャニーは姉の心配をよそにまだ外を見ている。
「やっぱり后妃様の事が心配かい?」 ロイも心配そうに声をかけた。
「うん・・・。あたし達がこうやって立ち往生してる間にも、イリアは攻撃を受けていると思うと・・・。
住み慣れた祖国だし、見慣れた王都での戦闘だから、どうなっているか想像しちゃって・・・。」
「元気出して。悩んでも仕方ない、そうやって僕に教えてくれたのは君だろ?」
「そうよ。この頃あなたは少し悩みすぎよ。考えても仕方のないことでしょう?」
「うん・・・。」
「大丈夫、開戦以降、王都より西にはベルン軍が侵攻できていないということは善戦してるってことだよ。ほら、笑って。そんな顔をしていると可愛い顔が台無しだよ。」
「はっ、よくそんなクサイ台詞を堂々と言えるもんだねぇ。聞いてるこっちが恥ずかしいよ。」
クリスがロイをからかった。そこへ間髪いれずにディークが突っ込んだ。
「へっ、お前みたいながさつな奴は頼んでも言ってもらえないから安心しろ。」
「ふん、余計なお世話だよ、この野蛮人。」
そう言いながらクリスは自分の部屋に戻った。部屋の中ではアレンが剣の素振りをしていた。
「あんたねぇ・・・いくら稽古熱心だからって部屋でやるのは辞めとくれと何度言ったらわかるんだい。」
「お、おかえり。しかしな、すぐにまたイリアで激戦が行われると思うとじっとしていられなくてな。
大切なロイ様や君を守るためにはもっと鍛錬しなければな。」
「大切か・・・。言ってもらえるとうれしいね。」
「あぁもちろんさ。君は大切なパートナーだからな。これからも磨きあっていかないとな。」
「・・・また戦場での話だったのかい。」
「?」
「・・・」
「??」
「・・・・・・」
「どうした?」
「・・・あんたのことだから深い意味はなかったんだろうね・・・。」
「ん?何か言ったか?」
「はぁ、もういいよ。素振りやるなら廊下でやろうよ。ここじゃ狭すぎるよ。」
「おう、コンビネーションの必殺技でも編み出してみるか!」
クリスの期待はいつも空回りだった。でも、もはや意味なんてどうでもよかった。大切だといってもらえればそれで。

足止めを喰らって4日目、事態は急変する。使者がもたらした情報は一同を驚愕させた。
「ろ、ロイ様! 大変です!!」
「どうしたんだい、そんなに血相を変えて。」
「イリアが、王都エデッサが陥落しました。王族は全て捕らえられ、見せしめに処刑されるとか。」
「な、なんだって!? しかし、騎士団は壊滅したのか?!」
「それが・・・騎士団の中に裏切り者がいて・・・一気に切り崩された模様です。幸い騎馬兵の善戦で騎士団の被害はそこまでないようですが、后妃と皇女をベルンに取られ、手も足も出ない模様です・・・。」
ロイはシャニーを見た。案の定、顔を真っ青にして目が遠かった。それと同時に何か思いつめたような表情も見せた。そばに居たルトガーはそれを見逃してはいなかった。
「くそっ、このブリザードさえなければ・・・。」
ディークも苛立ちを抑えられなかった。確かにこのブリザードさえなければ今頃王都に到着していたはずだった。
「とりあえず作戦を練り直そう。后妃達の命が危ないとなれば、強行突破もいとわない布陣で行かなければ間に合わないし。ブリザードもうすぐ止むだろう。多少視界は悪いが小止みになったら即出発しよう。もう一刻の猶予も許されない。ダグラス殿、エトルリア兵達への指揮はお任せします。」
「うむ、承知した。相手は竜騎士主体の部隊だろう。エトルリア魔道軍をもってすれば打開は可能だ。
前線はロイ殿たちにお任せする。わしも大軍将の誇りにかけて必ずや活躍して見せようぞ。」
事態は急にめまぐるしく変化し始めた。イリアを奪還できなければベルンへの到達は不意可能だ。そして王族を救出しなければ、イリアはまた混乱に陥ってしまう。大きな難題を二つ抱え、ロイ達は冬将軍と、そして冷血なる風将マチルダを相手にすることとなった。


95: 手強い名無しさん:05/08/03 12:44 ID:E1USl4sQ
訂正です。。すいません。。>>94下から2行目
×不意可能
○不可能

でした。

ついでにキャラ紹介。

ラルク
デュークナイト
ルシャナにとって騎士としての先輩にして恋人。
ゼロットから託されたマルテを振るい、イリアの死守に勤める。
容姿は深緑の髪。姿はアレンに似てるかな?

マチルダ
ディヴァインナイト
五大牙唯一の女騎士。神竜と人間のハーフだが竜の血が濃く出ている。
頭脳的な作戦で相手を翻弄する事が得意。
自身も研ぎ澄まされた槍術と風の必殺魔法を併せ持ち、高い戦闘能力を誇る。
容姿は神聖的な衣装を身にまとった金髪超ロング。

96: 手強い名無しさん:05/08/03 15:48 ID:E1USl4sQ
その夜も、ブリザードは絶えることなく続いていた。
シャニーは誰にも気づかれないように城の入り口へ向かっていた。外は極寒。いくら神竜といっても
この環境では手も足も出ないだろう。・・・でももう我慢できない。お姉ちゃんが危ない。今ここでじっとしている間にも、姉や姪は処刑されてしまうかもしれない。そう思うと居ても立ってもいられない。
こうなったら自分だけでも先に王都に突っ込んで、姉達を救出してやる・・・。徒歩だと雪と矢まで時間かかるけど、飛んでいけば1日もかからないだろう。吹雪の中を飛ぶのは天馬騎士時代に慣れているし、絶対イケル・・・。お姉ちゃん、待っててよ・・・。今助けるからね。
「・・・シャニーよ、どこへ行く?」
突然の声に背筋がぞっとした。周りを焦って見渡すとそこにはルトガーがいた。いつもより厳しい目つきをしている。
「え?! えーと・・・散歩だよ、散歩!」
「・・・こんな吹雪の中を散歩か? バレバレな嘘を言うな・・・。」
「う、嘘じゃないよ。あたしは雪国出身だよ?このぐらいの吹雪どうってこと・・・。」
「どうという事もないから自分だけで突入しようと思った・・・そうだろう?」
「な!?」
「ふっ、ディークは騙せても俺は騙せんぞ。お前のような単純なやつの考えは容易に見抜ける。」
「・・・心を見透かされてるみたい。剣もひらひら避けられるし・・・。でも、なんでここに?」
「俺はお前に剣を捧げた。捧げた人間を守るのが俺の仕事だ。居て当然だろう。」
「なら、見なかったことにして。お願い。急がないとお姉ちゃんが・・・。」
「俺には・・・お前の行動を止める権利はない。しかし、分かっているのか?自分がしようとしている事が何を意味しているのかを。」
「わかっているよ・・・。単独行動だから皆心配するし、吹雪の中を行くんだから命の危険だってある。」
「・・・それだけか?」
「え・・・?」
「お前一人で突撃したところでどうなる?・・・わざわざ鳥籠に飛び込みに行くようなものだ。」
「でも! 急がないとお姉ちゃんが・・・。」
「お前は今牢の外にいるたった一人の王族だ。・・・ベルンはお前を血眼になって探しているはずだ。」
「それは・・・。」
「それに敵将はなかなか頭の切れる奴だと聞く。・・・敵の術中にはまる可能性もあるのだぞ? それでも行くのか?」
「わかってる。確かにルトガーさんの言うとおりだよ。でも、今行かなきゃお姉ちゃんが殺されてしまう。お姉ちゃんが殺されたら、イリアの民は心の拠り所をなくしてしまうよ。そんな事になったら、それこそ敵の思うがままになってしまう・・・。」
「・・・。」
「あたしは世界を救う為に蘇った。この命にかけてでも、それを果たさなくちゃならない。だから多少危険でも、できることはする。もう時間が・・・ないんだよ・・・。」
「・・・わかった、泣くな。先も言ったとおり、俺にはお前の行動を止める権利はない。・・・しかし無茶はするなよ。お前にもしものことがあればロイや・・・ディークが悲しむ。」
「え、ディークさんも・・・。」
「ふっ。これを持っていけ・・・お前は神竜だから魔法には高耐性だろうが、相手は風の魔法使いだ。
・・・持っていても損はないだろう。」
そういうとルトガーはポケットからあるものを取り出した。
「こ、これは・・・デルフィ神のお守り・・・どこでこれを?」
「エトルリア王宮にあった・・・どうせ奴らには無用の長物だろう。・・・お前が持っていけ。」
「ありがとう。あたしのためにそんなことまでしてくれてたなんて・・・。」
「ふ・・・。あいつと約束したからな。」
「あいつ?」
「気にするな・・・お前に剣を捧げたというだけで理由になる・・・。」
「むちゃくちゃ気になるって・・・。」
「急げ、時が移る。・・・武運を祈っている。」
ルトガーはシャニーに防寒具を着せ、その場を去った。
(ありがとう、ルトガーさん。がんばってくるよ。)
心の中でそうルトガーの例を言って、シャニーは極寒に羽ばたいていった。


97: 手強い名無しさん:05/08/03 15:54 ID:E1USl4sQ
すいませんまた誤字訂正・・・。
>>96の上から5行目。
×雪と矢まで
○雪と山で

でした。今日は本当に誤字脱字が多くて、せっかくの雰囲気を壊してしまい申し訳ないっすorz

98: 手強い名無しさん:05/08/03 15:57 ID:E1USl4sQ
さらに誤字発見してしまいました・・・。
>>96最終行
×の例を言って
○に礼を言って

この掲示板は書き込んだら最後修正できないところがツライですね。
最初から誤字脱字の内容にタイプしろって? ごもっともですごめんなさい('・ω・`)

99: 23章:信じる心、届かぬ想い:05/08/03 17:49 ID:E1USl4sQ
外はブリザード、たとえ防寒具をしていても体は芯から冷えてくる。まして翼には防寒具なんぞ付けられる訳もない。次第に翼の先端が凍りつき、感覚がなくなってくる。少しでもバランスを崩せば、ブリザードの強風に煽られて失速する。シャニーは何度も翼にファイアーを撃っては先を急いだ。翼を痛める事にはなっても、急がなければ時間がない。

その頃、カルラエ城では当然のごとく、ロイがシャニーを探し回っていた。
「どうした?」
「あ、ディーク。またシャニーがいないんだ。どこに行ったか知らないかい?」
「ああん? またあいつはふらふらと・・・。便所にでも行ってるんじゃないのか?」
「いや、探したけど見当たらなかった。」
「お、おい・・・お前女子便所に入ったのかよ。」
「しょ、しょうがないじゃないか・・・。」
そこへルトガーがどこからともなく現れた。
「・・・シャニーは・・・一人でエデッサヘ向かった・・・。」
「な、なんだと?! てめぇ!知ってて何故止めなかった!!」
「そうだよ。何で彼女一人に向かわせたんだよ!ベルンは彼女を狙っているはずなのに!」
「俺達がどう言おうと・・・あいつは行っただろう。ああなってしまったら、あいつは止められない。
それに俺は・・・あいつに剣を捧げた身だ。あいつの行動にとやかく口出しする権利はない・・・。」
「だからって何で一人で行かせたんだ! しかもこんな吹雪の中で!」
「・・・ディーク。」
「なんだ!?」
「あいつは・・・もうお前が思っている程・・・子供ではない・・・。もう立派な騎士だ・・・。
きっとうまくやる。そう信じてやれ・・・。」
「無責任な事言うんじゃねぇ! ・・・あいつ・・・一人で行くなんて俺達を信用してねぇのか・・。」
「いえ・・・あの子は私達を信頼しきっているからこそ、一人で行ったのだと思います。」
ティトだった。ティとも妹の異変に気付きつつ、様子を見ていたのであった。
「どう言う事ですか、ティトさん。」
「本当のところ、あの子が無茶をする時は、気を許した仲間がいるときだけなんです。だから傭兵に出ていた時も、知り合いがいない時はそこまで突進していなかったんです。“無茶しても仲間が助けてくれる。だから多少無理してでも前に出て、戦闘の早期収束を狙う。そのほうが被害を抑えられる”と、まだ団員が成長していなかった騎士団設立当初に言ってました。その時は仲間を過信しすぎてはいけないと諭しましたが、今回の事もきっとそうだと思います。」
「あのやろう・・・帰ってきたらとっちめてやらねぇとな・・・。」
どうする事もできなくて、ロイ達は仕方なくそれぞれの部屋に戻る。誰もがシャニーの無事とブリザードの止む事を祈りつつ。


100: 手強い名無しさん:05/08/03 17:50 ID:E1USl4sQ
「ディーク・・・。」
「なんだよ。」
「あいつを止められず・・・すまなかった。説得はしてみたが・・・あれは止められないと悟った・・・。」
「あぁ、あいつは一度言い出したらやらないときがすまない性質だからな。・・・俺も注意不足だった。
頼むから無事で戻ってきてくれよ・・・これ以上ロイに心痛をかけないでくれ・・・。」
「ふっ、・・・お前が一番心配しているのではないか?」
「ば、バカ言え・・・。」
「ロイも心配こそしていたが、彼女ならきっと大丈夫だと言っていたぞ。・・・あいつはシャニーのことを心底信頼しているようだ。ただ、何の相談もなしに行ってしまったことに対しては怒っていたがな。」
「そうだ。信頼しているなら相談の一つぐらいしてもよかったじゃねぇか。」
「・・・相談すれば必ず思いとどまるように言われる事が分かっていたからあえて相談しなかったのではないか? どうせ行く気を曲げないのなら相談して余計な心配をかけたくなかったんだろう・・・あいつなりの信頼の示し方だと思っておけ・・・。」
「ルトガー・・・てめぇやけにあいつの肩を持つな、洗脳でもされたのか。」
「ふ、そうかもしれんな・・・。あいつの目を見て話をしていると・・・なにか押されるものを感じる時がある。あんな華奢な奴に男の俺が押されそうになるときがある。・・・それほどあいつの言葉には気がこもっている。何か強く信じるものがなければ、ああいう風にはならない。・・・信じるものもなくただ人を殺してきた俺には、それは眩しかった。・・・ディーク、お前もどうせ同じだろう。」
「ルトガー、おまえ・・・。 ・・・確かに、俺もそうかもしれねぇ。ロイにしろシャニーにしろ、その考えは甘すぎる理想だ。だが惹きつけられる何かがある。特にシャニーは見習いの頃から面倒見ているし、俺にとっては妹みたいな存在だ。心配になって当然だろ。」
「・・・それだけ付き合いが長いなら、どんな奴か分かっているのだろう。・・・信じてやれ。
ロイが心配しながらも大丈夫といえるのは、あいつという人間を知っているから、信頼しているからだろう・・・。」
「あぁ、信じてやるさ。帰ってきたらみっちり絞ってやるけどな。」
「ふっ・・・。」
「しかしルトガー、てめぇも変わったな。」
「ふん、俺は今も昔も変わらん・・・。お前が変わったんだろう。」
そういうとルトガーは闇に消えていった。
「へっ、照れるんじゃねぇ。お前は昔に比べて確実にイイ奴になってるぜ。俺から見ればな。
・・・必ず生きて帰って来いよ、妹分。俺はお前を信じているからな・・・。」

101: 手強い名無しさん:05/08/04 10:27 ID:E1USl4sQ
やっと王都エデッサに到着した。しかし、このまま歩いていればたちまち見つかってしまう。
何とかして変装し、まずは騎士団と接触を試みなければ・・・。しかし、短い髪では髪型はなかなか他のものには変えられない。この時ばかりは髪形をスーパーショートにした事に後悔した。
「しょうがない・・・今回もあの手を使うしかないかな・・・。」
ブリザードですこぶる視界が悪い。街中を徘徊するベルン兵を襲って難なく衣装は手に入れた。
問題は騎士団の居場所だ。危険覚悟でベルン兵達が屯する酒場に入った。
話しかけて打ち解けるのは得意だ。敵と打ち解けるというのは少々妙な気もするが、今の情報源は他ならぬベルン兵以外にないので今回は我慢だ。
「それにしてもマチルダ様も今回の手柄で五大牙の長になることは間違いないな。」
「へぇ、そんなに強い人なんだ。」
「おまえなぁ、いくら新入りでもそういうことは自分で調べて置けよ。綺麗だし強いし、憧れちまうぜ・・・。まぁ、もうちょっと優しいという事ないんだがな。」
「そういえば残った騎士団は殲滅しなくていいのかな。」
「今はエデッサ郊外のかつて神将器があった洞窟にいるとの情報だが、劣悪種の寄せ集めなんか放って置きゃいいんじゃね? ままごと騎士団って嘲笑されるほどの弱小らしいじゃねーか。おまけに唯一要チェックのシャニーとか言う団長も行方不明らしいしな。・・・だけど惜しいぜ。そいつの首をマチルダ様に持っていけば一気に参謀クラスに昇進できるかもなのによぉ・・・。」
「(劣悪種・・・?)あなたってもしかしてハーフ?」
「あ? 当たり前だろ。お前は違うのかよ?」
「い、いやぁ、あたしは竜の血が濃いからさぁ、よく竜族と間違えられるんだ(適当なこと言っておこう・・・)。」
「へぇ、不幸な奴だな。それだとベルン軍の中でも肩身が狭いだろうに。ところで、何のハーフなんだ?」
「えっと、人と神竜かな。」
「ほぉ、マチルダ様と同じか。しかも竜の血が濃いと・・・もしかしてお前、翼あるか?」
「え、うん・・・あるよ。」
「へぇー、なぁ、ちょっと見せてくれよ。な?な?」
「いいけど・・・変な事しないでよ?」
「ほぉ・・・なんか傷だらけだけど、案外綺麗なもんだな。マチルダ様のは間近で見るなんて事出来ないからなぁ・・・。」
「え? マチルダ・・・様にも翼があるの?」
「おい新入り。何も知らねぇんだなお前は。マチルダ様もお前と同じ混血具合なんだよ。あの人が空中から繰り出す槍はめっちゃ強力だぞ。正直惚れるぜ。・・・もう少し優しければな・・・。」
「へぇ、んじゃ見回り行ってきます!」
「おう、気をつけろよ。外は視界が悪いから襲われないようにな〜。」
そうか、皆はあの洞窟にいるのか。やっと皆に会える。急ごう。でも・・・ハーフの人たちも仲間には凄く温かいんだな・・・。どうして種族が違うというだけであんな酷い事ができるんだろう・・・。
複雑な心境になりつつも、シャニーはかつてマルテが眠っていた洞窟を目指した。

一方その洞窟では、敗走した騎士団員達が奪還のタイミングを見計らっていた。
「ラルク・・・そんなに気を落とすなよ。」
「あぁ・・・しかし、今でも信じられない。まさかあいつが・・・。」
「私だって信じられませんよ。まさかあの人が私たちを売って敵に付くなんて・・・。あの時ラルクさん達が助けに来てくださらなければ、私達は全滅でした。」
「だが、事実は事実だ。受け止めるしかない。我々はもう後がない。后妃様が処刑される事になってはこの国は終わりだ。何があっても取り返さなければならない。」
「しかし、俺達はどう戦えばよいのだ。竜騎士はともかく、あんな空中から魔法を連発されたら俺達騎馬兵ではどうする事もできないぞ。天馬も風の魔法には弱いしな。俺達騎士団には弓兵もあまりいないし・・・。八方塞だぜ。」
「何かあるはずだ、何かが・・・。」
その時ふと、ラルクは外に人の気配を感じて槍を取った。
「何者だ!」
そこに現れたのは・・・ベルン竜騎士だ!

102: 手強い名無しさん:05/08/04 10:28 ID:E1USl4sQ
「!? もう俺達の居場所がかぎつけられたのか。おのれ・・・!」
ラルクが渾身の力でベルン兵に向かって槍を振るう。ベルン兵は焦って避けた。
「うわっ 何するのよ!!」
「黙れ! 一人でのこのこ挑みに来るとは命知らずな奴。ここで叩き斬ってくれる!」
「ま、待ってよ! あたしだよ!」
そういってその竜騎士は焦って顔を隠している兜を外した。
「!? シャニー様!! 公女様であるとは知らず、ご無礼極まりない行動、何卒お許しください!」
「・・・あのさぁ、先輩。いい加減その呼び方やめてよ。昔みたいにシャニ坊でいいじゃん。」
「だ、団長!! よかった・・・ご無事だったんですね。・・・おかえりなさい。」
「うん、心配かけてごめんね。・・・ただいま。」
シャニーはいつもの笑顔で団員に帰還の挨拶をした。泣き出す団員もいる。
「ちょ、泣かないでよ! ・・・それより、帰ってきて早々だけど、皆には謝らないといけない・・・。」
シャニーは国王の事や自分の身に起こったことを全て隠すことなく話した。
「ごめん・・・あたしがついていながら・・・守るどころか・・・。」
「そうか・・・陛下は・・・。シャニー様のせいではありません。そう御自分をお責めにならないでください。」
「いや・・・あたしが弱かったからいけないんだ。あたしがあいつらを一掃出来てさえいれば・・・。」
「私は団長だけでも帰ってきてくれてうれしいですよ。皆団長の帰りを心待ちにしていました。ルシャナさんも・・・。」
「あれ、そういえばルシャナは?」
「・・・。」
ルシャナの名前を出した途端、皆下を向いてしまった。・・・シャニーにはなんとなくわかった。
「あいつが・・・俺達を裏切ったんです・・・。敵の陣形まで突っ込む振りをして天馬騎士団を誘導したんです。俺達の到着が後少しでも遅れていたら、あのマチルダとか言う敵将の超魔法で微塵になるところでした・・・。」
「・・・嘘だ。あいつが・・・あのルシャナが裏切るなんて嘘だ!」
「落ち着いてください。俺だってあいつが裏切るなんて今でも信じられない。・・・前日までシャニー様が帰ってくるまでは絶対に持ちこたえると言っていたんですから・・・。でも、事実は事実なんです。」
「そうだね・・・。受け止めるしかないね・・・。それじゃ、お姉ちゃんは? 急がなければ処刑されてしまうんでしょ?」
「后妃様は城の牢に囚われています。我々も一刻も早く救出しようと策を練っているのですが
なにぶん敵将が天使のごとく空を舞い、魔法を撃って来るものですから、手出しできない状態で・・・。」
「そうか・・・わかった。あたしがお姉ちゃんを助けてくる。先輩達はそれまでここで待ってて。」
「そんな! そんな危険な事を承知するわけには行きません。」
「大丈夫、あたしならこのまま変装して中に突入できるし、いざとなれば戦える。それに・・・今まで大変だったのに、何もしてあげられなかったから、あたしなりの罪滅ぼしだと思って、ね?」
「でも、いくら強くても団長一人じゃ危険です。団長まで失いたくありません! せっかく、せっかく帰ってきてくださったのに・・・。団長が死ぬなら私達だって・・・。」
なんか、どこかで聞いたような台詞だ・・・自分がベルン城から逃げる際、ゼロットに言った台詞だった・・・。あたしの事をそんな風に言うほど慕ってくれている人がいるんだ、尚更頑張らないと・・・。
シャニーはゼロットへも兼ねて、団員にこう言い放った。
「あたしも陛下から直々に位を戴いた神聖騎士。その名に恥じない働きをするまでだよ。」
「でも・・・!」
「だーいじょうぶ! あたしを信じなさいって、ね?」
団員に笑いかけた。団員達は、団長の決意は変わらないことはわかっていたが、それでもあえて説得しようとしていた。この笑顔が見られなくなると危惧していたのだ。皆を光に導く、その笑顔を。
「公女様。くれぐれもご無理をなさらないように。我々も時を待って突撃します。」
「もーう・・・。先輩。公女って言葉、使用禁止ね。それじゃ行って来る!」
そういうとシャニーはまたブリザードの中に消えていった。しかし、騎士団には確実に士気が戻りつつあった。ロイ様達が到着するまでは絶対に諦めない・・・いや、到着を待たずとも、奪還をしてみせる・・・。
ラルクの槍を握る手に、一掃力がこもった。例え恋人を殺す事になっても、もう後戻りは出来ない。


103: 24章:決別のノクターン:05/08/05 11:19 ID:E1USl4sQ
エデッサ城・・・連合王国成立以降、毎日のように出入りしていた城だ。中の構造なんて誰よりも知っている。牢獄の手前の中階にちょっとした宝物庫があるのも知っていた。
「ドロボウは良くないけど、こんな時にそんな事言ってられないしね〜。」
ポケットからおもむろにたからの鍵を取り出し、宝箱を開けていく。いい武器入ってないかな〜。
いくつか開けているうちの美しい刀が出てきた。
「これは・・・倭刀じゃん。使ったことないけど・・・まぁいいか、一応剣だし。」
倭刀を拝借し、いざ姉達が幽閉されている牢獄へ向かう。・・・無事でいてよ。
「見張り、交代します。」
「お、ありがとう。助かるぜ。」
いとも簡単にベルン兵をその場から退ける事に成功する。姉が・・・いた。

その頃マチルダの元にも情報が入ってきていた。
「マチルダ様、我らの同志が何者かによって殺害されました。」
「なんですって? どういうことか申してみてください。」
「は、吹雪の中を見回りに出ていた巡回兵が、何者かによって殺害されておりました。」
「そうですか・・・そのものの亡骸を私に見せてもらえますか。」
マチルダは部下共に死体安置室に向かった。
「これです。」
「これは・・・剣でやられてますね・・・。相当切れ味の悪い剣だが急所をやられている。
かなりの腕の持ち主ですね・・・。」
「いかがいたしましょうか。」
「エトルリア軍はこのブリザードで進軍できるわけがありませんね。・・・イリア王宮騎士団の中で、指折りの剣使いはいませんでしたか?」
「はっ。入手している情報だけですと・・・団長のシャニーだけですね。しかし、その団長もギネヴィア様によって葬り去られたと聞いておりますが・・・。」
「ふふふ・・・。面白い事になってきましたね。飛んで火に入る夏の虫とはまさにこのこと・・・。
総員、戦闘態勢につけ。私は幽閉してある后妃をマークする。・・・会うのが楽しみですよ。蒼髪の天使・・・いや、ナーガ殿・・・。」

「お姉ちゃん、あたしだよ! あぁ、無事でよかった・・・。」
「!? シャニー?シャニーなの? あなたがどうしてここに?」
「どうしてって、助けに来たに決まっているじゃん。・・お姉ちゃん・・・ごめんなさい。あたし、謝らないと・・・謝って許してもらえることではないけれど・・・。」
シャニーはゼロットのことを話した。ユーノは驚きを隠しきれずにいたが
「・・・シャニー。」
そう言いながらシャニーの頭をなでた。そして涙を拭いてやった。
「あなたが悪いわけではないわ。あなたはがんばったのよ? それに、まだあの人が死んだという情報はないわ。きっと生きている。信じましょう。私はあなたが無事に帰ってきてくれただけで十分嬉しいわ。よかった・・・本当に・・・。これで・・・アリスをあなたに託せる・・・。」
「お姉ちゃん? それどういうこと? アリスは?ここにはいないみたいだけど。」
「・・・私達は、明日の早朝に処刑されるわ。アリスだけは、事前にルシャナに頼んで私達の生家に逃がしてもらったの。・・・あなたとあの子がいれば、またイリアは生まれ変われるわ。」
「ルシャナが? で、でも、そんな!? い、嫌だよ。一緒に逃げようよ。今からこの鉄格子何とかするからさ。お姉ちゃんも逃げよう!」
「・・・ダメよ。エデッサ市民も他の場所に幽閉されているの。私が逃げれば換わりにその人たちが殺される。そんな事になっては・・・あの人に合わす顔がないわ。」
「でも! お姉ちゃんが殺されちゃったら、イリアの民の心の拠り所がなくなっちゃうよ! 皆お姉ちゃんの事慕っているのに。あたしだって・・。」
「シャニー、泣かないの。だからこそ、あなたにアリスを託すのよ。アリスが大きくなるまで、あなたが色々世話してあげて・・・こんなことを頼めるのは、あなたしかいないのよ。お願いわかって。」
「嫌だ嫌だっ! 皆で一緒に逃げればいいじゃない! あたしが何とかするから!」
「私がこの牢から出た瞬間、市民のいる部屋が水に満たされるという仕掛けが施されている、そうあの女将軍が言っていたわ・・・。私を助けるのならば・・・皆を助けてあげて。お願い、シャニー。」
「嫌だよ!お姉ちゃんも・・・一緒じゃなきゃ・・・嫌だよ・・・。」
妹も追われている身。ここに長居することは得策ではない。いつものように甘えさせてやりたいが、今回ばかりはそうは行かない。下手に期待を持たせるより、突き放すことが、その人のためになるときもある。ユーノはシャニーを初めて平手打ちした。


104: 手強い名無しさん:05/08/05 11:20 ID:E1USl4sQ
「!?」
「シャニー! 分からず屋は嫌いよ? いい? やりたいことを、やるべきことに優先させてはダメ!
今のあなたがしなければならないことは、一刻も早くここから脱出して、市民やアリスを助ける事!
いいわね? もうあなたは子供じゃないの。皆を引っ張っていかなければならない立場なの。
いい加減私に甘える事は卒業しなさい!・・・あなたが・・・大好きだから・・・信頼しているから・・・こんなことを頼むのよ・・・。お願い・・・わかってちょうだい・・・。」
ユーノは唇を噛んで妹に泣き顔を見せないようにはしているが、シャニーには見えてしまった。
そして、ゼロットに言われた事をユーノにまで言われた。成長していない自分・・・。
「お姉ちゃん・・・。わかったよ・・・。あたしがアリスたちを助ける。お姉ちゃんがいなくなっても
あたしが皆を引っ張っていく・・・約束するよ。・・・絶対に。」
「ありがとう・・・シャニー・・やっぱりあなたは私の宝よ。」
「でも、最後に一つだけお願い聞いて。」
「あたしを・・・あたしを抱いて・・・昔みたいに頭なでて。」
ユーノは無言でシャニーに腕を伸ばし、なでてやった。鉄格子をはさんでだが、姉の、妹の心は互いに以心伝心していた。
「確かにあたしは・・・考えが甘すぎたのかもしれないね・・・。」
「いいえ、あなたはなたのままでいればいいわ。あなたのその優しさや元気さに助けられている人は数え切れないほどいるわよ。私もそうだしね。・・・さ、もう行きなさい。団長、後のことは任せましたよ?しっかりやってくださいね?」
「はい・・・っ。后妃様の遺言どおり、必ずやイリアを復興して見せます。・・・どうか・・・私を見守っていてください・・・。」
その時後ろから声がした。
「ふふっ、素晴らしい姉妹愛ね。じっくり拝見させていただきましたわよ? 劣悪種でも美しい芝居が出来るものですね。ねぇ、ルシャナ。」
そこに立っていたのは、冷笑する女性と・・・ルシャナだ!
「初めてお目にかけます。私はベルン軍北方司令官マチルダ。以後お見知りおきを。蒼髪の天使殿。」
「あなたがマチルダ・・・。お姉ちゃんをよくも! この場でケリを付けてやる!」
「おっと、あなたの相手は私ではなくてよ。ユーノ后妃、明日あなたを処刑するのはこの娘よ。」
そういうとマチルダ下がり、代わりにルシャナが前に出た。
「ルシャナ! あんた、何で裏切ったのよ!裏切ったって聞かされても、もしかしたらって信じてたのに!」
「滅びると分かっている王族に仕えて自分の身も滅ぼすなんてバカらしいじゃない。それにね・・・私はあんたが憎かった! こんな間抜けで頼りないあんたが、何で団長なのよ!今回だって肝心な時にいなくて。・・・おまけに団員はそんなあんたばかりを慕ってた。・・・裏で私がどれだけフォローしてたかも知らずにね!」
「ル、ルシャナ・・・。それは・・・ごめん。」
「謝ってすむ事じゃないよ。・・・まぁいいさ。ここであんたの首を取れば、私はマチルダ様に位を保障してもらえる。こんなことになった事に罪悪感を覚えるなら、大人しく私の槍に貫かれることね!」
ルシャナの目はホンキだ。だが、どこか輝きがない気もする。
「ルシャナ・・・あんたがあたしのことをそんな風に思っていたなんて・・・。ごめん・・・。でもあたしもここで倒れるわけには行かないんだ。お姉ちゃんと約束したんだから!」
「お姉ちゃんお姉ちゃんと・・・ドコまで甘ちゃんなんだか・・・。まぁ、いずれはあんたと対立する日が来ると分かってた。それが今日さ。実力の伴わないママゴト団長なんて必要ないんだよ!」
ルシャナがシャニーに向かって槍を振り回す。シャニーは攻撃できずに避けるだけだった。
槍が頬をかすめ、赤い筋が顎まで達した。やはり、ルシャナは、あたしを本気で殺すつもりだ・・・。
「ほら?どうした?何で剣を抜かない。私を倒す実力がないから諦めたのか!?」
「あたしには・・・あんたを殺すなんて出来ないよ・・・。小さい頃からずっと一緒で、嬉しい事も悲しい事も分かち合ってきたあんたを・・・自分の剣で殺すなんて・・・。」
「甘い事言ってるんじゃないよ! あんたができないなら私がしてあげる。そこを動くんじゃないよ!」
そういってルシャナがシャニーの胸に向かって渾身の力で突撃した。
あぁ・・・あたしは親友に殺されるんだ。数年前姉に槍を向けられたときも、自分は何も出来ずにディークさんに後衛の陣まで引っ張られて戻されたっけ・・・。甘い甘いって言われても・・・あたしにはできない・・・でも・・・死ぬわけにも行かない!
シャニーはとっさに倭刀を引き抜き、槍を弾いた。


105: 手強い名無しさん:05/08/05 11:21 ID:E1USl4sQ
「やっとやる気になった? ふふ、あんたは本気になると目つきが変わるからすぐ分かるよ。
ほら、早く見せてみてよ。蒼髪の天使と謳われるほどの実力をさ! あんたとは何度も手合わせしてたけど、あんたはいつも本気じゃなかった。・・・あたしに実力を見くびってさ!」
「ルシャナ、それは違っ」
「違わないよ! あんたはわざと手を抜いていたんだ。目つきで分かるって言ってるだろ!?」
「ルシャナ、一体どうしたの。昨日まであんなにシャニーのことを心配していたのに!」
「后妃様・・・もう私は、あなたに仕えている騎士じゃないんですよ。あなたも明日、この槍で貫いて差し上げますよ。今までの私を断ち切るためにね!」
ルシャナはまたシャニーに向かって槍を振りかざした。やはり弾く事しかできない。頭では分かっている、やらなければ、やられる・・・。でも、やはり自分には・・・。
避けながら頭の中で葛藤を繰り返しているうちに、とうとう槍を避けきれず、脇腹を貫いた。
「!!うぎゃぁっ。」
傷口を押さえて膝を突いた。足元がすぐに赤く染まった。
「ふ、他愛もないわね。そのまま止めを刺してあげる。大好きなお姉ちゃんと、あの世でどうかごゆっくり。」
「ルシャナ! やめて! お願いだから・・・。」 ユーノが絶叫した。
槍が自分に向かってくる。一番信頼していた親友に殺される・・・。でも・・・ここで死ぬわけにはいかない・・。シャニーは何か頭で吹っ切れるものを感じた。
「!?」
ルシャナは槍を弾き飛ばされてしまっていた。しかも、シャニーの姿が見当たらない。焦って探していると、急に後ろから気配がした。殺気に満ちた恐ろしいほどの気配を。
ルシャナが振り返ると、空中から凄まじいスピードで自分に向かって急降下してくるシャニーの姿があった。その目は・・・いつものあの穏やかで天使のような目つきではなく、鬼神のごとく鋭いものだった。ルシャナは防御するまもなく、あっという間に急所へ数回攻撃を叩き込まれてしまう。
「うが・・・っ」
ルシャナは為す術なく倒されてしまう。そしてそのままシャニーは窓から飛び出していった。

「逃がしませんよ!」
マチルダが気を集中する。周りのエーギルが吸い寄せられ、風がざわめく。
「神の慈悲をお受けなさい!セイクリッド・ブレス!」
凄まじい勢いの風が、無数の刃となってシャニーを切り刻む。そして神の息吹が、一気に舞い上げられたシャニーを地面に叩き付けた。
「ふっ・・・やはりこの程度か・・・。」
土煙が収まってから見ると、シャニーは既に空中にいて手をこちらに向けていた。
「な?! あれだけのエアブレイドを翼に受けてまだ飛べるというのかっ?」
逆に神速の光の槍がマチルダに向かって放たれていた。マチルダは間一髪結界を張って直撃は免れた。
「く、何という魔力だ・・・流石はナーガ神の意志を継ぐ者といったところか・・・。」
再びその場を見ると、もうシャニーの姿はなかった。
「・・・うまく逃げましたね。もう少し実力を拝見したかったところですが、
この体もあまり役には立ちませんでしたねぇ。
まぁ、もう少し頑張ってもらいますよ。幸い倭刀の逆刃で気絶させられただけのようですしね・・・。」
マチルダはルシャナを部下に担がせ、部屋を去った。
そこ頃シャニーは自分達の生家に向かって全力で飛んでいた。自分の怪我を治すことも忘れて。
・・・お姉ちゃん、あたし絶対約束果たして見せるからね・・・だから・・・あたしやアリスをずっとずっと、見守っていてね・・・。ユーノや大切な親友との決別に、シャニーは溢れる涙を止める事ができなかった。


106: 手強い名無しさん:05/08/05 16:49 ID:E1USl4sQ
そのころロイ達も吹雪の中を進軍していた。
「おい、ロイ。流石にこれ以上吹雪が激しくなったら一旦進軍を止めたほうがいいんじゃねーか?」
「だめだ。これ以上到着を遅らせるとユーノ后妃様たちの命が危ない。シャニーだって信頼はしているが万が一のことがある。一刻も早く合流しなければ。」
ロイは焦っていた。シャニーは向こう見ずなところがある。いつもは一緒にいて危なくなったら自分が助けていたが、今の彼女は一人。大切であればあるほど、そばにいないと心配だった。
「それはわかっているがな。焦って兵に被害が出ては、エデッサ奪還に支障が出る。」
「そうだね・・・。でも、できるだけ早く到着したい。アレン、後どのくらいでエデッサまで到着できそうだい?」
「は、このままのペースで進軍できれば後2日程度で到着できると思います。」
「ロイ、そんなに心配ならアタイが見てきてやろうか? アタイだって地図さえあれば・・・。」
「ロイ様、私も天馬を駆れば偵察ぐらいはできます。この吹雪の中では飛竜も飛べないはず。どうか私にもその役目をお与えください。
「いや、危険だ。君達が危険な目に遭えばアレンやクレインが心配する。こんな心配をするのは僕だけで十分だ。
本当に・・・苦しいぐらい不安なんだ。彼女に万が一のことがあったらと思うと、食事も喉を通らない・・・。」
「ロイ様・・・。」
「ごめん。僕がこんな顔をしていたらダメだね。 きっと彼女のことだ。うまくやってくれているね。
さぁ、急ごう。一刻も早くエデッサに行こう。視界が悪いというのは相手も同じ。しかも飛竜が飛べないとなればこちらにむしろ有利だ。」
「おい、クリス・・・。」
「ん、なんだい。ルトガー。あんたからアタイに話しかけてくるなんて珍しいね。」
「敵将を・・・お前はよく知っているのだろう。残らず話せ・・・。」
「なんだい、ぶしつけな。まぁいいよ。マチルダはうちらの世界でも騎士団の団長をやっていたよ。辣腕ぶりに憧れる部下も多かった。ただ、部下を道具のように扱うところ以外はね。」
「・・・。アゼリクスも・・・同じような事をしていたな。」
「あぁ、マチルダとアゼリクスは、何か妙なプロジェクトを実行しようと裏で画策していたんだ。それが向こうの王家にばれてマチルダは追放されたのさ。」
「その妙なプロジェクトというのは・・・あのエトルリアでも妙な竜石か・・・?」
「その可能性が高いね。アゼリクスは完全に頭のいかれたマッドドクターさ。マチルダは更に危険さ。あいつには特殊な力があってね・・・。」
「特殊な力・・・?」
「あぁ。あいつはハーフの中でもアタイらと同じ神竜の血がかなり濃く流れてる。で、妙な力を持っているのさ。」
「・・・もったいぶらないで話せ。」
「あいつは、人の心の負の部分を増長させる力を持っている。そして最後には・・・自分の言いなりにさせてしまうのさ。」
「そいつは厄介だな。」
ディークやロイも話に混じる。
「あぁ、人の絶望感や怨恨感を増長させるのが特に得意らしい。・・・厄介だよ。人を操ることができるなんてね。」
「人を操って自分は安全なところからのうのうと高みの見物か。・・・いけすかねぇヤロウだな。」
「・・・シャニーが危険だ。急がなければ。シャニーは人を疑うということを知らない。もし裏切ったという騎士団員もマチルダの術にかかっていたならば、シャニーが危ない。」
「・・・。その可能性が高いと思います。イリアでは裏切りはタブーという精神が子供のころから叩き込まれていますから。仲間を裏切ってまで保身を図るものは騎士団にはいない。・・・そう信じたいです。」
ティトも妹が心配でならない。できることなら妹のところに飛んでいってやりたかった。
「よし、やはり前進あるのみだ。到着次第総攻撃をかける。ティトさん、あなたはエデッサに到着次第、騎士団と接触して合流の誘導をしてくれ。君なら騎士団の皆も歓迎してくれるはずだ。」
「はい、任せてください。」
「ディーク、ルトガー、いつも通り頼むよ。ただし相手は魔法もある。深追いはしないでくれ。」
「任せろ。そんないけすかねぇヤロウはそのでっかち頭叩き直してやるぜ。」
「アレン、相手は空中戦を挑んでくるはずだ。アタイがあいつをひきつけるから、あんたはフォロー頼むよ。」
エデッサでの戦まで後二日。それぞれの思いを胸に秘め、王都へ向かうのであった。


107: 手強い名無しさん:05/08/05 17:26 ID:LSyfL8cE
>>106
乙です
読んでばかりの俺ですけど・・

書いたやつはあるんだけど割り込むとごっちゃになるので却下

108: 手強い名無しさん:05/08/05 22:47 ID:9sML7BIs
他の人のものも読んでみたい・・・。
長編描くと>>107さんみたいに自粛されてしまう人もいるんですね。
まだ1部も佳境に入ったところで先が長いですし、私が別スレ作って出たほうがいいかもしれませんね。

・・・ところで、読んだ感じどうですか?
同じ書き手の方の意見を是非聞いてみたい('・ω・`)

109: 手強い名無しさん:05/08/05 23:09 ID:rkwM5A.g
うーん途中から読み始めたのでちょっといまいち内容がつかめませんが
たしか最初のギネヴィア王女が部屋に閉じこもりで司祭に任せているというのは紋章2部のハーディンと似たようで良いですし
シャニーとかが神竜の血をひいているという意外な設定にも少し驚きました

俺のは魔物とかが混じって1部は外伝風になっていますし
2部は主人公が生存していてヒロインがさらわれているという状況ですし
別な竜が2名(匹?)混じってますし

大丈夫です。今のままでもかなりいけると思います

110: 手強い名無しさん:05/08/06 00:11 ID:gAExt6/c
感想ありがとうございます。
やはり他の方の物も読んでみたいので別スレ建ててみます。
スレを乱立するのもあまり好ましくはないとは思いますが・・・。
今困っているのはシャニーを前面に出しすぎてロイが隠れすぎているところかな・・・。
主人公よりヒロインが目立つというのも新鮮でいいか♪('-'*)

111: 手強い名無しさん:05/08/06 13:21 ID:K3FJOMDU
SS書き兼読み手としての感想&持論

一応、長編とのことなので作品の長さ云々は十分承知。
ただ、自分はSS投下するとき、まず最後まできちんと読んで貰った上で
レス頂きたいのでとにかく読みやすくて短く纏めるように心掛けている。

長編の利点は広いフィールドで思い切り自分のやりたい事をやれるので書いていて凄く楽しい。
まず自分が楽しむこと、面白いと思える文章を書くのが一番大切だから。
一方で「長い」ということはそれだけ作品としての「濃さ」を維持するのが困難になる。
事実、自分は一気に読んだので細部まで完全に見ている訳じゃない。申し訳ない。
テキストファイルの500KBで文庫本一冊だから、まぁ勘弁して欲しい。

読者は書き手以上には正確にキャラの心情や情景を深く理解することはできない。作品に感情移入しない、愛さない。
自分以外の文章を見るとよく分かると思う。このギャップをいかに埋めるかが腕のみせどころといえるのだけど、
これが長文においては実に難しい。かといって短くするのも難しい。て、これは俺の愚痴だ。スマン。
例えば「・・・。」の中身とか。自分はSS書きだから注目するけど、普通の読者には結構スルーされる。悲しい。
ここぞというときに大事に使おう。

誤字脱字の指摘はそういわれれば、そうなの?という程度。そう思われるのも悲しいかもしれんが。
でも致命的ではないので問題ない。きちんと投下前に確認してると思うのでガンガレ。
あと白状すると、自分は封印は7章までしかやってない。攻略本は持ってる。
それ故に、ほぼ二次創作というよりオリジナル小説として楽しんでいる。
だからオリジナルキャラのクリスとかに違和感を感じない。むしろ魅力を感じる。けどゲームをやり込んでる人ほど、
オリキャラやオリジナル超展開に違和感を感じやすいはず。実は結構勇気いるぞ。面白いので大丈夫だと思うけど。

まぁ一番大事なのは自分が楽しんで書くということだ、。その上で読み手を楽しませることができたらもっと楽しい。
その努力を怠らずガンガレ、超ガンガレ。
続き楽しみにしてます。


112: 見習い筆騎士('-'*) 56J2s4XA:05/08/06 14:26 ID:E1USl4sQ
おお! 熱いご意見と的確なアドバイス感謝です。
私はもちろん楽しんで描いてますよ。
>読者は書き手以上には正確にキャラの心情や情景を深く理解することはできない

そうですね。私も如何に自分の考えが読者に伝わるか、言葉を選ぶのに四苦八苦する事があります。
書き込んでからもちゃんと自分の思惑通りに認識されているか心配になるところがあります。
特に私の場合は会話中心なので、誰が何を喋っているか、というところでこんがらがってしまうと
全く話を読めなくなってしまうのでそこはかなり気をつけています。
「・・・」は確かに使いすぎかもしれませんね。ルトガーの話す場面だとそれがあった方が分かりやすいかな、という簡単な理由で使ってしまっているのが原因でしょうか。

>二次創作というよりオリジナル小説として楽しんでいる

このような稚拙な作品で楽しんでいただけてなりよりです。
そうですね。まず設定がぶっ飛んでいますからね。
目指したものが>>4でも書きましたが『白雪姫とシンデレラを組み合わせた時みたいにスゲー展開』ですから(笑)
特に2部はキャラも殆どオリジナルキャラなので、より読み手の方との認識の違いを埋めていく努力が必要だと再確認しました。
>続き楽しみにしてます。
ご期待に沿えるよう日々精進していきたいと思います。ありがとうございましたm(_ _)m


113: ロードアンドペガサス RoH8fs26:05/08/07 14:29 ID:M0Q9VbmA
ここまで来たのかと思う程進んでいて何か少々昔を思い出します。

3 : 手強い名無しさん :05/04/08 15:39 ID:E1USl4sQ
封印のあとの話(イリア中心)欲しい人いる?

5 : ロードアンドペガサス ◆RoH8fs26 :05/04/09 15:52 ID:BL4LnRWU
>>3
実はホスィイ自分 orz

この二レスで始まった小説もかなり長く続いて・・・
もう感無量です(つД`)゚・。
これからも頑張ってください。

感想についてですが、
・ かなり意外な展開がある
・ 上手いことオリキャラを使っている
の二つが凄く印象的です。
他にも細々とありますがキリがないので・・・
良いところがあれば悪いところもあると言うように少々人によっては、
FEから外れてるとか色々言われると思いますが・・・
まぁ、そこが嫌いな人がいるなら好きな人もいると思って下さい。
さいごに一言、
ガンガレ!超ガンガレ

114: 手強い名無しさん:05/08/07 16:42 ID:E1USl4sQ
激励ありがとうございます。
貴方が>>5のレスを下さっていなかったらこの小説もなかったと思います。
そう思うと貴方には感謝してもしきれません。
これからも応援・ご指摘よろしくお願いします。

115: 手強い名無しさん:05/08/09 21:07 ID:hQSSVvFw
まだかなぁ・・・
待っています。続き頑張ってください

116: 手強い名無しさん:05/08/09 23:07 ID:9sML7BIs
>>115
ごめんなさい。他の方の物も読んでみたいし
まだまだ先が長いので別個スレ建ててそちらに移住しました。
別個スレ建てるほどに面白い作品かどうかというのは分かりませんが、楽しんでいただけるように頑張りますので
別スレでご指摘や応援よろしくお願いします。

別スレ

【長編】ファイアーエムブレム〜双竜の剣〜【小説】
http://bbs.2ch2.net/test/read.cgi/emblem/1123296562/l50

117: 手強い名無しさん:05/08/10 00:45 ID:mINGRtOQ
>>116
あーそちらに・・・ではたまに来た時に読ませていただきます

さーどういう風に書いていこう?

118: 手強い名無しさん:05/08/10 22:38 ID:mWaRFA92
1章胎動
「これであらかた片付いたな」男がそう言うと剣をおさめた
「ああ、後はこの奥にいる魔竜だけだ」赤い髪をした少年がそう言うと
「あんたは先に行くといい。俺は後で追いつく」男はそう言った
「そうか。じゃあルトガー後でまた」
「ロイも充分気をつけろ」
そう言うとロイという少年は奥へと歩いて行った
「・・・魔竜イドゥンか」

「ここが封印の神殿か・・・」
2年前忍び込んだ封印の神殿。そこはルトガーにとっては関係の無いものだったがその時ばかりは違った
「確か国王の姿が見えるはず・・・」そう思って見てみるとベルン国王の姿があった
「手に持っているあの赤い珠・・あれがファイアーエムブレムなのか」
ベルンの至宝、ファイアーエムブレム
それはある剣と人の封印を解く鍵とも言う
「光ったな・・・」王がエムブレムを台座にはめると剣が取り出され棺の中から女性が出てきた
「誰だ・・・?あいつは」

あの時から2年。ベルンに故郷を滅ぼされたルトガーにとってベルンは復讐の的だった
だが、魔竜は復讐の的ではない。ルトガーにとって魔竜は関係無いものだったのだ
「・・・あれから2年にもなるがあいつは誰なんだ?」と思いながらもルトガーは奥の方へと歩いていった
そして竜殿の最深部に辿りついたルトガーが見たものはあの時の女性だった
「!?・・・まさか、あいつが魔竜だと言うのか・・・?」
何も考えずただ単に命令された事に従う女、まさにそうだった
「ルトガー知っているのか?」
「いや、俺は見た事があるだけだ・・・。詳しくは知らん」
ロイに聞かれたが見た事のあるだけの人を詳しく知っている人は誰もいない
「ロイ様・・・」
「やるしかないさ!この封印の剣で!!」
ロイの恋人であるソフィーヤが回りの竜共を一掃。そして・・・「あなたに『哀れみ』を感じて救おうとしたハルトムートの思い、ここで終わらせるわけにはいかないんだっ!!」封印の剣に光が走り、一閃。勝負は一瞬だった
そして魔竜イドゥンは元の女性の姿に戻った
「な、なんだ!急に崩れ始めたぞ!」
「ロイのお兄ちゃん・・・」
「わかってるよ。あとは僕に任せてここから出るんだ!」ロイがイドゥンを助けようと振り向いた瞬間
「ロイ、ここは俺に任せて早く行け」
「え!?ルトガーなんで君が・・・」
「いいから早く行け!瓦礫の下敷きになりたいのか!」
「わかった。でも、必ず戻ってきてくれよ」
「ふっ・・・言われなくてもわかってる」ロイや仲間達は出口へと向かって行った
「・・・お前が本当にあの時の女なのか?」悩みながらもルトガーは出口へと走って行った
丁度彼が走りだした瞬間に天井から瓦礫が降ってきた



119: 手強い名無しさん:05/08/10 22:38 ID:mWaRFA92
外に出るとロイから一つの言葉が発せられた
「ルトガー、君に頼みがあるんだ」
木陰にイドゥンを休ませると
「何だ?言ってみろ」
「君にイドゥンをナバタの里まで送って欲しい」
ナバタの里は神竜の住む唯一の場所。生まれは知らないがそこへ行けば誰かが知っていると思ったからだ
「いいだろう。同行する」そうしてルトガーはイドゥンを連れてたった一人で出発した

それから2ヶ月後・・・
「・・・どうして私の側に?」
「約束だからだ」
「・・・本当に?」
エトルリアとミスル半島の丁度国境付近の森にいた二人は初めて会話をした
恐らく『心』を奪う術が弱まっているのだろう。ルトガーはそう思った
「・・・いいから黙って来い!」ルトガーがイドゥンの壊れそうな腕をとろうとした瞬間
ガサガサと音がしノシノシと音がした
「!・・・戦闘竜か!?」
「・・・違う」イドゥンがそう言うと草むらから見た事の無い生き物が出てきた
「なんだこいつ!?」
「・・・剣を」イドゥンがそう言うと剣を投げて渡した
「ちっ・・・はぁ!」
ルトガーが胴体を斬り走ると生き物は動かなくなった
「何なんだ一体・・・」
疑問をしている場合ではないと思い、イドゥンを連れ里へと急いだ

ナバタの里につき『心』を奪う術をといてもらい長老にその事を聞いたルトガーはこう回答された
「1000年以上も昔のことじゃが・・・これと同じようなことがあっての。詳しくは知らないのじゃが・・何か嫌な予感がするんじゃ。ちょっと調べてみてくれんかの?」
もう「復讐」は終わった。だからルトガーは
「悪いがもう力を貸す気にはならない」
そう言うとイドゥンが
「お願い。あなただけが頼りなの」
イドゥンがそう言うのは初めてだった。さすがのルトガーもそれに驚いたのだろうか少し姿勢を崩したが
「・・・・・・いいだろう。そこまで言われるのであれば仕方が無い」
そう言い、承諾した

120: 見習い筆騎士('-'*) 56J2s4XA:05/08/11 08:53 ID:gAExt6/c
続き楽しみにしてます。
お互い頑張りましょう。
さて、今日は告別式だ・・・。

121: 手強い名無しさん:05/08/12 14:43 ID:Inist.Uk
>>120
ありがとうございます

では続きです

2章 天馬のような「もの」

ルトガーとイドゥンはまずナバタの里にある書物室から何か役立つような書物は無いかと探した
そしてある名前が浮かび上がった
「ティアマットか・・心当たりは無いか?」
「いいえ・・・知らないわ」
「そうか。仕方が無い。明日にでもエトルリアへ出発して調べるとするか」
「・・・そうね」
ティアマット、その名前に聞き覚えがあるとルトガーは感じていた
「おねぇちゃん、おにいちゃん!」
幼い誰かの声がした
「ファ?」
「うん!そうだよ!」
ファ、神竜族の少女でロイの恋人であるソフィーヤの妹である
「・・・フェレから帰ったところなのか?」
「うん!ソフィーヤおねぇちゃん、ロイのおにいちゃんと一緒でしあわせそうだったよ!」
「そうか。それは何よりだな」
「・・・ロイ?」
「・・・話していなかったな。お前を助けるために封印の剣で斬りつけたやつだ」
「そう・・それで気になっていたのね・・私」
もう夜が近づいていた
「夜か・・・もう寝るか?」
「ええ、そうしましょう」
「明日エトルリアへ向かうから支度は・・」
「大丈夫。ローブは持っているから・・」
「そうか。俺はここで寝る。何かあったら呼んでくれ」
「ええ、お休み・・ルトガー」
そうしてソファーの上で寝る事にした

だがルトガーは気になっていた
あの時の生き物はバレンシアという大陸にいるという話を聞いた事があるからだ
「・・だとすると何か起きているのかも知れないな」



122: 手強い名無しさん:05/08/12 14:43 ID:Inist.Uk
そして夜が明けた
「・・・ん・・・朝か」
ソファーから出てイドゥンとファの寝ている部屋へと行った。が・・・
「!・・・取っ手にひびが」
剣を構え扉を蹴破ると
「イドゥン!ファ!」
「ルトガー!」
人影が見えるが誰かはわからない
「ここは俺に任せて外へ行け」
「でもルトガーは・・」
「いいから行け」
「はい・・・」

見覚えのある人物だった。相手が斬りかかると紙一重で避けた
「・・・鈍いな。だが、剣を弾けば問題ないだろう」
斬り返しをした直後、ルトガーは自分の剣で相手の剣を弾き床に叩きつけた
(この剣は・・・)
「しまった!剣が!」
声に聞き覚えがあった
「フィルか?」
「え?」
丁度日が入ってきたので間違い無く
「フィルだろう」
「ルトガーさん?」
「西方三島へ向かったと聞いたが・・・」
「いえ、途中で変な生き物に襲われてそれで・・」
「何!?その生き物は?」
「きゃーー!ルトガー!」
遠くからイドゥンの呼ぶ声がした
「ちっ・・フィル行くぞ!」
「はい!」

かけつけるとそこにはイドゥン一人だけと天馬のような生き物がいた
「っ・・・天馬!?」
「いや、違うな。目の色が死んだ天馬みたいな色をしている」
「ルトガー・・」
「イドゥン、そこから動くな。はぁ!」
ルトガーが斬りかかったが寸前に相手は避けた
「早いな。こいつ・・」
天馬がフィルに向かって角を突き出して体当たりをしてきたが難なく避けた
「・・・壁にひびが入った・・・!」
「食らったら一たまりもないな。だが、もうここで終わりだ」
そうルトガーが言うと
「青竜斬」
見えたのはルトガーが剣をかざして天馬の反対側に出ただけだった。だが次の瞬間に天馬は倒れた
「イドゥン。ファは?」
「・・・あっ、私とはぐれて・・でも外に居ると思うわ」
ただぼーっとしていたイドゥンの手を取り一緒に歩き出した
幸いファは外の水辺で遊んでいたのですぐに見つかった

「フィル。すまないな」
「いえ、いいんです。まさかあんな生き物がいるなんて・・・」
竜を倒していったフィルも動揺を隠せないでいた
「これからどうするんだ?」
「西方三島に渡ろうと思います」
「そうか。達者でな」
ルトガーはフィルに別れを告げた
「行くとするか・・」
「ええ・・行きましょうエトルリアへ」
「おにいちゃん、待って。私も行く!」
「ファ?」
「別に良いでしょう、ルトガー」
「・・・そうだな」
ルトガーとイドゥンとファの3人はエトルリアへ向かった

123: 手強い名無しさん:05/08/12 16:30 ID:UhKS4qG.
年上なのに妹?

124: 手強い名無しさん:05/08/12 21:55 ID:e3pJpo4I
いえ、ソフィーヤの妹だからそう書いたんですけど・・・
何か指摘箇所がありましたらどうぞ

125: 3章 白竜と黒竜:05/08/14 00:57 ID:mMO89drY
ナバタの里から出発して2週間。ようやくアクレイア郊外まで近づいた
来るまでに色々な生き物が襲いかかってきたがルトガーの剣とイドゥンの魔法で難なく片付いた
「ここがエトルリア王都アクレイアだ」
「・・・高い壁」
「さすがにこの高さでは天馬も入れない。イドゥン、これに着替えろ」
「・・・どうして?」
「お前は人に恐れられているからだ。下手に姿をみせては事が大きくなる」
「わかった。向こうに行って着替えるわ」
人通りのない袋小路へと入って行きファとルトガーが誰もこないか見ていた
「おまたせ」
「よし、図書館へ向かう」

3人はエトルリアの王立図書館で何か文献は無いかと思い
「古い本を探すんだ」と言って探し始めた

「おにいちゃん、この本はどう?」
「これか?・・・・・・破損がひどいが関係ないな」
「そっか。じゃあ他の探してくるね!」
「ふう・・・あらかた探したな」
探し初めて1時間が経過していた
「ルトガー・・・これ」
「?これは」
「開かないのだけれど・・・何かしら」
「・・・・・・開いたぞ」
「えっ?」
「これは・・・・・・探していた物だな」


126: 3章 白竜と黒竜:05/08/14 00:57 ID:mMO89drY
3人はその本を詳しく見ていった
「放浪の剣士ルギスが砂漠で迷っていて倒れていた所をたまたま通りかかった女性レルアに助けられる・・・その女性はこの砂漠にある神竜国ルークリュの王女で敵対している帝国の黒竜王ティアマットに対抗できる力を持っている・・・」
「ティアマット・・・あの時の名前?」
「そうだろうな。そして居場所が帝国に突き止められて黒竜軍の前に一夜にして滅亡・・・だがルギスの助けによりレルアとわずかな民達は生き延びたという。レルアは黒竜と戦う決心をし、ルギスも彼女と共に戦う事を決意した。そして白竜ティレルアから竜族の神器と魔剣を授かったレルアとルギスは黒竜を封印したという・・・か」
「ねぇねぇ、封印っていう事はいつかまた出てくるんでしょ?」
「・・・だとしたら今復活しつつあるのか?」
「あの生き物達については書かれて無いの?」
「・・・あった。魔物、黒竜の復活が近づくにつれ生まれる邪悪な生き物と書かれてあるな」
「・・・それじゃあ今黒竜の復活が迫っているという事?」
「そうらしいな・・・あと魔物についてこう書かれている。魔物をこの世から消し去るには魔石を破壊せよさすれば魔の力は失われんと」
「その魔石を破壊すれば・・・」
「ああ、魔物はいなくなる」
「ねぇねぇ、探しに行こうよ」
「そうだな、それを破壊できればいなくなるからな・・・」

ルトガーは出てから
「一つ寄っておきたいところがあるんだが良いか?」
「ええ、良いわ」

127: 手強い名無しさん:05/08/14 01:14 ID:mMO89drY
「ここだ」
「ここ?どこかのお屋敷みたいだけど・・・」
「まぁ、見てろ」コンコン
「郵便屋さんですの?」
少し高い声がする
「もう、あの人から手紙がこないのでさびしいですのに・・・」
「悪かったな。手紙をよこさなくて」
「え・・・?ルトガー!?」
「相変わらずだな。クラリーネ」
久しぶりの友人との再会だった
「わざわざ私に会いにきてくださいましたの?嬉しいですわ!」
「わざわざは余計だ。それに、旅の途中でよっただけだ」
「どういうことですの?」
「・・・それは長くなるが良いか?」
「ええ、ここで立ち話も何ですし中に入ってくださらない?」
「良いだろう。イドゥン、ファ、先に入ってていいぞ」
「お邪魔・・・します」
「え?イドゥンって・・・」
「それも中で話そう」

ルトガーとイドゥンはこれまでにあった事を話した
「そうかい・・・そんな事が」
たまたま仕事が休みで家にいたクレインもその話を聞いた
「信じられないとは思うが・・・事実だ」
「でも、私達より前にそんな事が起こってたなんて・・・」
「うん。で、ルトガー、その魔物とやらは今世界中にいるのかい?」
「恐らく、な。他の地域に行って無いからまだ何とも言えない状況だ」
「そうか・・・これからどうするんだい?」
「西方三島へ渡る。ミルティン王子なら何か知っているかもしれん」
「そうか、じゃあ道中気をつけてね」

ルトガー達はアクレイアを出発し、西方三島へ渡った


何だかわかりにくくなってるかも・・・わかりにくかったらすみません

128: 4章 西へ:05/08/15 19:34 ID:TW3kzNZI
「風・・・」
潮風がイドゥンの髪をなびく
「どうした?」
「砂漠で感じた風とは違う・・・」
「それはだな・・・」
波が立って船が揺れる
「きゃっ!」
「よっと」
立っていたイドゥンが倒れそうになったのでルトガーは押さえた
「・・・海って不思議ね」
「何故だ?」
「風が吹いて、鳥達が舞い、波は生きているかのように動く・・・」
哲学的な事を話し始めた
「・・・それで不思議に思うのか」
「ええ、陸と海ではまるで違うの」
「そうか。陸と海・・・サカにも同じ事が言える。草原を海と例え、山を陸と例えればまるで違うのと同じだ」
「ルトガーはサカの人なの?」
「ああ、そうだ」
ルトガーはサカの部族の出身だったのでベルンが攻め込んだ時のことは覚えている

「っく・・・」
「ルトガー逃げて!」
「お前を見捨てて逃げれるか!?」
「私は大丈夫・・・だから・・・逃げて!」
「・・・・・・くそ!」

「ルトガー?」
「・・・昔のことを思い出していた」
「えっ?」
「ベルンに攻められた時の事だ。あれからもう1年になるのか・・・」
「ごめんなさい」
「気にするな。お前があやまるようなことじゃない。俺の力不足だったんだ・・・」
「ルトガー・・・」
「明日には島につくだろう。それまで休め」
そう行ってルトガーは甲板から降りた
「・・・あなたは失う事を恐れている。その事があなたを追い詰めているの・・・?」
イドゥンはルトガーの思いを感じていた・・・

129: 仲村哲也:05/08/16 01:20 ID:Wsoci5LI
婚礼
動乱が終結して2年がたった。
ここはオスティア。春のさわやかな風が吹く市街地は、いつも以上に活気にあふれていた。
「いよいよリリーナ様も結婚か、ヘクトル様もあの世で喜んでるだろな」
「しかも、相手がフェレのロイ様とくりゃあ、リキアも豊かになっていくだろうよ」
「ロイ様ばんざ〜い」
「リリーナ様ばんざ〜い」
一方ここはオスティア城リリーナの自室。
リリーナは純白のウェディングドレスに身を包み、窓の外から見える空を眺めていた。
「あれから、2年がたつのか〜。みんな今はなにをしてるんだろ」
動乱が終わると仲間達は自分達の故郷に帰っていったり、再び旅に出て行った。
わかっているのは、クレインがティトと結ばれリグレ公爵家を継いだこと。
エルフィンが招待を明かし、エトルリア国王に即位したこと。
シャニーが新生天馬騎士団の団長になったこと。
イリア王国が建国したことだ。
「リリーナ、もうすぐロイ殿が到着するわ」
「わかったわ、お母様」
部屋を訪ねた母、フロリーナにそう答えると、
「そして私も・・・」
胸の鼓動が高まるのを感じ、リリーナは部屋を出た。



130: 仲村哲也:05/08/16 02:15 ID:Wsoci5LI
祝福
「ロイ様!」
「リリーナ様!」
バルコニーに二人が姿をあらわすと、民衆から嵐のような大歓声が起きた。
ロイは動乱後、正式にフェレ候となった。17歳となったロイからは少年の面影は消えうせ、英雄の貫禄につつまれていた。
リリーナも盟主となってからは、大人としての魅力が出ていた。
二人は民衆にささやかに手を振った。
「二人とも、おめでとう」
「セシリアさん、お久しぶりです」
「ありがとうございます」
エトルリア代表として出席した恩師に二人は笑顔を見せた。
「セシリアさんの方も、もうすぐなんじゃないですか」
「え・・、ち、ちょっとロイ!」
愛弟子の質問にセシリアは頬を赤らめた。
セシリアとパーシバルの婚礼のうわさは、すでにロイたちの知るところとなっていたのだ。
「まあ、これからは大変だと思うけど、二人で力を合わせてこのリキアを導いていくのよ」
「はい、ありがとうございます」ロイはセシリアに一礼した。
「ロイ様おめでと〜」
「まあリリーナ、そのドレスよくおにあいですわ」
シャニーとクラリーネも婚礼の儀に出席していた。
「こんなかっこいいだんなさんで、リリーナしあわせだね〜」
「シャ、シャニー。からかわないでよ〜」
リリーナは思わずりんごのように顔が真っ赤になった。
「2年ぶりだね。クレイン将軍は元気かい?」
「ええ、ティトお義姉様となかよくやってらっしゃるわ。でもロイ、お兄様はいまは軍人じゃなくて文官でしてよ」
同い年の四人は話に花を咲かせていた。
「ロイ様、おめでとうございます」
「みんな相変わらずね」
ウォルトとスーが輪に入ってきた。ウォルトはともかくスーも貴族の衣装を身にまとっている。
「ウォルト、もうラウス候なんだから様はよせよ」
「スーもその格好が似合ってきたわね」
この話の内容がわからず、クラリーネはたずねた
「えっ、どうゆうことですの?」
「ああ、言うのを忘れていた。ウォルトとスーは結婚して、新ラウス候になったんだ」
「え〜知らなかった」
ロイの答えにシャニーは驚いた。
ロイとリリーナの婚礼の半年前、すでに結婚をすませていたウォルトは、動乱時の功績をたたえられ、ラウス候となったのである。
「そうでしたの。お祝いできずにざんねんですわ」
「今日はおめでた尽くしだ」
シャニーの掛け声に、六人は笑った。

131: 仲村哲也:05/08/16 23:57 ID:ipa88ZQs
不服
ロイ達の婚礼が済んでから数日後。
ここオスティアで諸侯会議が始まろうとしていた。
今ひとりの諸侯がオスティア城に一個小隊をひきいて到着した。
彼の名はアラフェン候ヘンゲル。23歳。動乱後、領主となった前アラフェン候の弟である。
「ふん!この私が、何ゆえ女に従わねばならんのだ」
謁見の間までの回廊を歩いているとそう吐き捨てた。
亡き盟主ヘクトルの跡取りは女。それゆえ盟主は務まらないがために、リキア第二の都市アラフェンを治める自分こそ盟主にふさわしい。
彼はリリーナが盟主となった今でもそんなことを考えを持っていた。
ヘンゲルは、パラディンとしての技量は高いが、欲望が強く自分の思い通りにならないと気が済まない男であった。
彼は女を自分の“遊具”として考えており、その遊具が自分の上に立っていることに憤りを覚えているのである。
その為、彼女が考え出す政策を、徹底的に批判しては毒を吐いて帰っていくのである。
新生リキアがいまだまとまりを欠いているのはこのためである。
「ヘンゲル殿!いい加減にしないか!今は民と共にあることが大事なんだ。貴殿には、新しいリキアの礎を築く気はないのか」
「妻をかばう夫の戯言など聞きたくはない。私を盟主にすることが礎を築くには欠かせぬことだ」
会議が始まるや否や、ロイとヘンゲルが口論を始めた。
「二人ともやめてください。今は口論をしている場合では・・」
「ふん。ウォルト殿、貴殿にも問題があるぞ」
矛先を変えたヘンゲルの言葉の意味がわからず、ウォルトは疑問に思う。
「貴殿は清らかなリキアの地に、汚らわしいサカの獣の血を引き入れたのだ。サカの女を妃にするなどと、動乱で頭がくるわれたのか?」
「!・・貴様っ!!」
スーのことをけなされウォルトは今にも飛びかかろうとする。
「私はこれ以上付き合いきれん。失礼する」
そういうと彼は踵を返し、臣下と共に去っていった。

部屋に戻る回廊で、ロイはリリーナに語りかけた。
「ごめん。また会議を無駄にして・・」
「ううん、ロイのせいじゃないわ。それよりもウォルトのほうは?」
「うん。今度ばかりは相当頭にきたみたいだ。さっきから部屋に閉じこもったままだよ」
「そう・・・」
普段おとなしいウォルトが、あれほどが激高したことは、乳兄弟としてすごしたロイ自身も見たことがない。いや、あれほど言われれば自分だって激高しただろう。

「それにしても、アラフェン候のほうはなんとかならないだろうか。今はひとつとなってリキアを立て直す大事な時期なのに」
「・・・私もまだ力不足なのかな・・・」
リリーナが弱気な言葉を漏らすと、ロイは即座に否定した。
「リリーナは精一杯やっている。力不足なんかじゃないよ」
「うん・・ありがとう」
ロイの言葉にリリーナは救われた気がした。
しかし彼らはまだ知らない。
今リキアが大きく揺れていることを。
その危機は、一人の戦友の手紙で知ることとなる。




132: 手強い名無しさん:05/08/17 01:07 ID:YQs9bzxM
>>131
書くのは良いけど名前をふせてくれ

133: 手強い名無しさん:05/08/17 13:33 ID:10j3wQPY
どうせネタだろ

134: 手強い名無しさん:05/08/17 17:05 ID:vAvLqTx6
5章 西方の王子

「ここから北に行けばフィルがいるはずだ」
「どうして?」
「北は山岳地帯だ。武者修業には持って来いだ」
西方三島についたルトガー達はフィルを探しに行った。彼女は力になってくれるはずだからだ
「おにいちゃん、鳥のおにいちゃんは探さなくて良いの?」
「鳥・・ミルディンか。フィルを探した後でも充分だろう」
エルフィン。本当の姿はエトルリア王子ミルディンである

「ここ?」
「そうだ。この辺りのはずだが・・・」
「・・・おにいちゃん!あれ!」
ルトガーが振り向くと竜がいた
「戦闘竜!?」
「違うわ!これは・・屍竜よ!」
「屍竜?それは?」
「竜が死んだ後何者かによって生み出されるいわば・・・ゾンビよ」
「ファ!」
「きゃん!」
「くっ、山の中ではさすがにつらいな」
「任せて。・・・ライトニング!」
イドゥンの手から光の玉が撃ち出され竜へと向けられた
「ガ・・」
「今だ、失せろ!」
「エルファイアー!」
ルトガーが竜の胸を切り裂いたあと、イドゥンが炎で追い討ちした
「やった?」
「・・・まだだ!」
猛攻を受けながらも竜はルトガー達に牙を向けた
「ルトガー、避けて!」
「?」
「息を吐こうとしているから早く!」
「わかった」
イドゥンがそう言うと竜が息を吐いてきた。二人は吐くのと同時に木の上に上った
「このままじゃ木が持ちそうにないな」
「どうすれば・・・」
その瞬間、剣が竜の目に刺さった
「!?」
「ルトガーさん!」
「フィル!?」
「あなたこそどうして・・・」
「今は話している場合ではない!一気に斬り伏せる!」
「はい!」
ルトガーとフィルは同時に竜に向かって斬りかかった
「これで終わったな・・」
「ルトガーさん、どうしてここに?」
「さっきの竜を見ただろう。あんなのが大陸中に出るんだ」
「えっ・・・」
「フィル、お前の力を貸して欲しい。いいだろうか?」
「私にもよくわかりませんが、人々を脅かすようなものは放っておけない。力になりましょう」
「すまないな、フィル。ところでミルディンがどこにいるか知らないか?」
「ふもとの村にいますよ。会いに行くんですか?」
「そうだ。聞きたい事があるんでな」
「わかりました。案内しますよ」
「頼む。・・・イドゥン?」
「人々を脅かすもの・・・」
「・・・・・・」



135: 手強い名無しさん:05/08/17 17:05 ID:vAvLqTx6
フィルに案内されてルトガー達はふもとの村に行きミルディンのいる家の前へ来た
「ここか」
「はい、ミルディンさーん」
「はいはい、今行きますよ」
扉を開けると詩人のような青年がいた
「王子、久しぶりだな」
「・・・ルトガーですか。どうしたんですか?」
「一つ聞きたい事があるんだ。良いだろうか?」
「かまいませんが・・・どうしてですか?」
「それはこいつを見ればわかるだろう」
「・・・・・・」
イドゥンは黙ってフードを取った
「!あなたは・・・」
「かまわないか?」
「・・・訳ありのようですね。いいでしょう。中に入ってください」

ルトガーはこれまで知った事をミルディンに話した
「・・・なるほど。そのような事があるとは」
「このような事について何か知らないか?」
「・・・聞き覚えがあります」
ミルディンの話によると
1500年程前に国が5つに分かれてありナバタの里あたりにルークリュがあった
人々とは離れて暮らしておりその中で王女レルアは人に興味があり度々砂漠へと行っていた
今のベルンの最東端に黒竜ティアマットがドラグエルナを築いて世界を我が物にしようとしていたのだ
ルギスは現在のサカにあたるところで生まれ育ち自らの力を試すために放浪していたという
その中で二人は出会い、本に書いてあるようなことがあったのだ
「なるほど」
「それでルトガー、あなたはどうするつもりなのです?」
「魔石を破壊し、黒竜を討つまでだ」
「そうですか・・・でも一つ気になる事があります。『魔石は黒竜の元に有り』と」
「黒竜の元に・・・」
「それでも・・・」
「それでもだ。破壊しなければ世界に大きな災いが起こるからだ」
「そうですか・・・これからどこへ?」
「リキアへと向かって行く」
「では気をつけて」

4人は外に出ると
「ルトガー・・・」
「どうした?イドゥン」
「・・・まだ昔のことを引きずっているの?」
「どうしてわかる?」
「私・・・わかるの。誰かを守るために懸命になってるって・・・でもそれじゃルトガーが」
「俺は構わん」
「・・・ルトガー?」
「誰かを守る事、それが今俺にできることだ」
「・・・・・・」
イドゥンはルトガーの事が心配だった。何故あそこまで自分に気を使うのか不思議でたまらなかったからだ
「イドゥンさん、気を落とさないで下さい」
「おねぇちゃん、きっと大丈夫だよ」
「フィル、ファありがとう・・」

誰かを守る事で自分を保つ、それが今のルトガーだった

136: 仲村哲也:05/08/17 17:40 ID:S8kfkuj.
反乱
諸侯会議から二週間後、ここはアラフェン城の王室。
室内は蝋燭の明かりで照らされている。
その室内には数名の影があった。
「万事ぬかりはないな」
「はっ、明日までには準備が完了します」
「うむ。確認を怠るなよ」
部下の報告に男が満足すると別の男が笑みを浮かべた。
「ゲヘヘヘ。ヘンゲルよ。いよいよやるのか」
「ああ。ディアスよ。カートレー軍が参戦してくれること、感謝しよう」
「民と共にあれ、か・・・。平和ボケしてるやつらなんざ敵じゃねぇよ」
男はアラフェン候ヘンゲル。別の男はカートレー候ディアスだ。
ディアスはヘンゲルとは旧知の仲で、戦好きのジェネラルだ。
ヘンゲルから反乱を起こすという話を聞いたときは二つ返事で賛同した。
満足そうな二人とは対照的に、おびえる影があった。
「だっ、大丈夫かなぁ・・。こんなことをして。も、もしうまくいかなかったら・・・・」
「だぁーー!いちいちうるせぇんだよてめえは。だいたいなんでこんな奴がいるんだよ!」
おびえているのは、賛同者のレドだ。
トスカナ候である彼は、知に長けたドルイドで反乱軍の魔道部隊を率いている。
その代わり性格はかなりの小心者で、ディアスは彼を毛嫌いしており計画の中で唯一気に入らなかったことだ。
「そう言うな。あのリリーナに対抗できるくらいの魔道士をつけるのが筋だろう。レドもいい加減に腹をくくれ。自分から賛同した以上、それなりに働いてもらうぞ」
「わ、わかったよ。その代わり約束は守れよ」
約束とは、成功の暁にはオスティアとフェレの領土をくれるというもの。ヘンゲル同様、欲望の強い彼を動かせるには十分だった。
意気の上がるディアス、そして手に入る富に胸躍らせるレドを尻目にヘンゲルは嘲笑する。
(くくく・・。これだから単細胞は扱いやすい。貴様らなんぞ私の“コマ”に過ぎんのだ)
反乱のときは、刻一刻と迫っていたのである。
 
時を二日ほど少しさかのぼる
ここはフェレ城の王室。
その部屋に新たにフェレ騎士団の団長となったアレンが入室した。
「失礼します。ロイ様、オスティアからの使者がこれを・・・」
書状を受け取り、ロイは手紙を開いた。
手紙はリリーナからのものだった。
「あなたがオスティアを発ってから二日ほど後、ルゥから手紙が届いたの。その中でとんでもないことが書かれていたの。「アラフェンではあちこちで戦の準備をしている」と。
 事実かどうかはわからないけど、ルゥの言うことに嘘はないと思うし、チャドに筆跡を確認させたらルゥのものに間違いないそうよ。盟主としてこれは見過ごせない事態なの
 反乱かどうかはこれからその検討をするから、すぐにオスティアに戻ってきて。  リリーナ」
手紙を読み終えた後、ロイは傍にいるマーカスにたずねた。
マーカスは動乱後騎士を引退し、今はロイの参謀となっていた。
「どう思うマーカス。もしこれが本当だとしたら・・」
「可能性はありますな。ヘンゲル殿はリリーナ様が盟主でいることを快く思ってません。反乱の動機は十分かと」
「しかし本当にオスティアが狙いなのかな。いくら兵を集めたところで、オスティアとアラフェンじゃ距離がありすぎる。そこが気になるな」
「しかし、ロイ様・・」
「わかっている。オスティアに戻る。マーカス、後を頼む」
「では、護衛の兵を呼んでまいりましょう」
「いや、その必要はない」
ロイの言葉に、マーカスは異議を唱える。
「ロイ様、何ゆえそのような・・」
臣下の問いに、ロイは緊張した趣で答える。
「妙な胸騒ぎがするんだ。兵は出来るだけここに残して置きたいんだ」
それ以上マーカスは聞こうとしなかった。

その夜、ロイは一人で城を出た。妙な胸騒ぎがしたまま・・・。
                 

137: 旅人:05/08/17 17:57 ID:S8kfkuj.
小休止
え〜突然記載させていただいたわけですが、タイトルは「光ある未来へ」です。
ベルン動乱から2年後の世界を舞台に書かせてもらってます。
ここまでで出てきたキャラクター及び封印キャラの現在の地位です。
ロイ   フェレ候 
リリーナ オスティア候
ウォルト ラウス候
スー   ラウス候夫人
マーカス フェレ家宰相
アレン  フェレ騎士団団長
ランス  同副団長
チャド  オスティアの密偵
シャニー エデッサ王宮騎士団団長
クラリーネ リグレ候妹
クレイン リグレ公爵
ティト  同夫人
ヘンゲル アラフェン候
ディアス カートレー候
レド   トスカナ候



138: 旅人:05/08/17 21:35 ID:ipa88ZQs
再会
オスティアに向かう船の上で、ロイはリリーナからの手紙を思い返していた。
(ヘンゲル殿はどこを狙うつもりだ・・・。素直に考えれば、オスティアを狙うはずだが・・。昨日からずっと胸騒ぎがやまない)
オスティアとアラフェンの距離はどんなに強行軍をかけても馬で七日はかかる。それだけかかればすぐにオスティアの知るところとなり、奇襲が決まる可能性は低くなる。
ましてやオスティア軍はエレブ大陸きっての重騎士団と難攻不落の城を持つ。篭城に追い込んだとしても、援軍が来るまでは持ちこたえることもできる。
反乱を仕掛けるには不利な要素が多い。
ロイは考え込んでいるうちに、背後に人が近づいているのに気づかなかった。
「よう、あんたロイってんだろ」
ロイはその瞬間気を張り詰め、マントで隠している剣に手をかける。
(ヘンゲルの・・・刺客か?)
背後からの凄まじい剣気に、背筋が凍りつく。しかし、なぜか懐かしい・・・。
(もしかして・・・)
そう思い後ろを見た。
自分の丈ほどある大剣を持った緑の髪の剣士。
そして何よりも目立つ顔の傷を見て、かつての戦友だと確信した。
「ディークか・・・、脅かさないでくれ」
「よう大将、ひさしぶりだな」

「そうか・・リグレ候のところに行くとこだったのか」
「ああ、クレインにせがまれてな、二月に一回は顔を見せるようにしてるんだ、そういやお前は何で一人で、この船に乗ってんだ?」
ディークの言うことは最もだ。今や一貴族であるロイが、たった一人でこの船にいることを疑問に持たないほうがおかしい。
しかしロイは話すことができない。いかに信頼しているとはいえ、ディークは傭兵である。
すでにアラフェン候に雇われている可能性も否定は出来ない。
ロイが困惑の表情を表すとディークは聞くのをやめた。
「俺もオスティアに用がある。話しは道中で聞く」
そういうとディークは船室に入った。
(ディークには話してもいいかもしれない・・・・)
ロイはそう思った。もしディークがヘンゲルの刺客なら、背後を取られた時点で命を奪われている。
ロイは船室に戻った。そして翌日の日中、船はオスティア領の港町バドンについた。

139: 旅人:05/08/18 00:45 ID:wN2Fkp12
驚愕
オスティアまでの街道でロイはディークにこれまでの経緯を話した。
「なるほどな、アラフェンでやたら傭兵の勧誘があったのはそのせいか」
「えっ!ディーク、まさか君は・・」
「ば〜か安心しろ。俺はやつらの手先じゃねえ。もしそうだったら船でおまえを殺ってる」
「す、すまない。しかしこれで反乱の可能性が高まった。一刻も早く対策を講じないと」
「付き合うぜ、ロイ」
「いいのかい?」
「昔のよしみだ。それに万一のためにも味方は多いほうがいいだろ」
「ありがとう、心強いよ」
「前金でたのむぜ」
二人はオスティアへ馬を急がせた。

二人がオスティア城に到着すると、リリーナを中心に作戦会議が開かれた。
とはいっても少人数で行ったもので、参加者はロイ、リリーナ、重騎士団長のボールス、密偵のチャド、それに契約したばかりのディークの五人である。
「ルゥの手紙が届いてからいろいろさぐりを入れているの。まずは兵力。情報ではカートレーやトスカナも賛同しているみたいよ」
「アラフェンはオスティアに匹敵するくらいの兵を持っているし、それに二つの軍が加わるとしたら、正規兵だけでも1万5千はあるな」
「ディーク殿の言うように、傭兵も沢山集めているとすれば、2万を超える大軍になりますな」
「けっこうな数だな、オスティアが狙われたらやべえんじゃねえか」
ディークの問いにチャドが自身満々に答える。
「心配ねえよ、篭城すればこっちに分があるし、そう簡単にはやられねえよ。でもほかの領土だとちょっとやべえかもな」
その言葉に、ロイは急にものすごい悪寒を感じた。
顔色を変えるロイに気づき、リリーナが気を使う
「どうしたのロイ、顔色悪いわよ」
「・・・フェレを発ったときからずっと胸騒ぎがするんだ。自分の領土が襲われるんじゃないか・・」
苦しむロイを見て、チャドはあわててわびる。
「あっ、ご、ごめんロイ様。変なこと口走って・・」
「いや、いいんだ。気にしてないよ」
「だが、まんざらでもねえ。距離のあるオスティアよりも、親交のあり尚且つ近いところを襲うって事も考・」
「ディーク!いい加減にして!」
苦しむロイに追い討ちをかけるようなことを話すディークに、リリーナが激高する。
「自分の国が襲われるかもしれないロイを、どうして苦しめることを言うの!」
「いや、おれは万が一のことを・・」
「あなたには分からないわ!自分の国の民が苦しめられる領主の気持ちなんか!」
「リリーナ様、落ち着いてください」
ボールスの言葉に、リリーナは我に返る。
「ロイ様をかばう気持ちは分かります。しかし今は口論をしている場合では・・」
「・・・・そうね。ディーク、ごめんなさい」
「いや、俺も言い過ぎた。悪かったなリリーナ、ロイ」
「・・みんな、すまない。でも僕は大丈夫だ。だから・・」
その時、部屋の扉が勢いよく開いた。
リリーナの護衛隊長であるウェンディが、息を荒げながら伝令を伝える。
「リリーナ様、ロイ様、大変です。フェレがアラフェン候の率いる反乱軍に強襲され、壊滅的被害を受けたとの報せが!」
「何ですって!」
「・・・やりやがったか」
報告にリリーナは驚愕し、ディークは歯軋りをする。そしてロイは言葉を失い、呆然と立ち尽くす。
「エリウッド様達はどうなったのだ、ウェンディ」
「エリウッド様及び主な臣下の生死は不明。反乱軍はそのまま進路をラウスにとり、このオスティアに向かっています」
「・・・ロイ」
「・・・可能性がある限り僕はあきらめない。まずはラウスにむかおう!ウォルト達と力を合わせて、反乱軍を倒す!」
現実を受け止め、すぐに冷静な判断をくだす。ロイは己を見失わなかった。
(へっ・・さすが“英雄”だな)
ディークはそう思うのであった。


140: 手強い名無しさん:05/09/30 00:24 ID:YUjjS87.
随分と久々に書きます

6章 竜の血

「イドゥン、足とかは大丈夫か?」
「ええ、斜面が急だけど大丈夫・・・」
エトルリアからリキアへと渡るのには山を越える必要があった
(海路もあるのだが金が足りないとの事で山越えにした)
ルトガーは途中に魔物が出ないかと思っていたが出る気配はなかった
「ここだ」
「ここは?」
「以前、西方へ遠征に行く時この洞穴を通ればわざわざ山頂まで回らずに済むと聞いた」
「それでルトガーさんは崖みたいな所を?」
「そうだ。この方が少々危険だが早いと思ってな」

そうして4人は洞穴へ入っていった

暗いが結構広く途中に景色を望める穴もあいていた
水がポツポツと落ちる音を聞いていたがルトガーは
「待て・・・」そう言うと
「何かいる」

4人は戦う構えをした。その瞬間
「きゃーー!」
「イドゥン!?」

141: 手強い名無しさん:05/09/30 00:38 ID:YUjjS87.
イドゥンが何かに手と足を絡めとられ、上へと上げられたのがわかる
光が少し入ってくるが何かはわからない

「ちっ・・・何だ!?」
「待って、石で照らしてみる!」
ファが神竜石の光で何かを照らした
すると・・・
「これは・・・植物?」
「わっ!危ない!」

「ルト・・ガー・・」
「イドゥン、・・くそ!
フィル、ファを守りながら戦え!」
ルトガーはそう言い放つと植物の魔物に向かって斬りこんでいった
「ファ、側を離れないでルトガーさんを助けてあげて!」
「うん!」
フィルとファは向かってくる触手を切り倒し、焼き払いながらルトガーに向かってくる触手を減らしていった
一方イドゥンは手と足が縛られていて何もできないがルトガーが自分の元へ来ているのをみて少し安心していた
「イドゥン!」
「ルトガー!」
「待ってろ、今叩き斬る!」
剣を構え、彼女を縛っている触手を全部斬り払うと崩れ落ちる彼女を抱きかかえ、フィルのところへ駆け下りた
「フィル、どうだ?」
「どうにもこうにも・・・数は減ってるけど多すぎですよ」
「く・・3人で何とかできるか?」

その時だった
手斧が後ろから飛んできて触手を瞬く間に斬り倒した
「今のは・・・?」
「よおルトガー、苦戦してるみたいだな?」
「ディーク?それにクラリーネにクレイン将軍」
「あなたが向かうと聞いて不安に思ったらこれですもの」
「話をしている場合じゃないよ。あれを倒さないとね」

142: 手強い名無しさん:05/09/30 00:53 ID:YUjjS87.
かつての相棒ディークに仲の良かったクラリーネにその兄のクレインがかけつけてきた

「恐らくあの本体を倒せばいいだろう」
「よし!任せろ!」
「私もやりますわよ」
ディークは手斧を投げて邪魔なものを斬り、クラリーネはエルファイアーで焼き払った
「あれだな。よし!」
クレイン将軍は自慢のミュルグレで植物の本体と思われるところを居抜いた。だが、手応えはあまりない
(斬ったほうが早いのかもな・・・)
ルトガーはそう思うとフィルと共に斬り込んで行くが、硬くて斬れそうにはない
「ち、やはり炎系で焼くしか無いか・・・」
「う・・・ルトガー」
「イドゥン?」
「ごめんなさい」
「もういい、それよりあの本体を何とか炎で焼けないか?」
「・・・もしかしたら竜語魔法で効くかもしれない」
「竜語魔法?」
「詳しい話は・・・後にしましょ」
「そうだな・・詠唱に入れ。クラリーネもフォルブレイズで援護頼む」
「言われなくてもでしてよ!」

全員一気に攻撃に出た
ファはイドゥンの側で邪魔な触手を焼き払って、残りは向かってくる触手を倒して行く

「今、ファ。どいて。・・・みんな下がって!」
イドゥンがそう言うと手から紅蓮の炎となって魔物に向かっていった
「ファラフレイム!」
炎は魔物の本体に直撃し、間も無く魔物は倒れた

「イドゥン、大丈夫・・・じゃないな。オスティアについたらゆっくりと休ませるか・・・」
「ルトガー、あの魔法は?」
「詳しくはわからん。それよりお前達はどうするんだ?」
「ルトガーと一緒に行くよ。あんな化け物がいたら大変だ。僕達も協力するよ」
「クレイン将軍・・・すまないな」

ルトガー達は洞穴を抜けるとオスティアへと辿り着いた

143: 手強い名無しさん:05/09/30 00:55 ID:YUjjS87.
えーとすみません・・・更新しなくて放置しっぱなしで
一段落して落ち着いたので更新していけると思います

144: 7章リキア地方へ:05/10/15 01:25 ID:qK25cVGs
オスティアへ辿りついたルトガー達はまずリリーナに会う事にした
「ここか」
「そうだね」
ルトガーはオスティア城の城門についた
「すまないがリリーナ嬢に会いたいのだが・・」
「お名前は?」
「ルトガーだ」
「ルトガーさんですね。しばらくお待ち下さい」
「あれ?ルトガーさんじゃないか」

後ろから懐かしい声がした
「・・・オージェか?」
「やっぱりルトガーさんだ。みんな揃ってどうしたんだ?」
青い髪のした青年が問いかけた。それに対しルトガーは
「わけは後で話す。リリーナ嬢に会いたいのだが・・・」
「ああリリーナね。あ、君。この人達は親友だからわざわざ通す必要はないよ」
「はっ、わかりました」
「どうぞ中へ入ってください」
「わかった」

ルトガーは何故オージェがリリーナ嬢を呼び捨てして呼ぶのが不思議で問いただしてみると二人は戦いの後結婚してオージェはオスティア領主・・・ではなくリリーナの側近という形らしいと言う事だ
リリーナに会う前にルトガーはイドゥンを休ませる必要があると言い、別な部屋へと連れて行った

「・・・イドゥン、気がついたか?」
「・・・ルトガー?」
イドゥンは疲れているのか顔色が悪かった
「お前はここで休んでいろ。戦った後だ。無理は禁物だ」
「・・・私も行く」
「駄目だ。ここでゆっくりしてろ」
そう言ってルトガーはイドゥンをベッドに横にさせて寝かしたあと部屋を出ていった
「・・・ルトガー・・・」

その後ルトガーはリリーナと会い、話をした
話の前にこれまでに調べた事を話し、事情を説明すると彼は魔物の事や被害など、詳しい事を聞いた
「そう・・・今のところ被害はでていないわ」
「そうか、だが早いうちに破壊するのがいいだろう」
「ルトガー。私にはお手伝いはできないけれどロイを訪ねてみて。きっと力になってくれると思うわ」
「感謝する。リリーナ嬢」
「リリーナでいいわよ。ルトガーはいつもそうなんだから・・・」


145: 手強い名無しさん:05/10/15 01:26 ID:qK25cVGs
今後の行く先はフェレへ行き、ロイと会う事になった
だが連日旅をしているため疲れていたので2、3日滞在することにした

「ふう・・・イドゥン、・・・寝てるのか」
そぉっと彼女の顔を見てみた
「・・・天使みたいだな、かつて魔竜だったのに今は一人の神竜の女性・・・か」
ルトガーはもの思いにふけると
「・・・安心しろ。お前は俺が守ってやる」
そう言ってルトガーは眠りについた


「・・・・・・ルトガー?」
イドゥンは彼が側にいるのに気がついた
「もう・・心配・・ルトガー?」
彼女とルトガーがだんだんと離れてゆく
「ルトガー、お願い行かないで!」
次第に彼女の目には映らなくなった
「ルト・・・ガー・・・」
「何を恐れている・・?」
突然声がした
「だ、誰・・・?」
「我が妃よ、何を恐れる必要があるのだ?」
「き・・・さき?」
「そうだ。我が妃、イドゥンよ」
「・・・あなたは誰なの!?」
「我は黒竜王ティアマット。そなたは我が妃なり」
「・・・・・・来ないで!!!」

ルトガーは大きな声に目が覚めた
「イドゥン!?」
「・・はっ・・・はぁ・・・」
「どうした?何か悪い夢でも・・・?」
「・・・ルトガー」
「・・・少し風にあたる方がいいか」
ルトガーはイドゥンと一緒にベランダへと出た
「・・・イドゥン、どうしたんだ?」
彼女は震えていた
「・・・ルトガー、あなたがいなくなる事は・・・ないよね」
「俺はお前の側にいる。お前を守るためにな」
「ルトガー・・・」
「今は休むといい。2、3日はここは動かないからな」
「・・・私、夢を見たの。あなたが遠くへ行ってしまって私が黒竜の妃に・・・」
「!?」
「ルトガーお願い、約束して。ずっと・・・一緒にいてください」
「・・・イドゥン。お前を守るんだ。ずっと一緒にいてやるよ」

そして夜が更けていった・・・

146: asss:05/10/15 21:26 ID:601lJXN2
次の朝、何の前触れも無く全員消えた

147: 8章休息の日:05/10/16 01:37 ID:xdPffgOI
朝になるとルトガーは町へと向かった
「・・・風景は変わって無いな。まだ半年しかたっていない」
半年前にオスティアで反乱があり、その時ルトガーはロイのリキア同盟軍に所属しており一員として戦っていた
「・・・あれから半年。戦いが終わり2ヶ月か・・・」

「・・・ルトガー?」
イドゥンは目が覚めるとルトガーがいないのに気づいた
「どこへ行ったのかしら・・・」
部屋を出て探しに行った
「・・・・・・」
「あ、イドゥン。目が覚めた?」
声をかけてきたのはリリーナだった
「ええ・・・ルトガーは?」
「ルトガーなら町に行くとか言って一人で出かけたみたい」
「そう・・・私も一緒にいいかしら」
「いいわよ」

ルトガーはいつも通り、闘技場へ向かった
「親父、掛け金はいくらだ?」
「760ゴールドになるぜ」
「よし、じゃあ掛け金だ。相手は?」
「あっちだ」

「ルトガーのことだからきっと闘技場に行ったんでしょうね」
「とう・・ぎ・・・じょう?」
「行けばわかるわ」

148: 手強い名無しさん:05/10/16 01:37 ID:xdPffgOI
「はぁ!だぁ!」
「見て、ルトガーよ」
「ルトガー。どうして戦っているの?」
「ここは腕を磨いたりお金をかけて戦うのよ。もちろん命もかけて戦うからそこは注意だけど降参があるから大丈夫」
「・・・・・・」
「見て!」

「・・・遅い」
敵の攻撃はろくに当たらず
「次で終了だ。・・・・・・七星剣!」
ルトガーが一瞬構えたかと思うとすれ違いさまに斬りつけた
「すごい・・・」
「ルトガーって・・・あんな風だったの?」
リリーナは少し驚いていた。軍で見る彼とは違う姿だったからだ

「・・・次はどこへ行く?」
ルトガーはあてもなしに歩いていた
「イドゥンも連れてくるべきだったか?」
「ルトガー」
「イドゥン?いたのか」
「あなたが闘技場で戦っているの見てたのよ」
「リリーナもか」

3人は公園で話をすることにした
「・・・そう言えばロイはどうしている?ソフィーヤと結婚したと聞いたが」
「えーと今フェレで復興している最中みたい。あ、そう言えばロイって半竜人なんだって。ルトガー知ってた?」
「いや、初耳だ」
「ロイの母さんが竜でその人とエリウッドおじ様の間にできたのがロイなんだって」
「そのことをお前は知っていたのか?」
「ううん、最近よ」
「・・・半竜人」
「どうかしたのか?」
「いいえ・・あの人はまだその血が覚醒していない。もしそうであれば時の流れは遅いはず・・・」
「竜は時が流れるのが遅いからか・・・」

149: 手強い名無しさん:05/10/24 20:23 ID:jU/ZQWrM
おもろいですね
つづき待ってます

150: 手強い名無しさん:05/10/30 01:17 ID:UfcOtkdY
しばらくして昼が近づいていた
「・・・腹減ったな」
「あ、近くに行きつけにレストランあるの。行ってみる?」
3人はリリーナの良く行くレストランへと足を運んだ
「ルトガー何食べるの?」
「そうだな・・・和食はあるのか?」
「和食・・・サカの方のは少しだけど」
「それにしよう。イドゥン、お前は何を食べる?」
「えーと・・・それじゃコーンスープとあとサラダと焼き魚を」
「決まりね。店員さん、私はいつものでお願いしまーす」
「かしこまりました」
注文したものが来ると
「いただきまーす」
リリーナは明るくそういった
「・・・味は悪くないな。この店」
「・・・・・」
「どうした?」
ルトガーは食べずにイドゥンがこちらを向いてるのに気がついた
「・・・不思議な食べ物」
「?」
「ルトガー、彼女サカの料理を知らないから・・・」
「無理もないか。サカに行った時思う存分食わしてやる」

食べ終わるとまた町へと出た
「・・・ルトガー、何か買ってあげたら?」
「俺がか?」
「そ、似合いそうな物があるかなぁって」
「・・・」
身だしなみとかそういうものにうといルトガーは彼女に何が合うか少し考えた
「・・・若い女性、竜、神秘的な感じ、容姿端麗、か」
考えがつくと
「・・・いい店はないか?」
「あるわよ。こっちこっち」

151: 手強い名無しさん:05/10/30 01:18 ID:UfcOtkdY
店につくなりルトガーは竜の形を模したペンダントと指輪を買った
「それに名前を入れてくれ。ルトガー・リルスと」
「わかりました!しばらくお待ちください」
「・・・?」
「で、ペンダントと指輪を買うの?」
「考えたらこれがいいと思ってな」
「6000ゴールドになります」
「丁度だな。これだ」
「ありがとうございました。またお越し下さい」
「イドゥン、着けてみるか?」
「ええ、ありがとうルトガー」


城へ帰るとイドゥンはルトガーにこう聞いた
「ねぇルトガー何故あなたの名前を入れたの?」
「理由が必要か?」
そういうとイドゥンはうなずいた
「・・・お前に忘れてほしくない」
「えっ?」
「戦いが終わればまた旅に出るかもしれないからな。お前には俺の事を覚えて欲しい。知らずに消えて行くのはお前も嫌だろう?」
「・・・私が忘れない?」
「それにお前は竜だ。1000年以上生きる事が普通。俺は人間でせいぜい80年か90年、100年が限界だ」
「そんなっ・・・」
「・・・残酷なものだな。運命や種族というのは」
そう言うと彼は去っていった
「・・・種族?」

その夜、ルトガーはあることを考えていた
「やはり正直に話したほうがいいのだろうか・・・」
ベッドに入るが中々寝付けず、テラスに居た
「いくら俺が神秘的な女性に弱いとは言っても・・・言わない方がいいのか」
振り向いてベッドに向かおうとすると
「イドゥン」
彼女がいた
「・・・寝れないのか?」
「ええ、だから少し話をしようかなって・・・」

「ねぇルトガー、時ってあなたと私では違うの?」
「違うと言えば寿命が違うくらいだろうな。お前はまだ生きて俺は老いて死んで行く。それが普通だろう」
「・・・もし、ルトガーが竜だったら何をしたいの?」
「俺が?・・そうだな、一番大切なものをずっと守っていきたい。それが俺がしたいことだな」
「そうなの?」
「そうだ。・・・イドゥン」
「なぁに?」
「・・・それ、ずっと着けていろ」
「ええ、ありがとうルトガー」

そうして3日後、ルトガー達はフェレへと向かうのだが・・・
その日の朝
「ルトガー、これ」
「これはデュランダル。何故こんなものを?」
「これルトガーが今まで使っていたでしょ、だから渡しておきたいと思って」
「・・・そうか」
「あ、ちゃんと手入れしてあるから大丈夫よ」

ルトガーはリリーナからデュランダルを受け取り、フェレへと向かった

152: 手強い名無しさん:05/11/19 23:53 ID:57hyHuOk
続き待ってます
まったりとぜひ続けてください

153: 9章再会の時:05/12/13 00:41 ID:MDU4aCls
数日してルトガー達はフェレへとついた
「ここがフェレか。来るのは初めてだな」
空を見ると天馬が飛んでいる
「あれはティトだね」クレインが上を見て言う
「ちょっと待った。君達は・・・」
赤い鎧を着た騎士が話しかけて来ると
「ルトガーだ。ロイに会いに来た。相変わらず汗かいているな・・・」
「ルトガー・・・?ああ、君か。城であればこっちです」

赤い鎧を着た騎士に案内されるとフェレ城についた
「どうぞ中へ」
「すまないな」

中へ入り、広間へ案内されると
「ロイ様、客人が参りました」
「お客?」
「久しぶりだな・・・」
「ルトガー!それにみんなも」
「・・・イドゥンもだ」
「・・・?どうして彼女が?」
「わけを話そう」

154: 手強い名無しさん:05/12/13 00:42 ID:MDU4aCls
ルトガーは今まであった事を人とおり話すと
「・・・まさかそんな事が起きているなんて」
ロイは驚いた表情でその話を聞き終わった
「被害が拡大する前に止めなければならないんだ」
「でも、場所はわかっているんだろう?だったら協力して・・・」
「・・・あなた、あの・・・」
ロイの妻であるソフィーヤが不安気な顔をして話かけてきた
「なんだいソフィーヤ?」
「話を聞いていて・・・何だかベルンの方に・・・黒いものを感じます・・・」
「黒いもの・・・?」
「・・・奴は復活しつつあるのか?」
ルトガーは黒いものが何なのか少し感じ
「まだわかりません・・・私にも感じる程度で・・・」
「そうか」と納得した
「ルトガー、私達はこれから魔石を破壊してそれからティアマットを倒す・・・のね?」
イドゥンが何やら心配そうに聞いてきた
「そうだが何か?」
「・・・破壊したとしても倒せるのかしら」
本に書いてあるとおり、あの武器が無ければ倒せないだろう。だが
「心配するな。デュランダルがあるから最悪武器が壊れても何とか倒せるだろうな」
リリーナからもらったデュランダル。前の戦いでルトガーが常に持っていた
人竜戦役の時勇者ローランが使っていた烈火の剣である
「そう言えばお前の親父も使っていたのだろう?」
「その通りだよ」

155: 手強い名無しさん:05/12/13 00:43 ID:MDU4aCls
後ろから声がすると
「父さん、母さん」
ロイの父親エリウッドと母親のニニアンが2階から降りてきた
「調子は大丈夫なの?」
「心配ない、この通り元気だよ。してルトガー・・・と言ったね」
「そうだ」
「ふむ・・・中々良い目をしているな。今日はティア・・・何だっけ?」
「ティアマットですよ、あなた」
「そうだそうだ。話を聞いていたのだが戦うと聞いたよ」
「・・・・・・」ルトガーは黙って聞いていた
「しかしそれで倒せるとは私には思えないな。戦った火竜とも違う存在の様に思えるんだ」
「・・・存在が?」
ルトガーには竜と同じものと感じている
「うむ、何か・・・この世界とは違う何かがね・・・」
「・・・そうか」

昼が過ぎ、ルトガーはイドゥンと一緒に散歩に出た
「・・・ルトガー、さっきの事だけど」
「・・・何だ?」
「もし倒せなかったら・・」
「考えるな」とっさにルトガーは否定した
「その事を考えると勝てるものも勝てなくなる・・・」
「でも私・・・ルトガーの事が心配なの」顔を赤らめてイドゥンは言った
「あなたに死なれたら私・・・」
「イドゥン・・・」ふっと頭から押さえるようにすると
「すまないな・・だが死ぬことは何とか避けてみよう」
「ルトガー・・・」

156: 手強い名無しさん:05/12/13 00:47 ID:MDU4aCls
「母さん、あの二人をどう見る?」
「?どうって・・・」
「何だか二人とも雰囲気が全然違うように思うんだ。まるで昔の君みたいに」
「・・・もしかすると竜?」
エリウッドとニニアンがテラスから二人を眺めて話をしていた
「少なくともそう思えるね。まぁ良いんじゃないか?雰囲気も良いみたいだしね・・・」
「あなたったら・・・」
その頃・・・
「お姉ちゃん!」
「ファ、おいで・・・」
「元気にしてたかい?」
繋がりのある3人。3人とも竜である前に一人一人が人間でもある
「ああいうの見てると家族っていいものだね」
「何だよホームシックか?」
「違うよ。僕にもああいう支えてくれる人がいたらって・・・ね」
「あら兄様。私がいましてよ」
「そうだったね。でもクラリーネには・・・」
「・・・その事は控えてくださらないでしょうか?」
「・・・ごめんね」
この3人も家族同然の繋がり
笑いあい、時には支えあいながら過ごして行く・・・
二人にはそれがあるのだろうか?
二人を繋ぎ引き寄せるものは・・・?
それを知る事がこの旅の目的なのかもしれない
人であるが人と触れる事を恐れるがただイドゥンには心を開くルトガー
竜であるが人に興味を持ち何故と考えたが故に利用され人から恐れられる存在になったがルトガーの事を思うイドゥン
あの戦いから3ヶ月。彼にはある考えがあった
このまま一人で生きるかそれとも共に生きる事を選ぶか
復讐を果たした今、共に生きることは必要ないと感じた
だが今は違う。一人の竜であり一人の女性を好きになってしまったからだ

157: 手強い名無しさん:05/12/13 00:49 ID:MDU4aCls
(果たしてイドゥンは共に来てくれるだろうか?)
ただ、彼女の事が頭に浮かんだ
小さな木の元でゆっくりしている。イドゥンはルトガーに寄りかかるようにして寝ている
「・・・イドゥン」
すーすーと寝息を立てながら彼女はゆっくりと寝ている。いつ魔物が襲ってくるかわからないのに
「・・・まったく、俺も素直じゃないな」
「・・・ルトガー、・・・ずっと・・・いてね」
寝言だ。だがそれは本当に寝言であるのか疑わしいくらいの自然な寝言だった
「・・・ずっとそばに・・・」
「・・・参ったな。おいフィル!城へ行くぞ」
木の上にはフィルが居たのでそう呼ぶと
「あ、はい!ついでにリンゴ持ってきましょうか?」
「そうしてくれ」

城へ着くともう夕方を過ぎていたので夕飯を食べた後、風呂に入った
「ふぅー」
「ルトガー、体洗おうか?」
「頼む」
ロイがルトガーの背中を流していると
「ところでルトガー、彼女とはどういう関係なんだ?」
「どういう?」
「そっ、恋愛とか異性とか」
「・・・お前、いつからそんな考えが」
「嘘はいかんぞ」
風呂の戸を開けてエリウッドが入ってきた
「父さん」
「いいか、女の人は場所と時間を選んで話すんだ。私も・・・」
「・・・まったくあの人ったら」
ニニアンが向かいの話を聞いていた
「ロイ様も・・・元気でなによりです」
「・・・・・・?」
イドゥンは何の話か理解しきれてないようだ
「あ、良いのよ。私達の話しだから」

「まったく・・・体を流すつもりが逆に疲れたぞ」
30分程彼らの話しに付き合わされていた
「今日はもう寝よう」
「ルトガー」
「イドゥン?」

ベランダに二人は出た
「・・・こんな時間にどうしたんだ?」
「ルトガー・・・」
「・・・・・・大丈夫か?何か気になる事があれば言え」
不安気な表情を浮かべて彼女は
「・・・私、あなたの前から消えそうな気がして・・・」
「消える?」
「ええ」
「俺は消えたりはしない。ずっとお前の側に居続けてやる」
ルトガーは否定した
「・・・本当に?」
「本当だ。居続けよう。お前の側に」
「ありがとうルトガー・・・」

翌日、ルトガー達はサカへ向かおうとするが・・・
「ルトガー待ってくれ」
ロイがひきとめた
「なんだ急に」
「僕達も連れて行ってくれないか?」
「家はどうするつもりだ?」
「父さんと母さんがいるから大丈夫。話を聞いて二人で我慢してられなかったんだ」
「二人?」
ロイのすぐ後ろにソフィーヤがいた
「彼女も一緒に行く。大事な人だから・・・」
「わかった。じゃあ向かうぞ」

158: 手強い名無しさん:05/12/13 00:50 ID:MDU4aCls
えーとテストやら旅行やらで忙しかったのですみません・・・
少しずつ更新していくつもりです

159: 手強い名無しさん:06/01/09 23:02 ID:lm3QGbcs
10章記憶の彼方
サカへ向かうこと1週間。ようやくサカに入った
「・・・広い・・・」
髪が風で靡く中イドゥンは言った
「町へ向かうぞ」
近くの町へ向かいそこでどうするかを話し合うことにした
「ルトガー、ベルンへ真っ直ぐ向かったほうが良いんじゃないのか?」
「いや、何か他に資料は無いかと思ってな。もしかするとサカやイリアにもあるかもしれないからな」
ロイとルトガーは話し合っている様子だ
その頃他の皆は
「綺麗・・・」
「何か買ってくかい?」
「・・・それじゃその水晶でできた竜の首飾りを」
「ああ、これね。500ゴールドでいいよ」
「・・・ありがとう」
イドゥンはルトガーに首飾りを買って
「へぇ・・・はじめて見たけど緑が多くてきれいだね。ここは」
「兄様。景色も良いですけど空気もきれいですわよ」
「ま、たまにはこういうところもいいかもな」
クレイン以下3人は町の公園で散歩していた
「で、資料がある可能性が高いということなのかい?」
「恐らくはな。大きい国だからピンからキリまで探せばあるかもしれん」
「うわ・・・それは大変だね」
「人事のように言うなよ・・・」
一段落ついたところでルトガーは町に出てイドゥンを探した
「あいつ・・・どこにいるんだ?」
ただ当てもなく歩き回っていると
「あ、ルトガー」
後ろから懐かしい女性の声がした
「その声はスーか」
「何故ここに?旅の途中?」
「まぁ、そんなものだな」
「そう。村には帰らないの?あそこは・・・」
「スー、それは俺が決めることだ。勝手にしてくれ」
「・・・わかった」
馬に乗りスーは町の外へと去って行った
「イドゥン。どこにいるんだ?」

160: 手強い名無しさん:06/01/09 23:03 ID:lm3QGbcs
「・・・風」
一人草原に出ていたイドゥン。彼女は彼が来るのを待っていた
「ルトガー」
「こんな所に居たのか」
「どうしてわかったの?」
彼に聞いても
「別に歩き回っていただけだ」
「そう・・・あ、そうだ。・・・これルトガーにあげる」
右のポケットから買った首飾りを差し出すと
「水晶でできた竜の首飾りか。お前が作ったのか?」
「いえ、違うわ。お店で売っていたのを買ってきたの」
「珍しいな。サカで水晶が取れるとは」
そう言いながら彼は首に着けた
「うん。似合ってる」
不思議に思ってルトガーはイドゥンを見ていたが二人で町へと戻った

その夜、ルトガーは一人で草原へと出て寂れた村へと向かった
「・・・変わって無いな。あの時から」
そして一つの家へと入った
「ベルンに襲われた時から変わって無いな・・・」
その家はルトガーが家族で暮らしていた家だった。今は家の扉は壊れて、屋根や壁は穴が空いていた
「・・・・・・戻ってきてよか」
後ろから突然音がした
「誰だ!・・・・・・この!」
「きゃぁ!」
外に居た何者かをつかんで投げるとイドゥンだった
「イドゥン!?」
「ご、ごめんなさい・・・」
「何でお前が?」
「クラリーネやロイに聞いたら外に出ていったって言ったからそれで・・・」
「夜は危険だと言っただろう!・・・まぁいい、側にいろ」
「うん・・この家、ルトガーの?」
「何故わかる?心でも読んだのか?」
「えっ。どうしてわかるの?」
前にソフィーヤに腹が減っているのを察知されてわざわざ食べ物を出してもらった覚えがあった
「前にソフィーヤに心を読まれてな。もしかしたらその類かも知れないと思ったからだ。・・・そうだな。心を読むと言う事は人の思い出も読めるということだろう?」
イドゥンは不思議に思ったが
「・・・?ええ。生まれた時まで遡ることができるわ」
ルトガーは少し笑いを浮かべると
「丁度良い。俺の過去の思い出を遡って見てみろ。遠慮は要らない」
「え、えーと・・・それじゃあ・・いい?」
二人は手を繋ぐとイドゥンは詠唱をして二人共瞑想するかのように入った

161: 手強い名無しさん:06/01/09 23:05 ID:lm3QGbcs
(何が見える?)
(今あなたが戦っているのが見えるわ。雪が降っている)
(イリア地方・・・最近の出来事だな)
(ここは・・船の上かしら)
(多分エトルリアから西方へだな。あるいは西方からミスルへか)
(・・・馬?それに女性が・・・)
(クラリーネか。初めて仲間に入った時だな)
(ねぇルトガー、これは?)
(・・村が襲われた時の状況だな)
(・・・ごめんなさい。あ、でも何だか滝に上っているのが見える)
(近くの山だな。あの時何があるか興味津々だったな・・・そろそろ少年時代か)
(うん。一人で何だか木の棒を振っているけれど)
(ん〜多分剣を振る真似をしていたんだな)
(・・・?)
(どうした?)
(・・・これは?)
(・・・・・・何だコレ?記憶にないぞ。生まれた時のは?)
(いえ・・・ここが生まれた時の記憶みたい)
(何だと!?)

「イドゥン、さっきのが俺の生まれた所なのか?・・・じゃあ俺は・・・」
「落ち着いてルトガー。仮にそうだとしてもあなたが人である事には変わりはないわ」
「俺は何者なんだ?人だということはわかった。だが真実は何だ?」
「それは・・・終わったら探しに行きましょう。私もあなたの事が知りたいから」
ルトガーを落ち着かせると二人は町に戻ろうとしたが
「!?」
イドゥンが何か驚いたような声を出すと
「どうした?」
「・・・何か来てる」
イドゥンが指を指すとその先に魔物の大群が迫ってきている
「イドゥン、町に向かってロイ達にこの事を伝えろ」
「えっ!でも・・・」
「早くしろ!奴らは町に向かってきている!」
「う、うん」
急いでイドゥンは町へと走って行った
「・・・来い!」

町につくなりイドゥンはロイに
「大変!ルトガーが・・・」
「ど、どうしたんだ?そんなに慌てて・・・」
「町の外に魔物の大群が来てるの!彼、一人で戦おうとしてるの。お願い、力を貸して!」
「な、何だってー!ソフィーヤ、みんなに伝えて助けにいこう!」
「ええ、ファ!フィルさんにこの事を伝えて!私はクラリーネさん達にこの事を伝えるわ」
「うん!わかった!」
「ルトガー・・・どうか無事で」

162: 手強い名無しさん:06/01/09 23:06 ID:lm3QGbcs
「はぁぁ!!」
ルトガーは魔物共に向かっていき剣で切り払う
「お前らに町を襲わせるわけにはいかん!」
払い抜けると50体前後の魔物が一気に倒れたがそれでもまだ多くいる
「まだまだ!」
ルトガーが交戦していると後ろの方から炎が飛んできた
「よし!・・・当たったな」
「ロイ、来ていたか」
「みんなもすぐに来るからもう大丈夫さ」
「いや、そういうわけにはいかないようだな・・・」
ルトガーの眼差しの先には巨大なドラゴンゾンビがいた
「な・・でかい!」
「ルトガー!」
「イドゥン、魔法で辺りの敵を倒してくれ」
「わかった。気をつけてね・・・」
ルトガーは心配するなと言うような顔をして向かっていった

「一体何匹いるんだ!」
「そんな事言う暇あったら斬りかかれ!」
魔物の数が膨大なのを見てイドゥンは
「・・・ファ、回りを少し見ててくれる?もし魔物が襲ってくるような事があったらそれは倒して」
「うん。わかった!」
「・・・風よ。我が前に立ちはだかる敵を吹き飛ばせ・・・」
「こんのー!」
「・・・フォルセティ!」
イドゥンの回りが風で覆われると辺りに強い風の流れが吹いた
「きゃっ!」
「わわ!何かつかまらないと飛ぶぞ!」
「このまま飛んで奴らを切り伏せる!」
ルトガーは風に身を任せると空中へと飛んで行った
「このっ・・・!」
空中で魔物がバサりと斬られて行く中、地上からも
「!・・・クレインの弓にクラリーネか。これなら効果が続いている間に・・・!」
倒した魔物の死骸を足場にして空中を飛びまわりながらルトガーは剣で斬り続けた
やがて
「ルトガー、ファに乗って!効果が切れるわ!」
ルトガーは飛んできたファにつかまると
「このままあいつを斬る!イドゥン、クラリーネ、炎系の魔法で攻撃しろ」
「ええ、わかった」
「そうこなくてはね」
「封印の剣、その身に受けてみろ!」
ロイが封印の剣で炎を撃ち出すと
「フォルブレイズ!」
クラリーネの魔法で追い討ちをかける
「相手が何者でも、人を傷つけることは許さない!」
「でけぇ図体してボケっとしてるんじゃねぇよ!」
「魔物相手でも僕は立ち向かう!」
フィル、ディーク、クレインがそれぞれ攻撃を仕掛けた
「このー!」
「アポカリプス!」
「はぁ!これでどうだ!」
「ファラフレイム!」
全員で総攻撃を仕掛けた。だが
「まだピンピンしてるぞ・・・」
「くっ・・・ならば!」
ルトガーが斬りにかかったが、不意に敵の尻尾がルトガーに直撃した
「ぐっ・・・!かは」
「ルトガー!」
血を吐いている。それ程重傷なのだろう
「・・・許さない」
「お姉ちゃん?」
イドゥンはポケットから竜石を取り出すと
「私の大切な人を傷つける事は許さない!」
「イドゥン!!!やめろ!!」
竜石が輝き、イドゥンはあの時の姿に変えた

163: 手強い名無しさん:06/01/09 23:07 ID:lm3QGbcs
(止める)
イドゥンは敵に飛びかかるとかみつき、魔法で攻撃した
(ファラフレイム!)
敵の体に直に当て更にブレスで追撃した
(効いてる?)
動きが少し鈍っているのを確認すると爪で首の所を掴み
(・・・受けなさい!)
再びファラフレイム放ちを今度は首に当てた
(・・・止まったかな?)
しばらく様子を見ていたが動く気配はしなかったのでイドゥンは元の姿に戻った
「はぁ・・・はぁ・・・」
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「ごめんね・・ファ。それにみんな」
「・・・イドゥン、まだ魔竜の力が残っているのか?」
「・・・そうじゃない。けれど変化する力は残っているわ」
「何故変化した。事になるだろうと言っただろう」
「でも私が今なってなかったら・・」
「・・・もういい。町に戻るぞ」
「・・・」
翌日、町の住民は外で見た事のないものを見ていた
「これなんだ?」
「知らないよ」
昨晩ルトガー達が戦った跡であった

「魔物の勢力が増大している・・・?」
「多分そうだろうな。急がねばならん」
「あなた、お客さんが・・・」
「誰だい?・・・スー?」
「ルトガー、これを渡しにきたわ」
「この本は?」
「事情は聞いたわ。これ、あなたたちの旅に必要になると思うから渡しにきたの。イリアには河を渡って北へ向かえばすぐよ」
「そうか、すまないなスー」
「いいのよ、それじゃ」

「で、どうするんだい?イリアへと向かう?」
「イリアへと向かう。その後ベルンへ」
ルトガー達は町を後にしイリアへと入っていった


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